陸戦道戦記外伝 士魂高等学校参戦ス   作:くろがね四駆

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山紫に水清き

 ――士魂の学園艦、この海洋の広々とした船の上で幾かの戦車が動き始めていた。

 これも我ら転生者、第二の故郷を守るため。

 美しき学園艦を守るため、そう士魂高等学校の生徒達は意気込んでいた。

 

 キュラ キュラ、と動くのは九五式軽戦車、後ろからは九七式中戦車の部隊が学園艦の大地を轟かせる。

 ……そんな光景を意外にも目を輝かせている男がいた。

 

「これは凄い! 転生者だけで編成されてるだけあって乱れも全くありませんなぁ!」

 

 ――そう、この男は前回の文科省の役人であった。

 

「いやいや、それよりもどうして文科省の貴方がまた来ているのですか?」

 

 うきうきと喜ぶ役人の隣で、東条教頭は思わず声に出す。

 そして忘れていたと言わんばかりに役人は理由を話し出した。

 

「実はこの状況を本部に伝えたのですが、要注意の学園艦だから監視してこいと命令されまして」

「それはこちらに言っても良いのですか?」

「大丈夫ですよ、監視なんて名目上なだけで実質長い休暇ですよ!」

「はぁ……? まあそういう事でしたら見学は構いませんが」

 

 その時、キュラ キュラとまた新たな戦車部隊が大地に現れる。

 新たな戦車の姿に役人は驚いて声を出す。

 

「あれはまさか、四式中戦車では!?」

「ええ、戦車道連盟から参加可能だとお聞きしたので、知り合いの企業に生産してもらっていたのです」

「四式中戦車の装甲部隊が見れるなんてなぁ、役人なんて辛くて面白くもない仕事やってても良いことあるんだなぁー」

 

 役人の言葉が気になった東条教頭は、少し考えながら口を開く。

 

「……失礼かもしれませんが、貴方は好きで役人をしているのでは無いのですか?」

「うーん、正直に言いますと嫌々仕事をやっています」

「では廃校を言い渡す時も、嫌々だったので?」

「文科省の役人で且つこのような仕事をしているので、表向きに悪役を徹しているんです。正直言って普通の状態で廃校なんて伝えたくないんですよ」

 

 この時の役人の表情は悲しい顔であった。

 若くして文科省に就職した彼は、こんなにも嫌われる仕事だとは考えていなかったのだ。

 

「(悪に徹する、か……)」

 

 東條教頭は軍人でもあり、総理大臣となり政治を行った身としては、この役員の背中は悲しいものだった。

 

「役人殿、貴方のお名前を聞いておりませんでしたな?」

「ああ、そういえばそうでしたね。私は犬也武雄(いぬなり たけお)と申します。まだ三十路になったばかりの若造ですが、よろしくお願いします」

 

 二人は握手を始めた。

 手が離れたら、二人とも再び戦車隊の方へと視線を向けた。

 

「しかし犬也殿は、我々に伝えなければならない事もあるのでは?」

「ありゃ、鋭いですね。……歩兵道をご存知ですか?」

 

 ──歩兵道とは、戦車道の派生競技であり男の浪漫と言われ親しまれている。

 使う弾丸は全て安全に配慮された物を採用しており、人に直撃する際に弾は柔らかくなり、身体に粘着するようになっている。

 歩兵道の勝利条件は二つ、敵殲滅または敵陣地の制圧であり、どれか一つを達成すれば勝利となるのだ。

 

「存じております、我々は念の為に一応準備をしておりましたが……?」

「流石早いですね、実は近いうちに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その名も『陸戦道』です」

 

『陸戦道』

 戦車は歩兵を守り、歩兵は戦車を守る事によって信頼を深めて、勝利を掴む事で良き友人、良き伴侶にも恵まれるだろうとして発足される予定である。

 

「──というわけで近い日に『世界陸戦道連盟』として戦車道と歩兵道が合併していくようです、急な話なので戦車道や歩兵道を行っている各学園艦に、その為の資金提供を行うそうです」

 

「ふむ、確かに唐突に資金提供してきた時は驚きましたが、そういう事でしたか」

「となれば歩兵連隊を至急用意しなければなりませんね」

 後ろから声がしたので二人は振り向く、どうやら樋口校長が二人の会話を聞いていたようだ。

 

「教頭、()()()の訓練は順調ですか?」

「ああ、後一ヶ月あれば万全だろう」

「虎戦車って……まさか!?」

 

 犬也は思わず声を出す。

 それを聞いた樋口校長はニヤリと笑う。

 

「戦車道に一カ国の戦車だけで統一しろ、というルールはないでしょう? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「噂をすれば来ましたぞ、虎戦車部隊が」

 

 犬也は指を刺された方を見る、そこには虎戦車「ティーガーⅠ」の部隊が大地を走っていた。

 後ろからは土煙、大戦中には実現出来なかった日本版ティーガーⅠが、遂に戦おうとしているのだ。

 

「凄い……! 歴史上では実現しなかった、日本のティーガーが見れるなんて……!」

「しかし当時じゃこんな光景は見れないだろう、対戦車を想定した日本の機甲部隊が大地を走っているのを」

「ええ、私もそう思います……」

 

 犬也がはしゃいでいる姿を横目に、東條教頭と樋口校長は実現しなかった機甲師団を、只々悲しく眺めていた──。

 

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