離島鎮守府再建記   作:フェレッ党

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秋刀魚祭り、皆さんどうでしたでしょうか。
私は今回の秋刀魚祭りが初で、秋刀魚こそ集まりましたが、20.3cm(3号)連装砲が1つしかなかったので試製 震電(局地戦闘機)を逃しました……


第15話 同期襲来1

 

 調査が終了し、宮君は報告のために本土へ戻ることになった。

 調査隊の人員は最後まで怪しい動きを見せず、ずっと友好的だった。焼き餃子のお裾分けの効果だろうか。

 一応、宮君がここの運営を一時的に引き継ぐという名目があるため、日向が残留することに。というか、日向が希望して残ってくれた。誰を残すかで牽制し合っていた一部艦娘の拍子抜けした表情が印象的だった。その後で宮君からの言葉をもらった日向を見た時の表情と、それに気付いた日向のちょっとだけ勝ち誇ったような表情もまた。宮君、俺と大和のことを言う前に、自分の心配をしたほうがいいんじゃないかな。

 結局、実質的な運営は俺がそのままやるということで、日向の指揮権が俺に預けられ、彼女もまた素直にそれを受け入れてくれた。

 あと、うちの妖精さん達が何人か島を離れた。増員したいというので、同意をもらって宮君の艦に乗せてもらい、本土へ送ることに。うちからは引き抜かないでくださいねと念を押されたので、フリーの妖精さんのみに声をかけるように指示した。

 でも、引き抜きとか実際できるんだろうか? いや、よその鎮守府の力を奪うようなことしちゃ駄目だな。あーでも待遇が悪ければ救済の意味でありか? あるいは何かの時のために間諜として送り込む? いやいや、それは提督の仕事じゃないだろ。

 いずれにせよ島の妖精さん達が増えるのは有り難いので、スカウト組には頑張ってもらいたい。

 

 

 

 離島の鎮守府としてようやく外にも目を向けられるようになり、第1艦隊を編成して海域哨戒に出るようになった。基本、新規建造した6人が出撃。大和と吹雪は時々交替で参加し、普段はこっちを手伝ってもらうか、島の警備、日向からの教導を受けている。

 今のところ周辺の敵影は薄く、何事もなく帰ってくることが多い。それでもたまに戦闘が起きるし、漂流してる資源を拾って帰って来たりする。

 戦力を増やせれば少しは安心できるんだろうけど、資源の都合もあるし、だからといって資源探索に向かわせるのも難しい。次の定期便で纏まった資源が入手できてから考えよう。今はそれより書類仕事だ。

 ようやく鎮守府らしいことができるようになったと実感しながら、戦闘詳報を作成中。主計科員として艦に乗った時にやる業務ではあるけど、艦娘提督として作成するものは一部が省略されてるので楽に思える。艦娘達がそれぞれ提出する戦闘報告書を纏める作業だし。

 ただ、この戦闘報告書。もう少し何とかできないかと思う。何せ、彼女達がこれを作るのは鎮守府に帰還してからだ。艦でなら、各部署の報告を取り纏めて艦ごとに戦闘詳報を作るけど、艦娘は自分の行動を全て自分で報告しなければならない。戦闘があればそれに専念しなければならない彼女らに、報告書用の記録を残す余裕があるだろうか。必死に戦った後で、何をどこまで覚えてるだろう。

 ふと、これも妖精さんに頼んだりできないだろうかと思った。艦娘の艤装には妖精さん達が何人もいるし、普通の軍艦と同様に、妖精さん達を各部署に見立てて各自報告してもらったものを艦娘が纏めるとか。あるいは専門の妖精さんも乗艦させて記録をとってもらうのも手か。他の鎮守府とかの艦娘達はどうやってるんだろうか。んー、今度相棒に、相談してみようか。あと日向にも他所のやり方を聞いてみよう。

 そんなことを考えていると電話が音を立てた。電話というか内線だ。今のところ、ここと港、工廠で繋がっていて、何かあったら連絡してくる。今日のところは、宮君が戻ってくるという話しか聞いてない。時間的にはそろそろだから、それだろうか。

『ふねがいっせき、せっきんちゅう。かんむすていとくようのふねのようです』

 レトロなというかこの世界じゃ現役である黒電話の受話器を取ると、そんな言葉が聞こえてきた。

「……宮外大尉ではないのだな? 艦娘提督用というのは間違いないか?」

『いぜん、このちんじゅふにていはくしていたものとどうがたなので、おそらく、です』

 艦娘提督の艦は階級によって艦種が違うけど、中尉までは完全に艦娘提督専用艦で、よそには配備されてないはずだ。ここの型と同じなら、来てるのは少尉あるいは中尉の艦娘提督ってことになる。

「随伴艦は?」

『げんじてんではかくにんできません』

「分かった。そちらへ向かう」

 来客だってなら会わなきゃならない。でも、この時期にここへやって来る艦娘提督というのも……まさかあいつか?

 

 

 港に着くと艤装を展開した大和達が来ていた。俺は声をかけてないし、沖に出てたはずだから、艦が近づいてるのに気付いたんだろう。天龍達は哨戒中で留守だけど、この3人がいるならひとまずは大丈夫か。

 艦が接舷する。さて誰だ、と見上げていれば、影が1つ落ちてきた。船縁を跳び越えてきたのは1人の男。予想していた人物ではなかったけど、知ってる奴ではあった。

 俺と同じ第二種軍装で、少尉。軍刀を携えたそいつの顔は不機嫌そうだ。目つきが悪いというか相変わらずの悪人面。

「何やってんだてめぇは?」

 挨拶をする間もなく、そいつ――艦娘提督の同期である兵部(ひょうぶ)正義(まさよし)少尉が言い放った。

「いくら呼びかけても応答しやがらねぇ。着いてみりゃ、あちこち被害を受けてやがる。まさか本庁舎までやられてるとは……たるんでんじゃねぇのか、あぁっ!?」

 一方的な物言いだけど、何も知らない奴がこの状況を見たら、そうなるか。俺がここの提督だってことを知ってれば尚更に。少尉候補生の頃は散々に叱られたもんだった。

 ただ、実際のところ。通信はしたくてもできないし、庁舎は俺がここへ来た時から変わってない。こいつが怒るのは無理もないけど、俺に責任がないことで怒られても困る。

 何より、これを聞いてる大和の反応が怖い。以前、念を押したけど、何かやらかす前に動かなければ。

 しかし、俺と大和の前に、動く者がいた。

 吹雪だった。俺と兵部の間に入り、彼を睨み付けている。意外すぎる反応だった。見えないけど、大和達からも戸惑ったような雰囲気が感じられる。

「勝手なことを言わないでください」

「あぁん?」

「司令官は、北星提督は、壊滅したここに着任して以来、精力的に働いて、1ヶ月ちょっとでここまで立て直したんです! それを、何もかも司令官が悪いみたいに言うなんて!」

 不機嫌そうに兵部が吹雪を睨みつける。でも吹雪は怯まない。

「この鎮守府が受けた被害で、司令官に責任があるものなんて1つもないんです! 人員も物資もなく、普通の人なら野垂れ死んでる状況から、鎮守府として動けるようになるまで! 提督として、頑張ってきたんです! 何も知らない部外者が、勝手に決めつけて司令官を悪者にしないでください!」

「吹雪、下がれ」

 最後のほうは涙声になっていた。まさか吹雪が俺のことでここまで怒ってくれるとは。ひとまず落ち着かせようと吹雪の肩を引く。

 吹雪の剣幕に、兵部の勢いも衰えていた。ここらで仕切り直しといこう。

「……話をする気があるなら仮庁舎まで案内しよう。ただし、お前1人だけだ。艦娘の同伴は認めない」

 艦から降りてきた艦娘を見ながら言う。あれは重巡の羽黒、だったか。

「どういう意味だ?」

「嫌なら即刻ここを去れ。そして、問題の元凶になりたくなければ、公式に発表されるまでここで見聞きしたことを誰にも吹聴するな」

 問いには答えず、言いたいことだけを言う。さて、どう出るか。

「……案内しろ。羽黒、皆はここで待機だ」

 吹雪の言葉と、俺の態度で、何かあるのは気付いたんだろう。予想どおり、兵部は承諾した。しかも軍刀を羽黒に渡し、短剣も剣帯ごと外して。これは予想外。

「し、しかし……提督の身に――」

「こいつはそういうことはしねぇよ」

 異を唱えようとする羽黒に、俺を見ながら答える兵部。まあ、危害を加える気はないよ、今のところは。

「何かあれば工廠にいる明石に声をかけるといい。それでこちらには連絡がつく」

「提督、私はここへ残ろう」

 日向が兵部の艦を見て言った。一応、警戒してくれるらしい。あちらの艦娘が暴走することは多分ないとは思うけど、頷いておく。

「よく素直に応じたな?」

 仮庁舎へと向かいながら、隣を歩く兵部に話しかける。軍人らしくいこうかと思ってたけど面倒だから素の態度でいいや。

「部下の艦娘が本気で怒ってんだ。てめぇに非がねぇってのは間違いないんだろうさ。だったら正確な情報を知りてぇからな」

 ぶっきらぼうに兵部は答えた。チラリと背後をうかがうと、無表情の大和と怒ったままの吹雪が続いている。艤装は解除していなかった。大丈夫かなこれ。

「ところで、どうしてここへ来た?」

 気になってたことを問う。兵部がここへ来るなんて、夢にも思ってなかったからだ。

「横須賀方面に用があって、お前の鎮守府が開庁してるのを思い出して、ちゃんとやれてるか気になったから、帰りに様子見で寄っただけだ」

「それは何とも運が悪かったな。このタイミングで来るなんて」

 彼ならあり得る理由だな、と思った。候補生時代、叱られはしたけど、世話にもなったからなぁ。まあ、それが本当の理由なのか、現時点では分からんけど。

「ここで何があった?」

「俺が来る前に何があったかは不明だ。ここに来てからは……本土と連絡がつくまで、生き残るのに必死だった」

「そこだ。さっきも通信ができなかったし、吹雪も言ってたが、壊滅ってのはどういうことだ?」

「言葉どおりだよ。俺がこの島に来た時点で、鎮守府は壊滅してて、誰1人いなかった。インフラも死んでて、無線設備もやられてた。いくら呼びかけられても返事はできん」

「そんな状態で、どうやって本土と連絡がついた?」

「ここの異状に気付いた横本から調査隊が来て、初めて連絡がついたんだよ。それまで1ヶ月以上サバイバル生活だ」

「……何で、んなことになったんだよ?」

「それは俺も知りたいよ」

 いや、本当に。どうしてこうなった。

 仮庁舎に到着し、手作りの丸太を加工した応接セットに座る。ひとまず茶を煎れようとしたら、吹雪が慌てて代わろうとしてきた。

「大丈夫か?」

 普通に茶を出せるか、という意味で問うと、恥ずかしそうにコクコクと頷く。大丈夫と判断して吹雪に任せ、俺は兵部の対面に座った。

 大和が書類を持って来て、俺に手渡してくる。宮君にもらっておいた、報告書の写しだ。俺がどうこう言うよりも、これが一番早い。

「とりあえず、こいつを読め。調査隊がまとめた正式な報告書の写しだ。これが今、横本に上がってる」

 テーブルに置いたそれを兵部が受け取り、読み始めた。進むにつれて、顔が険しくなっていく。子供が見たら絶対泣き出す。

 やがて。

「何だこりゃあっ!?」

 兵部が握り潰した報告書をテーブルに叩きつけた。丸太製で良かった。普通のテーブルだったら天板が割れてたかもしれん。

「何がどうなればこんなことが起きるってんだ!? こんなことが許されていいわけねぇだろ!」

「落ち着け」

「落ち着け、じゃねぇよ! 一歩間違えたら野垂れ死んでたんだぞ!? 何でそう落ち着いてられるんだてめぇはっ!?」

 立ち上がり、兵部が怒りを撒き散らす。まあ、こうなるな。

「乗り越えたからだよ」

 怒りが全くないわけじゃない。思い返せばいくらでも、黒幕への怒りは湧き上がる。でも、そんな絶望的な状況を俺は皆と乗り越えた。黒幕ざまーみろ、ってなもんだ。

「そんな目に遭っても、調査隊が来るまで生き延びて、そして今を艦娘提督として生きてるからだ。黒幕への怒りや恨みはあるが、そんなこと考える前にやることは山とある」

 兵部の態度を見ながら、こいつは白だなと判断した。元々、その可能性は低かったけど。

「……何だかんだで、てめぇはその辺、強ぇよなぁ。あの頃、俺があれだけ文句垂れても耐えやがったし」

 大きく息を吐いて、再び兵部が腰を下ろした。あぁ、そういう認識だったのか。

「罵倒と指導は別物だろ」

 薄く笑いながら言ってやると、兵部が怯んだ。俺の態度が意外か? でも、俺のほうの認識はそうなんだよなぁ。

 さて、どう畳みかけてやろうかと考えていると、外が騒がしいのに気付いた。正確には、こちらに近づいてくる音が――

「皆斗!」

 仮庁舎に、宮君が駆け込んできた。

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