離島鎮守府再建記   作:フェレッ党

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第41話 事前説明

 今回は全て高速建造材を使用。1から建造したい妖精さん達には申し訳ないけど、二度手間をかけないために時間優先。事情は理解してくれているようで、妖精さん達からは特に文句もない。

 そうして建造・顕現してくれたのは、戦艦霧島、軽空母龍驤、軽巡洋艦北上、練習特務艦朝日、重巡洋艦足柄、軽巡洋艦木曾。

 まずは戦艦が期待どおりに来てくれた。これで火力面が厚くなる。

 次に空母も来てくれた。資源の消耗を考えると、軽空母でかえって良かったかもしれない。

 北上は、割と早い段階で重雷装巡洋艦に改装可能になる。戦力として大いに期待したい。

 朝日は……確か改装で工作艦になるんだったっけ。となると火力担当というわけにはいかないけど、工廠戦力の充実という点ではありがたい。

 重巡妙高型の火力は頼もしいし、未来の重雷装巡洋艦がもう1人、こちらも期待したい。

 

 人数が多いので食堂を使うことにして、未説明の転任組に新造艦を加えていつもどおりの説明を行う。

 この世界が歩んできた歴史、深海棲艦の脅威、帝国が置かれている状況、そして桃箭島鎮守府が抱えている問題を伝えた。

 既にこちらの世界の情報にいくらか触れている転任組も、初耳なので一様に驚いている様子だ。

 建造組の反応は少し違う。北上は何というか掴み所のない表情だけど、霧島達は状況を噛み砕こうとしているのか真顔かつ無言。

「それにしても、30年も経ってるのに、いまだに人類側は敵に有効な技術を確立できていないのね」

 そして、困ったような、少し苛立っているような顔の足柄。

「倒れるまで砲撃をぶち込み続けるとかでどうにかできないの?」

 と、人類の不甲斐なさを突いてくる。うん、今の技術じゃ厳しいんだ。

「私達がこのサイズになっていることを考えると、敵もそう大きなものではないのでしょう。それなら、当てるだけでも困難で、当て続けるとなると更に厳しいということでは?」

 と口を挟んだのは霧島だ。

 小型船舶以下のサイズが、船舶以上の小回りで動き回るんだ。その難易度はいかほどか。誘導兵器の技術はないわけじゃないけど、それで当たったとしても、次には『通用しない』という問題が立ち塞がる。

「深海棲艦の死体には通常兵器も通じる。要は生きている時に展開されている防御力場を無効化あるいは弱体化できれば可能性はあるのだが、その研究のためには生きた深海棲艦を鹵獲し、安全を確保した上で死なせないように拘束し続ける必要がある。先の足柄の提案についても、被験体がこちらに無抵抗で、かつ、こちらからのあらゆる攻撃が必ず命中し、拘束には一切の影響を及ぼさない、という環境を整えられれば実験が可能になるな」

 そう言うと、足柄は諦めの表情で両手を小さく挙げた。その難易度がどれほどのものか、想像できたんだろう。

「一応、防御力場を破るための研究については、他のアプローチがないわけではないのだが……」

「何か問題が?」

「同じような防御力場を展開できる存在が、深海棲艦以外にいるだろう」

「それは……」

 霧島の眉根が寄った。そう、君達艦娘だよ。

 ただ、完全に同一のものかは不明で、そうなると対艦娘用にしかならないという可能性もある。それだと意味がない。いや、国家間の戦争に艦娘を持ち出す某赤い国みたいな実例がある以上、艦娘に対抗するための技術というのは得ていて損はないんだ。個人的には気に食わないけど。

「現時点ではその研究と成果の噂も聞かないがね」

 聞かないだけ、だろうなぁとは思う。願わくば、それが穏便な方法で行われていることを願うばかりだ。ろくでもない手段を用いているなら、どこぞの女傑が潰してくれるだろうか。

「まあ、帝国が何もしていないわけではないのでしょうね」

 と霧島が溜息1つ。そこへ足柄が言葉を投げてきた。

「提督は、そんな今の海軍に思うところはないの?」

「申し訳なさはある。この世界の人間だけで対処すべきものを、本来無関係な君達の力を借りなければ何もできないのだから」

 国を護るべき軍人が、自分達の力でそれを成すことができないのは悔しいとも。ただ、泣いても喚いてもその事実は変わらない。だから、今できることをやるしかない。

「それを本来無関係な提督が言います?」

 ジトッとした視線が大和から向けられた。今の俺は、もうこの世界の人間と言っても過言ではないだろう? だったら当事者だよ。

「提督が本来無関係というのは、どういうことですか?」

「後で詳しく説明するが、私は君達と同じ世界から、こちらの世界に流れ着いた人間なのだ。つまり、この世界で生まれた人間ではない」

 艦娘達がざわめいた。人数が多いから、反応が大きく聞こえる。

「だから私も本来なら無関係な人間と言えるのだが、こちらで育ち、今まで生きてきた以上はこちらの人間ということでよいだろう」

「育った、ということは、随分前にこちらへ?」

「7歳の頃だ。こちらで生きた人生のほうが長い」

 問いに答えると、朝日が両手で口を押さえて、申し訳なさそうな顔になった。悪いことを聞いてしまった、とでも思ってそうだ。俺の中ではとっくに整理がついてるんだけどね。

「私の身の上については後だ。ともあれ君達には、帝国海軍の指揮下に入り、私に協力してもらいたい」

 そこまで言って、転任組を見渡す。

「ということを、建造直後に説明し、同意を得なくてはならなかったのだが。どうだろうか?」

 どうする、と転任組達が顔を見合わせる。説明をしたと言っても、最初に八丈島での扱いがあるから、不信感はあるかもしれない。

「提督の素性も含めて、今聞いた話がどこまで正しいのか判断できないわ」

 そう言ったのは足柄だ。うん、もっともなことを言っている。別におかしな反応というわけじゃない。

「戦うことはまあ、別にいいけど……提督、貴方って少尉でしょう? それが私達の指揮を執るの?」

「戦場で直接指揮を執ることはできないので、おおまかな方針を示す程度だな。入ってくる戦況から進退の判断を下すことはあるが、基本的には現場にいる旗艦の指揮に従ってもらうことになるだろう」

「……提督って、必要なの?」

「足柄!」

「だって」

 たしなめる霧島に、足柄が口を尖らせる。足柄がそう思うのも不思議じゃない。艦だった頃とは全然違うわけだし。ただ、

「つい先日までなら、私も同感だったのだが……」

 提督の持つ適性のあれこれが判明しちゃったからなぁ。

「こと、帝国に関して言うならば、いないよりはいいことが判明してしまった」

「してしまった、ってどういうこと?」

「とある特殊な知識を持った妖精からもたらされた情報によると、妖精を見ることができる提督の指揮下にある艦娘は、性能が向上するそうだ。そして、帝国の艦娘提督は、妖精が見えることが必須の条件となっている」

 首を傾げる龍驤に理由を言うと、えぇ、と疑わしげな目になった。新入りの大半は同じような反応を示す。

「これは先日得た情報で、検証もまだできていない。そして、不確かであるがゆえに、上層部にも報告していない。現時点で話せる事はこれくらいだ」

「そこも曖昧なままなのね……」

 足柄は難しい顔のままだ。俺の指揮下に入ることに抵抗があるらしい。俺の階級が佐官だったら、少しは違ったんだろうか。今までに着任した艦娘達が素直すぎたのかもしれない。

 どうすれば納得してくれるかな、と考えを巡らせようとしたところで、

「そもそも、選択肢ないよね? ここ出てっても、行くとこないもん」

 北上が、現実的な一言を発した。

「燃料弾薬が無くなるまで戦って、あとは沈んで終わりだな」

「いやー、索敵だけで疲弊して戦えなくなる可能性もあるんやない?」

 そして、木曾と龍驤もそれに続く。あれ、受けなかったらそのまま放り出されるしかないと思ってる?

「一応、艤装を捨てるという条件で国民として野に降ることはできる。当面の補助制度もあったはずだ」

 具体的な例を知らなかったので、視線で大淀に問うと、頷いてくれた。そこで朝日が小さく挙手する。

「提督は、私達を戦わせたくないのですか? 戦力として建造したのでは?」

「艦娘建造のシステムが、本人の意思を無視した徴兵と変わらない行為だからな。だからこそ、私は私にできる範囲でできる限りのことをしなければならないと思っている。そう考えれば、協力しない場合も先に説明しておくべきだったな」

 軍に入らない道がある、ということを示しておけば、考えが変わるかもしれないんだ。今後は気をつけよう。

「説明の時にも言ったが、ここは小笠原諸島の離島鎮守府だ。閉鎖的な環境で、不便をかけることもあるだろう。そのあたりもよく考えて判断してほしい」

「横須賀から異動してきた私から見れば、本土になかなか行けないことと、欲しい物の入手に時間がかかることはデメリットですが、それ以外の生活面での不自由はほとんど感じていません。特に食事は、本土の大規模鎮守府並み、いえ、それ以上と思えますね」

 フォローするように大淀が言った。そこは間違いないな。というか、うちで誇れる部分だ。

「うちには給糧艦の間宮と伊良湖が所属している。それに、優秀な烹炊員の記憶を継承している艦娘もいて、食事の味に関しては期待してくれていい」

 間宮の名前を聞いて、何人かが目を輝かせたのが分かる。羊羹、と呟くのも聞こえた。甘味の力は偉大だなぁ。

 さて、どう選択するか、と見ていると、霧島が席を立ち、敬礼した。

「戦艦霧島、こちらでお世話になります」

 続いて、他の艦娘達も起立し、敬礼する。そんな中で足柄だけが座ったままだ。腕を組み、何か悶々と悩んでいる。

 そんな足柄を見て霧島が溜息をつくと、

「足柄。提督は誠実に説明してくれたわ。それに応えることに何の問題があるの?」

「それは分かってるのよ……でも、こう、何か、モヤモヤすると言うか……納得いかないというか……」

「面倒な女ねぇ……」

 頭を抱え、うにゃーと足柄が鳴いた。額に手を当て、再度霧島が溜息をつく。

「すぐに決められないのならそれでも構わないが」

 別にわがままを言いたいわけじゃなさそうだし。こちらとしても納得した上で従ってもらいたい。

 うにゃうにゃ言ってる足柄の動きが止まった。そして立ち上がると、こちらにビシッと指を突きつける。

「私と勝負しなさい! 私に勝てたら従ってあげるわっ!」

 そしてこの発言である。いいこと思いついたとばかりにドヤ顔だった。思わず溜息をついてしまっても許されるだろう。いや何言ってんのこの娘は。

「なっ、何よっ!?」

「艦娘の身体能力は、海防艦ですら成人男性を軽く上回る。そして艦種が上になるほど強くなる。重巡洋艦の君は、私をいじめたいのか?」

 というか、死んでしまいますやめてください。

 でも、足柄が求めるものが何となく見えてきた気がする。

「私が君を率いるに足る存在かを示してほしい、実感したいということか?」

「……そう、それよ!」

 制度とはいえ、いち少尉が艦隊指揮とか鎮守府運営とか、元の記憶のせいもあって受け入れがたいのかもしれない。だから何か秀でた部分を見いだして、それで納得したいということなんだろう……何という脳筋思考。

「しかし、戦闘なら勝つのは間違いなく君だ。試合なら話は変わるかもしれないが」

 身体能力も体力もあちらが上。艦娘であることの頑強さに加えて防御力場まで持ってる相手に勝とうとしたら、ルールで縛るしかない。いや、それ以前に、物理的に戦う以外の勝負でいいんじゃないだろうか。机上演習……は負けそうだな。料理、は受けてくれそうにないし。何か他に――

「それなら試合でいいわ!」

 うーん、ひょっとして、勝てたらと言ってはいるけど、立ち向かう気概を見せればいいってことなんだろうか。いや、でも勝ったほうが今後の運営には有利に働くだろうし。

 やれるだけやってみるか。今の時点なら重巡相手でも何とかなるだろう。

 

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