前回は完走できませんでしたが、今回は完走できました。
最初だけ乙で、後は全部丁ですけど。
残り期間は未着任艦をできる限り掘っていく予定です。
限定邂逅の大和(2隻目)と、E6の武蔵で、運を使い果たしていませんように……
宮君からの個人的な救援物資が届いた。同じ艦で追加の妖精さん達も一緒だ。募集活動はまだ続けるらしい。
出迎えに来ていた妖精さんに率いられ、ぞろぞろと移動していく。どれだけ増えるんだろう妖精さん。
まあ、妖精さんのことは妖精さんに任せよう。こちらはこちらでやることがある。
受け取った目録を眺める。食料や資源、生活用品等、色々と持ち込んでくれている。仕入れ先まで記載してくれているのは助かるな。ここは信用できるってことだろうし。お、頼んでた鶏がある。数は――
目録の備考欄にあった仕入れ先を見た時に噴き出しそうになってしまい、咄嗟に口を押さえた。いや、ありがたいというか畏れ多いというか……宮君さぁ……
「提督、どうしました?」
「いや、何でもない。食料品の確認は間宮と伊良湖に任せる」
不思議そうにこちらを見た間宮にそう言って、目当ての物を探す。お、いたいた。
近づくと、木箱から鶏の声が聞こえる。隙間から覗いてみると元気はいい。船旅で弱ったりはしていないようだ。
「あら、鶏ですか?」
近くで資源のチェックをしていた明石がこちらへと来る。
「宮外大尉からだ。養鶏の試験用に頼んでおいたものが今回届いてな」
「試験用? 自給するって言ってた件じゃないんですか?」
「いや、これは私物だな」
この鶏自体は自給自足計画の第1弾ではあるものの、鎮守府として実施するのは保留にした。
許可自体はもらえてるので、あとはこっちのペースでやるけど、そもそも予算までは組んでいないというか、それ用の予算がない。なので、自費の許す範囲で、趣味レベルから段階を踏んでいくことにしたわけだ。
そこでまずは養鶏、というか卵から始めることにした。一応、この島に鶏を狙う獣はいない、はずなので、このくらいの数なら何とかなる。自然も豊かだから、逃げ出さないようにだけして囲っておけば餌も問題ないだろう。食堂の野菜クズとかも使えるだろうし。
あくまで趣味なので、使い道は自分用。順調に産んでくれれば多く余るはずだから、たまには食堂に差し入れてもいいか。全員に行き渡らせるのは無理なので、ご褒美的に何か振る舞おうかね。あ、妖精さん達に卵焼きとかならいけるかも?
そのためにも、まずは鶏舎と囲いを作らねば。
「卵、現時点では危ないですしね。艦船当時よりは保存技術も上がってるみたいですけど、新鮮なものが届くかが分かりませんし」
そう。今のうちへ搬入される物資で、食料品は特に気をつけないといけないものだ。傷んでる物を食べて腹を壊すとか、目も当てられない。艦娘は無事で済むかもしれないけど、俺が体調を崩すと色々とまずい。
「普通ならそんな心配は要らないはずなのだがな」
「まあ、そのへんは間宮さんや伊良湖がきちんと確認してくれるでしょうから。卵、軌道に乗ったら酒保に卸してくれます?」
酒保か。そっちは考えてなかったな。
「裏酒保の運営をやってくれるのか?」
「信頼できる仕入れ先が確保できれば、ですかね」
どれどれ、と明石が目録を覗き込み、動きを止めた。あ、見てしまったか。ぐりん、と明石の首が勢いよくこちらを向く。
「……宮外大尉って何者なんです?」
「彼の『元の身分』がそんなに気になるか?」
「……鶏の出荷元が千葉のあそこで、その返しだと、もう答えじゃないですか」
それであの呼び方かぁ、と明石は深く息を吐いた。
「まあ、それは後で詳しく聞くとして。鶏小屋が必要になりますね。建てましょうか?」
鶏を見ながら明石が提案してくる。それは、助かるけど。
「いいのか? 現時点では完全に
「最近、作るではなく建てることに色々と興味が湧いてきてまして。とっかかりとして手頃かなと」
そういえば建築してる妖精さんを時々見学してたっけ。まさかそっちに興味を持つとは。そのうちあれこれ建てたりするようになるんだろうか。
「私も実際に作ったことはないから、手探りでいくつもりだったからな。任せるよ。ただし、さっきも言ったが私事だ。やるなら課業外だぞ。それに、私も手伝う」
現時点では自分用なんだから、丸投げというわけにはいかない。
「分かりました。あ、整地とかは天龍に任せましょうか」
「ん?」
「重機、動かせますし」
ヘルメットに作業着姿の天龍がフフフとか笑いながら重機で地均しする姿が脳裏に浮かんだ。何だこれ……疲れてるのかな? というかいつの間に操作できるようになった?
「まあ、都合が合うようなら頼んでもいいか。駄目なら私がやる」
「え、提督も動かせるんですか?」
「何を隠そう、壊滅直後の道や港の地面を均したのは私だからな」
「提督も何げに多才ですねぇ」
「やってみれば何とかなるものだ。事実、ここで得た技能だから」
「ふむ。使えると便利そうですから、私もやってみますかね」
艦娘の力なら、下手な重機よりも動けそうな気もするけど、作業に特化しているぶん、重機のほうがいい場合はあるだろう。
「失礼します、提督」
執務中に大和がメモを片手にやって来た。
「
「用件は?」
「いえ、来訪ではなく、桃箭島への正式な着任ですね」
「着任? 申請はしていないが……誰が?」
「軽巡洋艦大淀となっています」
どこの鎮守府にも初期配備されていて、各種事務や任務の通達が主任務になっているけど、中には戦場に出る者もいると聞く艦娘だ。
「それは正直ありがたいな。書類戦力的な意味で」
「ですが、確か
大和の懸念は分かる。大淀が『敵』の手の者である可能性はゼロではない。
「よそから来る艦娘については、しばらく監視をつける。ただ、この話は一部の者だけに留めておく。普段の態度に出ても困るからな」
「大和に打ち明けていただけたのはいいとして、他は誰に?」
「元々防諜で働いてもらっている間宮と伊良湖だ」
それから、妖精さん。妖精さん達の一部には、島の周辺警戒や地形確認等の調査を任せてるけど、艦娘達の様子を見てもらってもいる。内部調査と言うほど大袈裟なものじゃなくて、悩みを抱えてたり様子がおかしい娘がいたら教えてくれ程度のものだ。
そこに、特定艦娘の動向確認を追加してもらう。艦娘のサポーターである彼女らに艦娘の監視をさせるというのは心苦しいけど、
「それで、着任はいつになっている?」
「初の定期便で同行するようですね」
てことは……意外と早いな。
「大淀の件は様子見だ。もし『敵』に繋がっているなら、その時は洗いざらい吐いてもらうが」
その場合、『敵』は艦娘の人事に干渉できる奴ということになるんだろうか。その上で、本人あるいは手駒が艦娘提督である、と。艦娘を利用できるというのはそういうことだし、大淀が本当にそうなら、これでかなり絞り込めそうな気がする。
「提督」
呼びかけに顔を上げると、大和がすぐ傍に来ていた。いつの間に?
「怖い顔をしていますよ」
「む……すまない」
「休憩にしましょう。今は大和しかいませんから」
提督としての立場を維持しなくてもいいよという彼女の気遣いだ。お言葉に甘え、その場で大きく伸びをして首を回す。ゴキゴキといい音が鳴った。
「このところ、根を詰めすぎていませんか?」
大和が机に湯飲みを置く。手にした湯飲みは熱くなく、ぬるめだ。それを一気に空けて、机に置く。
「大和の目にはそう見える?」
問うと、心配顔のまま大和が頷く。
正直に言うと、忙しいのは事実だ。調査隊が来て以来、艦娘も増え、鎮守府の建て直しも本格化し、更に鎮守府本来の役目である深海棲艦との戦いにも本腰を入れ始めた。やるべきことが跳ね上がったんだから仕方ない。
「大和達がもっと提督のお仕事を手伝えればいいのですけど」
「いや、大和達は今もよくやってくれてるよ」
大和に吹雪、それに天龍、あと最近は白雪と三日月まで、事務仕事を手伝ってくれている。自分でやらなきゃいけない部分以外では、随分と助けられているのも事実だ。
「本来なら、艦娘じゃなくて人間がやるべき仕事まで」
「桃箭島の現状を考えると、仕方がないことです。提督が信用できる人でない限り、決着がつくまでは島に人間を入れないほうがいいと思います」
ここで言う「島に人間を入れない」というのは、港より先に上陸させないという意味だ。港での物資搬入時は、妖精さん達による監視と艦娘達による警戒を実施する予定でいる。
「それから、ご自愛くださいね」
急須を持った大和が寄ってきて、空になった湯飲みにお茶を注いでくれた。
「提督の身に何かあったら、大和は悲しいです。それに皆も悲しみますから」
「あー……うん、気をつける」
「……どうしてそんな顔を?」
「いや、まあ……」
素性の暴露以降、好意的になっているうちの艦娘達だ。そんなことになったら過剰な反応を示すんじゃないかという不安がある。それはよろしくない。自己管理、大事。
「ところで提督。今日、宮外提督から物資が届いていましたけど、その中に生きた鶏があったとか」
言葉を濁していると、大和が話題を変えてきた。
「ん? ああ、あったよ。明石と一緒に鶏小屋を作って、飼うつもりでいる」
「成鳥ですか?」
「ああ。卵はもう産めるはずだ」
「でしたら、いくつか回してもらえないでしょうか?」
「それは構わないけど、どうした?」
「新鮮な卵が使えるなら、是非提督に食べていただきたいものがありまして」
つまり、大和にまつわる料理、ということ? それに卵が必要、となれば……あぁ、あのメニューだろうか?
「紅茶も一緒に出してもらえるんだろう?」
戦艦大和の料理を思い出し、振ってみると、嬉しそうに大和が笑う。卵自体は今日の物資に含まれていたから、それを使ってもらってもいいんだけど、産みたてを使いたいというなら、もう少し待とうか。いやぁ、これは楽しみだ。
「あ、そういえば。大淀が着任するとなると、どこの部屋にする?」
「軽巡の部屋でいいと思います。分かりやすいですし」
「本官舎はもう少しかかるしな」
現在、本庁舎を後回しにして艦娘用官舎を建設中だ。個室と大部屋、どちらも準備してある。艦娘の数が増えることを想定して、その備えはしておかないといけない。
「個室まで作る必要はあったのですか? 大部屋でよかったと思いますけど」
「好みは人それぞれだからな。独りでのんびりしたい奴も出てくるだろうさ」
軍隊で集団生活だから、大部屋だけでいいかとも思ったけど、今後、趣味とかに意識を向ける余裕が出てきたら、私物も増えるだろうし、自分だけの場所というのは必要になるはずだ。
「あと、皆のために独りのほうがいい場合もある。いびきとか」
士官学校時代、同室の奴のいびきに悩まされてたのがいたのを思い出した。大いびきをかいて寝る艦娘というのは想像しにくいけど……あ、寝相が悪いのはいるかもしれない。
「あ、や、大和はいびきとかないですよ?」
「知ってる」
一時期は同じ部屋で寝てたんだ。それで起こされたことはないし、今、大和と同じ場所で寝起きしている日向からも苦情はない。
「な、何で笑うんですかっ?」
「いや、余りにも必死に見えたから、可愛いなぁと」
「――っ、もうっ!」
俺の言葉に、朱に染まった大和の頬が膨らんだ。