来年も推し鰤を宜しくお願い致します!
そして来年こそ推し鰤増えろーー!!!
斬った虚…デモンコマンダーの消滅を確認し、星妃愛の始解を解いたアイは一刀に戻った斬魄刀を納刀する。
その際の刃の穢れを払うように空を切ってからゆっくりと鞘に納める一連の動作は、見る者が見れば惚れ惚れするほどの所作だった。
「終わったよー」
「いや早えーよ」
そのまま軽い足取りでレンのところへ戻ると、未だに怪我人の治療中である彼からツッコミを入れられた。
前衛と後方支援に分かれて戦闘を開始してからほんの一分かそこらで終わってしまったのだから、そのツッコミも当然である。
「フフーン♪ 私が本気を出せばこんなもんだよ!」
「そうだな。その実力を最初から発揮してたらアクア達もこんな目に遭わなかったかもな」
「うぐっ……ゴメンナサイ……」
得意気に胸を張るアイだったが、レンに痛いところを突かれて即座に消沈する。彼らを危険に晒した自覚はある為、そこは素直に謝罪した。
そんなアイの様子を見たレンは、フッ…と薄く笑う。
「冗談だ。何はともあれ一件落着したんだ。気にするなとは言わねェが、引きずり過ぎんなよ」
「……うん」
レンの励ましに、少し気が楽になったのか顔をほころばせるアイ。
そしてそんなやり取りをしている間にレンの治療は終わり、大怪我を負っていたルビーとかなの傷は綺麗さっぱり無くなって完治していた。
「さて、あとは……」
最後の仕上げとばかりにレンは死覇装の懐から記換神器を取り出して治療した二人の顔に近づけると、躊躇いなく引鉄を引いた。
──ボンッ!!──
「ふぎゃっ!?」
「にゃっ!?」
それによって発せられる破裂音と煙を浴びて二人から悲鳴が上がるが、顔を顰めるだけで目覚める様子は無い。
「それいる?」
「念の為だ」
一時的に霊体となったアクアとは違い、ルビーとかなの二人は虚の姿を見た訳ではないが、一応何かに襲われたという記憶は消しておいた方が良いだろうという判断だ。
「これでよし。あとは…空間凍結が解ける前にアイの義骸の回収と、巻き込まれて壊れた建造物とかの修復と、他に被害に遭った人間や魂魄が居ないかの確認だな。それが終わったら隊長や浦原さんへの報告と……」
「うえ~やることがいっぱいだぁ~」
「それも俺達の仕事だ。サボるなよ」
「わかってるよぉ~」
虚に勝って終わりという訳ではなく、その後始末も死神の仕事である。レンが苦笑しながらやるべき事を指折り数える横で、アイが少々げんなりとした表情を見せる。
「……ところでアイ、今回現れた虚達の目的は……」
「うん…アクア君とルビーちゃんだったよ、間違いなくね」
スッと真剣な面持ちになったレンが問い掛けると、アイも同じく真剣な顔で答え、彼と合流するまでの事を簡単に説明した。
「……妙だよな。わざわざ双子を狙う理由が分からん」
そう言って腕組みをして考え込むレン。
アイの話によると、今回出現した虚…特にデモンコマンダーは、露骨に双子を狙って喰らおうとしていたらしい。しかしその点に関して、レンは引っ掛かりを覚えていた。
虚は生者死者問わず、人間の魂魄を主食として喰らう。特に霊力の強い者の魂を求める習性がある。しかし霊力を持たない双子はそれには当てはまらない…にも関わらず、デモンコマンダーは双子を喰らう事に何故か執着していた。アイいわく、配下の虚を捨て駒にして彼女を出し抜くほどに。単に偶然狙われただけとは到底思えない。
「それに妙と言えば……」
「? どうしたの?」
「さっき双子を治療してた時、変な違和感が……」
ふと、自身の広げた右手に視線を移しながらそうぼやくレン。そんな彼に対し、アイが小首を傾げながら尋ねる。
「違和感って?」
「うーん……いや、多分気のせいだろ。それよりさっさと後始末を終わらせよう」
「……ふーん」
あからさまに話を逸らしたレンに、アイはじっとりとした視線を彼に向けた。
「えーっと……そう言えば、アクア達からのスカウトを受けたんだろ? それはどうなったんだ?」
そんな視線を向けられたレンは苦し紛れに別の話題を切り出す。それはアイが双子…主にルビーからアイドルへのスカウトを受けた件だった。
「あーそれね……」
尋ねられたアイは…まぁレンには何か考えがあるのだろう…とそれ以上の追及は止めて、その話題に乗る事にした。
「話の途中で虚が襲ってきたから、まだ返事はしてないけど…………うん、断るよ!」
「そうか、断る……断るのか!?」
スカウトの話を断ろうというアイの答えを聞いて、レンは驚いた。
彼女の人となりを知っているレンは、なんだかんだ言ってスカウトを受ける可能性の方が高いと予想していたのだ。しかしそれに反してアイは断ると言った。しかもそれに対して未練は無いのか、どこか彼女の表情は晴れ晴れとしている。
相変わらず変なとこで人の予想を超えて来る奴だ…などと思いながら、レンは言葉を続ける。
「あー……いやまぁお前が決めたんならいいけどよ、何で断るんだ? アイドル好きだっただろ?」
「んー? それはね……」
理由を問われたアイは何か言い掛けたかと思ったら……唐突にレンへと歩み寄り、体同士がぶつかりそうな程のギリギリの距離で立ち止まる。そしてズイっと顔を近づけるようにレンの顔を見上げる。
「な…なんだよ?」
突然、そんなアイの行動にレンは面食らう。そしてほんの数秒間だけその状態でいると……
「……えへ♪ 教えな~い♪」
まるでイタズラが成功したかのような無邪気な笑顔で、そう言い放った。
「は…はぁ? 何を……?」
「レンも隠し事してるんだから、これで御相子だよ~♪」
軽やかな足取りで呆気に取られているレンからさっさと離れると、アイはそのまま屋上を取り囲む落下防止用のフェンスの上にヒョイと飛び乗る。
「じゃあ私、義骸拾ってくるねー!」
そう言い残すと、アイは瞬歩で文字通りその場から消えたのだった。
「……な……なんだったんだ……?」
彼女が離れていったあと、その場に残されたレンは何がなんだか分からないまま、そう呟くことしか出来なかった。
──僅かに朱に染まった自身の顔と、ほんの少し早くなった胸の鼓動を自覚しないまま……
「いやー青春っスねぇ!」
「うおぉぉぉぃ!!?」
突如として背後から聞こえてきた陽気な声に、ビクンッ! と肩を跳ね上がらせながら驚くレン。すぐさま振り返り、その人物の名前を叫ぶ。
「う、浦原さん!?」
「ドーモ♪ お疲れ様です、夜代サン」
いつから居たのか、甚兵衛と羽織に下駄帽子というお馴染みの格好に、扇子を広げて胡散臭そうに笑う浦原喜助の姿がそこにあった。
「な、なんでここに?」
「いやね…電話の途中であんな切り方されちゃあ、これは何か一大事なのではと気になりましてねぇ。こうして様子を見に来たんスよ」
「あー…それは、すみませんでした」
そう言われてレンは、虚が出現した際に彼との通話を一方的に切っていた事を思い出したので、素直に謝罪する事にした。
「いえいえ、お二人共ご無事で何よりっス……それと、こちらが例の双子サンっスね」
チラリと、浦原の視線が床に寝かされている三人…主に双子に向けられると、その場で屈んで彼らの顔を覗き込み、フム…と何かを確かめるような仕草を見せる。
「今回虚に襲われたのはこの三人っスかね?」
「はい。襲ってきたのはデモンコマンダーと呼ばれる中型の虚で、過去に六人の死神を喰らった個体です。アイが言うには、明らかに双子を狙って襲ってきたと……」
「そうっスか……」
レンの報告を聞くと、浦原は更に双子を…というよりアクアの方を方観察するようにジッと見据えている。
「……アタリ……っスかね」
「え?」
「実を言うとアタシがここに来たのにはもう一つ理由がありましてね」
ポツリと呟くようにそう言うと、浦原はゆっくりと立ち上がらレンに対して静かに告げる。
「恐らくですが──星野愛久愛海サンは霊力に目覚めている可能性があります」
「!!」
告げられたその言葉に、レンは大きく目を見開く。
「浦原さん…何を言って……?」
「順を追って説明しましょう」
明らかに動揺している様子のレンの言葉を遮って、浦原は説明を始める。
「まずアタシは双子の調査の為に、彼らの生活圏内の至る所に『霊子式観測装置』を仕掛けておいたんスよ」
「霊子式観測装置?」
「簡単に言えば監視カメラっスね。名前の通り霊子で構築されているので、一般人には見えないようになってるんス」
「いやそれ、俗に言う盗撮ってやつじゃあ……」
「ヤダなぁ夜代サン! これもオシゴトなんで、細かい事は言いっこ無しっスよぉ! それにプライベートな所には仕掛けていませんので大丈夫ですよぉ!」
「……………」
レンの指摘に対してパタパタと扇子を振りながら誤魔化すようにヘラヘラと笑う浦原。とりあえず色々言いたい事はあったが、レンはそれをグッと飲み込んで話の続きを聞く事にした。
「それでですね、この装置は周囲の霊圧も観測出来るようになってるんスけど……ほんの一瞬でしたが、愛久愛海サンの魂魄から霊圧の爆発的な放出が観測されました。恐らく一瞬過ぎて、現場近くに居た夜代サンや星野サンでも感知が難しい程の……」
「それって……」
「ええ…原因はお察しの通り、魂魄の状態で虚に襲われて命の危機に瀕したせいでしょう」
そこまで聞いてレンはアイから聞いた話を思い出す。
彼女の話によれば、アクアは魂魄の状態でデモンコマンダーに捕まって喰われかけたらしい。正しく命の危機に直面しており、浦原の推察とも一致する。
「ただの魂魄が霊力を得る方法の一つとして、魂魄を生命の危険に晒して瞬間的に霊力を引き出させるという方法があります。所謂〝火事場の馬鹿力〟っスね。彼の身に起こったのも、同じ現象かと」
〝霊力〟とは〝霊体を動かす力〟とも言われており、爆発的に増幅された霊力が霊体を突き動かして危機から脱する…という方法がある事はレンも知識としては知っていた。これは噂程度だが、かつて霊力を失った死神代行が同じ方法で力を取り戻したとも聞いたことがある。
まさかそれが監視対象であるアクアの身に起こるとは思わなかったが。
「アタシも半信半疑でしたが、こうして直に見て確信しました。今の愛久愛海サンには霊力を使った痕跡がある」
「……それはつまり、今後もアクアは虚に狙われる可能性があると?」
今回の襲撃は不可解な点はあれど、まだ偶然だったで済ませられる。だがアクアが霊力に目覚めてしまったことで、今度は必然的にアクアが虚に襲われやすくなってしまったのではないかとレンは危惧した。
「それは現状、なんとも言えないっスね」
それに対する浦原の答えは、意外と曖昧なものだった。
「先ほど説明した方法は、確かに霊力を瞬間的且つ爆発的に得ることが出来ますが、それが魂魄に定着するかどうかはまた別の問題なんス。実際、夜代サンから見て今の愛久愛海サンから霊力は感じられるでしょうか?」
「……………」
そう言われてレンはすぐさまアクアへと視線を移し、〝
しかしレンが感知出来た霊力は、目の前にいる浦原のものと、少し離れた場所で移動しているアイのものだけで、アクアから霊力は感じ取れなかった。
「……いえ、今のアクアから霊力は感じられません」
「でしたら、今の所は大丈夫っスね。霊力が得られるか否かは、結局のところ当人の資質次第なんで。今回は危機的状況による一時的なものだったんでしょう」
「そうですか……」
浦原の結論を聞いて、レンはホッと胸を撫で下ろす。
「しかし一時的とはいえ霊力を得たのは事実なので、経過観察は必要です。稀に突然覚醒したり、日を追うごとに徐々に霊力に目覚めていく事例もありますので」
「わかりました」
結局のところアクアが霊能力に目覚めたかどうかは定かではないので、今後は監視を続けつつそちらにも気を配るという方針で話がついた。
そこでふと…レンは何か思い出したかのように口を開いた。
「あ、そうだ…浦原さん」
「はい?」
「実は…双子を回道で治療していた際に妙な感覚があって……」
「ホウ? と、言いますと?」
レンが語ったのは先ほどアイにも言い掛けた妙な感覚のこと。すると浦原は興味を持ったように彼の話に耳を傾ける。
「浦原さんもご存知の通り、回道による治療は基本的に対象の内部霊圧と術者の外部霊圧とで治癒力を高めて回復させるんです。ただこれを霊力を持たない魂魄に行う場合、外部霊圧のみでやる必要があるんですけど……その際はまず、術者の霊圧を対象の魂魄全体に浸透させるように行き渡らせて、疑似的な内部霊圧を形成してから同じように回復を図るんです。もちろん今回双子に施したのは後者の方法です」
「そうっスね。ただそれには緻密な霊圧のコントロールが求められるので、破道や縛道とはまた違ったセンスが必要なんスよねぇ」
「ええ。それで『霊圧を対象の魂魄に浸透させる』というやり方は、言い換えれば『霊圧で対象の魂そのものに触れる』のとほぼ同義なんです」
「なるほど……つまり夜代サンは、双子サンの治療を行った際に彼らの魂そのものに何かしらの違和感を感じた……ということっスね」
「はい。最初は気のせいかと思ったんですけど…さっきの霊力の話を聞いて、もしかしたら関係してるのかもと思いまして」
「フム……」
レンの話を一通り聞いた浦原は、広げた扇子で口元を隠しながら考え込むような仕草を見せる。
「因みになんスけど、どのような違和感だったかは分かりますかね?」
「そうですね……俺の主観ですが、こう──魂魄の表面全体を薄皮一枚で覆っているような感覚でした」
「!!」
それを聞いた瞬間、浦原の帽子によって隠された目が僅かに見開かれたように見えた。しかしそれも一瞬で、すぐさまパッと浮かべた笑みに隠されてしまった。
「……それはそれは興味深いっスねぇ。わかりました、アタシの方でも調べてみます」
「お願いします」
先ほどの浦原の表情に引っ掛かりを覚えたレンだが、とりあえず今は気にせずに違和感の件は彼に一任することにした。
「ところで話は変わりますが夜代サン、電話でお話していた件なんスけど」
「はい、なんで──」
「たっだいまー!!」
「しょぉぉぉぉぉおぃ!!?」
レンが浦原の話を聞こうとした直後、背後からいつの間にか義骸を背負って戻って来ていたアイが元気良く声を張り上げた。当然、それに気付かなかったレンは再び肩を跳ね上がらせて悲鳴を上げていた。
「あれ? 喜助さん、来てたの?」
「ドーモ星野サン。ええ、貴女と入れ違いで」
アイと浦原がそんな短い会話をしていると、そんなアイの頭をレンがスパーンッとハタいたのだった。
「痛ったー!!? 何で叩いたの!?」
「うるせー! どいつもこいつも人の背後に忍び寄ってから声かけんのが流行ってんのか!!」
「何の話かな!!?」
アイからしたら普通に声を掛けたつもりだったのに理不尽である。
ぶっちゃけ先ほどまでアイの魄動を捕捉していたのに、彼女の接近に気付かなかったレンの失態とも言える。
「あ、すみません浦原さん。どこまで話しましたっけ?」
「いえいえお気になさらず。アタシと夜代サンの電話の件っスね」
そう言って何事も無かったかのように浦原との会話を再開するレン。
因みにこの時…理不尽にド突かれたアイは頬を膨らませながら両手でポコポコとレンの肩辺りを殴りまくっている。
「あー…そう言えば俺に調査の一環でやって欲しい事があるんでしたか?」
浦原との通話でのやり取りを思い出しながらそう尋ねるレン。
因みにこの時…レンは殴って来るアイの額を右手で押し返して遠ざけ、対するアイは負けじと「うにゃー!」と鳴きながら両腕を振り回し、その様子を浦原は可笑しそうに眺めていた。ちょっとしたカオスである。
「ええ、まさにそれに関して何ですが……少し事情は変わりましたが、夜代サンには是非やって頂きたいことがあるんス」
「俺に出来ることなら構いませんが、一体何を?」
「単刀直入に言いましょう、夜代サン──」
すると浦原は広げていた扇子をパチンっと閉じると、その先端でレンの顔を指しながら相変わらずの胡散臭そうな笑みを浮かべながら言い放った。
「──〝恋愛リアリティーショー〟というものをご存知っスか?」
「「…………………………………はい?」」
浦原から告げられた予想外な言葉に、当事者であるレンと、それを傍で聞いていたアイはしばらく宇宙を背負ったネコのような顔になっていたという。
To Be Continued
回道による治療方についてはほぼ独自解釈です。原作でも明確にされているのが、卯ノ花さんが外部霊圧と内部霊圧を云々と一護に説明しているシーンしか思いつかなかったので。
・夜代レン
後始末を嫌な顔せずにやる苦労人。
基本的に課された任務は忠実にこなすが……
は?……恋愛……なんて??( ゚д゚)??
・星野アイ
後始末を嫌な顔してやるサボり魔。
義骸を回収して戻ってきたら理不尽に叩かれたのでずっとポコポコしてた。
アイドルにはならない模様。
え?……恋愛?…レンが?……ハ?……ハァ??( ゚Д゚)??
・浦原喜助
後始末を飄々とこなす確信犯。
双子の生活圏内にこっそり監視カメラを仕掛けてた人。本人の胡散臭さも相まって犯罪臭しかしない。しかしプライベートにはしっかり配慮しているので、どこぞの観察用の菌を感染させて四六時中覗き見る十二番隊隊長よりは良心的。
え? どっちもどっち? それはそう。
最後の最後に爆弾を投下。
・星野アクア
気絶中。
推しの子キャラからの霊能力者候補筆頭。現在要検討中。
多分今のところ霊能力持たせたら一番ヤベー奴。本当にヤベーことになるかは主人公達の頑張り次第。因みに次点でヤベーのはA.K氏。