石の上にも三千七百年   作:不落八十八

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 黒曜石のナイフで動物を解体するのも慣れてきたなぁ、と道すがら仕留めた野うさぎの毛皮を剥いでいく。

 鹿や猪と違いふわふわとしており、茶色の毛並みはまぁまぁと言ったところか。

 一羽の毛皮で作れる物なんて高が知れてるので鞣したら保管かな。

 冬に手袋や靴下を作るのに使えそうなので、数は集めておきたいものだ。

 

「ピーターラビットの父親がミートパイにされてる訳だし、これはステーキにしようね」

「……肉として美味いって言いてぇんだろうがよ、言い方もう少しあったろ」

「へへへ、鶏肉に似て上品な感じの味や香りがするんだよ。兎って完全に草食だから雑味は少ないけど、若干ゃ野生味を感じるかな」

「随分と食べ慣れた食レポするじゃねぇか」

「猪を捕まえるために仕掛けた罠に掛かってる時があってねぇ。いやお前体格的に其処から出られるだろって感じなんだけど、黙々と撒き餌を食べてたりしてね。まぁ、隙晒してるなら仕留めるよね」

「そこらへん無慈悲だな本当に……」

 

 剥ぎ取った毛皮の中に肉を仕舞い込み、竹籠の中に放り込む。

 竹の罠で足を捕まえた獲物に加えて、こうして油断を晒している動物も獲物に出来る様になった事で肉の供給は良い感じに出来る事だろう。

 そうなるとやはり長期間保存するための手段である冷蔵庫や冷凍庫と言ったものが欲しくなるな。

 塩漬けや燻製にして保存する方法も、抗菌性に優れる竹の葉で延命しているに過ぎない。

 ……長期間塩漬けにして干して燻製するのが一番、か。

 最も避けなくてはいけないのは食べたい時に食べる物が無い、飢餓に陥る事だ。

 これだけは本当に救いの無い終わりを迎えるので、冬への備えは万全にしなくてはならない。

 本拠点に辿り着いたオレたちは二手に分かれて作業を開始し、畑を使える様にする事に尽力する。

 柵によって区切られた区間を耕して石と根っこを取り除き、五十センチ程は掘り返して徹底的に除去を行う。

 時折人の破片っぽいのが混ざってて若干テンションが下がったが、この前の場所に一ヵ所に纏めて供養しておく。

 

「さて……、隣に腐葉土も作るかぁ」

 

 畑の隣に一メートル四方で杭を打ち、そのまま一メートル程掘り下げた空間を作る。

 虫が外側から入って来ない様に内側にアッシュセメントを塗りたくって壁を補強。

 足元には余分な水分を抜くために大き目の砂利を敷いておき、その上に森から拾ってきた落ち葉を被せていく。

 石や良く分からん虫を取り除いた土を被せ、落ち葉を被せ、と段々になる様に繰り返していく。

 途中で蚯蚓を見つけた場合は一緒に放り込んでおき、堆肥作りの労働力として働いて貰う。

 上から川の水を満遍なくかけて終わりだ。

 後は時々掻き混ぜてやったり水をあげて発酵を促せば良い感じになる……、筈だ。

 コンポストに使う様な微生物入りの商品が此処にある訳もないので、後はもう微生物任せになる。

 竹を縦に割った物を並べて蓋をしたら完成だ。

 

「まぁ、このままだと腐葉土も炭素が多くなるから生ごみとか入れないとだよなぁ」

 

 雑草やら生ごみなどを加えて炭素控え目の腐葉土が作れれば御の字であるが、そこらへんは出来てからのお楽しみと言うべきか、測定するための道具が無いので手探りになる。

 良い感じの棒に幾つか穴を開けて、両端をやや平たく削った棒を組み合わせた掻き混ぜ棒を作成しておく。

 実際に使ってみれば、まぁ、うん、素手とか棒で掻き混ぜるよりかは良いかな、ぐらいの代物になった。

 

「……ほんと、発酵を必要とするものは時間掛かるなぁ」

 

 やるべき事が増えていくのは良い傾向ではあるが人手が欲しいなぁ。

 耕し終えた畑を本格的に弄るのは本拠点が出来てからだね。

 流石にあの仮拠点と往復する毎日は嫌だし、一度植えてしまったら面倒見ないといけないしね。

 少し離れた所で頑張っている千空を一瞥し、本拠点作成の作業に手を付ける。

 リビング予定地はある程度作ったので、寝室と冷暗所かな。

 寝室さえ作ってしまえば此方でも寝泊まりが出来る様になるので、そっちが優先かな。

 正面から見て左側の壁に入口となる場所に枝で線を描いてから、それに沿って掘り進める。

 五十センチ程入口部分を掘り終えたら崩れない様に土留めの杭を打っていく。

 掘り出した土を外に出してから、上に上がって寝室予定地を掘り進めていく。

 大黒柱を打ち込んだ経験から太い枝を三本纏めた物を柱にすれば良いじゃんと思い付いた事もあり、寝室の柱は割かし早く進んだ。

 ……まぁ、また石化した人を掘り出してしまったので供養地に転がしてから南無っておく。

 左半分と右半分に分かれている感じだった事もあり、重ねてみたら別人のパーツだったので諦めるしかなかった。

 

「……別人のパーツを合体させてから復活したらどうなるんだろうな」

 

 ベースは人間の身体であるし、血液や免疫系の拒絶反応さえなければワンチャンいけるのだろうか。

 上半身と下半身だけではなく、頭と首から下全部だとか、それこそ腕や脚の交換なども……。

 何処ぞのシロウやスカーなどの様に適合さえすれば、臓器移植のノリで案外できてしまうのではなかろうか。

 それこそ石化破片を磨り潰した物を失った場所にあてがってから復活させたら治ったりするかもしれない。

 

「……あかん、これ考えれば考える程マッドサイエンティストのそれだよこれ」

 

 ふと思いついた事であったが、心の奥底に罪悪感や倫理感と言う重しで沈めておく事にする。

 指とか脚にあった傷は復活後に治ってた訳だし、石化に再生能力付与的なのがあったりするんだろうか。

 ピカッと緑の光線を患部に一当てして復活液を垂らしたら、何と言う事でしょう粉砕骨折もこの通り、とかできたりするのかな?

 医療メーカーが軒並み倒産しそうな効果だけども、肝心のメカニズムが分かんないと無理だよねぇ。

 ほんと、人類総石化だなんてした奴は何がしたかったんだか。

 

「お昼ご飯作るかー」

 

 捌いた野うさぎを毛皮から取り出して、毛皮は川で洗って近くに干しておく。

 さて、野うさぎは背中の部位が柔らかくて美味いのでそこをメインにしよう。

 頭を切り落としてから四肢の関節を折り曲げながら切り外していき、胴体と四肢に取り分ける。

 背骨に沿ってバラとロースに切り分けて、内臓を取り出して取り分ける。

 骨とかは全部煮込んで出汁にし、大蒜を一片入れて野草を適当に摘んでスープにしておく。

 バラとロースは塩を振って馴染ませてから平たい石でじっくりと焼いてステーキにしていく。

 四肢は……どうしようかな、焼いても良いがスープの具材にしても良いんだけども。

 まぁ四本あるし、半々にするか。

 

「ふぅー……、なんとか形になったわ」

「おぉ、おかえり千空。ご飯できてるよ」

「そいつぁおありがてぇ。力仕事は腹が減るからな……」

 

 どっかりと座った千空の前に野うさぎのバラ&ロース&後ろ足のステーキと前足の兎汁をお出しする。

 いただきます、と手を合わせてからむしゃむしゃと食べ始める千空を見ながら兎汁に手を付ける。

 んー……、素朴だけど、だからこそ味の違いが分かると言うか、上品な味と称するべきか。

 

「ん、美味いな、食肉にされてるだけはある」

「ふわふわ毛皮に美味しいお肉、しかも繁殖力も強くて完全草食で扱いやすいからね」

「……家畜化するか? 見た目で杠あたりが口出ししそうだが」

「そうなんだよねー、日本だとポピュラーな食材じゃないから反発はあると思うよ、特に女子」

「お前も女子だろうがよ」

「ん? ……おやおや、千空さんったらわたくしめに女の子を求めてらっしゃる?」

 

 ニヨニヨと意味深な笑みを浮かべて揶揄ってみると、はんっ、と鼻で笑われた。

 少し癪に障りむっとしていると溜息を吐いてから千空が真顔で言った。

 

「丁度良い機会だから言ってやるが、目に毒だ」

「随分と内容端折ったね!?」

「距離近ぇし、良い匂いもするし、無防備だし、俺からすりゃお前は十二分に女の子だっつーの」

「ぐ、ぐぬぬ……、なんか普通に褒められた……」

「だからもうちっとばかし淑女然としやがれ、いつか手が出んぞ」

「……はーい」

 

 これは茶化すところじゃないな、と少し反省して親しき中にも礼儀ありと肝に銘じた。

 ……ん?

 いつか手が出るって事は地味にゲージが溜まってるって事では?

 そ、そっかぁ、千空に性欲ってちゃんと搭載されてたんだね……。

 男友達染みた距離感で居てもそれっぽい反応してなかったから、そう言うのが薄いのかなと勘違いしてた。

 良かった、てっきりオレに魅力を感じて無いのかと思って……ってぇ、ナニ考えてんだオレは。

 少し顔が熱くなって赤らんだのを感じたのでスープをお代わりして蒸気に当てられたんですよと誤魔化す。

 千空をちらりと見やれば、自分の言った言葉に思う所があったのかやや頬を赤らめている様子だった。

 ん、んんー、誰か助けてくれー、こんな甘酸っぱい雰囲気に出くわすだなんて思いもしなかったんだが。

 もしや、オレって意外と千空が好きだったりするんだろうか、これが恋なのか、だなんて直感する事は未だに無いけれども。

 あぁ、うん、き、気まずい……、千空の顔を直視できねぇんだけど……。

 

「た、炭炉の進捗どんな感じ?」

「あ、あぁ、奥行き二メートル、高さと幅一メートルぐらいに掘り出して壁に粘土を張り付けてきたところだ。外側を成形して煙穴と煙突部分を作るつもりだ」

「そっかぁ、こっちはコンポスト作って、寝室の……、もしかして、寝室って個別の方が良かったりする……?」

「……別に。お前が嫌じゃなきゃ近くても構いやしねぇよ」

「そか、なら似た様な感じで作るね……」

「おぅ……」

 

 再び二人して顔を赤らめる事態に陥ってしまった、き、気まずいっ、自分で話題にしておいてなんだけどもっ。

 もしかしてお風呂とかも結構我慢して付き合っててくれたりする感じか、これ。

 そりゃまぁ、ある程度色気を感じるおにゃのこが近くで入浴してる訳だし、反応するよなぁ……。

 かつての感性に答えを求めてみれば、気まずいってレベルじゃねぇぞ、と言う回答が返ってくる始末。

 ですよねー、知ってた、何せ今のオレでも流石にドギマギするしね……。

 普段の千空は正しくネギなんだが、お風呂を上がった後のしっとり千空はビジュアル系なんよ、凄くえっち。

 可能ならずっと髪を下ろしててくれないかなぁと思うくらいに、好みなんだよなぁしっとり千空。

 じーっと千空の髪を見ていたら訝しげな表情を浮かべられてしまった。

 

「あぁ、いや、その、千空の髪いつも立ち上がってるなぁって思って」

「あ゛ー……、知っての通り、そう言う髪質なんだよ。水ぶっかけねぇと下りやしねぇ」

「そっかぁ、オレは普通にストレートだからなぁ」

「まぁ、確かにそうだな。少し伸びてきたがまた切るのか?」

「んー、千空はどっちが良い?」

「は? ……はぁ? …………まぁ、そうだな、伸ばした姿も似合ってると思うぞ」

「ん、なら暫く伸ばすね」

「……おぅ」

 

 更に再び青春真っ盛りな会話をしてしまい、二人して赤面して机に突っ伏す羽目になった。

 ……助けてくれ杠。

 散々お前を揶揄って悪かったと思う、だからもう石化復活液とか無しで今直ぐにドカーンと復活して助けてくれ。

 お前も大樹も大概ギャグ漫画のキャラっぽいから何とかなるだろ、何とかしてくれ、しろよぉ!!

 こんなの耐えられる訳無いだろ勘弁しろくださいマジでぇっ!

 

「……千空、杠たちの復活マダー?」

「最低でも後十日は掛かるだろうな、アルコール発酵を早める手段はあるが正確な温度を計れない今じゃ全滅のリスクもある」

「そっかぁ……」

 

 いっその事開き直ってしまったら楽になれるんだろうか、だなんて茹だった頭で思いついてしまう。

 この居心地の良い関係を壊したくないからそう言う関係の話をしていないのだから、逆転の発想でそう言う関係になってしまえば気まずくならなくなるのでは???

 たまってる……ってやつなのかな、と内なる♀ヒラがオレに問い掛けてくるので、はい、と即答したくなるのを理性で踏み止まる。

 千空を見やれば此方を見て呆けている様だった、頬の熱さからして顔真っ赤になってるからだろうか。

 お互いの視線が絡み合わ――ないな、千空の視線は下の方に向かって……あっ。

 熱視線の理由に思い至り、即座に机に垂直になる様に背筋を伸ばした。

 今、オレが着ているのは貫頭衣型の上着だけで、この小さい胸を保護するブラなんてしてないしインナーシャツもある訳が無い。

 そのため、前屈みになって顔を上げたら、重力に従って首元が下がれば千空の角度から何が見えるかだなんて分かり切っていた。

 

「その、すまん……」

「ごめん……、オレも無防備過ぎた……」

 

 何とも言えない雰囲気のまま、昼食を終えて終始顔真っ赤な状態でオレらは各々の作業に戻ったのだった。

 内なる♀ヒラが、しょうがないにゃあ……、とニヤリと蠱惑な笑みを浮かべていたかもしれないが恥ずかしさが勝って揶揄う気にはならなかった。

 どうすっかな、寝室を作ると言う内容のせいか色々な事が脳裏に過ぎって作業にならない。

 ……こっそりとシて鎮めるかぁ、見られるとしても千空だけだろうし……、その時は……、ね?

 何処か仄暗い快楽を感じながら、しゃがみ込んでから衣服の下に手を入れて――。




――以降は省略されました。
全てを読むにはワッフルワッフルと書き込んで(ry
冗談です、健全な二次創作なのでね。
ラッキースケベは幾らあっても良い、古事記にもそう書かれている。
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