推しの子×BLEACH   作:ZEROⅡ

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今回は新章への繋ぎ回ということもあって短めです。
代わりに本編に入りきらなかったというか、入れ所を見失った場面を『おまけ』として二本追加しています。


第十六話

 

 

 

 

 

そして時間は進んで放課後……苺プロダクションの事務所。

 

そこでは訪問者であるレンとアイ、彼らを連れて来たアクアとルビー、そして苺プロの社長であるミヤコの五人がデスクを挟んで話し合っていた。

 

「──という訳で、僕とアイをこちらの事務所で雇っていただけないかと」

 

「採用!!」

 

「早えーよ。てかお前が勝手に決めるなルビー」

 

「……話は分かったわ」

 

双子の余計なコントが入ったが、ミヤコはそれを完全にスルーしてレンから説明された内容に対して思案顔で頷く。

彼らの事情をざっと纏めるとこんな感じだ。

 

・倒産した浦々プロダクションの元社長のコネで『今ガチ』というテレビ番組に出る事になった。

・しかもコネ先の相手は大手企業の社長で番組スポンサーとして名乗りを上げているらしい。

・そんな大手スポンサーの指名なので、番組側も是非にとほぼ出演が確定。

・なので早急に芸能事務所に所属する必要が出てしまった。

・そこでアイのスカウトの件もあったのでついでに自分も雇ってもらえないかと直接交渉に来た。

 

…という訳である。もちろん話のほとんどは浦原と練った設定上のものではあるが。

 

「完全にこちらの私情で申し訳ないのですが……」

 

「事務所側としては所属タレントが増えるのは歓迎よ。経験者ともなれば尚更ね」

 

「何の実績も無いので、経験者と言えるかは分かりませんが……」

 

意外にもミヤコは二人を雇うことに前向きらしい。現在の苺プロは芸能事務所としては弱小の部類に入るので今はどんな形でも人材確保を優先しているのだろうかと、レンは推察した。

 

「ただ……ウチは今モデル業にそこまで力は入れてないし、新規で立ち上げたアイドルプロジェクトもあるから、今すぐ活動っていうのは難しいわ。もちろんこれからアナタ達を売り込んで仕事を取って来れるようにはするけど……」

 

「構いません。出演が決まってる『今ガチ』以外の仕事に関しては社長に一任します」

 

つまりは現状、所属したところでレンとアイに振れる仕事は無いという事だ。しかしそれはそれで問題無い。目的はタレントとして売れることなどではなく、死神として双子の調査と護衛の為なのだから。むしろレンとしては双子関連の仕事以外は断るか、義魂丸の疑似人格に任せるつもりである。

 

「わかりました。それから……えっと……アイ、さん?」

 

「? はい?」

 

何故か名前を呼ぶ際に歯切れが悪そうにするミヤコに、アイは返事をしながら首を傾げる。そんな彼女の反応を見て、ミヤコは苦笑しながら言葉を続ける。

 

「ごめんなさい、貴女のことはルビーから写真を見せてもらって似てる気がするなとは思ってたんだけど……こうして直に会ってみると確かに〝あの子〟の面影を感じちゃって……」

 

誰の…とは聞かない。きっとこの社長は生前の〝彼女〟とそれなりに縁が深かったのだろう。実はアイ自身も、ミヤコに対して何となく懐かしいような気持ちが少しだけ湧いてくるのだ。

 

「あはは、大丈夫ですよミーコさん! あの人に似てるって良く言われるから!」

 

「ミヤコよ。そんなところは似なくていいの」

 

「ありゃ?」

 

そんなちょっとした戯れのようなやり取りをしたあと、ミヤコは話を本題に戻す為に改めてアイに問うた。

 

「それでアイさん、貴女はアイドルとしてではなくて、モデルとしてウチに入りたいってことでいいのかしら?」

 

「うん。誘ってくれたルビーちゃんには申し訳ないけど、私はレンと同じモデルとして活動したいなって。もちろんルビーちゃんにもちゃんと話してます」

 

その話を聞いて、ミヤコはちらりと視線だけ動かしてルビーを見る。それに気付いたルビーは残念そうに笑いながらもミヤコに頷いて返した。

 

「そう……わかりました。事務所としても貴女にアイドルを無理強いすることはありません」

 

当人たちが納得しているのならと、ミヤコもそれ以上何も言わなかった。

 

「……よかったのか?」

 

すると、アクアがルビーにしか聞こえない声量でそう尋ねる。短い問い掛けだが、意図は伝わった。

 

「うん、あれだけハッキリ断られちゃったらね……しょうがないよ」

 

少々落胆したように笑いながらそう答えるルビー。

そんな妹の様子を見たアクアは、今度は自分がアイを説得してみようかと思考を巡らせる。

 

「でも…大丈夫だよ、お兄ちゃん」

 

「?」

 

「私、これから頑張ってすごいアイドルになるから。そしたら今度はアイちゃんの方からアイドルにしてくださいって言わせてやるんだから

 

「!……そうか」

 

不敵に笑って目を星のように輝かせながら、ルビーは強い決意の籠った言葉を口にする。それを聞いたアクアは、驚いたように一瞬だけ目を瞠ったあと、フッと口角を釣り上げた。

彼女達の間でどんなやり取りがあったのかは知らないが、ルビーがショックを引き摺っていないのならば大丈夫なのだろう。

だったら自分がしゃしゃり出る必要は無いかと、アクアは先ほどまでの思考を切り捨てたのだった。

 

双子がそんな会話をしている一方で、レン達とミヤコの話は進み、契約書などのいくつかの書類を手渡された。

 

「これが契約書よ。内容をよく読んで、問題無いか確認してちょうだい」

 

「レン、任せた!」

 

「自分でやれバカ」

 

「あたっ」

 

シレっと契約内容の確認を押し付けようとするアイに軽いチョップを下したあと、書類を手にしたレンはその内容を確認していく。

 

「すみません、内容のこの部分についてなんですが……」

 

「ああ、それはね……」

 

時折ミヤコとの契約内容に関する質疑応答を繰り返しながら書類に記された文言を細かくチェックしていくレン。そして問題無しと判断し、レンとアイは揃って契約書にサインを書き、印鑑を捺した。

 

「はい、これでお二人は苺プロ所属のタレントになりました。ようこそ、歓迎します」

 

「「よろしくお願いします」」

 

こうして契約書を提出したレンとアイの二人は正式に苺プロダクションの一員となった。

 

「やったー! よろしくアイちゃん!」

 

「うん、ルビーちゃんもよろしくね~♪」

 

すると、アイの採用が決まったことを自身のことのように喜ぶルビー。同時に飛び込むように抱き着いてきた彼女を、アイは難なく受け止める。

 

「えへへ♪ アイちゃーん、よしよししてぇ~♡」

 

「もう、ルビーちゃんは甘えん坊だねぇ…よしよーし」

 

「ハァァ~~♡ 一緒にアイドルをやれないのは残念だけど、これから毎日学校でも事務所でもアイちゃんと一緒とかもう最高~♡ これはもう極楽浄土通り越して聖域だよね!!」

 

「それはちょっと意味がわからないかな」

 

そう言って盛大に甘えながら蕩けるルビーと、満更でも無さそうに彼女の頭を撫で続けるアイ。

 

「なぁアクア、お前の妹さんって母性に飢えてんの?」

 

「今のアレを妹と認めたくないが…昔から大体あんな感じだ」

 

「ハァ……どこかで育て方を間違えたのかしら?」

 

その様子を傍から見ていた三人は普通に引いていた。

 

とまぁそれはさておき……と、ミヤコは咳払いをしてから話題を切り替えた。

 

「さて……それじゃあ早速仕事の話だけれど、夜代君は今度の『今ガチ』に出演するということでいいのよね?」

 

「はい。あとで俺の方から話を持ってきた元社長に連絡しますので、後日事務所に正式なオファーが来ると思います」

 

「レンもあれに出るのか……」

 

「そう言うアクアもだよな。まさか俺らがテレビで共演することになるとは……」

 

「倒産した事務所の元社長からの出演依頼だっけか? 断れなかったのか?」

 

「そうしたいのは山々だったんだけどなぁ……正確には元社長がコネで用意した番組スポンサーからの依頼で、かなりの大手企業だから断る方が難しいっぽいんだよ」

 

アクアの質問に対して、レンはそれらしい言葉を並べて答える。

ぶっちゃけやりたいかどうか聞かれたら絶対にやりたくはない。ただでさえ慣れない学生生活で精神的にキツいというのに。

しかしもうやる事はほぼ確定してしまっているので、今更嘆いたところでどうしようもないのだが。

 

「その大手企業って?」

 

「ワイハンス・エンタープライズ」

 

「「ハァ!!?」」

 

レンがしれっと口にしたその会社の名前を聞いた瞬間、問うたアクアだけでなくミヤコも驚きのあまり椅子を蹴飛ばすような勢いで立ち上がった。

 

「ワイハンスって、あの今や世界的大企業の!?」

 

「超一流企業じゃねーか!!」

 

ミヤコとアクアが驚くのも無理はない。

『ワイハンス・エンタープライズ』とは、十数年ほど前からゲーム事業を礎として娯楽業界を中心に急激に頭角を現した会社である。そこから更にアパレル業界など様々な方面に事業を拡大していき、今や世界でも有名な一大企業となっている。近年では発展途上国の支援も行っているらしい。

 

「そこの社長とウチの元社長が個人的な知り合いらしくてな、俺もそう聞かされた時は驚いたよ」

 

もちろんこの二人とは違う意味で、だが。

 

「………………」

 

すると椅子に座り直したミヤコが顎に手を当てて思考を巡らせ始める。ここへ来てレンの話の中に苺プロの事務所にとって特大のメリットに成り得る要素が出て来た為だ。

 

「夜代君、その話について何か証明出来るものはあるかしら?」

 

ミヤコは淡々とした口調でレンにそう尋ねる。

もしこの話が本当だとすれば、彼を通じてワイハンス・エンタープライズとのコネクションを築けるかもしれない。それは苺プロのような弱小事務所にとって最大のチャンスである。

しかしだからといって安易に飛びつく訳にもいかない。会社の名前を騙るだけなら誰でも出来る。この話が本当であるという確証が無い以上、慎重に真偽を確かめる必要があるのだ。

 

「証明出来るものと言われても………………あっ」

 

するとレンはしばらく考えるような素振りを見せたあと、何か思い出したかのように制服のポケットの中からソレを取り出した。

 

「そう言えば所属する事務所が決まったらそこの社長に渡せって言われて──名刺を預かってたんでした」

 

「そういう事は早く言いなさい」

 

レンが取り出したのは一枚の名刺。ミヤコは強めた口調でそう言いながらも、恐る恐るとした手付きでそれを受け取って内容を確認した。

 

「…………確かに本物ね」

 

それに記載されているのはワイハンスの社名と社長の名前などの情報。ニセモノの可能性も考えたが、彼女の長年の感が告げている。この名刺は間違いなく本物だと。つまりレンの話は本当であるとの確証を得た。

因みにこれは浦原が社長本人から直々に貰って用意したものらしいので疑う余地はないのだが…それをミヤコが知る由もない。

 

「この名刺は私が預かっててもいいのかしら?」

 

「どうぞ。向こうの許可は取っていると聞いていますので」

 

「ありがとう」

 

それを聞いてミヤコは受け取った名刺を、丁重に名刺ケースに仕舞った。

これは大企業との繋がりを得るチャンスではあるが、同時に万が一何か粗相を仕出かせば事務所が潰されてしまう危険性もある。そこは社長である自分の腕の見せ所であると、ミヤコは内心で奮起したのだった。

 

「そんな大企業の社長から名刺貰って来るとか、その元社長って何者だよ?」

 

ミヤコの話が終わったのを見計らって、アクアがレンにそう問い掛ける。

 

「あー…まぁちょっと胡散臭いところがあるけど、決して悪い人じゃない。胡散臭いけど。倒産してからもこうして俺達のことを気にかけてくれてるから、胡散臭い割に良い人だよ」

 

その説明で胡散臭いが三回も出てる時点でダメじゃないか?

 

若干言葉を濁しながらそう答えるレンに対して、一体どんだけ胡散臭いんだとアクアは訝しんだ。因みにレンとしてはこれでもだいぶ言葉を選んだ方である。

 

「それよりさ、俺『今ガチ』って番組のことよく知らねえから撮影日までに注意点とか色々教えてくれよ」

 

「は? なんで俺が」

 

「一緒に共演する仲じゃねーか。アクアは『今日あま』とかドラマの出演経験あるし、前に演じ方がどうこう言ってたから詳しいんだろ? 頼むよ」

 

「……俺も忙しいから無理だ。この後有馬が事務所に顔を出すからそっちに聞け。俺なんかが教えるよりその方が良い」

 

レンがアクアに教えを請おうとするが、当の本人は冷めた表情で淡々とそう言い切って断ろうとする。対してレンは何か一瞬だけ考えるような素振りを見せた後、ニヤリと笑って口を開く。

 

「そうか? まぁ確かにアクアって人に教えるの下手くそっぽいよな」

 

は?

 

しかし、次いで放たれた一言によってアクアの足が止まる。それを見たレンは「思った通り」と言わんばかりに意地の悪い表情を浮かべて更に口を開く。

 

「意味が分からん、何でそうなるんだ?」

 

「いやほら、考えてみればアクアってかなり口下手だろ。その上クソ面倒くさい性格してるからそりゃ人に教えるなんて壊滅的に不向きだよなぁって。ゴメンなアクア、出来もしないことを頼んじまって。俺がちゃんとアクアは人に何かを上手く教えられる自信が無いってことに気づいてやれれば良かったな。そしたらわざわざ忙しいなんて言い訳して逃げる必要も無いしな」

 

上等だ、座れよ。そこまで言うならお望み通り徹底的に叩き込んでやる。もっとも、お前が理解出来るほどのオツムを持ち合わせていればの話だけどな。着いてこれなくても文句を言うなよ?

 

「図星か? シロート相手にイキるなよ」

 

一部分をやたらと強調したレンの挑発的な言葉にまんまと乗ってしまうアクア。彼もまた煽り耐性が低かった。

 

「お兄ちゃんと夜代さんって意外と仲良さそうじゃない?」

 

「ねー? レンも楽しそうにしてる」

 

「私にはメンチ切り合ってるようにしか見えないけど?」

 

その様子を傍から見ていた女性陣三人は、それぞれそんな感想を抱いていた。

男二人が互いに睨み合いながら教えを請い請われている光景を仲が良いと見るか険悪と見るかは人それぞれである。

 

そんなこんなでレンとアイの死神二人は無事に苺プロダクションへの加入に成功したのだった。

 

 

 

 

 

そして──番組の撮影当日を迎える。

 

 

 

 

 

推しの子×BLEACH

【恋愛リアリティーショー偏】

―開幕―

 

 

 

 

 

To Be Continued


 

 

 

 

 

おまけ①

【顔合わせ】

 

あれから少しして……レンは一足先に入所していた『有馬かな』と初めて顔を合わせていた。

 

「初めまして、陽東高校一年の夜代レンです。今日からアイと一緒にこちらの事務所でお世話になることになりました」

 

「ふーん……二年の有馬かなよ。よろしく」

 

「はい、よろしくお願いします有馬先輩」

 

「ええ……アンタはまともそうで安心したわ………」

 

「? というと?」

 

互いに自己紹介を交わすと、かなが心底安心したように息を吐きながらそうぼやく。それに対して疑問符を浮かべながら尋ねるレン。

 

「学校の先輩後輩っていうのは、敬えとまでは言わないけど先輩に対してはある程度の礼儀を持って然るべきだと思うわけ。なのに私の周りの後輩連中ときたらタメ口だしナマイキだし、人のことを重曹だのロリだの舐め腐った呼び方はするし……!! ちゃんと敬語で話しかけられたのすら久しぶりな気がするわ」

 

「へー大変だな有馬」

 

「ロリ先輩って人望無いんじゃない?」

 

「まなちゃん、大丈夫?」

 

「どの口で言ってんだボンクラ後輩ズ」

 

ドスの効いた声でボンクラ三人を睨むかなだが、残念ながら当人達はどこ吹く風である。

この時点でレンの有馬かなに対する第一印象は『不憫な人』である。なので差し出がましいが、アクア達に多少の注意は促しておくことにした。

 

「お前らなぁ、目上の人にはキチンと礼儀を弁えた方がいいぞ。これは学校の先輩後輩とかに限った話じゃなく、どこの世界でも当たり前の事だ」

 

「うんうん」

 

「人との繋がりってのは大事だからな。あんまり蔑ろにしていると、あっという間に人は離れていくぞ

 

「うん……うん?」

 

「芸能界を含む業界や、会社等の組織では特に重要だ。礼儀を知らない奴は爪はじきにされても文句は言えないんだよ

 

「……………うん」

 

「そう言うのは巡り巡って自分に返って来るものなんだ。気がつけばみんな離れて行って一人ぼっち、なんてことになったら目も当てられないからな」

 

「…………………」

 

「だから、『親しき中にも礼儀あり』という言葉があるように、たとえ同じ事務所の仲間内でもせめて最低限の礼節を持って──あれ? 有馬先輩?」

 

「…………………グスッ」

 

「あーあー! 夜代さんが先輩を泣かせたー!」

 

「レンってばサイテー」

 

「なんで?」

 

かなが突然泣き出し、アイとルビーから非難めいた視線を向けられてレンは本気で困惑した。

そこへアクアが後ろからレンの肩にポンっと手を置き、訳知り顔で語る。

 

「いいかレン……有馬は子役時代が大御所気取りの礼儀知らずだったせいで、後々事務所から見放された経験があるからそういう話は地雷なんだ」

 

「自分から礼儀云々を言い出しといて???」

 

自分から地雷原に誘導するような発言をしといて、いざ地雷を踏まれれば普通に傷ついている彼女にレンは困惑し、アクアとは違うベクトルの面倒くささを感じた。

 

そして最終的にレンの有馬かなに対する印象は『不憫で喜怒哀楽の激しい面倒くさい先輩』に落ち着いたのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

おまけ②

【出演に至る経緯】

※ほぼセリフのみ

 

 

場所は空座町にある浦原商店。そこでは店主である浦原喜助が、とある人物と通話で話していた。

 

「いやーすみませんねぇ、こちらの事情の為に骨を折って頂いて」

 

『ホントだよね。死神が出演する為に番組の出演者枠を一つ確保して欲しいとか、正気の沙汰とは思えないよ』

 

「そんな無茶な要求に応えてくれた雪緒社長には感謝しておりますヨン♪」

 

『感謝は言葉じゃなくて行動で示してくれる? 僕が言った〝取引き〟のこと、忘れてないよね?』

 

「もちろんっスよぉ! 近々、ご要望の品をご用意させて頂きますねー」

 

『ならいいけど』

 

「しかし意外でした……まさかアナタの名刺まで使わせて頂けるとは。会社の名前だけじゃあ信憑性が足りないなと思っていたので、助かりますけどね」

 

『ただのビジネスだよ。名刺なんてその為の道具。今後も会社の利益になりそうな事務所ならこれからも有効活用させてもらうし、そうでなかったら事が終わればさっさと切り捨てる。それだけだよ』

 

「さっすが社長サン、抜け目ないっスね」

 

『フン………ところで、一つ聞きたいんだけどさ』

 

「はい?」

 

『片割れの女死神の方だけどさ………もしかして彼女って、十年くらい前に亡くなったB小町の〝アイ〟だったりする?』

 

「おや? 雪緒サンも〝アイ〟をご存知なんスねぇ。確かに星野サンの生前はそのアイドルの彼女で間違い無いっスよ。ご本人はもう覚えてはいませんが」

 

『ふぅん。それが死神になって現世に戻って来るなんて、おかしな話だね』

 

「そうっスねぇ……案外、そういう〝運命〟だったりするんスかねぇ」

 

『どうでもいいよ。それより、これから彼女も表向きはモデルとして活動するなら、僕の会社からいくつか仕事を出してもいいよね?』

 

「? それは構いませんが、どういう風の吹き回しで?」

 

『別に。片方の死神に仕事を出しておいて、もう片方には出さないなんて変な話だし……それに最近リルカがデザインした服のモデルを探してたから丁度いいやと思っただけ。見た目がアイなら彼女も気に入るでしょ。それ以外に大した理由はないよ』

 

「え~? ホントっスかぁ? ひょっとして雪緒サンって〝アイ〟のファンだったりしたんじゃあないっスかね?」

 

『……………………………』

 

「……あれ? ジョーダンだったんスけど……え、マジっスか?」

 

ブツッ──ツ──ツ──

 

「ありゃ? 切られちゃいましたか。しかしまさか雪緒サンがね……〝アイ〟の影響力はとんでもないっスねぇ」

 

意外そうにそうぼやきながら、浦原は別の人物へと電話をかける。

 

「──あ、もしもし平子サン? お宅の夜代サンを現世の恋愛バラエティ番組に出演させようと思ってるんですけど、許可を頂いてもいいっスかね?」

 

『おーかまへんかまへん。ついでに渋るようやったら隊長命令やって伝えときィ。で…番組(ソレ)いつからやるん? 尸魂界(こっち)でも観れるンやんな? 何チャン?』

 

こうして夜代レンの『恋愛リアリティーショー』の出演が決まったのだった。

 

 

 

 

 

Fin




次回からようやくリアリティーショー編。
オリ主のレンが活躍予定です。
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