離島鎮守府再建記   作:フェレッ党

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第39話 提督適性

 

「さて、食料の追加申請は通ったようなので、建造についても考えていこうと思う」

 建造ドック前で、明石&夕張に告げる。

 人事異動でこちらの顕現可能枠を埋められる前に、必要だと思う艦種をある程度建造しておくことにしたわけだけど。

「一応、戦艦1、空母1、重巡2、軽巡2と考えているが、何か意見はあるか?」

「今度来るのって、駆逐艦と海防艦だけなんでしたっけ? でしたら、それでいいと思います」

 明石が答え、夕張が頷いた。

「ところで、何人来るんでしたっけ?」

「14人だな」

「今が18人で、14人来て、6人建造で……総員38人かぁ。残りの枠はいくつになるの?」

「基本的にはあと22だ」

 夕張の問いに答えると、基本的には? と2人が首を傾げた。ああ、そこまで説明してなかったっけ。

「妖精が見える、声が聞けることを、軍では提督適性などと呼んでいるのだが、見えるだけの乙種が40、声を聞くこともできる甲種が60までと言われている。その上で、その枠を超えて顕現した例もあるのだ」

 ほぅ、と夕張がにじり寄ってきた。

「その提督達に共通点は?」

「現時点では見出せていない」

「40まで顕現できなかった例は?」

「確認されていないな」

「じゃあ、最初期の鎮守府って、最低でも明石(わたし)と大淀で枠を取るんです?」

 今度は明石が聞いてきたので、頷く。

「どちらも必須だからな。大淀の役割は他の艦娘で替えがきくかもしれないが、その基準に達するまで別の艦娘を育てるのは骨だろう」

 顕現したばかりの艦娘は、今現在の知識がない。だからこそ、それらを仕込まれてから着任する大淀や初期艦というのは鎮守府運営の大きな助けになる。

 ちなみに工作艦明石も技術のアップデートが行われた上での着任になるので、うちの明石はそのあたりが弱い。本人もそれは自覚していて、知識や技術の獲得に貪欲だ。苦労をかけるけど頑張ってもらいたい。

「その上で、うちは間宮さんと伊良湖もいますしね」

「どちらかを要請しようと思ったら、どちらも建造で来てくれたからな。それも何かの縁だから、別に構わないのだが」

「あと22……それだけあると言えばいいのか、それだけしかないと言えばいいのか……もしまた今回くらいの規模で押し付けられたら苦しくなりますね」

「かといって、今すぐ上限推定枠まで建造するわけにもいかない」

 維持と運用ができない数を建造しても意味がない。それが原因で運営が破綻してしまっては目も当てられない。

「上限が確定じゃないのも厄介ですね。あと何隻って分かれば考えようもあるんでしょうけどねぇ」

 はぁ、と明石が嘆息する。同感だけど、つられて溜息をつきそうになるのをこらえた。

「わかりますよ」

 そんな時、声が聞こえた。え、とその発生源を見ると、そこにいたのは1人の妖精さんだ。

「ていとくなら、わくとかきにせず、がんがんけんぞうしてもだいじょうぶです」

 そして、なかなかブッ飛んだことを言ってくれた。

「それは、何故だ?」

「ていとくのてきせいだと、きにするだけむいみだからです」

「待って。提督の適性だと60が予想上限なんでしょ?」

「それはようせいてきせいのじょうげんですね。ひょっとして、ごぞんじない?」

 異を唱えた明石に、妖精さんはこちらを見回す。あれ、何かおかしいな。俺の適性だから60までだと思ってるのに、妖精さんは俺の適性なら上限を気にする意味がないと言う。しかも、提督適性じゃなく、妖精適性?

「すまない、よく分からないのだが。私と君で、認識する適性に齟齬があるように思える」

「ふむ……それでは、ごせつめいしましょうか」

「ちょっと待ってくれ。この適性について、他に知っている者はいるか?」

 工廠で働いている、他の妖精さん達に問いかける。しかし肯定の返事は出てこない。この情報を持ってる妖精さんがレアってことか。

『大和、大淀。至急、工廠へ来てくれ』

 艦娘無線で伝え、到着を待つことにする。おおごとになりそうな予感がするなぁ。

 

 

 

「けんげんじょうげんですが、まず、ようせいてきせいによるものです。ようせいがみえるだけのおつしゅだと40、こえもきけるこうしゅだと60です」

 2人が到着したので、妖精さんから話を聞く。ちなみに作業着姿だった妖精さんは、白衣を纏っていた。

「ようせいてきせいがなくても、40までけんげんかのうです。これは、ほかのてきせいがいっさいないばあいですね」

 そして、いきなり爆弾を投下してくれた。他の適性って、何?

「もう1つがかんむすてきせいです。たとえば、おつしゅでやまとがたのてきせいがあるとすると、やまとがたをのぞいてさっきのかずがじょうげんです」

 他の適性がある艦については、今まで俺達が認識していた上限に加算されるって理解でいいのか。

「かんむすてきせいについては、とくていのふねだけだったり、くちくかんだけだったり、ふぶきがただけだったり、そのふくごうだったりと、いろいろありますが、ちょうふくするぶぶんは1せきとみなします」

 例えば駆逐艦吹雪の適性があったとして、他に駆逐艦適性と吹雪型適性があっても、上限としての加算は1、と。

「艦種や艦型等の適性が個別にあり、それらの複合とは別にあるのが、私達が提督適性と認識していた妖精適性。顕現上限と思っていたものを超えて顕現できたのは、その個別分ということか」

 顕現上限は、妖精適性と艦娘適性の合計で決まるってことだな。

「知らない……そんなの知らないです……」

「でも、それで説明ついちゃうね」

 大淀が頭を抱え、夕張が納得したように頷き、

「ということは、うちの提督の場合はどうなるの?」

 続けて放たれた言葉で皆の視線が俺に向いた。

「ていとくのかんむすてきせいは、まずやまとがたです」

 あー、と納得顔の皆の口から声が漏れる。大和との縁があるから、まあ分かる。しかし大和じゃなくて、大和型か。

「つぎにたんかんてきせいで、やまとさん。それから、おか……ほうしょうさんです」

 と思ったら大和単艦の適性もあるのか? それに鳳翔も。これもまあ、縁があるから、なんだろうか。これで上限枠は+2と。あ、大和が嬉しそうな顔してる。

「つぎに、ていこくかんていです」

 ……はい?

「それはつまり、帝国海軍籍の艦全てということですか?」

「です」

「今まで悩んでいたのは一体……」

 妖精さんの回答に、問いを投げた大淀は乾いた笑い声を漏らす。いや、ほんと、それな。

「あとですね、どうきょうてきせいです」

 どうきょう……? 道教、銅鏡、道鏡……?

「おなじこきょう、ですね」

 ああ、同郷か。

「あれ? 帝国艦艇の適性と同郷の適性が別ってことは、この場合の同郷って、何を指すの?」

「もとのせかいです」

「……じゃあ提督って、国籍関係なく、他国の全ての艦娘にも適性があるってこと!? かっ、艦娘たらしっ!」

「明石、誤解を招くようなことを言うのはやめろ」

「そうですよ明石さん。提督が好かれるのはその人柄によるものであって、適性があるからではありません」

 って大和も何言ってるんだ? そして明石、何が、それもそうね、だ?

「で、ですが、これで建造を急ぐ理由はなくなりましたね」

 気を取り直したように大淀が言った。資源に余裕ができた時に適宜建造すればいいってことだもんね。

「だが、今回は食料の申請が通ってしまっている。今更キャンセルするわけにもいくまい。予定どおり建造はして、今後は落ち着いて考えるとしよう」

 俺の場合、無制限に顕現可能と言い換えてもよくなった。でも、全艦顕現なんて桃箭島鎮守府の規模でやれるわけがないし。

 それにしても、俺が生きていた世界と、艦娘達の船魂がいる世界は、並行世界ではなく同一で間違いないということでいいんだろうか。

「私の同郷適性に、該当しない艦娘というのは存在しうるのか?」

 別の世界の艦娘も存在し、そちらには適性がない、ということがあったりもするんだろうか?

「ちがうせかいのかんむすがそんざいするなら、そのかのうせいはありますが、そこまではわたしのちしきにはないですね」

 なるほど、この妖精さんが持っている知識も限定的ということか。こうしてみると、妖精さんの知識って不思議なものだなぁ。他にも眠ってる重要情報とかあるんじゃないか?

「君は、人を見ただけで、その適性を見抜くことができるのか?」

「はい。たとえば、みやそとたいい。あのかたは、ていこくかんていのてきせいと、せんかんてきせい、それと、はじめてきたときにどうこうしていたかんむすたちのたんかんてきせいもありましたね」

 ……それは規格外というやつでは?

「提督。驚いてますけど、提督のほうがひど……すごい状態ですからね」

 顔に出ていたのか、大和がそんなことを言う。いや、でも、単艦適性が6隻ってのも十分おかしいと思うけどなぁ。それより今、ひどいって言いかけた?

 ともあれ、提督適性というのは結構細かく、それによって顕現上限が決まることは分かった。これ、横本に報告したほうがいいかな。でもそれには、この妖精さんの協力が不可欠だ。他の妖精さんでそれを知ることができる子がいなかったら、この子の負担が大きい? いや、やり方次第か。

「てきせいについては、このくらいでいいでしょうか?」

「ああ。詳しく説明してくれてありがとう」

「はい。ではつぎに、ほせいについてごせつめいします」

 ……はい?

「補正ってなんですかーっ!?」

 大淀が大声をあげた。いや、まあ、気持ちは分かる。妖精さんを見て先を促すと、

「てきせいのあるかんむすのせいのうがこうじょうします」

「具体的には?」

「しゅつりょくやねんぴのこうじょう、ぼうぎょりきばのきょうどなどにえいきょうがでますね」

 またもや爆弾を投下してくれた。つまり適性ありだと、より強くなる、と。なにそれ。

「てきせいによるきょうかはちょうふくします。ていとくのばあい、ようせいのこえがきこえることで2、どうきょうで1、ていこくかんていはさらに1、やまとがたとほうしょうさんに1、やまとさんにさらに1ですね」

「……それは、それぞれどのくらいの強化になる?」

「ぐたいてきなすうちは、もうしわけありませんがわかりません。はばがせまいほうがつよいけいこうはあるようです。ただ、どうきょうはつよめのようです。それから、ちょうふくするぶぶんは、じょうしょうりょうがややひくくなるかと」

「つまり、検証が必要ね!」

 おっと、夕張が元気になった。データの取り甲斐はあるだろうけど、うちだと補正の重複が多くて向かないんじゃないか?

「提督。帝国の艦娘提督は、適性……妖精乙種以上持ちが前提です。他国に比べて艦娘個々の戦力が高いということになりますね」

「我が国の艦娘協定があるからこその枠組みだからな。他国の扱いはまた違うだろうし、妖精適性を持つ艦娘提督の話も聞かない」

 大和の言葉に頷く。これって他国は把握してないんだろうな。してたら、妖精適性のある者をかき集めてるはずだし。

「明石、夕張。データ取りの計画をあげてくれ。実施は八丈島の艦娘が来た後だ。建造間もない者が大半だから、訓練と同時に実施するのが効率的だろう」

「燃料と弾薬の消費量の件も、この適性と無関係じゃないですよね。分かりました、なるべく早く立案します」

「頼む。今まで聞いたことについても纏めて、後で報告書をあげてくれ。それからこの件は、今ここにいる者だけで留めること。妖精間での情報共有は構わないが、艦娘には漏れないように頼む。大和、大淀、行くぞ」

 後を工廠組に任せ、2人を伴って工廠を出た。

「提督。この件、横本には?」

 歩きながら大和が聞いてきた。

「難しいところだな。知らせたら検証の必要があるし、そのために必要なのはさっきの……適性妖精さんとでも言うか、彼女の協力だ。あちこち引っ張りだこになるだろうし、それを彼女に受け入れてもらえるか分からない」

 妖精さんは艦娘のサポートだ。こっちの都合であちこち動かせるのかを確認する必要がある。

「それに、だ。妖精適性だけでもアレなところに、更に艦娘適性だぞ? 適性持ちのマウント合戦というか、エリート意識的なものが出てこないか不安だ」

「あぁ、普通にありそうですね」

 げんなりとした表情になる大淀。横須賀の本鎮から来た彼女は、そういうのを目にしてきたのかもしれない。

「大淀。これ、上げたほうがいいと思うか?」

「そうですね……艦隊運用において、適性を持つ提督のもとに、適合する艦娘を配置するのは戦力強化の面で有効なのは確かですが……それを大々的に公表してしまうことには、不安を覚えます」

 だよなぁ。提督の適性に思うところがある艦娘が出てくるだろうし、自分が強くなるなら、そういう提督の指揮下に入りたいと思う者も出るだろう。

「あと、妖精の持つ知識について、精査したほうがよいとは思いました」

「ああ、それは確かに。今回は適性に関する知識でしたけど、他にまだ、私達の知らない知識を持っている妖精さんがいるかもしれませんしね」

 大淀の意見に大和が頷く。うん、やっぱりそこはそうだよな。

「うちにいる妖精さんだけでも、聴取をしてみるか」

 ただ、どう聞けばいいんだろう? 漠然と、何か情報を持ってないかと聞くんじゃ非効率だし。あちらが、取るに足らないことだと認識してたら、わざわざ言わないかもしれない。

「提督。うちにどれだけの妖精がいるかご存知で?」

 引きつった顔で大淀が聞いてきた。正確な数はまだ把握してないけど、小笠原少将が来た時に見えた数だけでも――

「夕張に投げ……任せるか」

 技術屋視点での聴取のほうがいい気がする。頑張れ夕張!

「ひとまず本件の報告は保留だ。すまないな、大淀。色々と抱え込ませてしまうが」

「いえ、提督のお考えは理解できます。それに有用な情報は色々と教えていただけていますし」

 ありのままの桃箭島鎮守府を報告しなきゃいけない立場の大淀に、その一部を差し止めさせていることには申し訳なさもあるのだ。謝ると、大淀は首を横に振った。

「リフトで使う土台や、あと、コンテナでしたか。あの発想については快く許可をいただけましたし」

 確かに大淀の定期報告に載せる許可は出した。でも、後はあっちで勝手にしてくれれば良かったのに、俺の手柄にするべきだと大淀が強く主張し、詳細は俺が正式に業務改善提案として上申することになった。今回は宮君との連名じゃないから、どうなるかはまあ、上層部次第だけど。あるいはこれも撒き餌になるんだろうか。

「それから建造だが。念のため、追加の食料の確認ができてからにする」

 手配済でも、実際に届くかは分からない。もし差し止めとかされてしまうと困るので、慎重にいこう。

「あ、提督。その食事のことで、有志による食事作り支援の提案があるのですが」

 ほう……つまり食事作りを手伝えると?

「詳しく聞こうか」

「ただし、提督は除きます」

 続く大和の言葉で一気に聞く気が失せていく。いや、業務改善提案なんだから、ちゃんと聞かなきゃ駄目か。

 最後に自分が調理したのはいつだったろうか。何とかしたい。

 いや待て、歓迎会用に提督枠を一品設ければいいのでは? 理由としては申し分ないはずだ。いっそ建造を定期的なものにしてしまえば――

「てーとく? よく分かりませんが却下です」

「何か非効率なことを考えていませんか?」

 大和と大淀からツッコミが入った。何故ばれた!?

 

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