推しの子×BLEACH   作:ZEROⅡ

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BLEACHの『リバースオブソウル』にゲームオリジナルの日常編があるとの事で非常に気になる。
モンハンワイルズがひと段落したら手を出すかも。

最近執筆の調子が良いので早めに投稿出来ました。
でも調子が悪くなった時のリバウンドが怖いですね。



第二十話

 

 

 

 

 

 

『今ガチ』の撮影は様々なイベントを通して滞りなく進んでいき、その間に季節が春から夏へと移り変わる。

 

鷲見ゆきと熊野ノブユキのカップリングが注目を浴びて番組の中心になり始めた頃、そこへ更に森本ケンゴが嫉妬心を見せる事で三角関係が成立。

 

鷲見ゆきというゲームメーカーが機能し、その小悪魔っぷりが番組を盛り上げ、中高生を中心に人気を獲得していった。

 

一方で夜代レンはこれまで通りサポートに徹する事で、縁の下の力持ちとして番組を盛り上げる事に貢献。

安全圏でやり過ごす腹積もりの星野アクアと、自分のチャンネルに導線を引く事が主目的のMEMちょの2人も、持ち前の機転の良さで上手く番組を乗り切っている。

 

そんな中で……黒川あかねは焦燥感に駆られていた。

 

自分だけが番組に貢献出来ていない……

自分だけが結果を残せていない……

自分だけが何も成せていない……

 

だから今……こんな事になっているのだろう。

 

「お前はクビになりてぇのか!? あぁ!?」

 

あかねが所属する芸能事務所の社長の荒々しい怒声が響き渡る。しかしそれを向けられているのはあかね自身ではなく、彼女を担当するマネージャーだった。

日課となっている演技の自主練を終え、レッスン室の鍵を返しに来た際にこの場面に遭遇してしまったのだ。

 

「最近あかねの出てるリアリティショーが人気出てるっていうから観てみたらなんだこれは!? 総出演時間10分もいってねぇんじゃねぇか!? チャンスだって言うのにこれっぽっちも目立ってない!! マネージャーのお前がしっかり指導しなくてどうする!!」

 

「ですが社長…あかねも十分頑張って……」

 

「頑張るだけじゃ金にならないんだよ! 他にもやりてぇって言う奴が大勢居る中で選んでやったんだ! 爪痕の一つでも残させろ!!」

 

自分のせいでマネージャーが怒られている……貴重なチャンスを不意にして、結果を残せていないのは自分なのに……

 

「あかねは精一杯やってるんだ、気にしなくていい。ちゃんと俺が防波堤になるから」

 

なのにマネージャーはあかねを責めず、むしろ良く頑張っていると励ましてくれる。

 

「わ…私が不甲斐ないから……」

 

それが更に焦燥感と罪悪感を掻き立て、涙となって溢れ出る。

 

「頑張らなきゃ……頑張って……爪痕残さなきゃ……」

 

その為ならなんだってやってみせると……強く決意しながら、あかねは動き出したのだった。

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

「ノブくん……こっちで一緒に……」

 

「ああ、いいよ?」

 

次の撮影日から、あかねの動きが変わった。

これまでは引っ込み思案な性格故に消極的だったのが、今では積極的にノブユキに絡みに行っている。それも、ゆきと一緒に居るところを狙って割って入るかのように。

 

「あかねちゃん、責めてるねー」

 

「………ああ」

 

「ん-? おやおやぁ? ひょっとしてレンたんってば、あかねちゃんを狙ってたりしたぁ?」

 

「そういうんじゃない。ただ………いや、何でもない」

 

「?」

 

その様子を眺めていたMEMちょとレンがそんな会話をしていたが、ノブユキに集中しているあかねの耳には入っていなかった。

 

・そういや居たわこんな子。

あかねだっけ?

 

・あかね別に居てもいなくても同じじゃない?

 

・あかねOUTでいいから

男新メン増やして〜〜

 

ネットでエゴサした際に見つけた『今ガチ』関連の心無い投稿が、あかねの脳裏を過ぎる。

 

──頑張らないと……

 

『目立つにはどうすればいいかって……? そりゃゆきからノブを奪う悪女ムーブだよ。これが出来たらキャラが立つし、間違いなく目立てる。もちろんこれは指示じゃない。でも、こういうの出来る子が売れるんだよねぇ』

 

ディレクターから貰ったアドバイスの通り、ゆきからノブユキを奪うように立ち回る。本当はこんなやり方は柄では無いが、それで爪痕を残せるのならばと……痛む心を無視して実行する。

 

──頑張らないと……!!

 

「あかね、最近焦ってる?」

 

そんなあかねに、ゆきがそう問い掛ける。

今は撮影の合間で、教室でゆきにネイルアートを施して貰っている最中だ。カメラも回っていないので、本音で語り合う。

 

「放送も終盤だしね。気持ちは分かるけど」

 

「別にそんなんじゃ……私はどうにか目立って……結果を残したいだけ……」

 

「そっ……でもそうはさせないよ。私は私が一番目立つように戦う。悪く思わないでね」

 

鷲見ゆきは強かった。いつでも自信満々で自分を良く見せるのに長けていて、明るい笑顔でみんなからも支持されている。

 

あかねはそんな彼女と自分を比べてしまう。何故こんなにも違うのだろうと……

 

──ゆきちゃんよりも目立たなきゃ

 

爪痕を残す為に。

 

──頑張って戦わなきゃ…

 

与えられたチャンスを無駄にしない為に。

 

──私に期待してくれている人の為にも……

 

もう自分のせいでマネージャーが怒られるなんて事にならないように。

 

──頑張らないと……!!

 

──もっともっともっと……!!

 

 

 

「黒川さん?」

 

「!」

 

 

突然声を掛けられ、焦燥感のままに思考が前のめりになっていたあかねは、ハッと我に返る。

そして声がした方へ視線を向けると、そこにはレンが立っていた。

 

「夜代君……」

 

そこであかねは、そう言えば撮影再開は彼との絡みから始まる予定だった事を思い出す。

 

「あ…えっと…その……」

 

しかし先ほどまでゆきより目立つ事という考えで頭が一杯だったあかねは、咄嗟に上手く話題を引き出す事が出来なかった。

どうしようと…軽くパニックになった頭で打開策を考えようとしたその時……

 

「レン! あっちにデカいラブラドール居た! 一緒に見に行こうよ!」

 

そこへ割り込むようにゆきがやって来た。それを見た途端、あかねの頭は急速に冷えていった。

 

──待ってよ……

 

「ほらほら早く!」

 

「いや…俺は別に犬に興味は無いんだが……」

 

──まだ私…何も出来てない……!

 

「行こう!」

 

 

「やめてよ!!」

 

 

レンを引っ張って行こうとするゆきに対し、あかねは感情のままに悲痛な叫びを上げ、彼女を振り払うかのように左腕を振るった。

 

「! 鷲見さん!!」

 

同時に、レンの焦ったような声が聞こえたが、あかねは構わずに声を荒げる。

 

「そうやって簡単に男に引っ付いて、やり口に品がな……!!」

 

「ちょっ…レン!?」

 

「──え…」

 

あかねの悲痛な叫び声は、そこではたと途絶えた。

 

何故なら今目の前には……ゆきを背中に回して庇うように立ち、頬から血を流しているレンの姿があったからだ。

そして先ほど振るった自身の左腕の指先には血が付着している。この瞬間、あかねは自分が何を仕出かしてしまったのかを理解してしまった。

 

「いったん撮影止めます!」

 

撮影が中断され、彼らを心配したスタッフ達がぞろぞろと囲うように集まってくる。

 

「モデルの顔にそれはちょっと……」

 

「でも彼が庇わなかったら、ゆきがああなってたかもしれないのか」

 

「おいおいおい……」

 

スタッフ達のガヤガヤとした喧騒の中で、そんな声を耳にしたあかねは、真っ青な顔色でパニック状態に陥ってしまう。

 

「わた……そんなつも……ちが…」

 

「黒川さん……」

 

傷つけるつもりは無かった……こんな事になると思わなかった……と、罪悪感と後悔で頭が一杯になってしまったあかねは、涙を流しながら言葉にならない声を上げる。

 

「黒川さん……」

 

「わたっ……!」

 

 

「黒川あかね!!!」

 

 

「!!」

 

大声で名前を呼ばれ、思わずビクリと肩を跳ね上がらせながら顔を上げるあかね。同時に今までざわついていたスタッフ達の喧噪もピタリと止む。

 

そしてあかねが顔を上げた先に居たのは……真剣な面持ち彼女を見据えているレンだった。

 

「あ……やしろく…ご…ごめ……なさ…!」

 

彼の頬についた傷を見て、謝らなければ懸命に口を動かすあかねだが、その思いに反して上手く言葉になってくれない。

 

人を傷つけて、こんなに沢山の人に迷惑をかけておいて、謝る事すら出来ないのかと…あかねが激しい自己嫌悪と共に顔を俯かせて涙を流したその時だった……

 

「──落ち着け」

 

力強く、それでいて何処か安心感のある声がした。同時に左右から挟み込むように顔を掴まれて、そのままグイっと顔を上げられた。

半ば強制的に上げられた視線の先には……その張本人であるレンが優しい表情を浮かべながら、真っ直ぐとした瞳であかねの目を見つめていた。

 

「大丈夫だ。これはほんの掠り傷だし、ただの事故だ……黒川さんは何も悪くない」

 

「夜代…君……」

 

幼子をあやすように紡がれるレンの言葉に、様々な負の感情でぐちゃぐちゃになっていたあかねの心は、徐々に落ち着きを取り戻し始めていた。

 

「あかね!!」

 

「! ゆきちゃ…」

 

するとそこへ、レンの後ろから飛び出してきたゆきが、力強くあかねの体を抱き締めた。

 

「ゆきちゃん…わ…わたし……」

 

「分かってる………焦っちゃたんだよね。知ってるよ、あかねが努力家なの。みんなの期待に応えようとして、ちょっと向いてない事をしようとして、なんか分からなくなったんでしょ?」

 

あかねの心境を理解していたゆきがそう言うと、彼女に抱き締められているあかねは涙ぐみながら頷く。

 

「あかねは私の事、嫌い?」

 

「嫌いじゃない。強くて優しくて…好き……」

 

「私も努力家で一生懸命なあかねの事好き。だから怒んないよ」

 

「ほんと?」

 

「カメラ回ってないんだから、今演技しても仕方ないでしょ」

 

そう言って彼女達は笑い合う。その姿は、何の蟠りも無い友人同士のものだった。

 

「レンも庇ってくれてありがとね。顔の傷大丈夫?」

 

「や、夜代君……ごめんなさい……」

 

「気にすんな。掠り傷だって言っただろ? この程度どうって事ねぇよ」

 

そう言いながら頬についた血を親指で乱暴にビッと拭い、問題無い事をアピールするレン。

 

「でも顔だし……モデルの仕事に影響が……」

 

「そっちも心配ねぇよ。今のところ俺は『今ガチ』以外の仕事が皆無で、デビューすら不確かな駆け出し未満の木っ端モデルだからな。そもそも影響する仕事が無いんだよ」

 

「それは流石に卑下し過ぎでしょ!? 別の意味で心配になるよー!」

 

「ぷっ…ふふ……」

 

「「「あははははは!」」」

 

レンの自虐にゆきがツッコミを入れ、あかねが思わず吹き出してしまうと……三人はほぼ同時に声を上げて笑ったのだった。

 

こうして……あかねが引き起こしてしまった思わぬハプニングは収束し、少なくとも当事者である彼女達の中ではもう解決した事だろう。

 

しかし……

 

 

 

 

 

次回予告

ゆきを庇ったレンに手を上げてしまったあかねは……

 

 

 

 

 

ネットはそれを許さなかった。

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

──後日。

 

「…………チッ」

 

苺プロのオフィスにて……荒々しく舌打ちをするレンの顔は、不機嫌さを露わにしていた。

その原因は、彼が握っている伝令神機(スマホ)の画面に表示されている内容にある。

 

「燃えてるわね~、黒川あかね。この間放送された『今ガチ』の内容じゃあ、やっぱり…って感じだけど」

 

同じくスマホを片手に持った有馬かながそうぼやく。彼女だけではない。同じオフィス内に居るアイ、アクア、ルビーの3人もスマホを見ながら何とも言えない表情をしている。

 

彼らは全員、別々のスマホで同じサイトを見ている。

表示されているのは『今ガチ』の番組公式ツイッターで、そこに投稿(ツイート)されているのは……

 

 

・あかねって誰?お前居たっけ?wwwって感じ

 

・この番組史上一番終わってる人間。

お前が居なきゃみんな幸せ。

 

・今ガチ見てて一番不快だった。

さっさと辞めて。

 

 

等々……あかねに対するバッシングの嵐だった。

 

事の発端となるのは先日の撮影中に起こってしまったハプニング……なんと番組側はあかねがレンに怪我をさせたという部分だけを抜粋して放送し、彼女を悪役として映るように仕立て上げたのだ。

 

結果……ネットではあかねにヘイトが集中し、炎上してしまっているのだ。

 

「でもほら……あかねちゃん、ちゃんと謝ってるよ?」

 

「バカね。そんなもの逆効果よ」

 

ルビーがあかねが投稿しであろう謝罪コメントを見つけてそう言うが、かなが呆れたように嘆息した。

 

「謝罪なんてしたら自分が悪い事したって認めるようなモンじゃない。炎上への対処としては下策も下策よ。火に油注いでもっと叩かれるはめになるだけ。ホント何も分かってないわね、あの女」

 

かなの言う通り、謝罪コメントの直後にあかねに対する批判が倍増している。中には『死ね』や『消えろ』などの心無いモノもいくつか見受けられ、更に酷いモノとなれば、あかねと同じ中学だったと名乗る投稿者が彼女の卒アルの顔写真を晒していた。

 

「これさ……この批判されてる子って大丈夫なのかな?」

 

「……大丈夫、では無いだろうな」

 

アイがポツリと漏らした疑問に、アクアが冷静な口調で答える。

 

「あかねは真面目だ。そういう奴ほど、炎上で受けるダメージはデカい。批判なんてスルーすればいいのに、全部をまともに受け止めようとするからな」

 

「…………ッ!!」

 

アクアの話を聞きながら、レンは無意識に歯噛みした。

初めてコレを見た時は絶句した。

浦原から現世におけるネットの危険性や厄介さを聞かされてはいたが、想像を遥かに上回るほど酷いモノだった。今の現世の人間は……ここまで非情になれるのかと……そう思わされるほどに。

 

番組を観たというだけで全てを知った気になって……あんなにも真面目な努力家で責任感の強い少女を悪者にして、否定して、蔑んで、扱き下ろして……寄って集って言葉の暴力で痛めつけるなんざ……

 

 

 

「──ふざけやがって」

 

 

 

「「「!?」」」

 

今まで聞いた事が無い位に低い声の呟きがレンの口から漏れ出す。

同時にその言葉に込められていた怒気の迫力を前に、アクアとルビー、そしてかなの3人は反射的にビクリと体を震わせた。

 

「こら」

 

「!」

 

するとそんなレンの頭を、アイが咎めるようにペチリと叩いた。

 

「気持ちは分かるけどルビーちゃん達を怖がらせちゃダメでしょ」

 

「……ああ、悪い」

 

そう言われて、怒りと一緒に霊圧もほんの僅かに漏れてしまっていた事を自覚するレン。すぐさま謝りながら怒気と霊圧を抑え込んだ。

 

「や…夜代さんって怒ると怖いんだね……」

 

「普段温厚な人ほど何とやらってやつね……」

 

「……………」

 

ルビーとかなは顔を引きつらせ、アクアも無言ではあるが顔に冷汗を滲ませている。

 

「そう? 私は割としょっちゅうレンに怒られてる気がするんだけど」

 

「それは普段から俺に面倒事を押し付けるお前だけだバカ」

 

そんないつも通りのやり取りを経て、レンの怒りも多少収まったのか、オフィス内に漂っていた重い空気が霧散する。

 

「とにかく……レンの怒りももっともだが、こういう炎上は過度に反応せずに放置するのが無難だ。それよりも今はあかねのメンタルケアに努めた方が良い」

 

「そうだな……ネットの影に隠れてモノを言うだけの有象無象のクソ共よりかはそっちが重要か」

 

「レンってばだいぶキテるなー」

 

刺々しい台詞を吐くレンに、アイは彼が相当キレている事を察して苦笑する。

 

──Piririri!!

 

「ん?」

 

するとその時、レンの伝令神機(スマホ)から着信音が鳴る。画面を確認すると、相手は『MEMちょ』と表示されていた。

『今ガチ』のメンバーとは連絡先を交換していたが、こうして連絡が来るのは初めてだったので少し面食らったが、何か緊急の要件だろうかと思いながら画面をタップして通話を繋げる。

 

「もしもし?」

 

『レンたん!! 大変だよぉ!! あかねが……!!』

 

「!!」

 

直後、通話口から聞こえてきたのはいつもの彼女らしからぬ、切羽詰まったかのような悲痛な叫び声。更には(くだん)のあかねの名が出た事で、レンの目が大きく見開かれる。

 

「落ち着けメムさん! 黒川さんがどうした!?」

 

『ラインで『ご飯買ってくる』って言ったっきりあかねと連絡が着かないの!! 返信しても既読が付かないし、何回も電話してるけど繋がらなくて……!!』

 

「ハァ!? まさか出掛けたのか!? この天気の中を!!?」

 

信じられないと言わんばかりに、レンはオフィスの窓から外の様子を見る。

今日は夕方から台風が来ている事もあって、東京都のほぼ全域に激しい大雨と暴風が吹き荒れている最悪の天候だ。気象庁から警報も出ているこの状況で外出するなど、正気だとは思えない。

故に……レンの脳裏に最悪の予感が過る。

 

「っ──メムさん!! 彼女の行先に心当たりは!?」

 

『えっと…今は台風でお店がどこも閉まってるから…たぶん近場のコンビニ!』

 

「アンタは今どこに!?」

 

『あかねを探そうと思って、あの子の家の近くに……』

 

「今すぐ帰って自宅で待機! 彼女の捜索は俺が引き継ぐ! いいな!?」

 

『えぇ!? ちょっとレンた──』

 

レンは一方的にそう言うと、MEMちょの言葉も聞かずにブツリと通話を切った。

 

「クソッ!!」

 

そのままバンッ!…と近場の机に叩き付けるように伝令神機を置いた。今のレンの顔には、焦りと苛立ちがありありと浮かんでいる。

 

「おいまさか…あかねが居なくなったのか!?」

 

「そのまさかだ! この嵐の中を外出して連絡が着かなくなったらしい!」

 

「ええ!?」

 

「それってヤバいんじゃない!!?」

 

「何やってんのよあのバカ女!!」

 

先ほどまでの通話の様子を見ていてある程度状況を把握したアクア。同様にアイ、ルビー、かなも事の重大さを理解して顔を青くする。

 

「アクア! 悪いが雨合羽を持ってたら貸してくれ! 黒川さんを探しに行く!」

 

「あるにはあるが……まさか1人で行く気か? 俺も一緒に……」

 

「いや、この暴風雨の中だと二次災害の危険性がある。アクアは此処で待機して、メムさんや他のみんなと連絡を取っておいてくれ」

 

「……いやダメだ、俺も行く。それだとお前だけが危険だ。1人で行かせるワケにはいかない」

 

「俺なら大丈夫だ」

 

「何を根拠に……」

 

「アクア」

 

口論になりかけたその時……レンが語気を強めてアクアの名を呼ぶと、そのまま真っ直ぐに彼と目を合わせながら静かに口を開いた。

 

「この前言ったよな……俺が身体を鍛えてるのは、いざって時に誰かを助けられるように動く為だって──今がその時なんだ

 

「!」

 

「頼む…アクア」

 

「………………………わかった」

 

レンの力強く、揺るぎない決意が込められた言葉を聞かされたアクアは……少しの沈黙の後、納得したのか、単に何を言っても無駄だと悟ったのかは分からないが、諦めたように頷いたのだった。

 

それからアクアが持ってきた雨合羽を受け取ったレンは、すぐさまそれを着込んで外に出る為に事務所の玄関へと赴いた。

 

「じゃあ行ってくる」

 

「ああ。あかねはコンビニへのルートを辿ったら見つかるはずだ」

 

「ありがとう。虱潰しに探すよりずっと良い」

 

「レン、気を付けてね」

 

「おう。黒川さんを見つけてすぐに戻る」

 

そう言ってアクアとアイの2人に見送られ、レンは玄関から飛び出すように急いで出て行ったのだった。

 

「………よし、やるか」

 

そして事務所から出て少し離れたところで、レンは立ち止まる。

先ほどアクアはコンビニへのルートを辿れば良いと言っていたが、レンにはそれよりも確実にあかねを見つける方法があるのだ。

 

「義骸に入ったままだと多少精度は落ちるが……」

 

そうぼやきながらレンはその場で屈むと、右手の人差し指と中指だけを立てた状態で構え、その二本の指先に霊圧を集中させる。

 

 

「南の心臓 北の瞳 西の指先 東の踵

 風持ちて集い 雨払いて散れ」

 

 

詠唱を口にしながら霊圧を込めた指先で床に陣を描くレン。霊圧を用いて描かれたそれは、雨風に晒されても決して滲まずにくっきりと床に刻まれている。

 

 

「縛道の五十八──掴趾追雀(かくしついじゃく)!!」

 

 

その瞬間……描かれた陣が淡く輝き出し、そこを中心にして周囲一帯に霊圧が広く拡散される。

 

レンが発動したこの術は、対象の霊力を感知して追跡する事が出来る。少ないとはいえ霊力持ちであるあかね相手だからこそ使える鬼道である。

 

「──見つけた!」

 

あかねの霊力を捕捉したレンは、すぐさま術を解除してその方角へと向かって走り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら? レンの奴、スマホ忘れて行ってるじゃない。急いでたとはいえ不用心ねぇ……」

 

かなは机の上に置きっぱなしになっているレンの伝令神機(スマホ)を見つけて、呆れたように嘆息していた。

 

だが……彼女は気付かない……気付けるはずがない。

 

 

 

 

 

──その伝令神機から、虚の出現を知らせる通知が出ている事に……

 

 

 

 

 

To Be Continued




あかねの捜索方法は〝掴趾追雀〟か〝霊絡〟のどちらかで迷いましたが、詠唱が書きたくなったので前者にしました。
BLEACHのオサレ詠唱は最高っスね!
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