石の上にも三千七百年   作:不落八十八

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 ……照れ臭くなって逃げてきちゃったけども、いやはや、サプライズですなぁ。

 まさか千空が生理用品の代わりになりそうな物を作ってくれるなんてなぁ。

 年頃にデリケートな話であるし、例え恋人であっても話題にするには恥ずかしい内容だしなぁこれは。

 川でデリケートゾーンを洗い流してから、竹のカップで受け止めたものもさよならバイバイする。

 いやまぁ、定期的にトイレに行くようにしておりものとかの処理をしていたけども、流石に生理の時はきついなぁ。

 千空からお手製ナプキンと言えるものを貰ったので、試しにあてがってみると。

 ははは、違和感凄いなぁ、けど有難いから使わせて貰いますかね。

 主に日中は竹のカップで受け止めて、寝ている時はこれを使って凌ぎますか。

 下着とかの材料になる綿の収穫時期はまだまだ先だし、蚕みたいな虫を見つけられるかはマジで運だからなぁ。

 下げたズボンを戻して、冷たいながらも川原へと戻る。

 ……蚕って完全に家畜化してたから、絶滅してる可能性高いんだよなぁ。

 そうなると後は羊毛ぐらいになるけど、こっちはまだ可能性があるかな。

 つっても野生の羊は居なかった筈だから、家畜化された羊が生き延びていてくれたら、になるけども。

 

「……マジで東京ジャングルみたいな事になってたら、ライオンとか居るよなぁ確実に」

 

 動物園で飼育されていたであろうライオンが、このストーンワールドで再び百獣の王として復活しているかもだ。

 けれども、その頭数は少ないよなぁ恐らく。

 ライオンが飼育されている檻や展示場から抜け出せた個体がどれだけ居るかって話なんだよね。

 三千七百年前の石化波を受けた際に、飼育員が檻を開けているパターン以外では脱走できない。

 檻に入っていたら先ずそこで餓死するし、展示場に放されていたら外に出る橋になる物が無ければやっぱり餓死する。

 なので、ライオンが生き延びるパターンは飼育員が檻を開けっぱなしにしている状態だけだろう。

 ……放課後の時間帯だったし、ワンチャンあるかぁ?

 日本は海で大陸から離れているから海外から肉食動物が入国してくることは先ず無い。

 先日から取れている鹿と猪も野山に普通に居たし、なんなら奈良に沢山居たから全国に足を伸ばしててもおかしくない。

 犬や猫を見かけないのも少し変なんだよなぁ。

 ペットにされていたようなのはライオンとかに食われててもおかしくないんだが、本当にライオンが天下取ってるならそこら中に居てもおかしくないくらいに増えている筈だ、猫科だし。

 なのに見かけないとなると、宮古島みたいな場所で固まってたりするんかな。

 または犬や猫に掛かるウイルスとか、自然現象とかに巻き込まれて数を減らしたとかか。

 

「あー……、富士山の噴火、とか? 地震とかの津波だったり、うへぇ、理由は幾らでも挙がるなぁ」

 

 何処かに生き残っててくれないかなぁ猫。

 是非オレの癒しとして大人しく飼われて欲しい。

 と、現実逃避をし終えて住居へと戻って保存食の準備を始める。

 千空は寝床の方で何かしらのクラフトをしているようだった。

 さて、大量に肉が手に入ってしまったので一部は保存食として燻製にするつもりだ。

 保存食には栄養価のバランスの良い鹿肉を使うので、新鮮な雄鹿の肉を取り出す。

 ブロックサイズのそれをマグロの冊の様な大きさにカットしていき、土器の中に用意した塩水にどぽんどぽんと入れていく。

 大体塩分濃度15%程の塩水に冷暗所で一日漬け込み、乾燥させてから燻製すると言う流れになる。

 今はその下準備で終わりだな、明日にブナっぽい木から皮を剥いでこないとなぁ。

 夕飯にはそろそろ危うい雌鹿の残りを豪快に使っていく事にする。

 塩をもっと大量生産できれば塩漬けとかの選択肢もできるんだけどな。

 冷蔵庫が欲しいなぁ、と思いつつ土器に鹿骨を入れてぐつぐつと煮込んでいく。

 ある程度煮立ったら味を見て、問題無さそうなので骨を出して土器も一旦外しておく。

 平たい石を暖炉コンロに置き、残っていた雌鹿肉を豪快に焼いていく。

 一回で五百グラム以上は使っているが、まだまだ残っているので塩作りは急務だなぁ。

 日の当たらない涼しい場所に仕舞っているとはいえ、流石に生ものなので危機感を覚える。

 鹿の心臓と腸以外の内臓は長持ちしないので申し訳無いが森林の肥料になって貰った。

 心臓は鉄分の多い部位でレバーよりも食べやすいのでスープに混ぜてもう食べたけどな。

 ……明日は海で只管に塩作りしてようかなぁ、じゃないと足りなくなる気がするんだよなぁこの量だし。

 

「……いや、待てよ? 食事もこっちでしてる訳だし、こっちに寝床を移す頃合いなんじゃなかろうか」

 

 あの草のベッドも数日使っていてくたびれているし、その、寝汗で匂いが、ね?

 今居るこの住居を母屋として、隣の冷暗所を作る予定だった場所に寝室を作ったら良いんじゃなかろうか。

 丁度此処には大量に生い茂っている竹林が近いから、麦わら帽子を編む要領で寝床に敷くシートを作ってしまおう。

 まぁ量が量なので完成までに時間は掛かるが、草のベッドを卒業するためにも頑張らないとだ。

 住居の屋根部分はコの字を立てた様な感じなので、片側の三本の柱の上の方から拳程度の太さの竹を斜めに括り付けていく。

 斜めの竹のギリギリに垂直に中木の余りを杭にして打ち込んで縛り上げる。

 ハンガーラック宜しく下側に引っ掛かるように出っ張りを設置して、太さが大体揃った竹を下から積んでいく。

 三本毎くらいに紐で縛って、風で煽られて吹っ飛ばされない様に固定していく。

 竹と竹の隙間を埋めるために、千空が土器に使っている粘土質の土を泥にしてはっ付けて、仕上げに河原の近場で生えていた苔を芝生宜しく乗せて完成だ。

 水苔は水捌けが良く、ある程度放置していても育つ天然の屋根材だ。

 無論、藁で作った茅葺の方が良いが、準備に時間がかかる事から即戦力になる水苔の方が今は適している。

 内側の寝るスペースは四人くらいでギリ寝れるくらいなので、大樹と杠が復活したら反対側に同じのを作れば良いな。

 

「ふぅ、後は寝る場所を整えなきゃな。土の上に草からは進化させなきゃな」

 

 幸い柱の近くには中木で仕切りを付けているので土を掘り出しても中には入って来ない。

 仕切りの棒が倒れない程度に土を掘り返し、この前拾って来た石を大きい順に下から積んで行き、上の方には砂利くらいの大きさの物を敷き詰めて行く。

 二メートル程の竹を二本用意し、縦に一箇所だけ割っておく。

 両側に設置し、動かない様に杭止めしてから、柱の間を通れる長さを歩幅で計測する。

 外に出て歩幅に合わせて竹に印を付けていき、四分割に竹を縦に割っていく。

 竹が弧を描いている方を上にして、先程設置した竹の割った部分に挟み込む。

 四分の一程差し込んだら砂利と竹の厚さ程の物を間に差し込んで空気の換気ができる様に、そして自重で曲がらない様にしておく。

 この換気のスペースが無いとカビるからな、万年床の裏が酷い事になるのはそれが理由だ。

 残りを気合いでやり終え、換気スペースに竹を足して、ヨシ、完成だ。

 

「やりきったぜ……」

 

 旧寝床で寝るよりかは遥かに良い筈だ。

 試しに寝転がって見れば、竹の凹凸で体重が分散され良い感じだ。

 ……ただ、何か敷かないと硬いなぁ当たり前だが。

 フローリングの上で寝ている気分だ。

 さて、次に作るのは粘土を作るための効率的な装置だな。

 千空のとこから貰ってきた粘土の質が……びみょかった。

 多分、粘土質の土を濡らして適当に石とか取り出しただけだなありゃ。

 粘土は水に混ざりやすくとろっとろになるので、段差のある場所で分けやすい。

 なので、低い場所と高い場所を作り、上から下へ流れる坂道を作ったら完成だ。

 装置と言う程では無いが、効率的にするため低い場所の底には平たく割った竹を敷き詰めておき、坂には半円の竹を用いる。

 上の方で粘土質の土を水でじゃぶじゃぶと洗い、水に粘土が溶けたら水を足して下へ流す。

 暫くすれば下で粘土が沈殿するので、これをすくってやれば質の良い粘土の塊になる。

 砂利混じりの粘土の土器は、不純物と粘土の差異で割れやすくなる。

 だからまぁ、千空は厚みを作ってその点を克服しようとしたんだろうな。

 しょうがないにゃあ、と粘土質の土をどっさり持って来て、上でアライグマ宜しくじゃぶじゃぶと洗う。

 借りた分くらいは戻しておかないとね。

 

「まぁ、欠点は質は良くなるけど量が少なくなる点なんだけどな、ふへぇ」

 

 土を入れて水を入れてまぁぜまぁぜし、自分はアライグマ、アライグマなんだ……、と無心で洗い続ける。

 下が満杯になりそうになったら上澄みを上に戻して、アライグマを続行する。

 辛くなってきたら、オレはアライグマだぞ、と気合いを入れ直す。

 最終的に借りて来た量の半分くらいになったので、終わりにする。

 持って来た土の三割あれば良い方だからな、純粋な粘土層なら話は違うけども。

 下側の近くにデデーンと山になったそれをそのままにしとくと雨に降られた時がだるいので土器に移して住居に持って帰った。

 すると、昼飯のリベンジに燃える千空が夕飯を作っていた。

 

「いつの間にこっちに来てたんだ」

「あ゛? お前がアライグマしてる時だ。立派な棚作ったな、便利だぜ」

「いや、そこ新しい寝床だから。そろそろ土と葉っぱのベッドから卒業だよ臭いし」

「……マジか。いや、お前は良いのか? 此処で寝るって大分距離近けぇぞ」

「千空なら良いよ別に。それに、大樹と杠が復活した時にあいつらくっつける理由になるし」

「……はぁ、まぁ、お前が良いなら良いけどよ……。それと、大樹の事だから、こんな世界で告白するのは卑怯だ、だなんてアホな理由で長引くに決まってるだろ」

「んだとぉ? あんにゃろう、杠がどれだけヤキモキしてんのか知らんのかよ。大樹が告白してぇって様子だから自分から告白するの我慢してんのによ」

「は? いつからだよ」

「聞いて驚け、実は杠の方が先に好きになってたんやで」

 

 千空が振り向いて唖然とした顔を晒しているが、マジな話である。

 実はね、だなんて可愛い顔で教えてくれたからな。

 なので、こっそり杠にお料理教室開いてたりするんだぜ。

 

「と言う事で、変に長引かせると杠が可哀想だからな」

「マジかよ……、だが大樹だぞ?」

「大樹だもんなぁ……」

 

 まぁ、死別しなきゃいつかくっつくだろ、多分。

 千空は既に五年くらいはあの二人の両思いシーソーを見てたんだろうし、数年くらいなら誤差だよ誤差。

 千空のリベンジ夕飯は成功し、良い塩梅のスープが出て来た。

 

「カナメ、体調は大丈夫そうか?」

「うん、元々あんま重くないから大丈夫だよ」

「そうか。なら、明日俺は硬貨を掘り出しに行ってくるから此処で安静にしててくれ」

「了解。塩作りに行ってくるね」

「返事と真逆な内容を返すな。そこそこ距離あるだろうが」

「いやまぁ、別に生理中でも普通にバスケの助っ人してたしなぁ」

「……それでも、だ。お前が居てくれねぇと困るんだよ、俺が」

 

 自分で言った言葉のクサさに気恥ずかしくなったのか、千空は頬をやや赤らめそっぽを向いた。

 ふ、ふぅーん、そ、そこまで言われたらもう安静にしとくしか無いじゃんね……。

 まさかのデレ千空を見る日が来るとはなぁ、思いもしなかった。

 ならまぁ、仕方が無い。

 今ある塩を塩水にして肉類は燻製にしないと駄目だなこりゃ。

 二人の食事ペースだと確実に余らせて腐らせるから勿体無いんだよなぁ。

 

「分かったよ、ちゃんと家で待ってるから」

「振りじゃねぇからな?」

「分かってるってば」

 

 信用無いなぁまったくもぅ、思わず笑みが浮かんでしまう。

 まったく、仕方がないなぁ……、へへへ。

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