推しの子×BLEACH   作:ZEROⅡ

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誰かこんな感じで書いてくれと思いながら衝動的に書きました。
続きはありません。完全一発ネタです。

因みにですがBLEACH側の時系列は原作完結後です。


第一話

 

 

 

 

 

尸魂界(ソウル・ソサエティ)──其処は現世で死した人間の魂が行きつく場所であり、魂の調整者(バランサー)とも呼ばれる〝死神〟が存在する場所でもある。

 

ほとんどの死神は『護廷十三隊』と呼ばれる組織に所属しており、その名の通り尸魂界の護衛、及び現世における『(プラス)』と呼ばれる浮遊霊の保護と成仏の手助け、そしていわゆる悪霊の類である『(ホロウ)』退治などが主な仕事となっている。

死神の証である〝死覇装〟を身に纏い、己の魂の現身である〝斬魄刀〟を手に彼らは尸魂界の守護の為、死した人々の魂の安寧の為、日夜戦い続ける。

それがこの世界における死神という存在である。

 

そして現在、そんな死神達が住まう『瀞霊廷』では──

 

 

 

 

 

「みんなーー!! 盛り上がっていくよぉーー!!」

 

「「「ウオォォォォォォォ!!」」」

 

 

 

 

 

一人の少女によるアイドルライブが行われていた。

 

「ア・ナ・タのアイドル♪ サインはB♡」

 

「「「キャアァァァ!!」」」

 

「「「アイィィィィ!!」」」

 

瀞霊廷の雰囲気に合わせた和風なステージの上で歌い踊っているのは、小柄な体格で紫がかった黒髪のロングヘアーと星のように輝く綺麗な瞳が特徴的な美少女。

そんな彼女に黄色さ三割、野太さ七割の声援を送りながらサイリウムを振り回す死神達という、尸魂界の事情を知る者が見れば異様とも言える光景が広がっていた。

その原因というか、主犯はもちろんステージ上に立つ彼女。

 

 

星野アイ

護艇十三隊 五番隊 第九席

備考

死神系アイドル(自称)

 

 

それが死神少女──星野アイである。

 

「よーし! それじゃあ次の曲──」

 

「コォォラァァァーーーー!!!!」

 

ライブの盛り上がりが最高潮に達したと思われた直後、アイの声と観客の声援をかき消すほどの怒号が響き渡った。

アイがその声がした方向へと目を向けると、そこにはウルフカットで整えられた黒髪と夜空を連想させる黒真珠のような瞳が特徴的な死神の青年が、怒りの表情を浮かべて此方へと駆けて来ている姿があった。

 

「アイーー!! 仕事サボって何やってんだテメェーー!!!」

 

「やっばレンが来た! みんな解散! 逃げるよっ!!」

 

「「「おうっ!」」」

 

アイの号令と共に蜘蛛の子を散らすように慌てて逃げて行く観客達。そしてアイ自身も、死神の特殊な歩法である〝瞬歩〟を用いてその場から消えるように離脱する。

 

「逃がすか!!」

 

それに対してレンと呼ばれた青年も、同じく瞬歩でアイを追いかけて行った。

 

「もー! いいところだったのにレンのせいで台無しじゃん!」

 

「知るか! そもそも瀞霊廷内でゲリラライブとか何考えてんだ!!! また俺が各所に頭下げるはめになんだろーが!!」

 

「ガンバ♪」

 

「シバくぞ!!」

 

そんな言い合いをしながら瀞霊廷の高い屋根の上をパルクールの如く軽々と走り回り、飛び回り、時折瞬歩を使って目にも止まらぬ逃走劇を繰り広げるアイとレンの二人。

しかし時間が経つに連れて自力の差が出たのか、アイがレンとの距離を徐々に離し始めた。

 

「くっそ、相変わらず逃げ足速えーな!」

 

「院生だった頃から〝斬〟と〝走〟の成績は私の方が上だったからね!」

 

「実技以外の授業で常に爆睡こいてた奴が偉そうにすんな!! 誰が毎回試験前に面倒見てたと思ってんだポンコツ娘!!」

 

「はー? 文句があるなら追いついてから言ってみればー? やーいやーい、レンのノロマー♪」

 

「あ゛?」

 

距離が開けて余裕ができたのか、ケラケラと笑いながらそんな言葉で煽り始めるアイ。

だがその瞬間、レンの中で何かがブチりと切れ、彼は人差し指と中指のみを立てた手を構えて詠唱を口にし始める。

 

「──雷鳴の馬車、糸車の間隙、光もて此を六つに別つ」

 

「あ、ちょっ、流石に〝鬼道〟は反則じゃ……!」

 

「問答無用!! 縛道の六十一〝六杖光牢〟!!!」

 

「あーーー!!」

 

その結果、レンの指先から放たれた六つの光帯に体を拘束されたアイは、そのままレンに首根っこを掴まれてドナドナの如く連行されて行った。

 

 

夜代レン

護艇十三隊 五番隊 第十席

備考

苦労人(他称)

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

夜代レンと星野アイの付き合いは十年少しとそれなりに長い。

数百年は生きる死神にとっては短い年月かもしれないが、それでも二人にとっては長いと感じる付き合いだ。

 

切っ掛けは現世で死した者が流れ着く『流魂街』での出会いだ。

尸魂界にやって来たばかりで右も左も分からないアイが初めて会ったのが流魂街生まれのレンであり、面倒見の良い彼が彼女の世話を焼き始めたのが二人の始まりである。

 

もっと言えば、自由奔放なアイに振り回される苦労人レンの日常の始まりでもあった。

 

それから訳あって二人には霊力があると分かり、とある人物の推薦で死神の養成機関である『真央霊術院』に入学したり、そこを飛び級で僅か三年で卒業という快挙を成し遂げたり、五番隊に配属されてすぐに席官という幹部相当の座に就いたりなど怒涛の年月を、二人は変わらず共に過ごしていた。

 

そして現在──五番隊隊舎にある仕事部屋にて。

レンに捕まったアイは、畳の上で正座しながら仁王立ちの彼に説教を受けていた。

 

「……で、言い訳があるなら聞くが?」

 

「すっごく楽しかった!」

 

「感想を聞くとは言ってねぇ」

 

仕事をサボった上に瀞霊廷内で白昼堂々ゲリラライブを開催するという暴挙を成した彼女は数十分にも及ぶ説教を受けたにも関わらず、満面の笑顔で全く反省の色が見えなかった。そんなアイの余りの無敵っぷりにレンは呆れたように深い溜め息をつき、がっくりと肩を落とした。

 

「アイ、お前が現世のアイドルとやらにハマってるのは知ってたが、その真似事までやるか普通……しかもやたら完成度高けーし」

 

「やっぱり!? いやー私って死神だけじゃなくてアイドルとしての才能まであるなんて、もうこうなったら尸魂界初の死神系アイドルとして本格的にデビューしちゃう!? もちろんマネージャーはレンで!!」

 

「調子乗んな」

 

よっぽどライブが楽しかったのか興奮気味にまくし立ててくるアイの話を、レンはばっさりと切って捨てる。

 

「つーか、あのステージとか設備はどっから調達してきたんだ?」

 

次いでレンが口にしたのはそんな疑問。

突発的に行われたゲリラライブにしてはステージもマイクやスピーカー等の音響機材も充実していたし、観客も目測で百人以上は入っていた上にほぼ全員がサイリウムを所持していたので恐らく事前に告知もしていたのだろう。流石にそんな規模の設備やそれに掛かる費用をアイ一人で用意したとは到底思えなかったのだ。

 

「えっとね、九番隊副隊長の岬さんと二番隊副隊長の盆前田さん、それから十二番隊のみんなが手伝ってくれたんだー♪」

 

「檜佐木副隊長と大前田副隊長な。しかも技術開発局まで……なんつー人達を味方に付けてんだ」

 

片や『瀞霊廷通信』と呼ばれる情報誌の編集長、片や宝石貴金属工場の社長、そして尸魂界における機械的技術を一手に担っている『技術開発局』こと十二番隊の面々。広報、資金、機械技術を完璧にカバーできる恐ろしい布陣が完成していた。

更に恐ろしいのはアイ自身が狙って彼らを味方に付けたのだろうという事だ。天然で抜けているように見えてこういった所は割と計算高く抜け目ないのが彼女なのだ。

 

「人の名前も覚えられないアホのくせに小賢しいな……」

 

「なんか急に悪口言われた」

 

つい思った事をそのまま口にしてしまったがレンは謝らない。

とりあえず先の副隊長二人の所業は各隊の隊長に報告し(チクっ)ておこう。あわよくばそのままゲリラライブの責任を全部押し付けてしまおうと心に決めた。レンもレンで抜け目ないのである。

十二番隊? あそこは突いたらとんでもないモンが飛び出してきて最悪実験台コースだから無視する事にした。

 

「とにかく、満足したんならサボった分の仕事を片付けろ。未処理の書類がかなり溜まってんだぞ」

 

「うえー……」

 

そう言ってレンが指差す先にあるのは、仕事机の上に積み上げられた書類の山々。全てアイのサボりが原因で出来上がったものだが、デスクワークの類が苦手な当の本人はげんなりとした表情で書類の山を眺めていた。

 

「自業自得だアホ。手伝ってやるからさっさと取り掛かれ」

 

「ありがとうレン!! 好き!!」

 

「はいはい」

 

「じゃああとよろしくねー」

 

「待てコラ」

 

シレっと出て行こうとしたアイの首根っこを即座に捕まえたレンは、そのまま彼女の体を持ち上げて逃がさないようにする。

 

「何当たり前のように押し付けようとしてんだ! 手伝うってのはそういう意味じゃねぇぞ!」

 

「ぶー」

 

「ぶーじゃねぇよ! 自分の仕事は自分でやりなさい!」

 

「やだっ!!」

 

「コイツとうとう正面切って拒否りやがった!? 嘘だろ!?」

 

首根っこを持ってぶら下げられた状態で駄々をこねるようにジタバタするアイに、逃がすまいとしながら怒鳴るレン。

そんな状態で二人が言い合いながらギャイギャイと騒いでいると……

 

「失礼します! 星野九席、夜代十席!」

 

「「!」」

 

部屋の障子の向こう側から聞こえてきた声に、言い合いをピタリと止める二人。見ると障子には伝令役と思われる死神隊員の影が映し出されている。

そしてその影の主は跪き、畏まった口調で要件を声高々に告げた。

 

「平子隊長がお呼びです! 至急、隊首室までお越しください!!」

 

そう告げられたアイとレンは、揃ってお互いの顔を見合わせたのだった。

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

伝令から招集命令を受けた二人は、とりあえず仕事を後回しにしてすぐさま五番隊隊長のいる部屋へと足を運んだ。

 

「失礼します隊長。夜代及び星野両席官、招集に応じ参上致しました」

 

「おお、入ってええでー」

 

レンが畏まった口調で障子の向こう側へ告げると、それに反してフランクな関西弁が返ってきた。

その声に従い、障子を開けて入室するレンとアイ。そんな二人を出迎えたのは、執務机に座っている金髪のおかっぱ頭とスラリとした長身が印象的な男性と、その傍らに立つアイと同じくらい小柄な黒髪ショートヘアで茶色の瞳と太めの眉が特徴的な可憐な少女だった。

 

「平子隊長、雛森副隊長、お疲れ様です」

 

「お疲れ様でーす♪」

 

礼儀正しく五番隊隊長と副隊長に挨拶するレンと、対照的に無邪気な態度で挨拶するアイ。対して隊長である男性──平子真子は気さくに右手を軽く振りながら言葉を返した。

 

「お疲れさん。急に呼びつけてスマンなぁ」

 

「いえ。それより隊長、アイが独断で行ったゲリラライブの件、すみませんでした」

 

要件の前に、まず最初にレンが謝罪しながら平子に頭を下げた。それに対して平子は一瞬目を丸くしたが、すぐに可笑しそうな笑みを浮かべた。

 

「あーかまへんかまへん、そう畏まんなや。その件に関して報告は聞いとるけど、特に大きな問題にはなってへんし、そう目くじら立てるほどの事やあらへんやろ。他の隊長連中も同意見や」

 

「そう…ですか……」

 

それを聞いて、特にアイに対して厳罰等が下らないと判断したレンはひとまず安心してホッと息を吐く。

 

「レンも難儀なやっちゃなぁ。今回の件には関与してへんねんからそこまで気ィ張らんでええやろ」

 

「ははは、アイが起こした問題はどの道全部のシワ寄せが俺に来るんで遅かれ早かれですよ」

 

「おおぅ、そうか…相変わらず苦労しとんなジブン……」

 

全てを諦めたかのように遠い目をしながらそう語る部下を見て、平子は割と本気で引いていた。

 

「せやけど……」

 

「?」

 

そこで言葉を区切ったあと、平子はそっとある方向を指差す。その指に釣られるようにレンもその方向へと視線を向けるとそこには……

 

「桃ちゃーん、私のライブどうだった~?」

 

「ふふ、とっても良かったよ。でもねアイちゃん、次からは無断でやらずにちゃんと許可を取ろうね?」

 

「はぁい♪ 次は桃ちゃんも一緒にやろ~」

 

「それは遠慮したいかな」

 

副隊長──雛森桃に甘えるように抱き着いている元凶(アイ)の姿があった。

抱き着かれている雛森も優しい笑顔でやんわりと注意を促しながらそれを受け入れており、背丈が近い事もあって傍から見たら仲の良い姉妹に見えなくもない。

 

「当のアイ本人はなーんも気にしてへんみたいやけどな」

 

「(この野郎……!!)」

 

ビキリと額に血管を浮かべて能天気な彼女を睨みつけるレンだが、それに気づいていないアイには効果が無かった。

 

「ほな──そろそろ本題に入ろか」

 

「「!」」

 

そう告げた瞬間、平子の気さくな態度が一変し、五番隊を背負う隊長としての顔つきへと変わった。

同時にピリっとした空気が部屋を支配する。それを感じ取ったレンはすぐさま表情を引き締め、雛森から離れたアイも再びレンの隣に並び立って姿勢を正した。

 

「二人を呼び出したんは他でもない、現世での任務に就いてもらう為や」

 

「現世での……駐在任務ですか?」

 

現世での任務と聞いてレンの頭に浮かんだのは、現世にある特定の地域に駐在派遣されて彷徨う浮遊霊の保護やそれらを尸魂界に送る〝魂葬〟等を主目的とした、主に死神になりたての新人隊士が就く事が多い任務だ。レンとアイは入隊してすぐに席官入りしたので経験した事は無いが、何故今更? という疑問符を浮かべた。

 

「まぁそれも一応任務内容には含まれとるけど、目的はまた別や」

 

「というと?」

 

「ジブンらにやってもらいたいんは、ある人間二人の監視と調査や」

 

「「!」」

 

平子から告げられた任務内容に、レンとアイは揃って目を見開いた。

基本的に尸魂界や死神が人間相手に干渉する事は無い。過去にそういった事例はあるにはあるが、それはその人間達が尸魂界(こちら)側に干渉できる極めて特殊な者達だったからに過ぎない。にも関わらずそういった任務が下りてくるという事は、その対象となった人間も特殊な存在という事になる。

 

「事の発端は十二番隊の中で、現世を覗くんが趣味の奴がおってなぁ。そいつが妙な魂魄反応を持つ人間を観測したらしいんや」

 

「…………」

 

レンは色々思うところはあったがとりあえずグッと言葉を飲み込んで話の続きを聞く。

 

「詳しく調べた結果、そいつらは極めて異例な魂魄の持ち主やっちゅう事が判明したんや。ほんですぐに人員を派遣して調査する事になって、ジブンら二人に白羽の矢が立ったっちゅう訳や」

 

「はぁ……話は分かりましたが、その人間っていうのは一体どんな……?」

 

〝転生者〟──暫定的に俺らはそう呼んどる」

 

「転生者?」

 

「?」

 

意味としては理解できるが、日常ではあまり耳にする事は無いその言葉にレンは疑問符を浮かべ、その隣ではアイも首を傾げている。

 

「言葉の通りや。死んだ人間の魂が別の人間に宿って生まれ変わったっちゅうこっちゃ。ただし……此処、尸魂界を介さんとな」

 

「なっ!!? それって……!」

 

「???」

 

平子が言わんとしている事を察したレンは驚愕の声を上げる。そしてアイは、首を右へ左へと傾けていた。

 

「……アイ、ちょっと尸魂界における魂魄について説明してみぃ」

 

「うえぇ!?」

 

突然平子にそんな話を振られたアイは肩が跳ね上がるほど驚嘆し、次第に「あー…えー…と……」と視線を右往左往に泳がせて狼狽えていた。

 

「レ…レン~……」

 

「アイ、ちゃんと真央霊術院で習って……いやそういえばずっと寝てたなお前」

 

「アイちゃん……」

 

死覇装の袖を掴んで泣きついてきたアイにレンは呆れ、それを見ていた雛森は苦笑を浮かべていた。

 

「……レン」

 

「うす」

 

平子にため息交じりに名を呼ばれ、その意図を察したレンは何も分かっていないアイに説明する。

 

「現世で死した人間の魂魄は基本的に尸魂界か地獄のどちらかに送られる。後者の方はよく知らんから割愛するが、尸魂界へやって来た魂魄は〝霊子〟によって霊体が構築され、流魂街へと送られる。ここまではいいな、アイ?」

 

「うん!」

 

「そして俺たち死神を含めた霊体が死ぬと、それは無数の霊子となって尸魂界を循環する霊子の一部となる。やがてそれが現世に解き放たれて、新たな生命の魂になる。その繰り返しが俗に言う輪廻転生だ」

 

「ふむふむ」

 

「つまり魂魄は現世と尸魂界を常に廻り続けている。たまにその輪廻から外れてしまう魂魄もあるが、それはそこまで大きな問題にならない。今回の件で問題なのは、本来尸魂界に来るべきだった魂魄が輪廻を外れただけじゃなく、そのまま新しい生命に宿ってしまったという事だ」

 

「? えーと……?」

 

「……死んだ霊体が崩れる際、魂魄が持つ記憶や人格等の情報も含めて霊子に還る。いわゆるリセットだな。これで何もかも真っ新な状態になった魂魄が現世で生まれ変わるんだ」

 

「なるほどー!」

 

「さて問題だ。霊子に還らず、記憶や人格の情報を持ったままの魂魄が新しい生命に宿ってしまった場合、どうなると思う?」

 

「……………あ、前に生きてた頃の記憶が残ったまま生まれ変わっちゃったってこと?」

 

「正解。それが今平子隊長が言っていた転生者の事だ」

 

「まぁそういうこっちゃ」

 

レンの説明が終わったのを見計らって、再び平子が任務の詳細の説明する。

 

「ジブンら二人には現世に赴いて、その転生者二人の監視及び調査をしてもらいたいんや」

 

「しかし隊長、そういった調査は俺達より十二番隊の方が適任なんじゃ……」

 

「アホ。この件を十二番隊の連中に任してみぃ、マユリの奴がどんな手段に出るか分かったもんやあらへんぞ」

 

「あー…まぁ……」

 

「特殊な魂魄を持っとること以外は普通の人間やからな。下手な真似はでけへんねん」

 

「確かに」

 

平子の妙に実感の籠った言葉に、レンは納得する。

十二番隊隊長及び技術開発局局長は自他共に認めるマッドサイエンティストだ。研究の為なら倫理感など持ち合わせていないし、自身を含めてこの世の全ては自分の研究材料と素で考えていそうな人物だ。件の転生者の件も彼に任せてしまえば、平気で現世から誘拐してきて研究材料にしてしまうだろう。

 

「桃」

 

「はい。これが今回の調査対象の資料だよ」

 

平子が目配せをすると、それを受けた雛森がレンとアイに調査対象二人分の情報が記された数枚の資料を手渡す。

それを受け取った二人は、対象の簡単なプロフィール等の項目に目を通していくが、その中で一番目を引いたのは『名前』の部分だった。

 

「これは……凄い名前ですね。これでこう読むのか」

 

「キラキラネームっちゅうやつやな。現世の人間の感性にはたまに着いていかれへん時あるわ」

 

 

【星野愛久愛海(アクアマリン)

【星野瑠美衣(ルビー)

 

 

それが調査対象である転生者二人の名前だった。

この二人は双子の兄妹で、資料には顔写真も添付されていた。

兄のアクアマリンの方は整った顔立ちにクセのある金髪と蒼い瞳が特徴の青年で、その妹のルビーの方は可愛らしい容姿に長い金髪とピンク色の瞳を持つ美少女だった。

 

「兄妹揃って転生者なのか……にしても星野ってお前と同じだな、アイ。…………アイ?」

 

レンが呼んでも反応が無いのでふと横に視線を視線を向けると、アイの様子がおかしい事に気づいた。

 

「………!! ………………!!」

 

歓喜、悲痛、愛情、困惑……その他にも様々な感情が複雑に入り混じったかのような表情で今にも泣きそうな顔で資料を凝視するアイ。

 

「おい! アイ!!」

 

「っ……!? え、あ、なに?」

 

それを見て咄嗟に彼女の肩を強く掴んで名前を叫ぶレン。するとアイは一瞬ビクリと体を震わせたあと、困惑しながらもようやく顔を上げた。

 

「いや、大丈夫か? 顔色悪いぞ」

 

「え、そう? 平気だよ? いやーこの双子キレイな顔してるからつい見入っちゃったんだよねー」

 

「…………お前」

 

「アイ」

 

レンの問い掛けに対し、明るく笑いながら返答するアイ。

明らかに何かを誤魔化そうとしている彼女の態度にレンが続けて言葉を発そうとした瞬間、それは平子からの鋭い声色を帯びた声によって遮られた。

 

「──行けそうか?」

 

真っ直ぐと彼女の眼を見据えながら発せられた平子からの短い問い掛け。静かだが、隊長らしい強い圧が込められた言葉。

それを受けたアイもまた、先程までの誤魔化すような笑顔をスッと引っ込め、目を逸らさずに答えた。

 

「うん、行けるよ」

 

短い返答。しかしその言葉には一切迷いの無い強い意志が込められていた。

そしてその言葉を口にした際のアイの両目には、燦然と輝く星の光が宿っていた。

 

「……そうかい」

 

それを聞いた平子は薄く笑いながら頷くと、続けて視線をレンの方へ向けた。

 

「レン──頼んだで」

 

「分かっています」

 

平子のその言葉に込められた意図を瞬時に察したレンも、力強く頷いて返した。

 

「出立は三日後や。それまでに準備やら引き継ぎやらを終わらしときや。以上。ほな解散」

 

そう締めくくるように平子は改めてレンとアイの二人に告げたのだった。

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

その後、隊首室を後にしたレンとアイの二人は揃って五番隊隊舎の廊下を歩いていた。

部屋から出てしばらく歩いていると、ふと立ち止まったレンがそっと彼女の名を呼んだ。

 

「アイ」

 

「んー?」

 

「平気か?」

 

「なにがー?」

 

「恍けんな、わっかりやすい誤魔化し方しやがって。バレバレだ」

 

「……えへ、やっぱり?」

 

そう答えたアイの顔は笑顔だが、どこか憂いを帯びたものだった。

 

「あの双子の事か?」

 

「うん……私もよくわかんないんだどね」

 

そう言ってアイが語ったのは、渡された資料で調査対象である双子の顔写真を見た瞬間の事だった。

 

「あの時、色んな感情が沸き上がってきたの。嬉しい…悲しい…愛しい…苦しい…それが私の中で混ざってぐちゃぐちゃになっちゃって…なんでか泣きそうになっちゃって……もし現世に行ってあの双子に会う事になったらって考えると……ちょっと怖いな」

 

「……そうか」

 

弱々しく吐き出すように語られたアイの話を、レンは静かに聞いて受け止める。

 

「じゃあ今回の任務はどうする? 止めとくか?」

 

「……ううん、大丈夫。さっき隊長にも行けるって言っちゃったし、会うのは怖いけど……会いたいって気持ちがあるのも確かだから。それに──」

 

そこで言葉を区切ると、アイはレンの顔を真っ直ぐと見据えながら、覚悟を決めた表情で言った。

 

「あの双子に何かあるなら、私が何とかしなくちゃいけない──そんな気がするんだ」

 

「──ハッ、そこまで言えるなら大丈夫だろ」

 

その言葉を聞いたレンは安心したように小さく笑みをこぼしながら、優しく諭すように告げた。

 

「好きにやれ。いつも通り、尻拭いは俺がやってやる」

 

「レン……!」

 

レンからの頼もしい言葉に、アイは花が咲いたような笑顔を浮かべたのだった。

そうしていつもの調子に戻った二人は、再び廊下を並んで歩き始める。

 

「ぃよーし! そうと決まったら、現世行きの準備をしないと! とりあえず買い出しに行こっか!」

 

「バカ言え。さっさと部屋に戻って溜まってる仕事を片付けるぞ。あと三日しかねぇんだからな」

 

「えー、こんな時まで仕事? レンってば大変だね」

 

「いやコレお前の仕事だからな?」

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

「ハァーしんど……損な立場やで、隊長っちゅうんは」

 

一方、レンとアイが去ったあとの隊首室では、ぐったりとした様子の平子が愚痴るようにそう呟いていた。

 

「隊長……アイちゃん、大丈夫でしょうか?」

 

「ま、大丈夫やろ。本人も行ける言うとったし、いざとなったらレンも居るしな。それにしても──」

 

心配そうな雛森にそう返しながら、平子は手元の資料に視線を落とす。

 

「これが何モンかの陰謀やとしたら、悪趣味やなぁホンマに」

 

眉を顰めてそう呟いてから平子は資料を放るように手元から離し、放られた資料はパサリと音を立てて机の上に広がった。

 

それはレンとアイに渡されたものと同じ双子に関する資料だが、それには二人に渡されたものからは意図的に抜かれた『ある項目』が記載されていた。

 

 

 

 

 

【家族構成】

父:不明

母:星野アイ(故)

 

 

 

 

 

 

推しの子×BLEACH

【輪廻双星偏】

 

 

 

 

 

 




続かない。


以下簡単な主人公設定


名前 :星野アイ
性別 :女
職位 :護艇十三隊 五番隊 第九席
身長 :151cm
体重 :40kg
斬魄刀:■■
解号 :【■れー】
詳細 :主人公その一にして本作のキーパーソン。ご存じ完璧で究極のアイドルだが、本人にその記憶は無い。これは死神は生前の記憶を持たないという公式設定に基づいたもの。たぶんめっちゃアクアとルビーを曇らせる不穏な子。


名前 :夜代レン
性別 :男
職位 :護艇十三隊 五番隊 第十席
身長 :175cm
体重 :68kg
斬魄刀:■■■
解号 :【■れー】
詳細 :主人公その二。アイに振り回される補佐的ポジション。たぶんめっちゃアクアとルビーから睨まれる不憫な子。




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