機動戦士ガンダム AWAY TO THE DESTINY 作:くまたいよう
「がぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああっ、離しやがれ【女みたいな名前】のニュータイプがああっ、俺はエーデル准将の所に帰るんだああっ!」
「・・・・」
カミーユ・ビダンは拘束されたレーベンと取り調べ室で向き合ったが、コンプレックスでもあった自分の名前について触れられても怒る気になれなかった。怪我した箇所から血を吹き出す程に熱くなるレーベンの姿は理解の範疇を越えているとした時。耳元の小型通信機から声が聞こえた。
『カミーユ君、ここはレーベン大尉を修正・・・・じゃなくて、空手チョップとかで沈めて大人しくさせて、鎮静剤代わりよ』
言われた通りにカミーユは首筋に昔のテレビを叩くような角度に見舞い、後を任せて退室した。こう見えて学生の頃に見栄でやってた頃とは違うのだとしながら。
「ご苦労様、何か違和感あったけど目の当たりにするとショックよねえ」
【スミレ・ホンゴウ】
アーガマを始めとしたエゥーゴの艦に乗り込んではいなかったハズの女性だが、ZEUTHには地獄に仏だった。MS関連ではパイロットがいるだけではどうにもならない。
「エーデル准将は、君が悪意が感じられないとか言ってたから実際はどうか知らない、けどレーベン大尉がああなったからにはね・・・・」
「あの、スミレさんは俺が気にしてるように見えるんで【見える】・・・・何故?」
「そりゃカミーユ君は何かギリギリのとこで悪い予感より夢想家や理想論者が好きそうな結果を望みたがるからね、外見じゃなくて中身が幼いんじゃどうしょうもないでしょ」
「・・・・最初会った時を根に持ってますね」
「大きなお世話よ!」
拗ねるスミレだが、カミーユにはしっかしりして欲しいし予感に従って欲しい理由はあったのだが、事態はそこまで余裕はない。
【未確認機接近!未確認機接近!】
アナウンスが響く、一応戦闘準備はしていたので今度はカミーユが出向く事になり、出撃前に艦長からの一声があった。
『カミーユ、ゼータの整備は万全か?』
「はい」
『よし、無理をするなよ!』
「了解、ゼータガンダム行きます!」
ウェイブ・シューターと呼ばれる形態に変形出来る仕様のゼータガンダムが飛翔したが、それを見送るスミレは違和感からの不吉な予感が拭えなかった。
「ルーさんにフォウさん!早く次に備えて、カトル君も!」
「了解です!」
ルーとフォウが【スーパーガンダム】と呼ばれるMK―IIとGディフェンサーが合体した機体で準備する傍らで、然り気無く自分達の影のボスとなりつつある少年も愛機で待機していた。
【ガンダム・サンドロック】
飛行出来ない陸戦仕様で白兵特化寄りの機体であるのだが、それでも元の世界では陸地からのジャンプで音速の数倍を越える量産機の動きすら捕えて撃破してしまう機体だ。しかも、多彩な活動が得意で各々が高性能量産機であるマグアナックを駈る部隊迄来ている。それだけで自分達には光明であるが、このメンバーもスミレと同じ疑念がある。
「ねえ、二人はどう思う?」
「私は、最近目覚めてパイロットに誘われたばかりだからルーの言うような事はイマイチわからないよ・・・・でも」
「えぇ・・・・【ブライトさんはカミーユさんに少し過保護じゃないか】と、おっしゃりたいんですね?」
ZEUTHにとって、頼れる父親役であり元の世界にいた頃から随一の実戦経験を誇る名艦長だ。
スミレもジャパニーズ・オトッチャンと言われたブライトを目の当たりにしているが、何かがおかしいと思っている。勿論、カミーユも見抜いているだろうがともしている。
「でも、私達はカトルとは違う世界から来たんだけど・・・・何か前から知ってる気がしたよ、セツコさんとシンにもちょっと違う予感がある」
「そ、それは僕もですフォウさん、貴女には失礼ですが、聞いただけのサイコガンダムかそれより大型の機体やラシード達より若いチームの方々がいたような」
「う~ん、何にしても私達の世界が無事なのを祈らないとねぇ・・・・カトル達と違って、私達の戦いはこれからが本番って時で・・・・あれ、そうだったかな?」
第二陣として控える者達と同じ不安を振り切ろうとする一方で、カミーユは未確認機体の近くに来ていた。
「正体不明機体・・・・何だ。オーブのムラサメって機体か」
『君は、ZEUTHのカミーユ・ビダンだな!頼みがある。我等との交渉の場を設けて欲しいのだ』
「それなら、MSじゃないか乗って来たとしても武装を持たずに白旗でも持って来て下さい。それくらいなら」
『む、それは・・・・』
一応な事を言うが、それの隙を突くような攻撃が地上から来たが、感知していたカミーユは回避をして、その隙を突くようにムラサメがライフルを撃ちながら突撃して来た。山地が多い地形を使いつつ不意討ちは効果的ではあるが姑息でもあるのでカミーユは苛立った。
「何を考えて・・・・」
【カミーユ!】
「そ、そうだった・・・・」
(聞いてくれカミーユ、お前の素直な怒りと他とわかり合いたいと思える気持ちは大切なものだ。だが、利己的になれとは言わんが・・・・自分・・・・自分を大切にしてくれ!)
ブライトからの煮え切らないが真摯な言葉を思い出して頭が冷えたカミーユは戦闘を開始した。先ずはムラサメを撃破すれば後は有利な流れ、それから気付いてるが、気付かないふりをする対象も後回しにした。
【叢雲劾】
最強の傭兵として知られる存在であるが、最近は腑に落ちない任務ばかりが回って来た。遠目からの監視ばかりでどうなるのかと、しかし劾の目を引くのはゼータと呼ばれる機体の動きだ。何故かイチイチ相手に構いたがる悪癖があると聞いていたが、それが一切無くなっているのだ。
(何やら、あったらしいな。しかし、あのパイロット達の乗る戦艦【ペガサスIII】だったな、恐るべき性能であるが・・・・何か違和感がある)
劾なりにカミーユ達も感じる違和感には気付いていた。ブライトの乗る艦は悪意も敵意も無いが、違和感の塊でもあったのだ。
「七つ目!地上は・・・・見ないでおくか」
ムラサメ隊を全滅させたカミーユからしても、多分怒らせてはいけない最たる例なカトルがマグアナック三体と共に二桁を越える陸戦用のダガーを撃破していた。サンドロックの装甲には、この世界の量産型の武装では直撃しても意味が無い、ファーストガンダム相手にザクで戦ったジオン兵の気持ちが良くわかる例とすべきだ。
『投降した兵を回収しました。戻りましょう』
カトルからの通信通りにした。完勝に終わっても、徐々に向き合わねばならない時が近付いて来るのが感知出来るパイロットばかりな為に、彼等の旗艦となったペガサスIIIには暗雲が立ち込めていた。
その頃、プラントに向かうミネルバは途中で合流した軍から奇異な目を向けられ、合流したは良いが予想外な事態が判明した。
「え、ぇぇっ!!に、に・・・・【偽の帰還命令】だったって言うんですかああっ!?」
副長であるアーサー・トラインの間抜けとされれ叫びがブリッジに響くが、艦長タリアを始めとして悪く言える者はいない、調べによると内部からハッキングされていてまんまとデュランダルからの偽の帰還命令を信じてしまったのだ。
「だが、グラディス。事は深刻だぞ!誰がやったかはともかく、地球に降りてから華々しい戦果を遂げ続けた貴官等がしてやられるからには並大抵ではない!皮肉な事に権限を使って残ったシン・アスカがZEUTHに残っているのだから、一旦プラントに戻ってブライト・ノアとコンタクトを取る手段を考えねばな」
尤もな内容だが、タリアはブライトの名を聞いて内心動揺していた。違う世界で随一の名艦長なだけはあり、共闘している間はミネルバクルーの大半からも信頼が厚かった・・・・正に名艦長でありZEUTHの【父親】であった。
だが、タリアはブライトを避けていた。
中には、ブライトのような年長者として振る舞えない妬みとする声があった。それは否定はしない、自分にはシン1人を指揮官としても大人としてもフォローは出来なかった。それはカミーユとセツコの役割と認知されていたにしても・・・・そして、ある時に気付いた。
【怖いのだ】
タリアは自分がブライトを怖がっているのだと気付いた。その理由には踏み込む勇気も無く時間だけが過ぎたのが今回の醜態かもしれないのだ。決して、デュランダルの元に帰る機会に飛び付いてしまったワケではないと思える程にタリアはブライトから逃げ出したかった。
皮肉な事に、これが今回の黒幕達にとって大誤算に繋がるとも知る術は無かった。
スパロボα外伝プレイした方にはわかるだろうメンバー、とにかく頼れる父親ブライトさんが何かおかしいと言う一番怖い状況になってる。