離島鎮守府再建記   作:フェレッ党

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13周年任務、一通り消化。期間限定任務消化。
吹雪、改三護&ケッカリ。
第三群報酬ゲット。戦果周回はようやらんので、4半期に1度の戦果砲頼り。
掘りは大和4隻目お迎えできず。武蔵2隻目お迎え&3隻目捜索中。


第43話 事前準備

 

 全員の面接が終わった。

 建造組は問題なし。転任組の大半はここへ来る前に色々と吹き込まれていたせいで警戒していたようだけど、面接時には資料を読んでいたらしく、一応の納得はしてくれたようだ。第七駆逐隊の3人が曙のこともあって協力的で、短い付き合いとはいえ色々と手を回してもくれていたらしい。ありがたいことだ。

 今回は特筆するような性質を持つ艦娘はいなかったので、個別の注意は必要ない。ただ、転任組に関しては、しばらくは念のために妖精さん達による監視をしてもらうことにする。あまり疑ってかかることはしたくないけど、鎮守府の安全のためには仕方ない。

 

 提督適性についての検証は少し進んだ。

 足柄の数値が、試合前より上昇したのを確認できた。あの時点で俺自身は足柄を部下だと認識していたから、彼女が俺を上官と認めたことが理由と思われる。

 ただ、どの程度の認識で適用されるのかは不明だ。上官としての信頼度とかがゲームみたいに数値化されるわけでもないし。できたらできたで火種になりそうだけど。

 バフは、艦娘提督(おれ)の意思でカットできたし、艦娘側で拒否もできた。

 ただ、どれだけ渡すかや、どれだけ使うかの調整はできなかった。100か0かの二択だ。大和からの《力》は調節できたのに。

 理屈はさっぱり分からない。多分、相互の認識により艦娘提督と艦娘の間にリンクが張られるのだと思われる。何となくではあるけど、繋がったという感覚だけは強く意識すれば分かるようになったし、繋がっている艦娘がどこにいるかが分かるようになったからだ。

 一方で艦娘側は、その感覚が俺より弱いらしい。繋がりは感覚的に分かるけど、居場所までは分からないという。

 例外は大和だけ。つまり、仕事をサボって隠れても、大和には見つかってしまうということだ。いや、しないけどね?

 俺と大和との繋がりは、艦娘提督と艦娘との繋がりとはまた別のものなんだろう。

 で、提督補正によって加算される《力》というのは、俺が保有するそれを渡しているというわけではないのだろう。そうしてる実感が全くない。

 明石はブレーカーみたいだと言った。

 艦娘を強化する力が電気で、鎮守府が分電盤なら、適性持ちの艦娘提督が主幹ブレーカーで艦娘が子ブレーカー。

 艦娘提督側をオフにしたら艦娘に力は渡らないし、オンにしていても艦娘側がオフにしていれば使えない。仕組みとしてはそんな感じなのでは、と。電気設備関係には詳しくないけど、言いたいことは何となく分かった。

 まあ、その電気がどこから来てるのかは不明のままなんですがね。妙なものまで流れ込んでないかと不安になる。

 

 

「さて、この事実をどうするか」

「検証不足なので、公表には時期尚早だと思いますね」

 データをまとめた紙を机に置いて、明石が言った。

桃箭島(うち)だけ、しかも一部のみですから、よその艦娘のデータも欲しいですけど」

 そうなるとこの事実を伝えないといけない。一応、協力をしてくれるであろう口が堅い心当たりはあるけど、あそこはうちと同じくらいデータ取りに向いてない。いや、適性持ちのデータという意味ではとても稀少なんだけど、基準値を求めるなら妖精適性しかない鎮守府のほうが都合がいいまである。

「それなのですが、総司令が桃箭島に来ます」

 大淀が、くいっと眼鏡を持ち上げる。あぁ、そんな話があったっけ。第一海軍区の小笠原方面にある離島鎮守府を回るそうだ。所属の艦娘達にはまだ知らせていない。

「巡視か何か?」

 明石の問いに大淀が頷いた。総司令と面会できるということは、直接相談するのが手っ取り早い。

「その時に伝えて判断を仰ぐとしよう。明石、それまでにデータを取れるだけ取って、纏めてくれ」

「分かりました」

「工廠からは他に何かあるか?」

「改装のスケジュールについて聞きたいです」

 ああ、その件があったか。改装ができる段階に至った艦娘がいたけど、資源の都合で保留にしてたんだ。

「資源と要相談だな」

 増員されたことで、以前よりも資源の補給量は増えたけど、潤沢とは言い難い。一気に改装して個々の戦力が増強されても、継戦能力が落ちては意味がない。転任組の練度を上げるためにも資源は使うわけだし。

「妖精との取引についてはどうなりました?」

「横本の回答待ちです」

 続く問いに大淀が答えた。定時報告で投げてはくれているけど、前例がないからあちらもどうすればいいか頭を抱えているかもしれない。

「分かりました。では、これで」

 明石が部屋を去った後で、大淀を見る。

「巡視の件、通知以外の情報は?」

「ありません。ただ、定期的な行事ではありませんから、何かしらの意図があるのかと。桃箭島と直接接触したいのかもしれません」

 そのために小笠原方面行きを企画したと? よそも訪ねるのは隠れ蓑か? 何故、そこまでする必要が? 復旧の状況は逐一報告していたから、それを実際に確認したいのかもしれない。あるいは。

「八丈島の件もあるかもしれない」

 艦娘提督が乱心して自刃したなんて、大事だ。他は大丈夫だろうな、と不安になったのかも。

「特にうちは、一度壊滅しているしな」

「それは提督の責任ではありません。事件そのものが伏せられているせいで、噂ばかりが広がっていますが……」

 そう言った大淀は、どこか悔しそうだ。自分が所属する鎮守府が悪く言われてるんだから、いい気分じゃないだろう。すまないね、俺のせいで。いや、それをダシにしての巡視ということも有り得るか。それにしたってトップが直接訪ねてくるのはやり過ぎな気もするけど。

「他に理由があるとすれば、バレていることに気づいてくれたか?」

「そ、その可能性は、ありますね……」

 大淀を尋問した翌日にあの無線電信を送らせて以来、それに対する反応は特にない。バレてるとしたら、変わらず日報を送り続けている大淀を、あちらはどう考えてるんだろうか。そのあたりの確認が本命なのかもしれない。巡視というよりは監査だと思ったほうがいいかも?

 そうなると、その後の大淀の扱いはどうなるんだろう。任務終了として引き上げられたりするんだろうか。

「大淀」

「はい」

「君の実際の所属は、桃箭島(うち)なのか?」

 書類上はうちの所属だけど、今の大淀が総司令の命令にも従っている以上、実質は横本所属の者が派遣されているとも受け取れる。そのあたり、どうなんだろうか。

 問うと、大淀は目を瞬かせた後、困ったように眉根を寄せた。

「桃箭島への転任の辞令が出たのは間違いありませんし、潜入を命じられたというわけではないので、私はそう認識していますが……」

 ふむ……その辞令が正式なものとして扱われているのか、潜入のためのツールだったのかで変わってくるか。これも直接聞かないと分からないやつだな。それは当日確認するとして。

「大淀。もし、君の真の所属が横本のままだったとしたらの話なのだが、任務解除後もうちに留まってもらいたいと言ったら、どうする」

 大淀の動きが止まった。驚きに染まった顔が嬉しそうに見えたかと思ったら、一瞬で暗いものに変わる。

「私は……」

 そして顔を逸らされた。理由については当然思い当たるものはある。

「初期の行為については任務であった以上、こちらから何も言わない。それに君は今現在、この鎮守府でしっかり働いてくれている」

「それは……バレてしまった後ですし、疑われて排除されないために必死だっただけで……」

「だから、だ。そういうものを取り払った上で、正真正銘、うちの艦娘として、働いてもらいたい」

「『大淀』が必要なのでしたら、横本から別の私を呼び寄せれば……」

「既にここのやり方を知り、ここの運営のために様々な意見を出してくれる、真面目な働き者である君を手放して、新しい大淀と最初からやり直せと?」

 んー……手強い。というか別の理由に思い当たった。俺個人に良い印象がない場合だ。仕方ないか。普段は平静に振る舞っていただけで、俺と接するのがトラウマになっててもおかしくないんだ。あの時、もっと他にいい方法を思いつけていたら違ったんだろうか。

「発覚当時、君に酷いことをした自覚はある。未遂で済んだとはいえ、やはり――」

「そっ、そんなことはっ!」

 被せるように大淀が否定した。当時を思い出したのか、顔色が蒼く――赤い? 何で?

 その時、ノックの音が響いた。返事をすると大和が入ってくる。

「お邪魔でした?」

「ちっ、ちち違いますぅっ!」

 俺達を見て楽しそうに目を細めた大和が手で口元を隠しながら言うと、大淀が慌てた。

「実のところは?」

「大淀を口説いていたところだ」

「くどっ!?」

 混乱を深める大淀をよそに、大和は落ち着いたものだった。

「ああ、うちに残らないかとか、そういう意味ですか?」

 頷くと、なるほど少し考えた後で、大和が大淀を見た。

「大淀さん。提督は、これからも貴女と仕事をしたい、と仰っているだけです。そして、そのためには、わだかまりを取り除きたいと考えています」

 あれ、状況把握が的確すぎない? まさか聞いてた?

「ただ、あくまでこれは提督の希望であり、大淀さんの意思が第一です。なので、横本に戻りたいなら断るだけでいいんですよ。提督は、無理強いはしません」

「大和さんは……その、いいんですか?」

「私は提督に従うだけですが、今の大淀さんに含むところは何もありませんよ」

 恐る恐る、といった感じの大淀に、大和が微笑む。それを見た大淀は深呼吸した後、こちらを向いた。緊張した顔に混じっている色は迷い……いや、不安だろうか。

「……本当に、『私』でよろしいのですか?」

「ああ、『君』がいい。でなくては困る」

 即答すると大淀の顔が朱に染まっていく。あ、言い方が悪かったか。変な意図はないからね?

「……分かりました。まずは事実確認からですが、こんな私でよろしければ」

 深々と大淀が頭を下げた。そして再び上がった時、大淀の目には強い意志の輝きがあった。

「さて、忙しくなりますよっ」

「ん?」

「この機に、総司令に伝えられることは全て投げてしまいましょう。そのための資料作りです」

「す、全てか?」

「早いほうがいいでしょう。どうせ、また増えていくんですから、溜め込むと後が大変ですよ」

「お、大淀、言葉に棘がないか?」

「そんなつもりはありませんけど……事実、多くの情報を得られていますし、様々な発案もされています。提督が鎮守府運営のための努力は惜しまないかただということは分かっていますから、打ち止めになることもないでしょう?」

「それは……これ以上はもういいか、と言えるようなことではないからな。何かあればその都度動いていくが」

 答えると、そうでしょうと満足げに大淀が頷く。

「では、運搬用の土台の件、提督適性とその補正の件、その他諸々、しっかり上申して、提督の功績に変えてしまいましょう。総司令に直接伝えた後で正規のルートを使えば、途中で握り潰されたり横取りされたりしても大丈夫です。提督には頑張っていただかないと!」

 何故か大淀が燃えている。いや、別に手柄とかどうでもいいんだけど……どうなってるの、と大和を見ればニコニコしてるし。

「期待に応えなくてはいけませんね」

 笑いながら言う大和に、俺は頷くしかなかった。

 

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