離島鎮守府再建記   作:フェレッ党

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第9話 調査隊3

 

 午前中は状況説明という名の雑談で終わり、昼食は宮君が連れてきた調査隊のほうで作ってくれたものをいただいた。久々の銀シャリと味付けの濃い料理は旨かった。

 その後、軍医による診察を受けた。不要だと思ったけど、普通の生活を送っていなかったのだから受けなさい、と宮君に圧をかけられた。

 大和達は健康。一方俺のほうは、自覚症状こそ出ていなかったけど、そろそろ体調を崩しそうなところまでは来ていたらしい。栄養をとってゆっくり休めば問題ないとの診断だった。

 食料も届いたので、バランスのいい食生活は約束されている。つまり健康(予定)ということなので、すぐに仕事をしてもヨシ!

 調査はある程度は俺のほうでもやっていた部分もあり、それらのメモを提供した。あちらはあちらで調査項目が色々とあるらしく、調査隊のほうで疑問がある場合は、その都度答える形だ。

 各施設は直接立ち入り、状況を確認してもらう。証拠の写真を撮ったり、測量したりと結構忙しくなりそうだ。

 ちなみに妖精さん達に頼んで、調査隊の監視をしてもらっている。宮君は信用できても、彼が連れてきた調査員等は横須賀本鎮守府の人間だ。用心に越したことはない。

 鎮守府の被害状況確認以外にも、今までの生活の聴取も行われた。といっても、俺と大和、吹雪の3人しかいない。俺は宮君同伴のもとで調査員から、大和達は宮君が連れてきた艦娘達からの聴取だ。

 生活のために作ったあれこれに感心されたり呆れられたりしたけど、特段問題はなかったと思う。大和達も仮宿舎を中心に聴取や設備の確認を受けていたようだ。

 今日のところはおおまかな把握を、ということで、本格的な調査は明日以降となった。

 

 初期調査の間に救援物資が荷下ろしされた。

 鎮守府運営に必須の資源、食料、生活用品、医療品等々。予定されていた鎮守府の規模に合わせた「当面の量」だったので、資源以外は余り気味になりそうだ。今後、艦娘が増えることを考えれば、悪くならない物はそのまま保管しておけばいいか。

 修復しておいた倉庫に運び込まれたそれらを見た時は、一安心した。これで毎日の食料調達は不要になったわけだ。酒や甘味といった嗜好品があったのもありがたい。生活用品も、女性用の衣類があって助かった。大和は裁縫を楽しんでたけど、負担といえば負担だったろうから。

 でも今後、きっちり補給が来るかは分からない。補給のみに頼らない体制は、今後も維持していこう。特に食料。やはり生け簀は作るべきだな、うん。妖精さんに相談だ。

 

 

 

 そんなわけで夜。夕食も手配してもらった。これが普通なのに、自分で調理しないことに違和感が。大和と吹雪も手伝ってくれたとはいえ、今日までの食事は大半が俺担当だったからなぁ。

 美味しくいただき、今は自由時間。宮君達と雑談中。

 ちなみに宮君が連れてきた艦娘達が夜間の哨戒に出てくれている。妖精さん達の監視網もあるけど、念のためということで。

 そんなわけで、ここには日向、那智、正規空母の加賀がいる。哨戒に出てくれたのは矢矧、初月、それから駆逐艦の陽炎だ。

「今日の下見から判断して、調査っていつまでの予定?」

 湯飲みに日本酒を注いでやって宮君に尋ねる。つまみは宮君の要望で、俺が干した魚を焼いたものだ。

「長くて1週間見込みです。その間に要望をとりまとめて……いましたね。追加があればそれまでに教えてください。全て通るかは分かりませんが、まあ、やりようはあります」

 フフフと笑う宮君。この儚げ美形は時々こんな腹黒顔をする。知ってるのは同期でも数名だ。これもまた、信頼の1つの形なんだろう。

 1週間か。だったらあの件、お願いしてみようか。

「その間、大和と吹雪を預けていいか?」

「提督!?」

 日向達と話していた大和の驚く声が聞こえた。なんか、悲壮な表情なんだけど。何故だ。

「よその所属の艦娘と親交を深めるよい機会だろ」

「ですが、提督の補佐は……」

 吹雪の指導で、大和は初期艦としての知識は獲得済だった。つまり秘書艦としてもやっていける状態にある。提督としての仕事なら、いてもらったほうがいいんだけど。

「今はそっちの割合がほとんどなくてな。いや、あるにはあるんだけど、こっちの畑が主になるから、単独で問題ないというか、今の大和達には手伝えない」

 皆が首を傾げる。変わらないのは宮君だけだ。

「知らなかったのですか? 彼は士官学校の経理科卒なのですよ。しかも次席」

 艦娘達の驚愕の視線が一気に注がれた。そういや大和達にも話してなかったっけ。

「卒業の3ヶ月くらい前だったか。それまで何かの気配でしかなかった妖精さんが、急に見えるようになってな。そこで選択肢がなくなったわけだ。卒業間際だったからそのまま経理科を卒業して、少尉候補生になった。経理畑がいきなり艦娘提督なんてできるわけないから、民間登用の艦娘提督と同じ促成課程を経理科在籍中に受けさせられてからの合流だよ」

 今思い出しても無茶な流れだと思う。既に軍に入っていたという意味では民間登用よりはマシだったけど。

「というわけで、しばらくは鎮守府運営の前に主計のお仕事だから大丈夫。たまには顔を見せに来てくれると嬉しいが」

 助手が不要でも、会えないというのは寂しいので、そう言っておく。

「……お邪魔に、なりませんか? 手伝えることもないのに……」

「なるもんか。落ち着ける時間は必要だよ。それに、足手まといだから離す訳じゃないんだ」

 しょぼんとして俯いていた大和が顔を上げた。

「そちらはそちらで、今のうちに学べることを学んでこいってことさ。それで、今後の鎮守府運営を助けてくれ。こっちの知識が欲しいなら、落ち着いた頃に俺が教えるから。業務として携わることはなくても、知っていれば役に立つことはあると思うし」

 というか、主計のことは知っていてほしいとすら思ってる。金も物も有限なのだ。あれもこれも欲しいと言われたって、すぐに手に入るわけじゃないんだぞ。

「はいっ! 大和、励みます!」

 ようやく大和が笑顔を見せた。うん、元気になったなら結構。やっぱり大和には笑顔が似合う。

「そんなわけで、大和と吹雪に色々と教えてやってくれるか?」

 日向達に目を向けると、彼女らは宮君を見た。そういや宮君の承認がまだだった。

 彼が頷いたのを見て、日向達が俺に頭を下げた。

「我が君の親友からのご依頼、謹んでお受けいたします」

 親友かぁ……いや、その前に我が君、って、まあ、ある意味じゃ間違ってないのか。何だろう、大和に通じる何かを感じる……

「さて、それじゃそのお礼も考えなきゃな。俺にできることがあればいいけど」

「それでしたら」

 す、と控えめに加賀が手を挙げた。

「ここでの食事の大半は、北星提督がお作りになっていたとか。限られた食材の中でも、不満1つない料理の数々であったと聞いています」

 え、そんなこと話したの? 2人を見ると、満足げに頷いている。そっか、本音で好評だったというならこれ以上嬉しいことはない。

「さて、今日の救援物資で、食材や調味料が届いています。となれば、それらで作られた料理は、今まで以上のものとなるのでしょう」

 期待を込めた加賀の視線。なるほど、そういうことか。でも、そんなもんでいいの?

「だったら、明日の晩は俺が作ろうか。何か要望があれば聞くけど」

「それはお任せします。具体的に何が得意であるのか等は分かりませんので」

「あ、でしたら。大和、チャーハンを所望します!」

 完全にお任せになると思ったら、大和が献立の1つを提案した。

「初めての夕飯が、提督のチャーハンでした。あれも十分においしかったですが、ちゃんとした材料があれば、と仰っていましたよね」

「ああ、そういえば」

 今なら材料も環境も何とかなる。あの時以上のものは作れる。ふむ、それだけだと寂しいから、おかずも何品か作るか。納品された食材を考えるなら――

「うおっ!?」

 気が付いたら、相棒が俺の膝の上にいた。それだけじゃない。今までどこにいたのか、妖精さん達の姿がちらほらと。期待を込めた眼差しと、口から垂れそうになっているよだれが、全てを語っていた。

「分かった分かった。お前達の分も作るよ」

 両手を挙げてそう言うと、相棒達が飛び跳ねて喜びを表現し、何やら言いながら部屋を出て行った。

「何て言ってた?」

「提督の完璧なチャーハンが食べられます、ばんざーい、気分が高揚します、などと言っていましたよ」

 妖精さんの声は聞こえないので尋ねると、宮君が答えた。そういや宮君、声も聞けるんだったよな。しかし最後のは……加賀似の妖精さん、あの中にいたかな?

 全員が加賀のほうを見ると、彼女は素知らぬ顔で、期待が高まります、と答えた。

 うむ、皆の期待に応えられるよう、頑張って腕を振るいますか。

 

 

 

 いい時間になったので、自由時間もお開きとなった。施設がないため、調査員達は艦で寝泊まりすることになる。宮君達も艦へ戻っていった。

 さて、こちらも休めばいいんだろうけど、確認しておくことがある。

「今日の聴取、どんなことを聞かれたんだ?」

 大和と吹雪に尋ねる。今日の出来事のすり合わせだ。情報は共有しておかねば。

「そうですね、どのような生活であったのか、ということが主で、それに伴う細かなことがほとんどでした」

「出撃に関することはいくらか聞かれましたけど、やっぱり環境や待遇のことが多かったです。部屋とかを説明しながら、都度質問を受け付ける感じで」

 大和と吹雪が答えた。

「それから……」

 言いかけて、吹雪が口を止めた。何故か頬を染め、困ったように大和を目で訴えている。何か言いにくいことか?

「あと、提督のことを」

 苦笑して、大和が代わりに答えた。俺?

「俺がどんな奴か、ってことか」

「それもありますけど、人には簡単に話せないような仕打ちを受けていないか、とか」

 ああ、そういう。命令上位者の男1人に、女の艦娘2人だ。しかも結構絶望的な状況下だったから、同じ境遇なら自棄を起こす男が出てもおかしく――ん? それだけの話なら、吹雪が言い淀む理由がないな。あれ、俺、何かやらかしてたっけ?

 今までの生活を振り返る。

 大和と吹雪に手を出した事実はないし、セクハラじみた発言や行為をしたことはない。

 部屋は連絡通路で繋がってるものの、しっかり分けている。扉と鍵はあちら側にはある。少なくとも俺があちらに踏み入ったことはない。連絡通路のお陰で、声掛けはそこでできたから。だから、俺は部屋分け後のあちらの環境がどうなっているのかを見ていない。

 風呂は毎日は無理だったけど、使える日はきっちり時間を分けた。鉢合わせなんてイベントは起きてない。

 洗濯物はあちら任せで、俺が彼女らの衣類を触ったことはない。物干し場には近づいてもいないどころか、目隠しも作ったから干してるところを見たことすらない。

 うん、パーフェクト。少なくとも俺のほうからは、だが。彼女らの目線では違うかもしれない。

「その点、何かあっただろうか?」

「いいえ、何も。視線1つすらなかった、と伝えてます」

 うん、やっぱり何もなかった。

「逆に心配になった、とも伝えましたけど」

 ……うん?

「最初の夜に、一緒に布団を使いましょうと提案したの、覚えてますか?」

「ああ」

「海から上がった時に、温めましょうかと提案したことは?」

「覚えてる……って、それ言ったのか?」

 えーと、大和達に対して劣情を抱かないというのは、いいことのはずなんだけどなぁ? それはそれで問題あるみたいに言われても、ちょっと。

 でも、あちらの艦娘から向けられる目に厳しいものはなかったし、変に受け取られてないならいいのか?

「提督、我慢してません?」

 何をだ? いや、ナニをか。

 このまま続けるとマズそうなので、真面目な話に軌道修正することにした。それが終わったら今日は寝てしまおう。

 明日から、忙しくなるし。

 

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