新規お迎えはリシュリュー、デイス、早潮。そしてコロラド3人。
秋刀魚は現在21尾。野埼お迎えまでには多分集まる、かな。
イベント終了まであとわずか。これよりE5へ突入します。
間に合え……間に合えーっ!(0083感
「駆逐艦級の艤装は一通りいけましたね」
うちにある艤装を片っ端から試した結果、そうなった。砲は小口径砲までだ。
「で、妖精さんによっても作動したりしなかったりかぁ」
「大和さんの妖精だと全部成功。相性があるのかな?」
明石と夕張の視線を受けて、大和顔の妖精さんである相棒がドヤっている。ちなみに大和の他の艤装妖精だと結果はバラバラだった。
使えた艤装は武器だけじゃない。例えば電探だ。頭の中にレーダー画面が図として浮かんできた。それに、脚部艤装で水上に立てたし、航行もできた。スケートしてる感じと言えばいいのか。
「今の大和準拠、なんでしょうか? でも魚雷も使えましたね。私は使えないのに」
不思議そうに大和が相棒を見る。相棒も首を傾げていた。分からないのか。
「大和と相棒は繋がってて、俺は相棒と繋がることができた。俺がこんなことできるってことは、やっぱり俺の《力》って大和由来か?」
そこまで口にして、ふと思ったことがある。
「そういや大和、最近調子が良くなったとか言ってたっけ」
「はい。身体そのものは変わりませんが、少しずつ《力》を取り戻しているような――」
そこで大和の言葉が止まった。大和も気付いたか。減った俺。増えた大和。そして俺の《力》が大和由来であるなら。
「つまり、俺が大和の《力》を奪っていたこ――」
「提督がそんなことするはずありません!」
大和が強い声で俺の言葉を遮った。いや、そういう受け取り方ができるってだけでだな。大和の《力》を自分の物にしたいなんて思ったことはないわけだから。
「艦娘としての《力》を提督が奪うなんてできるのかって話ですね。むしろ、提督に《力》を貸していたのでは? 原理は全く分かりませんが」
まあまあ、と大淀が大和を抑えにかかる。ああ、その言い方のほうがしっくりくるかも。それを聞いて大和は困惑顔だ。
「ですが、自分の《力》を渡そうとか意識したことはないと思います。そもそも何で戻って来てるのかも分からないのに……」
分かります? と大和が視線で問うてくる。いや、俺にそう振られてもだな――
「あ……俺がそう思ったから、か?」
思い当たるもの、あったわ。
「いや、実はさ。艦娘みたいだとは自分でも思ったことがあって、そんななら、弱体化してる大和に渡せればいいのにな、と考えたことが何度かあった。時期的には、何となく一致する、ような?」
「うーん……何か条件が他にあるんですかね? ちなみに、今そう強く思ったらどうなります?」
「どうかな?」
明石の疑問を受け、やってみることにした。強く、自分の中にある《力》を意識し、それを大和に渡すように念じてみる。
「外側からは何も分かりませんけど、どんな感じです?」
「何も感じられないな。大和、そっちは?」
「こちらもそうですね、現時点では何も――」
言いかけた大和がこちらへ近づいてきて、途中で足を止めた。それと同時、《力》が抜ける感覚が生じた。あ、自分の意思で抜けるんだな。
そう思った途端、大和が後ろへ跳び退いた。すると流れが止まる。
「大和が近づいたら流れて、離れたら止まったな」
「受け渡し可能な距離があるんですかね?」
「みたいだな。大和、ゆっくりこっちへ近づいてくれるか?」
明石が何やらメモを取りつつ考えている。どのくらいの距離から有効になるんだと思い、大和に声をかけると、
「駄目です!」
動かないまま、大和が拒否した。え、何で?
「大和の《力》が提督に流れた結果が今なのでしたら、返してもらっては困ります! 今の提督にその《力》は必要です!」
「いやでもな、大和がフルスペックで戦えないのはいかがなものかと」
「いえ、全て返してもらっても、恐らく元には戻りません。あくまでこの身体での上限止まりです」
《力》の譲渡が今の身体の原因じゃない、ってことか。嘘をついてる様子はないけど、戦艦としての能力が制限されている中から俺に《力》を渡してるなら、それで戦力ダウンしてるのは変わらないじゃないか。
「だったら尚更だろう。戦場で戦う大和と後方で指揮を執る俺じゃ、どっちが持つべきかなんて明白で――」
「提督は! ご自身の置かれている状況を理解しているんですか!?」
近づこうとすると、その分大和が下がりながら叫ぶ。
「提督は命を狙われているんですよ!? いつ何時、提督の身に危険が迫るか分からないんです! 大和の《力》が提督を護っているなら、それは本望です! 大和は提督の護符なんですから!」
「提督の防御力って、艦娘同様に現行兵器も防ぐんですかね?」
空気が張り詰めていく中、夕張がそんな疑問を口にした。お前さぁ……恐ろしいこと言わないでくれ。試したくもない。
「とにかく! 大和がお側にいることで提督から《力》が抜けてしまうなら、距離を取ります!」
そう言って大和は背を向け、駆け出した。あっ、おい待て!
「どうしましょう?」
「大和の協力が不可欠なんだけど……」
大和が去る直前、ほんの少し感じたあれのことを考えると、もっと検証が必要なことだと思うんだけどなぁ。
「あの様子だと、提督からずっと離れていそうですね」
「それは困る。それに、大和の気持ちは嬉しいけど、やっぱり力はあるべき場所になきゃ駄目でしょ」
「納得しますかね?」
「ああ、それは大丈夫。何とかする。で、大淀」
「はい?」
「この件は、うちだけに留めておく」
桃箭島から正式に報告しない、という意味だ。多分ないだろうけど、そっちからも伝えないように、と釘を刺す意味もある。
「理由を伺っても? もし研究が進んで、人間が艤装を使えるようになったら、戦略が変わりますが」
小口径砲だけでも、深海棲艦の駆逐艦くらいは沈められるようになる。直接深海棲艦を打倒できるようになることは、軍人達の悲願だ。端緒が示されれば、是が非でも手に入れたいと思うだろう。問題は、そのために何が起こるかだ。
「《力》の譲り合いや貸し借りならともかく、これが抽出・搾取にまで発展したらどうなると思う? この情報自体が、それを誘発する可能性がある」
俺と大和の関係が特殊すぎるからというのが理由なら、再現性はない。でも、できないと断言できる状況じゃない。艦娘の《力》を我が物とできる可能性なんて示したら、ろくでもない実験をやりだす奴がきっと出る。
「そして、それが現実のものとなった場合。艦娘の扱いが酷くなる可能性がある」
艦娘は資源があれば建造可能だ。もし艦娘の《力》を人間に付与できるようになったとして、それが艦娘から《力》を完全に失わせるようなものだとしたら、そうなった彼女らはどう扱われるだろうか。
協定がある以上、そんなことにはならないと思いたいけど、艦娘とは何なのか、それを調べるために隠れて非道な実験が行われた過去が実際にあるし。二度とない、なんて軽々しく言えない。
それに、だ。人間が艦娘の武力を行使できるようになったとして。それが深海棲艦だけに向けられる可能性は低い。余計な野心を燃やす輩が出てくるだろう。現に某赤の国なんて、艦娘を使って帝国に侵攻してきたこともある。そういう国に知られるのが一番まずい。
「あと、俺自身もモルモットにされる可能性もあるしな。そういうわけで、俺のおかしな部分については部外秘だ」
肩をすくめて見せて、踵を返す。さてさて、お姫様はどこへ逃げるのやら。
大和を見つけるのは難しくない。大和のいる方向は何となくだけど分かるからだ。これも『繋がっている』からなんだろうか。
けど、運動能力は大和のほうが上だ。全力で走られたらあっというまに振り切られてしまう。
なので、大和にも聞こえるように島内放送で妖精さん達に呼びかけ、『島内』の探索を頼んだ。人目につかない場所に隠れざるを得ないように誘導したわけだ。その上で、一部の妖精さん達には建物を分かりやすく監視させた。
結果、大和は妖精さん達が近寄らないような場所に身を潜めるしかなくなり、そこへ追い詰められた形となった。場所は島内にある、海岸沿いのちょっとした洞窟。袋の鼠というやつだ。やっぱり捜索は数だよね。
「こ、来ないでください!」
洞窟の奥で膝を抱えていた大和が俺に気付いて顔を上げ、接近を拒む。美少女を追い込んで詰め寄るとか、どこの悪人だろうか。にちゃぁとか笑いながら近づけばいいのか? やらないけど。
「大和の気持ちはとても嬉しい。でも俺の気持ちも分かってくれないかな」
「それは……」
入口を塞ぐように立ち止まったままで話しかけると、大和の表情に迷いが浮かんだ。大和が俺を最優先で動くのは間違いない。俺の身に危険があれば、彼女は俺を物理的に護るだろう。だから、俺は『俺の気持ち』と言った。俺の身を護るためなら、俺の心は無視ですか、と……嫌な言い方だって自覚はある……
「大和が俺の身を案じてくれるように、俺だって戦場に出る大和の無事を願ってる。俺が《力》を借りてるせいで大和が大破なんてした日には、俺は自分が許せなくなるよ」
「で、ですが……」
「だから、さ」
一歩ずつ近づきながら、《力》を返すように念じる。5メートルくらいの位置だろうか、大和の顔が強張った。ここらへんが境界か。
「なぁ、大和。俺の《力》は大和由来だ。そこは間違いないと言える。で、俺が大和に返そうと思ったら返せた。でもさ、元々は大和の《力》なんだ。大和が渡そうと思ったら、そうできるんじゃないか?」
「……はい……?」
「お前が逃げる直前、少しだけこっちに戻る感覚があった。つまり《力》の譲渡は任意なわけだ。試してみるといい」
戸惑いつつも、大和は目を閉じた。こちらに何かが入ってくるのが分かる。あっ、と大和が声を漏らした。
「つまり、一度きりのやり取りじゃなくて、何度でも行き来できるわけだ。だったら、これからのことを考えなきゃな。元々は大和の《力》だ。それを貸してくれるなら、これからも借りるよ。ただ、その配分を考える余地があると思わないか?」
四六時中、その《力》が必要なわけじゃないってことだ。
「俺の護りは、この島にいる限りはなくても問題ない。普段は妖精さん達や皆が警戒や哨戒をしてくれてて、上陸は非常に困難な体制ができてるから。それらをかいくぐって俺を暗殺しようってのは現実的じゃないし、上陸せずに害そうとしたら、絶対にその前に発覚する」
「それは……そう、ですね……」
「だから、普段から多くの《力》は必要ないというか過剰なわけだ。だからさ、《力》の検証も含めて、今後のことを相談したかったんだけど、大和逃げちゃうし」
もう少しだけ落ち着いてくれていたら、ここまで面倒にはならなかったんだけどなぁ。思わず溜息が漏れてしまった。
「……ご、ごめんなさい……無理矢理返されると思ったらすごく怖くなって……大和は、私はもう必要ないんじゃないかって……」
大和が俯き、しょぼんとした顔になる。そっちに考えちゃったか。艦娘の大和が、昔と変わらず俺の護符だって言うなら、大和がいない人生なんて考えられないってのに。
俺には大和が必要だ、と言ったことはあるはずなのに、役に立つ限りは、と勘違いしちゃったのか? そういうことじゃないんだけど、もっとはっきり言ったほうがいいんだろうか。
「その身が朽ち果てるまで、側にいてくれるんじゃなかったっけ?」
言いながら近付いてしゃがみ、手を差し出し、真っ直ぐに彼女を見つめて、告げた。
「俺が大和を手放すなんてことは、あり得ない。たとえ軍上層部が何を言ってもだ」
大和は、桃箭島のドックで建造されてはいるけど、使われた資源は妖精さん達の提供だし、俺じゃなきゃ顕現させられなかった艦娘だ。俺の艦娘、と言うと語弊があるかもだけど、厳密には桃箭島の艦娘じゃないとも言える。
「だからお前は、これからもずっと俺の側にいろ」
大和の手を掴み、立ち上がらせると、そのまま大和が胸に飛び込んできた。倒れそうになるのをこらえて何とか抱き止める。
ここまで言えば、大丈夫かな。ん、待て。俺、今、とんでもないこと言ったか?
「ぷろぽーずですか? もうすこし、ときとばしょをえらばないと」
俺の肩にいた相棒が、そんなことを言った。いや、そういう意味を持たせた言葉じゃないぞ!?
大和の腕の力が増していく。ちょ、ちょっと大和、さん? それ以上の圧力はちょっと厳し――折れる! 背骨が! 肋骨が!
艦娘の性能については、後日少しずつ確認していくことになった。
大和との《力》の受け渡しについての現時点での検証結果は、
・ここで言う《力》は、筋力と生身の防御力、妖精さんとの艤装リンク能力。
・艦娘無線は《力》を完全に返した後でも使用可だった。
・距離5メートルから受け渡しの効果を確認。近いほど流れは強くなる。接触だと更に強い。
・5メートル以上離れたところで意思を示した場合、圏内に入ったところで流れる。ただし、移動量は減衰する。
・意志を示しても、一定時間内に圏内に入らないとキャンセルされる。
・与えることはできても、もらうことはできない。あくまで《力》を持っている側の意思による。
・互いが同時に渡そうとしたら、大和のほうが強い。
・俺が受け取れる《力》には上限がある。
といったところだ。
運用としては、大和を安心させる意味も含めて、普段からある程度の《力》を借りておき、大和が出撃する際は最低限の《力》を残して返すことにした。
あと、俺が使える艦娘としての《力》は、現時点では最大で軽巡程度のようだ。それは身体能力の話で、艤装は駆逐艦までだし、練度という意味ではゼロ。航行速度も劣るし、彼女らのような戦闘航行は俺にはできなかった。練習すれば少しは動けるようになるだろうけど、時間を掛けてそこまでしても焼け石に水だろう。固定砲台くらいにしかなれないというのが現状だ。
何より、俺が海に出ることを全員が反対したし、俺自身、そんな度胸も技量もない。足手纏い確定なら、使うことも伸ばす必要もない、というわけだ。宝の持ち腐れ、といえばいいんだろうか。
ただ、腕力だけ見ても各種作業には役立つし、海上での何らかの作業に従事する時に脚部艤装だけ着けて活動する、くらいがせいぜいか。釣りとか。
あと、海上を走るのは気持ちよかったので、たまには気分転換にでも使わせてもらおうかと思ったら、島の岸から30メートル以上離れないことと、必ず艦娘を同伴させることを条件にされた。ちょっと過保護じゃない?