離島鎮守府再建記   作:フェレッ党

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E2甲で攻略中。1は日和って乙クリア。

出撃時に部隊選択ミスって、温存しておきたかった矢矧改乙達に札がついてしまい地獄……

未邂逅艦はE1でヴァリアントをお迎えできました。

秋刀魚は現在15匹。キラ付けや任務消化のついでがほとんどですが……先に秋刀魚に専念した方がいいのかしら。


第34話 休暇

 

 視線の先に、標的を見つけた。銛をゆっくりとそちらに向け、手を離す。ゴムによって銛が放たれ、魚に命中――しなかった。結構な大物だったんだけどなぁ。

 銛を引き寄せ、方向転換。これくらいにしとこうか。

 今日は1日、休みになっている。というか、休みにされた。

 小笠原少将が来て数日したら、休めと一部の艦娘達に詰め寄られたのだ。

 いや、だってさ。俺に直接言わない以上、聞いたところで艦娘達が抱えてる不満を教えてくれるとは思えないし。だったら待遇とか環境とかを今まで以上に良くして、皆の負担を少しでも減らさなきゃいけないだろ? なのに、それを阻むようなことをされる。

 そういうわけで俺は朝食後に本庁舎を追い出された。元仮庁舎も封鎖されている。本気で俺に仕事をさせないつもりらしい。

 そんなわけで、島内で休暇となったわけだ。とはいえ鎮守府以外は何もない島じゃ、できることは限られる。まずは素潜りで魚突きでもしようと海に繰り出したんだけど、仕留められたのは2匹だけだ。まぁ、それだけあれば十分とも言える。食べるのは俺だけだし。

 泳ぎながら岩場を離れる。水中は澄んでいて見通しは結構いい。魚の姿も多かった。次の機会ではもっとうまくやろう。

 砂地まで出て、出発点だった浜へ戻り、足が着く位置で頭を上げる。

「きゃあっ!?」

 すると、悲鳴が飛び込んできた。視線の先、砂浜に、尻餅をついた曙がいる。そういえば今日の曙は非番だったか。

「いっ、いきなりどこから出てくるのよっ!?」

「潜ってたから、海からだな」

 シュノーケルを口から外し、水中眼鏡を持ち上げて、俺は砂浜へと上がった。曙の傍に砂山が見える。砂遊びしてたのか?

「ななななななんて格好してんのっ!?」

 そして、目を見開き、真っ赤な顔で大声をあげる曙。

「泳いでたんだからこれが普通だろ。記憶を辿ってみろよ」

 艦娘達の記憶じゃ、水泳用の格好は褌だったはずだけど?

「そっ、そうだけど! そうだけどそうじゃなくて!」

「曙」

「なっ、なによ……?」

「年頃の娘が、いつまでもその格好はいかがなものかと」

 尻餅ついて大股開きはよろしくないぞ。下着が見えてる。

 指摘すると、慌てて足を閉じてスカートを伸ばし、涙目で睨みつけてくる。

「み、みたわね……?」

「見てはいないけど、見えはした……クソ提督って言っていいんだぞ?」

「そういう気の遣い方はしなくていいのっ!」

 そうか? こういう時にこそ言うべきだと思うんだけどなぁ。まぁ、いいか。

「魚を突いてたの?」

 俺が手にしている銛と、戦果の魚を見て、曙が聞いてきた。

「ああ。いるにはいるんだけど、これがなかなか難しくてな」

「釣りじゃなくて突くのね」

「釣りもするぞ。潜れる季節だからやってみただけで。曙もやってみるか?」

「今は準備がないもの。まさか裸で潜れとか言わないでしょ?」

 そりゃ言わない。そうか、曙、私物はうちの酒保で買える物しか――いや、待て。本人は異動のつもりでここに来たんだから、私物は持ち込んでるのか。じゃあ、水着とか持ってるのかもしれないな。

「言わない。興味があるなら、休みが合えば一緒にやってみるか?」

「そうね……今日はもう突かないの?」

「これから釣りに変更。もしよければ、一緒に行くか? こっちなら道具は俺が持ってるし」

「どど、どうしてもって言うなら――」

「いや、無理にとは言わない」

「……行くわ」

 せっかくの休みだ。俺の趣味に無理矢理付き合わせるのも悪いと思ってそう言うと、何故か悔しそうに曙は答えた。

 曙が立ち上がり、駆け出す。その先には俺が持ってきていた荷物があった。そこからタオルと服を持って戻ってくる。

「ありがとう」

「べっ、別に……提督の言葉を借りるなら、いつまでもそんな格好はどうなのってだけよ……」

「もうちょっと鍛えてたらなぁ」

 島暮らしでも自主練は欠かさないので、ぼちぼちの体型は維持できてると思う。サバイバル時に結構鍛えられた感じだけど、兵科の連中程じゃないだろうし。

「……いいんじゃない? 別に見苦しい体型じゃないし。痩せてるんじゃなくて、引き締まってるて感じだし」

 顔を逸らし、それでもチラチラとこちらを見る曙。何だろう、吹雪みたいな反応だな。

「いいから早く着なさいよ!」

 こっちの視線に気づいたのか、曙がタオルを投げつけてきた。

 

 

 服を着て、竿を1本、曙に貸す。乗組員の記憶があるかもしれないけど、仕掛けとかの準備は全部、俺がやっておいた。

「曙は、虫とか平気か?」

「餌のこと? それくらいは大丈夫よ。餌探しから始めるの?」

「一応、準備はしてある」

 小さめの木箱に、掘り出しておいた虫を集めてある。ゴカイかイソメかそれ以外の何かだ。

「ここだと何が釣れるの?」

「今の時期で砂地だから、キスとか。この間、雪風が30センチくらいのを釣ったな」

 あれは大物だった。雪風も喜んでたし、他に釣ったのも合わせて、皆で美味しくいただいたっけ。

「じゃあ、今日の釣りは食料調達の一環なの? 仕事の虫だから追い出されたんじゃなかった?」

「趣味の釣りだよ。だから基本的には自分で食べる。曙も食べるだろ?」

「あー……提督は、今日のお昼は自前なのね」

 ああ、食堂への申請があったか。基本、食事は食堂で、だもんな。

「艦娘なら大丈夫だろ。特に曙はしっかり食べたほうがいい」

 八丈島での仕打ちを考えたら仕方ないのかもしれないけど、線が細いというか痩せ過ぎな気がするんだ。だから、太らない程度にしっかり食べてもらいたい。本当にあの野郎はろくでもない奴だったよ。

 それはともかく。投げ方と釣り方をレクチャーし、さて釣り開始――

「しれぇ! 曙さん!」

 背後からの声。見なくても誰か判る。雪風だ。振り向くと釣り竿を持った雪風がいた。雪風も非番だったな。

「雪風、今日も釣りか?」

「はいっ!」

 問うと元気よく答え、こちらに駆けてくる。そして俺達に並んで準備を始めた。雪風がここを釣り場に定めたなら、今日の釣果は期待できそうだな。

 

 

 

 幸運艦の御墨付きをもらえたようなもので、結構な釣果が出ている。曙も慣れてきたのか、普通に釣りを楽しんでいるようだ。

「わっ!? なにこれっ!?」

 そんな彼女から大きな声が放たれた。竿が大きくしなっているのが分かる。

「どうした?」

「な、なんかよく分からないけど、引きが強いっ!」

「全部の針に掛かったかな?」

「いや、そうじゃなくってっ! キスより暴れてるっていうか……っ!」

 戸惑いながらも竿とリールを操る曙。さっきからキスばっかりだったけど、別のが掛かったか? この辺だと何が来てるんだろう?

「手伝おうか?」

「ううんっ、やるわ!」

「曙さん、頑張ってください!」

 自身の力で挑戦することを決めた曙に、雪風がエールを送る。そのまま奮闘することしばし――

「チヌか。よく釣れたなぁ」

 曙が釣り上げたのは、50センチ近い大物だった。本土沿岸で釣れる魚だと思ってたけど、こんな太平洋の離島でも釣れるのか。仕掛けもよく保ったよ。

「クロダイじゃないの?」

「チヌですよね?」

 嬉しさを抑えきれない表情で魚を見る曙が問うと、雪風が首を傾げる。

「どっちも同じだよ。西がチヌ、東がクロダイって呼んでるっぽいな」

 俺は元の世界だと西日本側だから、チヌ呼びで覚えてる。曙は艦だった頃の所属が横須賀で、雪風は呉だったはずだから、それで覚えてるんだろう。

「で、どうする曙。記念に魚拓とかしてみるか? 食べるのは後になるけど」

「うんっ!」

 満面の笑みで曙が返事をした。こりゃ釣りに嵌まりそうだなぁ。彼女が明るく元気に過ごせるようになるならいいことだ。

「雪風も、負けていられません!」

 曙の釣果に触発されたのか、雪風が意気込んで竿を投げた。そういう雪風も、さっきから結構いいサイズのキスを釣り続けてるんだけどな。

 ちなみに、今日の釣果が一番少ないのは俺だ。ま、まぁ? 自分で食う分だけ釣れたら問題ないしぃ?

「来ましたっ!」

 そしてすぐに声。見ると確かに竿が大きく曲がってる。いや、いくら幸運艦とはいえ、すごすぎない?

 と思ってたら、すぐに真っ直ぐに戻ってしまった。

「あー……」

 残念かつ悲しそうな雪風の声が聞こえる。糸が切れちゃったか。どう声掛けしたものかと思っていると、沖合に浮かぶものがあった。桃色の髪、そして濡れているはずなのにぴょこんと立つアホ毛。

「今の釣り針、誰のでち?」

 伊58(ゴーヤ)だった。それじゃ今、雪風が釣ったのって……プッ! まさか魚じゃなくて潜水艦を釣るなんて……っ!

「アハハハハハっ!」

 曙が腹を抱えて笑い始めた。雪風はオロオロして、ゴーヤは気にした様子もなく、こちらに近づいてくる。っと、そうだ。

「ゴーヤ。怪我はないか?」

「え? あ、身体に刺さったわけじゃないから」

 砂浜に上がってきたゴーヤが、はい、と艤装に引っ掛かった釣り針を差し出してくる。それを雪風が受け取った。

「ごめんなさい……」

「大丈夫だよ。釣りの邪魔してごめんね。でも、水中じゃやっぱり釣り糸とか見えにくいね。ここ、よく使うの?」

 しょんぼりする雪風に、手を振ってゴーヤが笑う。

「この浜は、割と誰かが使ってると思う。ここの沖合、ずっと砂地だろ?」

「うん。キス釣りならいい釣り場だと思う。あとヒラメもいたよ」

「そうか。ゴーヤ、もしよければ島周辺の情報、釣り場視点でも一緒に集めといてくれるか?」

「それはいいけど……タダ働きは嫌よ?」

 期待するような目をゴーヤが向けてくる。ふむ、報酬か。

「今なら釣ったばかりのキスの刺身とか提供できるし……」

 彼女が持っている網袋の中身をじっと見る。魚が何匹か入ってるな。あと、あれ伊勢エビか?

「その手持ちの魚介、調理してやろうか?」

「商談成立でち!」

 ニッコリ笑って、ゴーヤは自身の戦果を差し出してきた。

 

 

 

 今日の戦果をみんなで頂き、午後からの釣りと素潜りで鎮守府へのお土産もしっかり確保。夕食のおかずに貢献し、俺、曙、雪風、ゴーヤは皆に讃えられることになった。

 昼に俺が魚介を調理して曙達に振る舞ったことを聞いて、何人かが羨ましそうな目を向けてきた。以前、吹雪が言ってたけど、俺の料理、MVPとか個別の報酬とかで出すように本気で検討すべきか。料理をする理由になるし、いいかもしれない。

 

 あと曙は、自分で釣った魚を旨そうに食べてたし、魚拓を見てニマニマしてました。

 

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