トリニティ4兄弟   作:Utena(臺)

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第3話 ガンダムマイスター

ソレスタルビーイングが最初の武力介入を行って、幾許の時が経ち、トリニティの母艦のモニターにはセイロン島が映されていた。

 

「セカンドミッションがソレスタルビーイングに発令されたようだ。」

「ラグナ・ハーヴェイからの指示は依然待機だ。クロード。」

「分かっている。俺達は組織だ。他の部隊がどんな動きをしているのか把握しておいて損はないだろう?」

「まぁな。だが、俺達はトリニティだ。あまりソレスタルビーイングに入れ込み過ぎるな。」

「……あぁ。」

 

セイロン島を映すモニターには、シンハラ派のアンフとタミル派のティエレンが激しい戦闘を繰り広げている様が映る。

 

俺は、ヨハンにぃからの忠告を受け、これからの自身の動きを考えずにはいられない。

俺達は、いずれソレスタルビーイングと敵対し、兄妹はサーシェスによって殺される。

そう、サーシェスは今後の世界の歩みの()となる人物だ。目的を果たすためには最大の障壁となることは間違いないが、下手に殺すと世界の歩みが変わってしまい、変革や対話へと向けた歩みもまた変わっていく恐れがある。

この世界は、いずれ一つになる。その道筋も知っている。だから俺は、目的を持つことのできる余裕がある。

俺が、ただのトリニティになってしまったら、兄妹と俺は死に、ロックオンも死んでしまう。

俺は、小さなため息をつき、モニターに集中し始めた。

 

 

 

4機のガンダムの武力介入が始まった。圧倒的多数のティエレンをあっという間に動けなくし、これを好勢とみて、進撃し始めたアンフ達を破壊していく。

 

戦闘を行う者全てを等しく破壊していく宣言通りの行いは、今まさに世界を揺らしている彼らの存り方を証明しているようだった。

戦闘を持続させる意思が両者にないことを確認するかのように、4機のガンダムはとどまった後、空へ消えて行った。

 

「セカンドミッション終了か。」

「呆気ないものだったな。」

「こんなのはあくまでも自分達のプロモーションってことだろう。しばらくはこんなミッションが続くんじゃないか?」

「生温いやり方だ。この程度では示威行為としても弱い。戦闘を起こせば相手方の戦力を勝手に削ってくれる駒扱いされるだけだろう。」

「ヨハンにぃは完全に圧殺して、ガンダムの力を早急に示すべきってんだろ?」

「クロード、お前はあまりそういったやり方が好みじゃないようだがな。世界の早急な統一の為には必要な犠牲だろう。」

「人死にの数程度で、人類の意思の統一にかかる時間は変わらないと思うがね……」

 

こういった、武力介入に対する俺とヨハンにぃのささやかな対立は昔から始まっている。トリニティのガンダムマイスターとして作られた俺達は、冷酷になるよう教育されてきた。そして、世界の変革には犠牲が必要だということを。

俺は、不要だと判断されない為に教育を飲み込んでいるフリをしていたが、兄妹達は勘づいていたようだ。

それから、俺は兄妹達の姿勢に表立って反抗しないが、話を聞いていると不機嫌になるちょっと厄介な奴だと思われているようだ。

ただ、兄妹愛の方が強く、俺の姿勢や考えに兄妹が反抗したり、監視者に伝えるようなことは無かった。

そういった積み重ねが、兄妹達をサーシェスに殺されたくは無いという思いにも繋がってしまう。

ソレスタルビーイングが活動し始めてから、俺は考え込んでばかりだ。

頭をクリアにするべく、俺はフィアーのコックピットへ向かった。

 

 

 

ソレスタルビーイングはその後も武力介入を進めていき、デュナメス、キュリオス、エクシアによる世界三拠点同時破壊が行われた。

 

二度のソレスタルビーイングによる武力介入によって、多大な被害を受けたセイロン島の戦線、及び人革連は、ソレスタルビーイングをテロリストと定め、明確な敵対を示した。

 

その頃の俺達トリニティは、呑気なもんだった。

 

「ねぇクロにぃ?この服どう?今日買ったのよ♪可愛い?」

「あぁ、かわいいよネーナ。毎日別の洋服を見せてくれるから飽きないよ」

「いいのよ♪クロにぃ♪作戦が始まったらスーツばっかりだもの、今のうちにお洒落を楽しまなくちゃね♪」

「そうだね、楽しいことはいくらやってもいいんだから」

「オイ!クロードォ!そんなシケた面してンなこと言っても、説得力がねェよ!」

「そんな顔してるかね……」

「クロード、確かに最近のお前は調子が悪そうだぞ。機体捌きは良くなっているがな。それが尚更心配だ。」

「大丈夫だよ。少し考え事があるだけだ。それよりもネーナ、男遊びは控えるようにね」

「下品ね、いらない心配よ!」

 

呑気なのは、主にネーナだ。作戦開始までの待機命令を、自由な余暇だと考えているようだ。それでも、明るい妹の顔を見ていると、少し気持ちも上向きになるのだから、我ながらどうしようもない兄バカの一人になってしまったと自省する。

 

 

 

ソレスタルビーイングがタリビアでの武力介入を決行した。

これまでの期間で、スローネフィアーの操縦はかなり上達した。俺達トリニティは、ソレスタルビーイングとの戦闘でも練度不足が指摘されていた。機体性能に乗っかっているだけのパイロットではなく、エースとしての力量が必要だと俺は考え、熱心にフィアーに乗り、慣らしてきた。

地上に降りたネーナとミハにぃは、おそらく正史通りの力しか出せないだろうが、ヨハンにぃはシミュレーションや、実際に起動した状態での訓練等に付き合ってくれ、かなり実力が上がっているように思う。

フィアーの不意を突くような脚部のビームサーベルによる攻撃を捌けるようになり、ビームライフルでこちらの動きを制限する射撃を行えるようになった。

フィアーは戦闘を行う上での手数が少なく、ソードライフルでの牽制、急接近、GNソード及び脚部ビームサーベルでの攻撃といった択がメインになってしまう。

斬りかかりながらのソードライフルの接射なども行ったが、ヨハンにぃのように択が既に読める相手だと、意外と避けられたり、攻撃で逸らしたり、対応されてしまうようになった。

こちらの運動力の差で抑え込み、攻撃する事によって最終的な敗北は少ないが、それでも確実にヨハンにぃに敗けるようになってきている。

 

「強くなったね、ヨハンにぃ。」

「敗者にかける言葉がそれか。」

「いや、ライフルでの牽制は完璧だったよ。だから、脚部のビームサーベルを手に持ったんだ。」

「ライフルの弾をサーベルで受け止める馬鹿がいるものか。」

「どうにも接近出来ないなら、真っ直ぐ行って、予測出来る場所にサーベルを置いておけばなんとかなると思ってね。」

「だが守れたのはマグレだ。次からはそんな危険な択を選ぶな。」

「危険な択を選んで勝つのが、ガンダムマイスターだと思うがね。」

「お前はちぐはぐだ。力を徹底的に示す姿勢を嫌うくせに、力を求めている。」

「……男の子だからだよ。」

 

 

 

 

ヨハンにぃとの日課の対戦を終え、母艦のメインルームに戻ると、黒いフラッグとエクシアの戦闘が始まっていた。

 

黒いフラッグは圧倒的な機動で、エクシアと対等に切り結んでいる。

 

「やけに強いフラッグだな」

「ユニオンのどっかのエースが乗っているんだろう」

「やはり、フラッグ側を評価するんだな、お前は」

「ヨハンにぃだってフラッグが気になったから話題にしたんじゃないの?」

「それもあるが、ガンダムに乗っておいて、フラッグごときにこれ程翻弄されるガンダムマイスターの未熟さの方がよっぽど気になるな」

「俺のが上手く扱えるって?」

「お前の方が、だ。クロード。」

「嬉しいこと言ってくれんじゃん」

 

フラッグは過剰に機体を酷使し過ぎたか、撤退、エクシアもそれを追わずに撤退して行った。

 

「やはり、追撃はしないか。甘いな。」

 

俺は、ヨハンにぃの呟きに反応しなかった。

 

 

 

「にぃにぃズ!ネーナ、地球は飽きたわ、これからミハにぃと宇宙に戻るから、お迎えに来てね♪」

「突然だな、分かった。いつの便で上がってくる?」

「来週のグリニッジ標準時で18時の便で戻るぜー」

「了解した。」

 

「ネーナ達、戻ってくるって??」

「あぁ、これから二人も交えて訓練できるな。」

「楽しみだねぇ。ネーナが楽しんでくれるか分かんないけど。」

「タノシミダナ!タノシミダナ!」

「ハロも喜んでるわ。」

 

ネーナからの通信を聴きながら、俺はハロを弄りつつゴロゴロしていた。

俺たちトリニティは、存在の性質上ヴェーダとのリンクを持っていない。なので、こうしてハロや端末を使ったりして情報を入手する。

 

「クロード、情報収集という活動をするなら、それに相応しい姿勢で挑め」

「なんでさ、ゴロゴロしながらハロを弄ろうが、正座して弄ろうが、何も変わらないだろ?」

「ガンダムマイスターとしての自覚を持て、という話だ。」

 

ガンダムマイスターとしての自覚……ねぇ……。正直俺は、ガンダムマイスターとして今の時点で成熟してる人間は、ロックオン以外存在しないと思うが。兄妹含めて。

俺は内心で軽く反抗しながら、ヨハンにぃの小言を無視した。

 

 

 

一週間後、ネーナとミハにぃを拾い、久方振りにトリニティが集まった。

軌道エレベーターの土産屋でネーナ達が買ってきてくれたケーキ等を頬張りながら、地上で感じた世界の変革について話を聴いた。

テロリストとしての認定を受け、人革連の支配地域では、軍人の家族等を中心に反ソレスタルビーイングの熱が高まっていることや、乱れている中東やアフリカでは、とにかく戦場に出てきて欲しくない、運が悪ければ訪れる死神のような扱いのようだ。

ユニオンの国家連以下の街では、世界をいたずらに荒らす厄介な羽虫程度の認識のようだった。

 

「ユニオンでの敵意がまだ弱いな。」

「この間のタリビアでの武力介入が、ユニオンにいいように使われたってのもあって、しっかり敵認定はされてないっぽいな。」

「これも奴らの甘さ故だろう」

「そうね♪宇宙にいたガンダムもやらかしたようだしね♪」

「あの重力ブロックの救出劇だろ!?馬鹿みたいだったよなァ。あんなゴミ捨て置いとけばいいのにさ!」

 

兄妹での穏やかな団欒の時は、血の気の多い話題で盛り上がった。

俺は、自分の考えはこのケーキみたいに甘いのかな、なんて脳内で自虐していた。

俺の中のもやもやともどかしさは増す一方だった。

早く出撃したい……。

俺は確実に、トリニティに毒されているようだ。戦うということは、誰かを殺し、人々を傷つける行いだというのに。

自身の力の責任を頭の外に置いてしまったら、自分自身が世界の歪みとなってしまう。

そう、頭の中で俺は唱えた……。

 

 

 

刻一刻と時は過ぎ、世界は変わってゆく。変革する者として、兄妹達や自分が自身の齎した変革に置いていかれぬよう意識しなければならない。




特に構成も決めず書き始めたのと、初めてちゃんとものを書いているので、何かと荒いところがあると思います……。

次回、報われぬ魂ーー。
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