石の上にも三千七百年   作:不落八十八

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 んー……、やっぱりお風呂に入ってから寝るって言うルーチンは必要不可欠だなぁ。

 昨日の疲れがほとんど取れている気がして爽快な朝の目覚めに思わず笑みが浮かぶ。

 うーん、実に生きているって心地がする、やっぱり平和が一番だよなぁ。

 隣でぐったりと寝ている千空の額の熱を測って、風邪になっていないかを確認する。

 うん、然程熱いとは思えない普通の温度だ。

 マジで千空はオレの生き延びる生命線なので体調管理にはしっかりして欲しいものだ。

 千空の悪癖に、効率のために自身を蔑ろにする、と言うのがあり、お手製ロケット開発の時に原因究明のために徹夜で作業し続けた事があると大樹から聞き及んでいる。

 科学者、と言うか研究職の業と言うべきか、研究にのめり込むタイプの性を有している訳で。

 

「徹夜させないように見張らなきゃなぁ」

 

 今は二人だけだから良いが、大樹や杠などの復活した人が増えて、グループ分けをした時にやらかしそうで怖いんだよなぁ。

 朝のルーチンを終え、朝食に乾燥野苺と猪ベーコンにアサリ出汁の野草スープを拵える。

 チラリと千空を見るが起きてくる気配は無い。

 ……仕方がないなぁ、近くに飲める水を用意してから先に朝食を終えて外に出る。

 昨日千空が必死こいて竹の紐を用意しようとしてくれていたので、それに合わせて負担を減らすべく考えを変える。

 高さが足りないなら、天井の方から近付いて貰えば良いのだ。

 着火用の一式と石斧改に木槌と竹シャベル、茹でたソーセージの昼食を持って本拠点予定地に向かう。

 歩く場所を河原から土のある部分にして短縮を図り、一時間半くらいで辿り着いたので一息吐く。

 本格的に拠点を作る上で考える事は壁の断熱性だ。

 

「これから来たる夏と冬、それを乗り越えられる家を作ろう」

 

 具体的にどうするかと言えば、先人の知恵に則り竪穴式住居をベースにする。

 土による断熱は寒暖な空気も遮る上に素材がそこらにある利点がある。

 予定地は河原を間に挟む場所かつ、平坦では無く丘立った盛り上がりのある場所を選ぶ。

 おぉ、こっちは凄い草生えてるな……、一箇所に纏めて焼いちゃうか。

 川に背を向ける形で入口の場所を目印付けて、拾った枝で切り崩す部分に線を引いていく。

 掘った土を河原側に放りながら、歩幅で測った三メートル四方のリビング予定の場所を上から掘っていき、コの字を立てた作りにしていく。

 

「あぁ、うん、いつかは出てくるだろうなぁと思ってたけども」

 

 竹シャベルにカツンと当たった硬い感触、掘り返して見れば石化した人だった。

 土砂に巻き込まれる形で此処に埋まっていたのだろう、引き抜いてみれば胴の半ばで折れてしまっていて、その下を掘ってみたが下半身は見当たらなかった。

 テケテケ状態となってしまった人に手を合わせてから、少し離れた所に置いておく。

 それから二人程似た様な状態で埋まっている石像を掘り返し、手を合わせてから一ヵ所に纏めておく。

 いつか、こういう人たちを埋めるための慰霊碑とかも作らなきゃなぁ。

 

「続きやるかぁ」

 

 天井部分を開けているのは崩落を防ぐためでもあるが、柱などを上から入れるためでもある。

 ぶっちゃけた話、天井は地上より上にあれば良いので、下に掘り下げて行けば労力は掛かるが、脚立や梯子に乗って高い位置の柱を上から叩かなくても済む。

 竹で作る予定だったが、火事の可能性に思い至りこの様な形にした訳だった。

 

「竹には油分たっぷりだしね……。竹同士で擦ったら着火できちゃうし」

 

 調理中に炭が欲しいなと考えて色々思い出していたのだが、竹は着火剤に使えるくらいによく燃えるのだ。

 竹炭作りで着火剤に竹をほぐした火口を使うくらいに竹は万能素材な訳だ。

 ある程度掘れたら入口から離した所に即席石積みコンロを作り、適当に枝を燃やしてウッドアッシュを作っておく。

 入口部分から三段、いや、四段程度の階段を掘り下げ、河原の石を埋めて即席の階段にする。

 後で細い木を崩れ防止に打ち込まなきゃなぁ。

 入口から真っ直ぐ進んだ壁に三十センチ程の幅で切り込みを入れて、暖炉コンロのための煙突部分を掘っていく。

 一番上まで掘り進んだ所で小休憩を取り、枝を燃やしてる焚き火でソーセージを焼いてお昼にする。

 

「はぐはぐ……、流石に千空も起きたよな……?」

 

 少し心配になったが、千空だし大丈夫だろうと昼食を続ける。

 仮に風邪を引いてても慈養強壮に良い生薬が手元にある。

 まぁ、欲を言えば大蒜と生姜が欲しいし、何なら栽培もしたいくらいだがまだ見つけて無いんだよなぁ。

 蕎麦っぽい白い小さな花を付けたのは見つけたが、ただの雑草だったりするかもだからあまり期待できない。

 

「ふぅ、そろそろやるかぁ」

 

 ソーセージを刺していた枝も焼べて、煮沸した川の白湯を飲んでから作業を再開する。

 煙突部分になる場所に内側から河原の石を木槌で叩いて埋め込み、近くを探して粘土質な土が取れる場所を見つけて、分離した質の良い粘土を内壁に貼り付けて伸ばす。

 拳程の太さの木を切り倒し、枝を取り除いて二メートルくらいに切り揃える。

 下から三十センチ程に石斧改と木槌で割断して溝を掘って、溝が前になる様に煙突の内側になる様に両側に上から叩き込む。

 拳一個分中央が開いているので、先程の溝にハマる様に両端を割断したものを嵌め込む。

 そして、開いた隙間程の太さの木を切り倒し、大きさを揃えて片方を窪ませ、窪みを真下にして噛み合わせて上で三本を縛る。

 後は石を粘土で補強しながら手前に丸括弧を並べた様に積み上げて、炭焼き用に作った平たい円状に穴を複数開けた土器を五徳として埋め込む。

 煙突の前壁となっている三本の木の隙間を粘土で埋めていき、乾かしながら層を増やして粘土を分厚くしていく。

 

「粘土を乾燥させてから焼いちゃえば、煙突の出来上がりっと」

 

 上に登って煙突口に石と粘土で入口を作って補強してしまえば暖炉コンロ改の出来上がりだ。

 仮拠点の方のは少し雑で小さかったけれど、此方の暖炉コンロは大きさも頑丈さもしっかりした作りになっている。

 次にリビング予定の此処を綺麗に整え、四隅にそこそこ太い丸太のための穴を掘っておく。

 外側に拳程の丸太を積む予定なので内側に少しズラす事を忘れない。

 柱にするための太い木を、受け口、追い口でツルを作って切り倒していく。

 切り倒す方向に受け口となる直角三角形めいた切り口を作り、その反対側から受け口の高さよりも低くした位置に追い口と呼ばれる真横へ続く切り込みを石斧改で入れる。

 受け口で掘った横方向の深さと追い口の深さがもう少しで重なる頃合いになると、自重によって木が受け口方向へゆっくりと倒れていく。

 この時、受け口と追い口との間に残る縦の部分をツルと言い、これが木が即倒するのを防ぐ大事な安全弁の様な仕事をする訳だ。

 あ、これ、猟友会ゼミでやったところだ、と言う感じで木こりをしていく。

 

「はぁー……、大木はきっちぃ」

 

 たまに会心の一撃と言った感じに良い音が鳴る時があるが、大半は繊維を潰す鈍い音だった。

 額の汗を拭って深呼吸し、息を整えてから水を飲む。

 二本目を切っている最中だが若干疲れてきた。

 うーむ、この調子だと杠と再会する頃には筋肉小盛りマッチョウーマンになってそうだ。

 良い感じに気が抜けたので伐採を続行する。

 少し足りない感じだな、此処まで来たら楔打っても良さそうかな……。

 と、安易な逃げに走り、鋭角な手頃の石を持って来て追い口に差し込んでから木槌で叩き込む。

 石が食い込むにつれて圧力が生じ、断面が持ち上がって角度が変わる。

 すると、受け口により支えるべき場所を失った大木は自重で傾いていき、最終的にそのまま倒れ伏した。

 ……これで二本目かぁ、後二本切らなきゃならないんだよなぁ。

 まぁ、壁材にする木も切らなきゃいけないし、ゆっくりやるかぁ。

 ゴッ、ゴッ、ゴッ、カッ、ゴッ、と腰を入れて石斧改をスイングして大木とタイマンを張る。

 負けられないっ、戦いがっ、此処にぃっ、あるんだっ、と主人公になったつもりで気合を入れる。

 三本目、そしてラスボスの四本目を打ち倒す頃には既に夕暮れに差し掛かっていた。

 半日が伐採で時間潰れたな……、肉刺がやや浮かんだ震える掌を見て乾いた笑みを浮かべる。

 女性だからと言って自然は優しくしちゃくれないし、必死こいて一日を生きるしかないのだ。

 ふぅー……、くっそ疲れた、寝たい、眠い……、打ち倒した大木はそのままにして、拾った枝に火を灯す。

 こっから一時間弱あるもんなぁ……、流石に日が暮れてるよなぁ……。

 火を灯した枝を松明代わりにして下流へと下っていく。

 石斧改の持ち手を改良したとしても、結局負担が減るだけで負荷は残る訳で、当然ながら全吸収してくれる訳ではない。

 

「あ゛ぁ゛~、ナホビノみてぇに物理吸収付け替えてぇ……、大木相手にプレスターン無双したい……」

 

 手元に返ってくる物理ダメージを吸収できたら永久機関ができるじゃんね。

 近くで拾った良い感じの長い棒を杖に道を歩くよ何処までも、森のくまさんは勘弁な。

 仮拠点に戻ってくる頃にはすっかり日は落ちて、コンロから漏れる火の灯りが精々となる。

 持っていた松明擬きは湿気ていたのか半ばで鎮火していたようで、それすらも気付かずに歩いていたらしい。

 すっかり疲れた身体を引き摺る様に、役立たずの松明擬きを川に投げ込んで仮拠点の入り口を潜る。

 

「随分と遅かったな、ってお前その手はどうした」

「へへっ、名誉の負傷ってやつさ、大木四本は流石に強敵だった……」

「……はぁ、お前も俺の事を言えねぇじゃねぇか」

「へへへ……、面目無い」

 

 科学者として研究に没頭する千空と開拓者として歩みを止めないオレ、猪突猛進タッグだなぁこりゃ。

 此処に大樹を入れれば夢のジェットストリームアタックを掛けれそうだな。

 大樹、千空、中、ジェットストリームアタックを掛けるぞ、ってお前誰だよ。

 疲れ切って頭が若干ハイになっているようで、溜息を吐いた千空から貰った白湯で心を落ち着かせる。

 

「今日の夕飯は、燻製アジのつみれ汁と猪肉のステーキだ」

「ありがとぉー……、流石に今日はもう動けないや」

「だろうな、今日は何をやってたんだ?」

 

 千空お手製のご飯を食べながら、今日の事を報告する流れになった。

 えぇと、本拠点の根伐りと煙突と暖炉コンロ、大黒柱の伐採、で合ってるかな。

 それを伝えると千空が頭を抱えて、若干遠い目をしてから溜息を吐いた。

 

「働き過ぎだろ、竹のシャベルで掘った後に伐採ってお前……、もう少し進捗落とせ馬鹿」

「へーい……、まぁ、大黒柱になる予定の四本は切り終えたから少しは楽できるよ、タブンネ」

「本当かよ? 此処からあそこは遠いんだからあんまり無茶するなよ」

「へへへ、りょーかい」

「本当に大丈夫か……? 今日はもう風呂入って寝とけ」

「うん、そーしとく」

 

 段々と家に帰ってきた気分になって眠気が勝り始めて頭がぼやけていく。

 深い、それはもう深い溜息を吐いた千空の肩を借りてふわふわ心地で風呂場へと送り出された。

 川の水で身体の汚れを落とす気力も無いので、少し横着して竹筒を使ってお風呂のお湯で掛け湯をする。

 そのままザブンと風呂に降りれば良い感じの温もりに身体が包まれて――。

 ――いったぁっ!?

 思わず額を抑えると呆れ顔の千空が竹を割って作ったのだろう長い棒を肩に乗せた状態で立っていた。

 えぇと、何してたっけ、と思い返すと風呂で寝落ちしていたのだと理解して――。

 

「疲れ過ぎて溺れてるのかと思ったわ、何時間入るつもりだお前は」

「え、えへへ、ごめんね?」

「始末はこっちでしといてやるからさっさと上がって暖炉当たっとけ」

「はーい」

 

 身体に掛かっていた衣服が湯舟にぷかぷかと浮かんでおり、紳士的な対応をしてくれていたようだった。

 恐らくあの竹の棒で衣服を掛けてからぐーすかぴーしてたオレの額をぺしったのだろう。

 衣服を焼き石ぶっ転がしゾーン改め衣服じゃぶじゃぶゾーンで洗って、汗と土を落してから羽織る。

 少し寝ていた事で疲れが若干取れたので、言葉に甘える事無くちゃんと引継ぎの準備をしてから仮拠点に戻った。

 

「お待たせ、千空。入れる様にしといたからゆっくり入ってね」

「あ゛ん? あぁ、寝てスッキリしたのか、杠が居ねぇんだからあそこでぶっ倒れられたら流石に困るぞ」

「あはは、そだねー。まぁ、その時は恨まないんで回収よろです」

「……お前なぁ、女の自覚あんのかよ」

「ん、そりゃまぁあるよ。でもまぁ、千空になら別に良いかなって」

 

 ぽろっと出た言葉に、沈黙が流れて二人して赤面して固まった。

 無自覚で無意識な吐露だったが、明らかにこれセックスアピールじゃんね?

 告白紛いなカミングアウトをしてしまったオレは、未だに根本にある男臭さが抜けてないのだと自覚する。

 いやまぁ、十六年も女の子してたら流石に心持ちも女になるよ、性的にもね。

 けどね、精神的な所に残ってる男臭さと言うか、参照するのは男の時に培って固まったデータ群の訳よ。

 つまり、性欲に負けてこの貧相な身体を貪ろうとする事を千空はしないだろうから、有事の際には別に見ても良いし頼むから救出してくれ、と言う信頼から来る言葉だったのだ。

 男友達に対して言った下心の無い純粋な友情から来る言葉なのだ、言い方を完全に間違えたが。

 これじゃあ明らかに誘い受けの意味深な台詞じゃねぇか、オレのドアホ。

 

「ゆ、ユウジョウ! そう言うエッチな事をしないって信頼してるから咄嗟に出たユウジョウワードであって、多分、そう言う感情は、無い……のか……?」

「……俺に聞くなよ、お前も大樹のアホが移ったんじゃねぇか?」

「あ、あはは! かもね! ……かもね? 疲れてどうかしてるみたい、暖炉当たってから寝るね……」

「お、おぅ……」

 

 ドン引きと言った感じではなく、千空も千空で何かしら思う所があったのかしおらしい返事だった。

 ははは、笑えよ、卑しか女杯に登録されてしまいそうな無様な姿を見せたオレを……。

 ……いやまぁ、ぶっちゃけ千空って顔は良いし、頭も良いし、科学馬鹿なのが割とアレだが、普通に優良物件だからなぁ。

 地味に大樹の注目の裏で人気あったんだぞ千空って。

 まぁ、科学実験の時のヤバめの笑みやら、川原でのロケット実験だとかで、良い人だろうけどちょっとね、と言う感じに落ち着いていたんだけどな。

 ……あれ、まさかと思うが、オレの存在も加味されてたりした?

 杠は大樹にぞっこんだったのは傍から見れば即分かりだったし、必然的に千空と一番仲の良い女子としてオレが選出されて敬遠されていた可能性があるな……?

 もしや、オレの前では千空狙いの奴が居なかっただけで、案外裏では千空もモテていた可能性が……?

 うーむ、生存戦略で千空と一緒に居たのが仇になったかな、いやまぁ今の状況じゃ何とも言えないが。

 ……いやまぁ、千空になら抱かれても良いかな、なーんて。

 若干悶々とした気分で竹のベッドに倒れ込む、沈まれオレの煩悩……っ!!

 娯楽が無いからってそっちの方向に倒れ込んだらもう帰って来れねぇからな馬鹿がよ。

 ふ、二人きりってのが悪いんだ、千空、早く杠と大樹を復活させてくれ……っ!

 あいつらの、片手は恋人繋ぎしてるのに、もう片方の手で付かず離れずな両想いシーソーしてるもどかしいピュアな光景を見ていればきっとこの煩悩も消え去る筈だろうから。

 本拠点に個人の部屋を作るべきか、と悶々と考えて――……すやぁ。




本作のオリ主は性自認は普通に女に偏っています。
けれども物心は既に前世で培った色々で固まっているので若干男臭い感じで。
何処ぞのジャグラくんちゃんの様な面倒な性自認はしてないので安心してください。
(ぶっちゃけ、Dr.STONEの世界って美麗多めだから嫌悪感減るよねって言う)

石化復活液=毛生え薬説の否定材料はソユーズ君です、悲しいね……。
(ソユーズ編最後の方で石化して復活しても生えてない)
ワンチャン、毛根ごと頭の皮膚を抉り取ってから石化して復活したら治る……かも?
毛根が死んでいるのが原因だから、新しいのになったら……いけるか?
治療過程がグロすぎるなぁ。
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