トリニティ4兄弟   作:Utena(臺)

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第5話 聖者の帰還

アザディスタン王国を巡る太陽光発電の開始に向けた歩みが進み始めた。それによって、王国内は、太陽光発電を受け入れる改革派と、依然とした、化石燃料での国家形態の維持を続けたい保守派の二つに分断されている。

そのような情勢の最中、突如保守派の指導者であるマスードが何者かに拉致される。

アザディスタン王国議会はそのような事態を受け、完全に分裂。改革派はユニオンの軍事支援を受ける決定を推し進めた。

 

「まさに現在のアザディスタンは爆発寸前の、粉塵の詰まった小屋のような状態だな。建設途中の太陽光発電アンテナ周辺が危険そうだ。」

「クロードはそこで戦闘が起こるって思ってんのか。ま、わっかりやすい象徴だもんな。守ってるMS連中の主義が違えば、同士討ちでもはじめっかもな」

「ミハにぃ鋭いね。俺も大体そんな予測を立ててるよ」

 

ミハにぃと戦争が起こりそうな地域についての情勢について話をしていると、割り込むようにヨハンにぃが話しかけてきた。

 

「クロード、お前の予測が妙に的確で、俺達と少し考えが違うのは、教育プロセスが違ったんじゃないか?ユニオン下では、戦術予報の教育カリキュラムがあるらしい。それを受けていたのか?」

「……あぁ!そうだよ。」

「俺も戦術教育はミハエルやネーナよりは出来が良かったが、お前は俺以上に何か盤面が見えているように思う。」

「暇な時間があればニュースやらなんやらで世界の情勢を追ってるだけだよ。ハロに聞けば知りたいことをすぐ教えてくれるしね。」

 

正直、俺は本編の流れをある程度知っているだけなのだが、都合のいい勘違いであることや、ヨハンにぃと戦術についてあれこれと討論することが昔からあったため、俺自身戦術や戦略への知識が前世よりも明確にあり、この勘違いを利用することにした。

 

 

 

さて、夜中に入ると、察知していた通り、アザディスタン王国の太陽光アンテナ周辺での戦闘が起こり、ソレスタルビーイングのガンダムが出現。戦闘での流れ弾の影響か、太陽光アンテナは破壊されてしまった。それと同時に、アザディスタン王国首都での軍事クーデターが発生。クーデター犯らのMSはガンダムによる武力介入によって破壊された。そのまま郊外のクーデター犯もガンダムによって殲滅された。

ソレスタルビーイングの武力介入により、軍属によるクーデターは一旦の沈静化を見せるも、依然と都市部でのテロは続いていた。俺は、フィアーのコックピットでニュースを流しながら呆けていた。

 

「細かいとこは覚えて無いんだが、確かこの後刹那とサーシェスの戦闘が起こるんだよなぁ……。このまま勝手に出撃して、サーシェス落としたりしたらダメかなぁ……」

 

一人のコックピットは、自分を守る殻のように感じて、つい聞かれたら危ないことも口から漏れ出てしまう……。それこそ、今の自分達がヴェーダとのリンクがないから出来る油断だ。

 

「よっ!飯出来たぞ、クロード」

「あぁ、ミハにぃ、わざわざありがと」

「何か悩んでんのか?あれか、ぶっ殺せなくてやきもきしてんだろ??早く出撃してぇよな〜!」

「ほんとにね。少なくとも自分達が持ってる力を振るうことが出来ないってのは、欲求不満だよ」

「兄貴が一言許可くれたらよ〜、俺達はどこだって行けるんだけどな」

「ヨハンにぃは頭が固いよ。ラグナは信用ならないね。俺達を道具としか思ってなさそうだ。交わす言葉は最低限、機密塗れのウチらじゃ当然だけどさ、人間的な納得がいかない」

「ま、あんま考えてもしゃーねぇよ。精々今はふんぞり返ってればいいぜ」

 

ミハにぃは仕事はするけど、ラグナや監視者への忠誠心みたいなもんは比較的薄めだ。

やはり、ソレスタルビーイングとの合流を目指す上で一番の障害はヨハンにぃだろう。彼はガンダムマイスターという立場に誇りを持っており、監視者共への忠誠心も高い。俺からすると、監視者なんてのはいずれ全てがイノベイターに取って代わられ殺される、上位者気取りの連中で、気にもしたことないのだが。

ヨハンにぃを殺す……それだけは回避したいな……。

 

 

 

飯を食い、寝ていれば時は過ぎる。

刹那はサーシェスとの戦闘を終え、デュナメスと王留美の兄貴がマスードを奪還した。

そして、非武装のエクシアがマスードを宮殿に送り届けた。このエクシアの振る舞いに納得いかないのがウチの兄貴だ。

 

「なんで黙って撃たれてるんだよ!!あんなザコ殺してからマスードを放り出せば良いじゃねぇか!!」

「ソレスタルビーイングは随分と穏当なやり方をするようだな。ガンダムをわざと撃たせるとは、正気とは思えん。」

 

実際、この行為はソレスタルビーイングへの敵意でもって世界を統一するという計画の歩みを遅らせる選択であることは間違いない。だが……

 

「ソレスタルビーイングは敵意を煽って世界の連帯を推し進めるより、自分達のポリシーを貫くことの方が大事なんだよ」

「戦争根絶、その為に不要な戦闘は自分達も行うつもりが無いと考えているのか」

「そういうこと、俺達は世界の変革を推し進める為のマイスターだ。やる事が違うんだ。キレるのもお門違いだよ、兄さん達。」

「フン!ザコに気ぃ使ってるのはみてて面白くねーよ。つまりは、奴らのやり方が甘ェってことだぁ。大体よぉ、緊急時以外は敵機のパイロットを殺さないってスタイルが気に入らねぇ。熟練パイロットの数が減れば、俄然こっちが有利になるってのに。だろ?兄貴?」

 

 ミハにぃは呆れたように述べる。

 

「そう言うな、ミハエル。彼らは世論の反応を気にしているんだ。」

「そこよ!そこが甘いっての!一方的に世界に喧嘩吹っ掛けといて、相手に気使ってんじゃねぇって話よ!」

「俺たちの動く目的に即した振る舞いではないとは俺も思うよ。」

「アタシ煮え切らないオトコなんてきらーい!」

「だろォ!?今回の一件ひとつとってもよ……。ありゃあれか?昔に流行った無抵抗主義ってヤツか!?何のためにガンダム乗ってんだよ。」

 

俺達の世界への優位性は太陽炉を積んだMSに乗っていることだけだ。俺達は弱いんだ。ソレスタルビーイングのマイスターのように、旧来のMSでガンダムと戦えるエース達と俺達は未だに戦う機会がない。俺は、ミハにぃの大言に愛想笑いを漏らした。

 

 

 

そして遂に、ラグナからの指示が降りた。

「ラグナは三連合合同軍事演習の情報を掴んだ。遂に大きく世界が統一へ動き出す第一歩だ。我々は5日後地上へ降下し、この合同軍事演習での武力介入がファーストミッションとなる。各自、出撃の用意をしろ!!」

「「「了解/ね♪」」」

 

俺は今日も今日とてフィアーのコックピットにいた。

遂に来た。フィアーの力を振るう時が、歴史に本格的に自身が参加する時が!

そして、気が奮っているのは俺だけではないらしい。

フィアーのHUDに、アイン、ツヴァイからのコールがかかる。

 

「クロード、やはりフィアーの中に閉じこもっていたか。これから俺達はファーストミッションへと赴くんだ。あまりウジウジするんじゃない。」

「おい兄貴、そりゃ違ぇよ!クロードはワクワクして堪んねぇんだ!!だろ!?ずっと話してたんだよ。クロードはラグナをぶっ殺してでも出撃したがってたんだ。」

「それは本当か?それはそれで問題だ。組織への叛意はガンダムマイスターとして許されない。クロード、その発言は冗談だな?」

「当たり前だろ……。良いから、二人とも機体に乗ってるってことは、闘りにきたんだろ?シミュレーションを起動しよう。ウォーミングアップだ。」

 

そう告げると、突然ネーナの声がコックピットに響き渡る。

 

「もう!ずるーい!!ネーナ抜きでシミュレーションするなんて嫌よ!」

「悪かったネーナぁ……クロードが気になったからよぉ、ちょっと話聞こうとしてただけなんだ!ネーナのことを俺がほっとくわけねえだろ?」

「そうだよ、ネーナ、怒るなら兄貴達に心配かけた俺を怒りな」

「むぅ……、クロにぃみたいに開き直られたら怒る気もなくすわ」

「それじゃ、憂さ晴らしも兼ねて、闘うとしよう」

 

今回は4機全てが独立した状態で、シュミレーションに大量のヘリオン、ティエレン、リアルドを出現させる。その数約300機。

「オイクロードぉ!これ出しすぎじゃねぇかぁ!?」

「いや、この位で丁度いい。連携と機体性能を発揮すれば、数だけのMS郡なんか俺達のスローネは殲滅出来るさ」

「クロード。これはファーストミッションのデモを想定しているのか?わざわざ機体を混合させている点からも察するが」

「その通り、これで落ちたらミッションでも落ちるってことだ。気合いも入るだろ」

「ネーナ、クロにぃのそういうアツいとこ嫌いよ。メンドクサイじゃない。」

「いっぱい落とせたら楽しいだろ?スコアアタックだよ」

「そんなこと言って、ネーナはいつもやる事一緒じゃない!」

「ネーナ、このシミュレーションはファーストミッションの予備演習の意味もある。しっかりやれ。」

「はいは〜い、べっ!」

 

俺が苦笑いを零すと、ドライは遥か上空から下降を開始、大型GNコンデンサーを展開し、赤い翼を大きく広げた。

充分に粒子が散布されたのを見て、潜んでいたスローネ3機が飛び出す。

 

「ネーナ、そちらへ向かう。GN粒子の残量は問題ないか?」

「大丈夫よ♪ヨハにぃ♪いつでもドッキングできるわ♪」

「ならば良い。合流次第すぐにドッキングを始めよう。ミハエルとクロードは粒子チャージ中の露払いを頼む」

「「了解/ィ!」」

 

「ミハにぃは空中からファングを使ってヨハンにぃとネーナを守ってくれ。俺は地上で荒し回る」

「ったく!楽しそうなとことりやがってよ〜!!」

 

アインとドライが接触、俺の駆るフィアーは次々とシェルフラッグや、地上にいるヘリオンを切り伏せていく。

長距離砲撃装備のティエレンの攻撃は、通信阻害の影響で狙いが荒く、兄妹や動き回る俺に当たることはない。

 

「これで7機……ヨハンにぃ!チャージは!?」

「……完了した!!」

「俺が暴れたおかげでAEUの機体共が集まってる!!そこにぶち込め!!」

「……ッ!GNメガランチャー、発射ァ!!!!」

 

太く大きな赫黒のビームが地上も空も等しく灰燼に帰していく。

「ハハハッ!!やっぱスゲぇな!!チョー気持ちいいぜ!!」

「どんどん反応が消えてくなぁ……!」

「ウフフッ♡これからは本物の人間相手にこれが撃てるのね……♡」

「GNメガランチャー照射終了。敵兵力の27%が消失。敵殲滅までの残存兵力64%」

「よっしゃァ!!ギア上げて行くぜ!!殲滅してぇ、ぶっ殺してやる!!」

 

その後、着々と敵兵力を削り、なんとか敵を殲滅するも、シミュレーションが終わる頃には全機がボロボロの状態だった。

「ハァッ!ハァッ!フゥ……。何とか完遂できたか……」

「クソ!!ファングが削られてからがキツかったな……、おいハロ!ファングに流れ弾避けさせろ!」

「ムリユーナ!ムリユーナ!」

「良くやった、お前達。今日はよく休もう。クロード、自信満々だった割にはかなり消耗したな。」

「あぁ……、俺の力はまだまだ足りないな。このシミュレーションでは単機でガンダムと張り合えるエースがいないってのに、ここまでやられちゃあ、情けないな……」

「だが、お前が切り込みを入れた場所に砲撃する事で、かなり効果的にダメージが与えられたように思う。分断と一方的な火力を当て続けることの戦術的効果は大きいな」

「ねぇニィニィズ、そんなつまらない話はやめにして、パーティーしましょ♪ネーナいっぱい頭と体使って疲れたわ♪」

「そうだな!ネーナ!身体洗ってやるよ!ひとっ風呂浴びよーぜ!」

「わぁい♪ネーナミハにぃだぁい好き!しっかりお湯作っておいてね♪」

「任せとけ!」

 

この和やかな兄妹との時間を守りたい……。クロードは騒ぐミハエルとネーナの姿を見て思うのだった。

 

「クロード、お前はどうにも不安定なところがある。お前の俺達兄妹への想いの大きさは本物だ。だが、同じくらいお前には強い信念があるようだ。ガンダムマイスターに選ばれるには、何らかの資格がある。お前は、お前だけはその資格を充分に持っているように感じるんだ。」

「いきなりなんだよ、ヨハンにぃ。」

「もし兄妹が生き延びられない状況になったら、お前が生き残れ。お前には生きる力がある。」

「…………。みんなを死なせはしないさ……。」

 

暗い宇宙に浮かぶ星々は、今日も僅かな光を俺達の船に届けていた……。




ーーこの世界の歪みはどこにある。
トリニティによる武力介入の開始。自身すら歪みの中にいる。それでも、今は剣を持たなければならない。

次回、統一されゆく世界。
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