転生悪役貴族、なぜか秘密結社の危険な美少女達に懐かれる~最凶美少女達のせいで誰も見た事の無い超展開に突入していくけど、頑張って最高のハッピーエンドを目指します~   作:火水希星

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第10話 ロセット・ブートキャンプ2

 ロセットが我が家にやってきてから一週間が経った。

 

 毎日の訓練は壮絶を極め、半死半生の目に遭う事が日常の一部と化していたが、それだけ必死にやっていると、1週間でも結構違いを感じる場面が増えてきた。

 

 たとえば毎日初手にやらされる10キロメートル超のランニング。

 

 連日の訓練で疲れは溜まっているはずなのに、これが不思議と初日ほどにはきつくない。

 

 なぜか初日より軽い足もあり、吐いて倒れる事はない程度の負荷に感じられる。

 

 その後の素振りも、あれだけ悲惨なやり直しをさせられてきただけあって、ほぼやり直しなしで100回を終えられるようになってきた。

 

 そして今日は、そのあとに待つ新たな訓練を初めて行う事になっていた。

 

「サルヴァはいくつかの魔法を使えるだけ。その魔法の使いこなし方も分かっていなければ、戦技も使う事ができない」

 

 ロセットは片手でくるくると片手剣を腕の周りで回転させる曲芸を見せながら、無感情なジト目で俺を見つめる。人気のあるキャラだけあって、顔と声だけは本当にめちゃくちゃ可愛い。中身は悪鬼だが。

 

 ちなみに戦技というのは、以前説明したように戦属性魔法の別名だ。

 

「今日は演武と戦闘訓練を行う。わたしがサルヴァ用に考えたありがたい演武を10回やったら、次に実戦でそれを使ってもらう」

 

 なるほど、と思う。

 

 基礎体力、素振りときて、次は演武と戦闘訓練か……

 

 訓練としては合理的といえるだろう。

 

「一回で見て覚えてください。覚えていなかったら燃やします」

 

「……押忍!」

 

 この1週間で弟子根性という名の奴隷根性がすっかり根付いていた俺は、ロセットの指示にただ押忍と返す。

 

 それから俺は、いくつかの剣技や、魔法の発射を組み合わせたロセットオリジナルのありがたい演武なるものを披露され、それを自分で実行する事になる。

 

 えっと、まず剣をこう構えて、次にこう斬りかかってから素早く反転させて横薙ぎ、そこで敵の反撃を回避して、避けながら魔法を発射……!

 

 そこで緑色の炎が俺のお尻のあたりに現れ、俺の服が格好悪く燃やされる事になる。

 

「あぢ……あぢあぢあぢあぢあぢあぢ……!」

 

 このクソ女絶対いつか殺す、と堅く誓いながら、俺は必死に炎から逃れようとぴょんぴょんジャンプしてまわる。

 熱い。熱くて痛い。流石に温度などを手加減されているのは分かるが、本当に辛すぎて耐えられないギリギリのラインを攻めてきている。

 

「なにを格好つけてるんですか。魔法を発射するところに意識を向けすぎて次の剣技に繋がる左足の動きができていません。雑魚が格好つけてるのほど哀れな光景はないです。淡々と動いてください。もう一回、はい」

 

 雑魚ですいませんでしたぁ、という感じの気持ちになりながらも、俺はこの一週間で染みついた恐怖から、またしても先ほどの動きをすぐさま開始する。

 

 構え、斬って反転、横薙ぎから回避、魔法を発射しながら左足を移動させて、素早く剣で敵の魔法をガード……!

 

「さっきよりはマシですが、動き同士の連動が甘いです。上半身と下半身のひねりによる躍動を操って、無駄を省いてください。もう一度」

 

「……押忍!」

 

 それからきっちり10回目まで、俺はスパルタ指導つき演武を行った。

 

 そしていよいよ、戦闘訓練の時がやってくる。

 

 剣を抜かず、リラックスした表情で淡々と立つロセットに、剣を正眼に構え、真剣な表情で向かい立つ俺、サルヴァ・サリュ。

 

 原作を知っているときわめて奇妙な光景だが、これが何の因果か俺の自宅で今上演している演目である。

 

「全力で攻めてください。はじめ」

 

 合図とともに俺は大きく踏み込み、いままで散々苦しめられてきたロセットに一撃を見舞うべく、手加減一切なしでその頭を脳天割りしてやると上段から撃ちこむ。

 

 と、いつ現れたのかも見えなかったロセットの剣が、片手を添えただけの緩い握りでふわりと俺の剣を受け止める。

 

 そのままするするとロセットの剣が俺の剣の下を滑ると、俺の身体はそれだけでなぜかひどくバランスを崩し、おっとっと、とつんのめるように足元がおぼつかなくなる。

 

 その隙に横薙ぎにされた剣は、綺麗に俺の首元に添えられて、そこから緑色の炎が沸き出し、俺の首筋にひどい熱が走り回る。

 

「あぢ……あぢぢぢぢ……あぢぢぢぢ!」

 

「0点です。重心の移動がなってないし、さっきの演武の時の方がよほどマシな一撃でした。この程度の炎で済ませている温情に、涙を流して感謝してください」

 

 悔し涙を流して絶望しながら地面を転げまわって火を消そうとする俺を一顧だにする事なく、ロセットは後ろを振り向いて先ほどの開始時の距離を保つと、こちらを振り向いて立つ。

 

 その表情はさっさと立てと言わんばかりだ。

 

 やっとのことで炎から解放された俺は、絶対いつかぼこぼこにして泣かせてやると堅く誓いながら、起き上がり不屈の精神で剣を構える。

 

「押忍……!」

 

 掛け声とともに、無謀な一撃を撃ちこむ。

 

 

 

 

 それから俺はロセットによると合計百二十七回死んだらしい。

 

 その都度身体の一部に緑色の炎を移され、地面をごろごろ転がった俺の身体は全身やぶれまくり黒焦げになりまくりの泥だらけと悲惨極まりない状況になった。

 

 ロセットの技は高度すぎて、この短時間で真似したり対処したりできるようなものでは到底なかったが、剣技という世界における高みを知れたという意味では、間違いなく価値ある体験ではあっただろう。

 

 それはそれとして、絶対いつかこのクソ女をボロ雑巾のようにしてやると、俺は改めて堅く誓うのだった。

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