トリニティ4兄弟   作:Utena(臺)

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 初投稿です。

 Ash Like Snowを脳内再生してから読んでもらえると嬉しいです。
 地球を背景に浮かび上がる4機のスローネの妄想が止まらない。


第8話 スローネ強襲

 トリニティにセカンドミッションが発令された。介入目標はユニオン軍MSWAD基地である。スローネ4機は、大気圏を降下し突破、基地上空へすでに接近していた。

 

「ミッション概要を確認する。俺達はユニオンMSWAD基地を襲撃し、ソレスタルビーイングの計画を察知する者の排除をする。これが最重要目標だ。基地中央のビルに目標は滞在しているとの情報だ。目標への攻撃はネーナと俺がドッキングしGNメガランチャーでビル全体を破壊する。ミハエル、クロードは露払いをしろ。攻撃は徹底的にだ。わかったな?」

「「「了解!!」」」

 

 クロードは、エイフマン教授をかなり尊敬していた。少ない情報をつなぎ合わせ、イオリア計画の全貌に気付いた慧眼は凄まじいものである。まさか軍用のコンピュータにヴェーダが入り込んでいるなんてのはさすがに考えつかないだろうが。だが、その存在は基本的に敵対が前提であり、彼の命はガンダムマイスターとして奪うほかないと考える。自身の家族を守るために、必要な犠牲としてクロードは彼の抹殺を果たすことに決めた。クロードは良くも悪くも人間的である。会ったことのない他人より、家族を優先するのは自然な心理であった。

 飛行していると、MSWAD基地はすでにGN粒子の通信阻害圏に入っており、ヨハンから攻撃の指示が出た。

 

「ネーナ、ドッキングしてくれ。」

「りょーかい!」

 

 スローネドライは腕部のGN粒子転送ケーブルを展開し、スローネアインの開いた接続口に繋げると、スローネアインの肩部のホルダーを握った。

 

「転送!」

 

 ネーナの掛け声に合わせて、まずGNメガランチャー下部のスコープが展開、その後、折りたたまれた銃身がその身を伸ばす。

 

「GN粒子、転送完了!」

「了解。スローネアイン、GNメガランチャー、撃つ!」

 

 ヨハンのヘルメットのHUDにレティクルが出現、すると、スローネアインは即座にGNメガランチャーを放った。

 漆黒の稲妻を伴った極大の赫光は、MSWAD基地のMS発着路に初めに着弾、弧を描くように動き、ユニオンのMSコンテナを破壊していく。光はそのまま進行を止めず、中央ビルに伸びている三本のビルのうち、エイフマン教授のいるトリニティから見て右側のビルを下から削り上げるように上昇していく。その後光は左に振られ、他のビルももれなく破壊した。

 ミハエルはその光景に興奮しているようだ。

 

「キャッホォォォウ!さすが兄貴!やることがエゲツねぇぜ!」

 

 そして、スローネ達に熱源接近の警告が届く。機体を反転させるミハエルとクロード。

 

「? フン……来たぜ来たぜぇ!雑魚がわんさか!」

「来たか!グラハム・エーカー!今の俺がどれほどエースに通じるか、確かめさせてもらう!!」

 

 

 接近するオーバーフラッグス隊は、既に基地に壊滅的な被害を与えたガンダムに全速力で飛行し向かっていく。その光景にグラハムは眉を顰めざるを得ない。

 

「隊長、新型が4機です!」

「見ればわかる!我々の基地が……。」

 

 そしてグラハムのもとにビリー・カタギリより通信が入る。

 

「!? カタギリ!」

「教授が……エイフマン教授が……。」

「なんだと!?クッ!!堪忍袋の緒が切れた!!許さんぞガンダムッ!!」

 

 オーバーフラッグス隊は、さらに急ぐように、ガンダムへ距離を詰めていく。

 

 

 トリニティは、最重要目標を攻略し、あとは撤退すればミッションは十分に達成できる状況である。

 

「撤収するぞ。」

「なんでだよぉ、少しくらい遊ばせてくれよ、兄貴ィ!!なぁーにすぐ済むさ。破壊して、蹂躙して、殲滅してやる!!」

 

 ヨハンの指示を無視しオーバーフラッグス隊に向かうミハエル、クロードはその後を追う。

 

「さっさと終わらせて、ミハにぃをすぐ下げさせるよ。」

「ミハエルを任せた。クロード。」

 

 先行したスローネツヴァイの腰部からファングが飛び出す。

 

「行けよ!ファング!!」

「それがどうしたァ!」

 

 しかし、先行するグラハムは正面から迫るファングをロールでたやすく回避し、機首のソニックライフルを発射、スローネツヴァイの胸部にヒットさせる。

 

「うぐっ!?コイツ……!」

 

 思わぬ反撃にミハエルがイラつく。そしてスローネツヴァイの動きが止まっているうちに、後続のオーバーフラッグス隊が編隊を組んで射撃する。

 しかし、さらなる追撃はスローネフィアーのライフル射撃によって、止められる。

 

「先行しすぎだ!ミハにぃ!!」

「うっせぇよ!!邪魔すんじゃねぇ!!」

「ったく!!相手の弾避けてから文句言え!!」

 

 3機編隊ごとにオーバーフラッグスはスローネツヴァイ、フィアーに射撃を仕掛ける。空中で棒立ちのスローネツヴァイは射撃をその身に受けるが、スローネフィアーは上下左右と縦横無尽で不規則な機動でその射撃をある程度回避しながら牽制射を放つ。

 高速で飛行するオーバーフラッグスにピンポイントで当てることは難しく、今はグラハムの機体を探すことにクロードは注視していた。

 

「ハワード!?」

 

 そんな中、ハワードの駆るオーバーフラッグが動きの悪いツヴァイに向けて突貫する。高速での空中変形、からのプラズマブレードの展開は、まさしくエース、グラハム・エーカーに追随する技術の巧であった。

 

「見せてやる!ガンダム!!うおぉぉぉぉぉ!!!!」

「何っ!?」

 

 接近してきたハワードのオーバーフラッグに、ミハエルはGNバスターソードを展開、プラズマブレードを受け止め鍔迫り合いへと持ち込んだ。

 

「これがフラッグの力だ!!」

「クッ!?このままではやられる……ワケねぇだろ!!??」

 

 展開していたファングがビーム刃を展開、こぞってハワードのオーバーフラッグへと喰らいついた。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

「ハワード!!」

「ハワード・メイスン!!!!」

「隊長……フラッグを……。」

 

 顔の光が消えたハワードのオーバーフラッグ。そのコックピットである頭部に、最後のファングが上から突き刺さった。

 おそらくその身は蒸発し、遺骨も残らないだろう。

 

「ファングなんだよォ!!」

 

 ミハエルはファングで惨たらしく敵機を堕とせたことに、かなり喜んでいるようだった。

 全身を貫かれ、喰い荒らされたオーバーフラッグはゆっくりと降下し始め、機体からファングが抜けるとどんどん加速し、地上へ落下。機体は地面に当たった衝撃で爆散した。

 

 ここで仲間の死亡によって、一瞬動きの鈍ったオーバーフラッグを1機クロードはライフルで打ち抜くも、翼部分にあたったようで爆炎を上げながら降下していくのみであった。ついぞグラハムに弾を掠らせることもできず、クロードは自身の力不足を感じた。

 

(本気で堕とす気はないとはいえ、掠りもしないとは……。グラハムの動きは圧倒的だ。編隊機動で狙いを絞らせないのとは違う、個でこちらの射撃を読み切っているようだった……。)

 

 そして、ヨハンからの通信が入る。

 

「気が済んだか?撤収する!!」

「兄貴ぃ……。」

「クロードも下がるぞ!ミハエルを引っ張ってこい!」

「だってさ、ミハにぃ。」

「次のミッションもある。ガンダムマイスターは多忙だからな。」

「へーいへい。」

 

 突然反転し、先に飛び立った2機のガンダムへ向け急加速していくスローネツヴァイとフィアーに対して、オーバーフラッグスは追撃しなかった。赤い線はすでに遠く伸びて消えてゆく。

 

「隊長!!」

「無策で追うな!!」

「ハワード……クッ!!私の顔に何度泥を塗れば気が済むのだ……!ガンダムッ……!!」

 

 またしても失うだけのガンダムとの戦闘に、グラハムは悔しさを噛み締めた。

 

 

 

 プトレマイオスでも、今回のトリニテが行った武力介入の情報共有が行われた。

 

「トリニティは米軍の基地に襲撃をかけたようだわ。」

「あいつらが米軍の基地を襲った!?」

「目的は?」

「不明よ。ヴェーダにも情報が来てないみたいね。」

「勝手なことを……。」

「あーあー、俺らへの風当たりが強くなるようなことしてくれちゃって。」

「彼ら、特に、クロード君の以前の発言を踏まえると、それが狙いでもありそうね。」

 

 クロードの名前を聞いて、ティエリアがぴくりと反応する。

 

「報告書にあった、彼の述べた戦争根絶の道筋というやつですか?」

「えぇ、彼はどうやら戦術予報士としての訓練も受けてたらしいの。自分なりの推察を語ってくれたわ。」

「彼はどうやら考えすぎるようだ。ガンダムマイスターとして相応しくない。」

「ガンダムに関しては何も話さなかったわ。でも、自分達についてはある程度話してもいいみたいだったから。」

「胡乱な推測を垂れ流すなど……。」

 

 そこで、刹那が突然会話に乱入する。

 

「マイスターなのか?ヤツらは、本当にガンダムマイスターなのか?」

「また気が合ったな。」

 

 刹那とティエリアが睨みあうように目を合わせた。

 

「ガンダムマイスター、らしくはないかもなぁ。」

 

 それに、ロックオンも同調する。しかし、その言葉には、その奥にも何かを含むような言い方だった。

 

「とりあえず、今後のことは急いで決める必要はないわ。今は私達がするべきことをしましょう。トリニティの活動にはよくよく注意しておきましょう。」

「えぇ、スムーズな連絡を頼みますよ。スメラギ女史。」

 

 ひとことそう告げ、ティエリアは部屋を後にした。

 

「……ティエリアはちょっぴり刺々しいわね。」

「誰にだってですよ、スメラギさん。」

「俺はトレーニングに行く。」

「刹那、せっかくだからついて行ってみてやるよ。」

「……勝手にしろ……。」

 

 ソレスタルビーイングの意志はいまだ統一していないが、確実にトリニティへの疑念は高まっていった。スメラギさんは、少し疲れたような顔をしながら溢した。

 

「クロード君、あなたは、私たちと戦うこともあなたの計画の内なの……?」

 

 スメラギさんは、クロードから渡されたデータに残されたメッセージを思い出す。

 

『When the time comes,we will fight,and the defeated will tutelage the victor.(時が来れば我々は戦い、敗れた者は勝者に傅くだろう。)』

 

 刹那やティエリアの抱くトリニティへの敵愾心を直接感じ、彼がどこまで先を見通し、そのうえで裏切りを決意しているのか、スメラギさんはクロードの覚悟に考えをはせた。

 

 

 

 クロードは撤退を終え、ベースに戻っても、スローネフィアーからなかなか出てくることはなかった。

 自身の力不足を感じ、訓練の必要性を強く感じたのだ。

 それには、ミハエルも参加していた。

 

「ミハにぃ!もっと動き回って避けてくれ!トップスピードのまま!!」

「! 生意気言ってんじゃ……ねぇよ!!」

 

 シミュレーターで激しく入れ違う2機のスローネ。ファングと腕部ビームガンでの射撃を合わせ、圧倒的な弾幕を形成するも、スローネツヴァイの攻撃は掠るばかりで致命打をスローネフィアーに与えられない。しかし、高速機動で回避しながら当てることができないのはスローネフィアーも同じく、泥沼化している。

 クロードは、距離偏差と相対速度の偏差をとにかく体に覚えさせようとしている。よって、クロードはサーベルの展開を縛っていた。しかし、弾幕の厚さの前に集中が途切れ、左脚部を喰い破られる。そして体勢が崩れたところをファングが殺到し、針の筵となった。そんなスローネフィアーにツヴァイは急速で接近し、 GNバスターソードで、大きく袈裟切り、両断した。

 

「もうすぐまたミッションなんだぜ?休ませろよ、クロード……。」

「ミハにぃもあの反撃は悔しかったんでしょ?だから俺に付き合ってくれてるんでしょ。」

「ぐっ!こっちの装甲が抜かれる心配はねぇ、あえて受けてただけだ……。」

「へいへい……。」

「あ!オメーこの野郎!」

 

 クロードがミハエルの口癖を真似する。こうして弄ると、ボコボコにされるがなんだかんだ愛がある対応をしてくれるのがミハエルだ。カス野郎にはカス野郎なりの良いところがある。ミハエルの意外な面倒見の良さなどを、クロードは強く好んでいる……。

 

 本格的な武力介入を開始し、さっそくトリニティ達を使い潰そうとアレハンドロの陣営、いや、リボンズにとって邪魔な勢力を破壊するように続々とミッションプランが送られてくる。

 クロードはミッションが出るたび自身の寿命が迫るように感じ、少し、苦しかった。兄妹にこうして甘えてしまうのも、仕方のないことなのかもしれない。

 

 

 

 着実に、世界はソレスタルビーイングをより敵視し始めた。そして、ソレスタルビーイングもまたトリニティを敵視し始めた。トリニティが生き残れるかはクロードにかかっている。




 力を持った兄妹の歪みは止まらない。自分達が世界の歪みとならぬよう、クロードは愛する家族に武器を向けなくてはならないのか。今日もまた、誰かの涙が零れゆく。
―――次回、悪意の矛先



 ガンダムマイスター全員が腹痛を我慢している姿勢を取っていることで有名なステファニーのフレンズを脳内再生すると楽しいと思います。
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