推しの子×BLEACH   作:ZEROⅡ

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遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます!
本年も『推し鰤』をよろしくお願いいたします!


第十五話

 

 

 

 

「すみません、浦原さん……恋愛……なんて?」

 

浦原から言われた〝恋愛リアリティショー〟という言葉に理解が追い付かず、宇宙猫状態になっていたレンが何とか絞り出すような声でそう問い掛ける。

 

「恋愛リアリティショー……簡単に言えば、現世の恋愛バラエティっスね。芸能界で活動する数人の少年少女による恋愛模様を描いたテレビ番組です。因みにタイトルは『今からガチ恋始めます』というらしいですよん♪」

 

「……なる…ほど……?」

 

何故か楽しそうにしている浦原の説明を何とか咀嚼して飲み込もうとするレン。要するに若い男女が恋愛する様をテレビで放送するという、良く言えば微笑ましい、悪く言えば悪趣味な番組なのだろう。

 

この時点で物凄く嫌な予感がレンの脳裏を過ぎる。

そして……その予感は的中する。

 

「あの…まさか…俺にやってもらいたい事って……!」

 

「はい──夜代サンにはこの番組に出演して頂きます

 

嫌ですけど!!?

 

流石にこれに対してレンは声を大にして拒否した。

何が悲しくてそんな恋愛ごっこ番組に死神である自分が出演せねばならないのか、という気持ちである。

 

「えー? 出来ることなら何でもするって言ったじゃないっスかぁ」

 

「限度がありますよ! 大体何が目的でそんなもんに出なきゃならないんですか!?」

 

「それはもちろん──愛久愛海サンの護衛っスよ」

 

持っている扇子の先端で、眠っているアクアを指しながら浦原はハッキリとそう言い放つ。

 

「! アクアの?」

 

「ええ。今回の件で、双子が虚に狙われる可能性は高まりました。であれば、任務内容に彼らの護衛が付け足されるのは当然でしょう?」

 

「……ってことは、その番組にはアクアも?」

 

「はい、彼の出演は既に決まっています」

 

その言葉にレンは思わず頭を抱えた。

浦原の言い分はもっともだ。今回のようにアクア達が虚に襲われる可能性はゼロではないし、万が一にも番組の撮影中にでも襲われてしまえば、その被害は他の演者やスタッフ等の番組関係者にまで及んでしまう。ならば彼の護衛に付くのは妥当な判断とも言える。

 

「……いや、そもそもの話ですけど……俺をその番組に出演させることなんて出来るんですか? いくら浦原さんでも芸能界に干渉するのは難しいんじゃ……」

 

「その点はご心配無く。アタシの現世の知り合いに、色んな業界に顔の効く方がいらっしゃいましてねぇ……その方に協力してもらって、出演者の一枠は既に確保してもらってるんスよ」

 

「でもほら……俺みたいなシロートがテレビ番組に出演なんて無謀としか……」

 

「大丈夫っスよ。その番組の出演者は基本的にテレビ出演の経験が無い人が選ばれる傾向にありますんで、夜代サンだけが悪目立ちする心配は無いと思いますよ」

 

「くっ……!」

 

流石にその辺の手筈や調べには抜かりはないらしく、とっくに準備事態は進めているらしい。

徐々に逃げ道が無くなっていく状況にレンは焦燥感を抱く。

 

「はい! 喜助さん!」

 

「はい! 星野サン!」

 

するとそこへ、アイが何時ぞやのノリで挙手すると、浦原が同じノリで彼女を扇子で指す。

 

「それってホントにレンが出演しないとダメなの? どうせ私達の姿は見えないんだから、撮影場所の近くで待機してるだけでも良いんじゃないかな?」

 

アイが口にしたのは、レンを擁護するかのような言葉。彼女であれば『面白そう』や『むしろ私が出る!』とでも言い出すのではないかと思っていたレンは意外そうに目を見張った。

 

「アイがまともな事言ってる」

 

喜助さん、やっぱりレンは番組に出たいんだって

 

ウソウソ冗談ですアイさん! 見捨てないでください!

 

レン、思わず本音を漏らしてしまいアイの反感を買ってしまうというポカをやらかすも、すぐさま縋るように謝罪したのでなんとか事なきを得た。

そんなコントのようなやり取りを面白そうに眺めつつも、浦原は彼女からの問いに答える。

 

「星野サンの言うそれも一つの手ですが……アタシとしては、彼と一緒に出演する事をオススメします」

 

「……と言うと?」

 

「平子サンも言ってたじゃないっスか、双子の信頼を勝ち取れと。同じ番組で共演すれば、グッと距離を縮めるチャンスもありますよ」

 

「……………」

 

確かにレン達の隊長である平子も、転生の真相を知る為には双子からの信用を得る必要があるとは言っていたが、それでも絶対に出たくないというのが正直なところだ。

 

「あ、因みにその平子サンからも夜代サン宛に『出ろ』との隊長命令を言付かっておりますよん♪」

 

「じゃあもう実質俺に拒否権ねェじゃん!! 何だったんだこの時間!!!」

 

「えっと……レン、どんまい」

 

とっくに外堀が埋め尽くされて出演する道しか残されていなかったことに、レンは声を荒げて叫んだ。そんな彼に対し、アイは気休め程度の励まししか出来なかった。

 

「……………代わりにアイが出演するっていうのは?」

 

「星野サンは瑠美衣サンの護衛を担当してもらうのでダメっスね」

 

往生際悪くそう提案するレンだが、浦原にあっさりと却下されてしまう。

 

「あーもう、分かりましたよ出れば良いんだろクソが」

 

とうとう観念して半ばヤケクソ気味に番組出演を受け入れるレン。同時にいつか絶対このゲタ帽子の不審者をぶん殴ろうと心に誓った。

 

「それと最後に、夜代サン…出来れば星野サンにもやっておいて欲しい事があるんスけど」

 

「まだ何か?」

 

「そう睨まないでくださいよぉ、必要なことなんスから」

 

これ以上何をさせる気だコノヤロウと言わんばかりの視線を飄々と回避しながら、浦原は告げる。

 

「実はっスね──」

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

翌日……陽東高校一年D組の教室。

 

「ハァァ……」

 

気怠そうに溜息を付きながら登校するレン。正直これからの事を考えると途轍もなく気が重いので今すぐ帰って不貞寝したい気分である。

そんな事を考えながらすれ違うクラスメイト達に軽い挨拶を交わしながら自分の席に座ると、先に登校していた隣の席のアクアに声を掛ける。

 

「ようアクア、おはよ」

 

「………………」

 

「?」

 

レンの挨拶に何故か反応しないアクア。

見ると彼は机に頬杖を突きながら何か考え事をしているのか、単にボーっとしているのは分からないが、心此処に在らずといった様子で遠くを眺めていた。

 

「おい、アクア?」

 

「! あ、ああ悪い……レンか……おはよう」

 

もう一度レンが声を掛けると、少し体をビクリと震わせながらようやく反応した。

 

「おう。なんかボーっとしてたけど、体調でも悪いのか?」

 

「………いや、夢見が悪くてな。寝不足なだけだ」

 

レンの問い掛けにそう答えるアクアだが、その前に一瞬だけ何かを言い淀んでいたのをレンは見逃さなかった。しかしそれを今問い詰めても不自然だろうと判断し、触れないことにした。

 

「そうか、気分が悪かったら保健室に行けよ?」

 

「ああ、わかってる」

 

見たところ今のアクアから霊力は感じられず、昨日の後遺症という訳でも無さそうなのでとりあえず一安心するレン。

そこでふと、レンは昨日彼らに施した記憶置換がどのように作用したのか確認しようと思い至り、何気無しを装ってアクアに問う。

 

「そう言えば昨日のスカウトの件はどうなって……うおっ!?」

 

「………………」

 

その瞬間、アクアの目が急速に死んだ。

 

「……アイから聞いてないのか?」

 

「お、おう…色々あってまだ返事してないとだけ」

 

「そうか……」

 

「えっと…なんかあったのか?」

 

死んだ目でどんよりとした影を背負うアクアに、一体どんな記憶を植え付けられたのかと心配になったレンは再度そう問い掛けると、彼は少し迷った素振りを見せたのちに重苦しく口を開いた。

 

「有馬の勧誘は上手くいったんだ。既にもうウチの事務所との契約も済ませた」

 

「へぇ、良かったじゃないか。よく役者の有馬さんをアイドルに引っ張り込めたな」

 

「そこまで難しい事じゃない。有馬は共感力が強くて圧しに弱いから泣き落としやゴリ押しが効くかなと思って試したら案の定だったんでそのまま押し切っただけだ」

 

「お、おう…そうか……割とえげつないなお前」

 

人の性格や感性を読み取って利用するという、思ったよりタチの悪い手法を使っていたアクアに、レンは感心半分ドン引き半分の感想を口にした。とりあえず彼がその内刺されないかが心配である。

 

「ああ、そこまでは良いんだ。問題はその後……アイを勧誘した時のことだ」

 

余り思い出したくないのか、アクアは眉間を押さえながら苦々しく言葉を続けた。

 

「アイの勧誘の話になった瞬間──謎のサンバ集団に襲われたんだ

 

なんて?

 

予想の斜め上を行く言葉が飛び出したことで思わず聞き返してしまったレンだが、さっさと話してしまいたいのかアクアの口は止まらない。

 

「それも山羊だかなんだかのお面を被った筋骨隆々の見るからにヤバい集団で、俺達はすぐに逃げたんだがサンバのリズムで追いつかれてサンバのダンスに巻き込まれてサンバのメロディを聞かされて………気が付いたら家に戻って来ていた」

 

「ええ……」

 

「いやわかってる…こんな話信じられる訳がないし、正直俺だって信じたくないが、ルビーも有馬も同じ目に遭ったと言っているから現実としか……普通なら通報ものだがこんな話を警察に言ったところで相手にしてもらえないことは目に見えている……けどもし奴等がまた現れたら……俺は…僕は…どうすれば……!!」

 

「よーし落ち着けアクア! 信じる信じないは別にしてその記憶は忘れた方がいい! 夢見が悪いのもそれが原因だって絶対!」

 

自分の記憶に対して変な疑心暗鬼を拗らせ始めているアクアを、慌てて宥めて落ち着かせようとするレン。彼に記憶置換を施した結果こうなってしまっているので罪悪感が半端なかった。次の報告書では記換神機の代替記憶について改善を申請しようと決意した。

 

「わ…悪い、レン」

 

「いや、気にするな」

 

レンの懸命な説得により何とか落ち着きを取り戻したアクア。

後にレンはアクアに対し、陰の闇系オーラを撒き散らしながら今にもダークサイドに堕ちそうでヤバかった…と供述した。

 

「あー…それよりアクアに相談があるんだが、いいか?」

 

「相談?」

 

突拍子も無くそう切り出したレン。

アクアに相談があるのも本当だが、レンとしてはこんな地獄みたいな話題はさっさと切り替えてしまいたいのだ。

 

「一応アイも関係してることなんだが……」

 

「詳しく聞かせろ」

 

相変わらずアイを話題に出せばチョロい男である。

そんなアクアに苦笑を漏らしながらも、レンは彼に問い掛けた。

 

 

──苺プロってモデルを募集してたりしない?

 

 

…と。

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

一方で場所は陽東高校校舎の屋上。

都内の学校では珍しく生徒の立ち入りが許可されているその場所では、二人の女子生徒の姿があった。

 

「始業前に呼び出しちゃってゴメンね、ルビーちゃん」

 

「ううん全然! それで話って何? アイちゃん?」

 

それは芸能科に所属する、アイとルビーの二人だった。

登校して教室に入ったところを、ルビーはアイに大事な話があると言って授業が始まる前に屋上に呼び出されたのだ。

 

「スカウトの話だよ。色々あってまだ返事出来てなかったから」

 

「あっそうそう大変だったよね! あの変なサンバ集団に襲われてさ!

 

なにそれ知らない。

 

「ビックリしたよねー、急にお面を被ったムキムキの人達がサンバを踊りながら襲ってきて、私達も必死に逃げたけど追いつかれちゃってさー!」

 

ホントになにそれ全然知らない。

 

「で…私とお兄ちゃんと、ついでにロリ先輩は気が付いたら事務所に戻ってたんだけど、アイちゃんはあの後大丈夫だった?」

 

「──うん、全然大丈夫だったよ! ホントあれにはビックリしたよねー!」

 

咄嗟の笑顔を浮かべながら嘘で話を合わせるアイ。幸いにもルビーにそれを悟られた様子はなく「ねー?」と朗らかに笑っている。

記換神器によって補填される代替記憶はランダムなのが玉に瑕だと聞いてはいたが、ここまでメチャクチャな記憶になるのかと、アイは内心でドン引きした。

そしてそれを「ビックリした」の一言済ませているルビーも大概図太かった。

 

「まぁその話は置いといて……アイドルになる件なんだけど」

 

これ以上この話を広げられたら大変なので、アイはすぐさま話を本筋に戻した。

そして単刀直入に結論を告げた。

 

「ごめんね…私はアイドルにならない」

 

「──え」

 

申し訳なさそうに苦笑しているアイの言葉に、ルビーは目を見張って硬直した。

 

「な…なんで?」

 

「理由としては色々とあるんだけど……一番の理由は、私はアイドルに向いてないと思ったから」

 

声を震わせているルビーの問い掛けに、アイは微笑みを崩さずに答える。

 

「そんなこと──」

 

「聞いて、ルビーちゃん」

 

否定の言葉を叫ぼうとしたルビーを遮り、アイは静かに言葉を紡いだ。

 

本当は死神の仕事や、ルビー達双子の護衛と調査の為など色々と理由はあるがそれを語る訳にはいかない。だからこそアイは、言えない理由の代わりにルビーには嘘偽りの無い気持ちで応えることにした。

 

「ルビーちゃんが私のレンへの気持ちを知った上でアイドルに誘ってくれたのは、本当に嬉しかった。アイドルが恋をしてもいいって言ってくれた時、実は結構揺らいでたんだよ。この気持ちを否定しないままでいいのなら、アイドルになっていいかもって」

 

事実、あの場で虚の襲撃が起こらなければ、アイは頷いていただろう。そう断言できるほど、あの時のルビーの言葉はアイの魂を強く揺さぶったのだ。

 

「でもやっぱりダメ。私はアイドルになれない」

 

「だからなんで……」

 

愛せないから

 

ハッキリとした口調で、アイはそう言い切った。

 

「きっとアイドルになっても私はファンの人達を愛せないし、たとえ嘘でも愛してるなんて言えないと思う

 

だって──

 

今の私が心の底から愛したいのは、一人だけだから

 

ほんのりと頬を朱色に染め、少し気恥ずかしそうに告げられたその言葉。それは間違いなく、彼女のたった一人の青年に向けた想いを表したものだった。

 

「本当にごめんね、ルビーちゃん。結局これは私のワガママなんだ。だから……」

 

謝罪の言葉を口にしながら、アイは話を聞いてくれたルビーの顔にふと視線を送ってから……ぎょっとした。

何故なら………

 

むぐぐぐぐ……!!!

 

ルビーが膨れっ面の上に、色んな感情がごちゃ混ぜになったかのような複雑な表情を浮かべていたのだ。

 

「えーと……それどういう感情なの、ルビーちゃん?」

 

アイちゃんに断られて悲しいって気持ちと、やっぱり恋するアイちゃん可愛い好き♡って気持ちと、夜代さん絶許って気持ちが私の中でせめぎ合っています……!」

 

その三つがせめぎ合うことってあるんだ

 

彼女の中で妙な感情の三竦みが出来上がっているらしい。それでも何とか自分の気持ちを整理しながら、ルビーはぽつぽつと話し始める。

 

「私はアイちゃんと一緒にアイドルをやりたいって気持ちは変わらない……けど……それがアイちゃんの答えなら、仕方ない、よね」

 

元よりルビーは無理強いするつもりはないし、嘘の愛を言いたくないという言い分も分かる。彼女自身も嘘は嫌だと思っているから。

しかしそれでもやはりアイに断られたというショックは隠しきれなかったらしく、自分に言い聞かせるように呟く彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいる。

 

そんなルビーの様子を見たアイは困ったように微笑んだ。そして……

 

「──ルビー(・・・)

 

優しい声で彼女の名を呼び、そっと寄り添うように歩み寄った。

 

「え……」

 

呆気に取られるルビーを余所に、アイは彼女の両頬を包み込むように、そっと両手を添える。

 

「大丈夫…ルビーならきっとすごいアイドルになれるよ。これから辛いことや大変なことが沢山あるかもしれないけど、私はルビーの味方だからね」

 

慈愛に満ちたかのような表情と、優しく語り掛けるかのような声色でルビーへの言葉を紡ぐアイ。

 

「ずっと応援してるよ──ルビー♪」

 

そして最後に満面の笑みを浮かべてルビーにそう伝えた。

 

「! アイ…ちゃ…!?」

 

そんなアイの顔を間近で目の当たりにしたルビーはかつての〝アイ〟の姿を幻視した。

まるで本当に憧れであり、目標であり、そして母である彼女から応援の言葉を送られたかのように感じたルビーは、感極まったようにアイの体を抱き締めた。

 

「おっと…あはは、熱烈だねぇ」

 

少々驚きつつも、アイはそれを笑って受け止めた。

 

「アイちゃん……」

 

「んー?」

 

「私、がんばる……!」

 

「うん…がんばれ、ルビー」

 

アイの肩に顔を埋めながらか細くも強く決意の言葉を口にするルビーと、そんな彼女の頭部をポンポンとあやす様に撫でながら応援するアイ。

 

そんな二人の抱擁は、始業開始のチャイムが鳴り響くまで続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだ。アイドルにはなれないけど、もしかしたら同じ事務所にはなれるかも」

 

「え?」

 

To Be Continued




新年最初の更新でした。導入がちょっと強引だったかもしれませんね。
しばらくアイがほぼメインだったので、ガチ恋編ではレンがメインになります。
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