E3と同じく友軍のお陰で装甲破砕なしでクリア。
E5甲で挑戦中。最終ゲージ削り開始。新規お迎えはジャベリン2人。シェフィールド+1人、速吸+2人。
飲み、食べ、語らう。
懇親会は一層賑やかになってきた。特に酒が入った者達は陽気だ。俺以外の上官がいるわけでもないから気を遣う必要もないし、それでいて羽目を外し過ぎている様子もない。
俺自身も適度に酒と料理と会話を楽しんでいた。そんな時だ。
「提督の女性の好みって?」
誰かの放った声で、賑やかだった場が一瞬で静かになった。何故、そんな無意味な問いを……いや、彼女達にとっては意味があるのか。
「どういう意味での好みだ?」
皆の視線がこちらを向いたので、仕方なく問う。
「顔だけの話か? 添い遂げたいと思える内面の話か?」
「じゃー
笑いながら足柄が即答した。おのれ酔っ払いめ。乗組員の記憶持ちだから、この手の話に抵抗がないんだろうか。
さて、どう答えるか。いや、そもそも答えていいことかこれ? こういうの、元の世界じゃセクハラっていうんだったっけ? 向こうから聞いてるから問題ないとか?
考えてみたら候補生の時だって、男の上官達はそんなもんだったっけ……セクハラって概念がないだけで、
「ノリ悪いわねぇ。そこは勢いでぶちまけるところでしょうに」
「司令官は青葉達のこと色々知ってますけど、逆はないじゃないですか。不公平じゃないです?」
考えていると足柄と青葉が愚痴った。いや、把握してるのは艦娘それぞれの情報の積み重ねであって、個々の内面のことじゃないし。それに、
「俺の情報をかき集めて共有してるお前達が言うことか?」
どうせ今も続けてるんだろうし。ここで発言したらそれも加えられるんだろうな。俺のプライバシーはどこに?
「更なる
青葉が口を尖らせる。お前、ゴシップ系はあまり興味なかったはずなのに、嫌な方向に目覚めてしまったのか?
「そもそも、ヘル的な俺の好みなんて知ったところで、お前達に何の関係があるんだ?」
「自分が当てはまるかが分かりますね」
ニッコリと青葉が笑う。
つまり、身を守るためか。そりゃ、女所帯で男は俺しかいないけどさ。身体能力的な意味で俺が彼女らを組み伏せるなんて、大和の《力》を借りないと不可能なのに。いや、あればできるわけだから、不安要素ではあるのか。あれ、俺の《力》のこと、どこまで周知してたっけな?
「部下は対象外。以上」
端的に、しかし確実に安心できるであろう言葉で告げると、
「それは立場的な回答であって、ヘル的な回答じゃありませんね」
大和が残念なものを見る目を向けてきた。いや、何人かは同じ目をしている。なんで? あくまで俺個人の好みを把握したいってこと?
艦娘達を見回してみる。大半は興味津々って感じだ。緊張してる娘はいても不快そうに見える娘はいない。それでいいのかお前達。
でも、好み、かぁ。スケベ的な意味の……うーん……あれ? 女性の相手をするのに俺の好みとか考慮する余地ってなくない? いや、こっちから望んでの場合は関係あるのか……じゃあ、俺の好みとは一体?
「提督っ」
「うおっ!?」
大和に肩を揺さぶられて我に返った。
「あの、提督、大丈夫ですか?」
「なんでそんな深く考える必要があるんだよ?」
大和が心配げに、天龍が不思議そうに言った。
「いやぁ……俺の好みって何だろう、と」
正直に答えると、皆が一瞬ざわつく。え、変なこと言った?
「分からないんですか?」
「少なくとも、ヘル的な意味での、好みってのは思いつかない」
続けると、一部艦娘が動いてひとかたまりになり、目線だけで何やらやり取りを始める。何なんだ一体。
その中の1人である龍驤がこちらを向いた。
「提督。尉官になっとるっちゅーことは、
「ある」
「なら
「うん」
レスで、ではないけど、頷いておく。すると再び龍驤が背を向け、一団がボソボソとやり始めた。
「経験がありながら好みは思いつかないってことは、経験人数が少ないってことかしら?」
「任官直後の一度きり、とか? こういうの、外見的な好みで選びませんか?」
「その時、相手を選べんかったんかもしれんなぁ」
「でも、ウブってわけじゃないんだよな。オレの裸にも球磨の裸にも無関心だったし」
「天龍の身体に反応しないってなら相当じゃないか?」
「木曾、後で官舎裏クマ」
「なんでっ!?」
本人を目の前にしてよくもまぁ盛り上がるものだ。これ、いつまで続くんだろ?
「逆に、受け付けないのは?」
振り向いた霧島が眼鏡を直しながら聞いてきた。直球過ぎない? 答えなきゃ駄目? 駄目そうだな……
「不健康なのは遠慮したいな。肥満とか、骨や筋が浮いてるようなの。あと不潔なの」
当たり障りのない回答をする。視界の端で、曙が難しい顔で脇腹に手をやっているのが見えた。
「化粧とかは気にするん?」
ススっと寄ってきた龍驤が空のコップを差し出してくる。もう片手には一升瓶。受け取ったコップになみなみと酒が注がれる。
「過剰だったり匂いがきつくなければ特に気にならない」
「外見は? 美人がいいとか可愛いのがいいとか」
ちびりと飲ると、今度は足柄が酒瓶を持って近付いてきた。
「特にこういうのじゃないと、ってのはない」
「ふーん。じゃあ、外見年齢は?」
少し減らすとまたなみなみと酒が注がれる。こいつら、酒で口を軽くさせようって魂胆か?
「
「多分なんだ」
「そりゃあ、経験がないからな」
想像してみても、心の
「あと、その気がない奴の相手も無理」
酒を一口して、思わず眉をひそめてしまう。味が微妙に変わった……足柄め、別の銘柄を混ぜたなっ?
「どういう意味?」
「相手の同意が前提ってこと。言葉で同意があっても、本当は嫌だけど渋々、ってのは気付いた時点で萎える」
こっちから襲うことはないぞ、という意思を声に出してしておく。実際、今までの経験は……思い出すのやめとこう。多分、普通じゃない。
「司令官、あの、以前、欲はあるって言ってましたけど、それって異性に対して、ですよね? 同性ではなく」
吹雪がブッ飛んだことを聞いてきた。え、そっちを疑われるような要素、今までにあった? いっそ、そのほうが都合がいいのか? いや、嘘は駄目だろう。というか、そういう目で見られるのは嫌だ。
「そっちの嗜好は微塵もない」
答えると、吹雪はホッと息を漏らした。
「海防艦は対象外みたいね」
「男色でもないみたいです」
「駆逐艦は若すぎるってわけじゃないから対象? ぼの、まだ希望はありますぞ」
「なっ、何言ってんのアンタ……っ!?」
「駆逐艦は外見年齢というか体型の幅が広いですからね。適不適があるのでは?」
「軽巡にも興味なさそうだよねぇ」
「大和は……駄目だったんだっけ?」
「顕現初日に布団が一組しかなかったので同衾を持ちかけたら断られましたね」
「詳しく」
あちらはあちらで盛り上がってるので、放置しておくことにした。料理を取りに行き、適当な席に座ってそれをつつきながら大和達を見る。うーん……今後に不安しかない。
「提督」
盛り上がっている連中を避けるように、海防艦の4人がやって来た。手にはノンアルコールのコップ。そして一升瓶と空のコップだ。
「どうぞ」
と稲木が空のコップを渡してくる。はて?
「先程のおふたり、別々の銘柄を持っていましたので」
「気付いてわざわざ用意してくれたのか。ありがとう」
受け取り、酒を注いでもらう。量は8分ほどで止めてくれた。あれ、普通に注いでくれただけで嬉しいぞ?
それを一口しながら、稲木は大淀と、丁型3人は天龍と同室だったなと思い出す。神風達との会話から、稲木のほうは問題ないとして。
「丁型は、天龍とはうまくやれてるか?」
「はい。よくしてもらっています」
「厳しいけど優しいよ」
「頼りになるでっす」
第三〇号海防艦ミトが言うと、第二十二号海防艦フーフと第四号海防艦ヨツも同意する。天龍は口でどうこう言っても面倒見がいいし、部屋割りの時も任せとけって言ってくれてたしな。心配はしてなかったけど、しっかりやってくれてるらしい。
さてもう一口、とコップを傾け――
「で、提督。天龍さんとはどういう関係なんです?」
「あ、提督。大淀さんについても」
ミトが小声でぶっ込んできた。続いて稲木も。何でそんな話に? いや、既視感があるなこれ。
「同室の古参が何か言ってたか?」
「何というか、熱量高めですね」
「提督のこと、すげぇ奴だって、ことあるごとに言ってるよ」
思わずこちらも声を潜めて問うと、稲木とフーフも小声で答えた。あー……
「で、実際のところはどうなんでしょう? 天龍さんにしても大淀さんにしても、優良物件だと思いますけど」
「さっきも言ったけど、部下は対象外だってば」
ミトの追及に溜息交じりで答えた。天龍は、まぁ、何となく察してた部分がないわけじゃないけど、これ、大淀もそうなのか? 自意識過剰だろうか。
「さっきはあんなこと言ってたけど、本当は海防艦に興味があったりする?」
「ヘル的な意味では全くない」
「うん、せーじょーせーじょー」
面白そうにフーフが笑う。幼女に下ネタでからかわれ、自分が渋面になるのが嫌でも分かった。答えて酒を呷ると、ヨツが腕組みしながら頷く。どういう目線なんだそれは。というか、
「お前達もこういう話題は平気なんだな。理解できてるみたいだし」
「まぁ、一部記憶のせいか、男はそういうもの、というのは分かります」
「不快感ではなく、仕方ないなぁ、という感覚ですね」
やれやれ、といった感じの稲木とミト。分からないんじゃなくて、分かった上でこう言ってる。見た目が見た目だけに違和感がすごい。
「この際聞いてしまうけど、そっち系の欲を自覚してたりは?」
踏み込んだ問いに4人は首を横に振った。海防艦はそっち系の欲もない、か。あったらあったですっごく困るけど。
「提督、これから大変そうですね」
「干からびるでっすー?」
ミトが同情の表情を浮かべ、ヨツに爆雷を投げつけられた。やめて、ほんと、やめて……こうなったら皆の意識を別のものに逸らそう。
「間宮! そろそろ準備してくれ!」
声を掛けると、間宮達が動き始めた。何事かと皆の注目もそちらへ移る。
少しして戻ってきた彼女達を見て、うわぁ、と感嘆の声が幾つも漏れた。
用意されたのはスイーツの数々。定番の間宮羊羹や最中に始まり、プリンやシュークリームなど和洋問わず他にも様々な種類を準備してある。試食用ということもあり、以前相談したとおり、一口大のものばかりだ。プリンの器がお猪口なのはご愛嬌。
「これらは今後、間宮達に提供してもらうことになる甘味の一部だ。現時点では、俺が発行する引換券と交換で入手できるようにする。券自体は、俺からの労いや、働きに対する褒美として発行していく形になる。実際の物はもっと大きくなるけど、今日は一通り、楽しんでくれ」
「試食なので、1人1つずつでお願いしますね」
言いながら伊良湖が、それぞれを一つの皿に並べて順に渡していく。皆は喜んで受け取っていた。
それらを食べて美味しさに顔を綻ばせ、嬉しそうに感想を言い合っているのを見ながら、考える。
いや、本当に、今後どうしたものかなぁ……