ワイ「ギャグシーンが難しいけど……こんなもんでいいかな。とりあえず読み返してみるか!」
↓
「……これ本当に面白いんか?」
ギャグセンスに自信がなく、不定期かつちょっとシリアス気味なのもこういう理由だったり……。
何とかしてモチベ上げて更新頻度を高めるようにしたいでござる……。
燦々と地上を照りつける日の光、陽炎揺らめく砂漠に覆われし大地『アビドス』。かつてはキヴォトス有数のマンモス校だったアビドスだが、巨大規模の砂嵐が絶え間なく襲い来るという異常気象に見舞われたせいで、自治区の大半が砂に覆われてしまい生徒や住民の数は激減してしまった。
今やアビドス高校に所属する生徒はたったの五人。『アビドス廃校対策委員会』という名で活動している彼女達との出会いが、先生となった私にとっての初の大仕事だった。対策委員会からの依頼を受けてアビドスに向かったのだが、暴力組織による強襲や超多額の借金等、彼女達を取り巻く数々の問題によってアビドスは一時崩壊する寸前まで追い詰められてしまった。
しかしその過程で出会った便利屋68や風紀委員会。彼女達とは一悶着があった仲ではあるが、和解し終えた彼女達の助力によりアビドスは以前と変わらない日常を取り戻す事ができたのだ。
今日は久しぶりにアビドス生徒達の顔を見ようと、その高校まで訪れていた。のだが――
『今日はごめんなさい先生。忙しい中でしょうに、いきなり電話かけちゃって』
「"いいんだよヒナ。大切な生徒の相談ならいつでも乗ってあげるさ"」
『ええ……そうね、先生はそういう人だったわね』
何故か私は玄関の壁に背中を預け、ゲヘナ風紀委員長のヒナと通話していた。どういう事かと言うと、今朝方アビドス自治区内にあるホテルを出発し、そうして何事も無く校門まで着くと対策委員会の皆が出迎えてくれていた。そしてそのまま一緒に教室まで向かおうとしたのだが、突如懐に入れていた携帯が鳴った。
その電話の主こそがヒナだった。アビドスの面々には先に行ってもらうよう促し、今の今まで通話していたのだ。
「"ねぇ、ヒナ"」
『なにかしら?』
「"あんまり気負わなくていいからね。君は十分頑張ったんだから"」
「"君が自分の力を信じられなくても、私や風紀委員会の皆は君を信じているよ。ずっと"」
『うん……ありがとう、先生』
『それじゃあね』というヒナの言葉と共に、彼女との通話が途切れる。あの子はゲヘナだけでなくキヴォトス全体を含めても最強格と謳われる生徒ではあるが、その内面はとても繊細な少女だ。私がその心のケアに繋がるのなら、いくらでも付き添ってあげよう。
ただ、それにしても――
「"この子がヒナ達を……"」
ヒナから送信された複数枚の写真、それにはとある少女が写し出されている。特徴的なのはショートカットにされた銀色の髪、巨大な槍のような翼と長い尻尾。そしてヒナに負けず劣らずの
(あのヒナが取り逃がすだなんて、一体何者なんだこの子は?)
彼女と同等以上に渡り合い、風紀委員会の生徒達を蹂躙したという謎の生徒。話によればヒナと戦うためだけに風紀委員会に弓を引いたらしく、実際ヒナを除いた生徒達の怪我は大事には至らないものだったようだ。
だがしかし下手をすれば学園間の大規模な抗争になり兼ねない上、それ程の実力者であれば大なり小なり噂が流れてきてもおかしくはない筈なのに、彼女に関する話は聞いた事がない。相応の地位や役職が与えられていても不思議ではないだろうに、それらを顧みずただ自己満足の為に風紀委員会を襲ったなんて、どういうつもりなんだ?
本当にただ戦いたかっただけなのか? ひょっとすれば何か別の理由があるのでは? 一度その子と掛け合ってみたいが、行方が分からず制服でもないから学園も特定できない。どうしたものか……。
あれやこれやと考えていると、いつの間にか教室の側まで着いていた。すぐに中に入ろうとしたのだが、何やら室内が騒がしい。少しだけ空いていた扉から覗き込むと、どうやら項垂れている一人の生徒に対し、それを取り囲む形で四人の少女が慰めているようだ。
一体何が? と考えていると、囲んでいる生徒の内の二人がこちらに気付く。
「あっ先生、お電話はもうよろしいのですか?」
「"まあね。それよりこれってどういう状況なの?"」
「んーとね。セリカちゃんさ、またまた悪ーい商法に引っかかっちゃったみたいでねぇ。見てよほら」
赤い眼鏡をかけた黒髪の少女『
「スカルドン シーゴーズ ザラマス ジェロニラン ギーラ ザイコ セットン……ゼムラー バルガン星人 ルロンガ ラモン クリーンモンス ゲスタ アンプラー バットキング――」
頭から猫耳を生やした黒髪のツインテールの少女、『
「"えっと、本当に何なのかなこれは?"」
「どうやらウルトラメンの怪獣を登場順に羅列しているようです〜」
「ん。相当精神やられてる」
クリーム色の長い髪を靡かせるほんわかな雰囲気の生徒、『
なるほど、かなりの重症だ。そうとなれば教師として放置しておく訳にはいかない。そうして俯いているセリカまで近づき、その背中にそっと声を掛ける。
「"セリカ、ちょっといいかな?"」
「アッ、ピグモン」
「"それもうぼかしてないよね? まあそれは置いておいて。悪質商法の話は今となっては過ぎた事だし、皆も気にしていないみたいだから、そんなに気に病むことはないよ"」
「もう放っておいてよ……。対策委員会の会計担当でありながら、毎度碌でもない業者に騙され続ける甲斐性無しな女に慰められる資格なんてないのよ……」
うーん……いつでも勝気なセリカがこんなにも意気消沈しているとは想定外だった。このままではラチが開かない。そうだ、話題を変えてみよう!
「"ああ! そう言えば私、昨日の早朝に珍しい物見たんだ! それはそれは長ーく尾を引いた流れ星でね。朝焼けの空を翔けるそれはなんとも幻想的だったよ!"」
「流れ星か……ふふ、私もそんな風に大気圏で燃え尽きてしまえばいいのに」
しかしそれは失敗に終わった。むしろより一層陰惨なムードになったようにも感じる。もっと良い何か別の方法はないか――と思案したその時。
「流れ星? それならおじさんも昨日の夜に見たよ」
ホシノからの思わぬ台詞に、思考が遮られた。というかそれより――
「夜? 早朝ではなくて?」
「うん。写真にも撮ってあるんだ、ほら」
手渡されたスマホの画面には、確かに夜空を流れる天の川に、それを横切る真っ赤な彗星が写っていた。しかもこの彗星の特徴、これって……。
「うん、先生どしたの? 何か思い詰めたような顔をしてるけど」
「"この彗星、私が見たものと全く同じだ。尾の引き方、光の色や強さも何もかも"」
「うへぇ、そんな事ある? 珍しいこともあるもんだね〜」
「確かにそんな比較的短い間隔で、流れ星を二度も観測できるとは珍しいですね。類似した特徴であれば尚更です」
「"まあ、宇宙は広いしそんなこともあ――「先生。案外偶然でもないかもしれない」え?"」
「これ見て」
シロコが差し出したスマホを受け取ると、SNSアプリの画面が映し出されていた。するとそこには――
『私も昨日朝焼けの空をボーっと見てたので、この赤い彗星を見かけましたよ。ただ……なんか段々とスピードが上がっていたように感じたんですが、これって彗星の動きとしては珍しくないんですかね?」
『俺ゲヘナ在住なんだけどさ、朝9時ぐらいにこれと似たようなのが空をグルグル回ってた。そしたらいきなり宙返りして地上に急降下したんよ。明らかに流れ星がしていい軌道じゃなかった』
『アビドス住民ワイ、夕方に偶然彗星を見られてラッキー! って思ってたら、日が沈んだ後にまた同じもんが飛んでたんだわ。光の強さ的に飛行機でもないだろうし、まさかとは思うけどさぁ……』
「一日の間に、何度も目撃されている……?」
様々な時間帯や場所での、彗星の目撃情報が書かれていた。しかも中には、その光が奇怪な動きをしたという証言まである。これは一体?
「完全に同じ特徴を持った彗星が一日に数回、それも不規則な動きで流れるなんて、天文学に詳しくなくても誰もが変だと分かる。つまりこれは流れ星じゃなく、超高空域を移動する未確認飛行物体。よって導き出される答えは……UFO、あるいはそれに近しいもの」
「異星人……か」
私の返答に、シロコは静かに頷いた。普通ならそんなSFめいた話は馬鹿馬鹿しいと一蹴されるのだろう。しかしそんな超常的な体験は、私どころかキヴォトス全ての人達がつい最近体感しているため、強ち否定はする事はできなかった。
「となればモタモタしている場合じゃない。行こう皆」
「い、行くってどこにですか?」
私達に催促をしながら支度を始めるシロコに、アヤネは恐る恐る問いかける。さしずめアビドス、ひいてはキヴォトスに危害が及ぶ前に対処をしようと画策しているのだろう。普段は図太い性格の彼女だが、こういう時はやはり頼りにな――
「ん。勿論捕まえる。そして然るべき所に突き出して懸賞金ガッポガポ、みんなでハッピー。どう?」
「"いや思っていたのとなんか違う! ある意味シロコらしいけど!"」
そんな事は無かった。彼女は相も変わらず通常運転であった。
「いや確かに不可思議なのは認めますけど、まだそうと決まった訳では――」
「わぁ〜⭐︎ 私も宇宙人さんに会ってみたいです!」
「ちょっと、ノノミ先輩も乗っからないでくだ――ホシノ先輩、その白いTシャツに短パンなんていう恰好はなんですか?」
「ごめんごめん。ついつい虫取り少年時代の血が騒いじゃってね〜。えへ」
「宇宙人虫扱い!? 火星のクリーチャーか何かですか!?」
悪ノリを始めるノノミとホシノに、アヤネも次第に翻弄されていった。
「みんなで行ってきて……私は動ける気力なんてとうの昔に皆無なの……」
「まあまあ、セリカちゃん。話はここからなんだから〜」
するとホシノは項垂れているセリカの耳元にそっと顔を近付かせる。そして――
「飛行船をバラして売ったら、それはそれで高くつくと思わない? 正真正銘のレアメタルな訳だしさ」
何やら悪い顔で、セリカにコソコソと話し始めた。表情からしてあまり褒められた話ではなさそうだ。
「ッッッ!! やってやろうじゃないのよ!!」
「おっ! いつものセリカちゃんだ! やっぱりセリカちゃんはこうでなくちゃね〜」
しかしそれはなんと、セリカに命のガソリンを注ぎ込むきっかけとなったらしい。その起死回生に伴う気迫は、私達に青い炎を幻視させた。
「ああ、またこの流れですか……」
「"何はともあれ、セリカも調子を取り戻せたみたいだし、とりあえずは一安心って事にしようよ"」
「まあ、それもそうですね」
会議と称しながらてんやわんやするアビドスの面々。そんな普段通りの光景にアヤネと二人で安堵したと同時、私の胸元でスマホが振動する。それを取り出すと、画面には『
「あらら〜? 先生、またお電話ですか?」
「"うん、連邦生徒会からだ。すまないけど、また少し席を外すね"」
「先生も大忙しだねぇ。いってらっしゃーい」
バイブレーションが止まったスマホを片手に、教室から出ようとしたその時。
「あっ、そうだ先生。どうせなら屋上に置いてあるおじさんのマット、取ってきてもらっていいかな? 午後から雨らしいから回収したかったんだ」
「"そのくらいお安い御用だよ。じゃあ行ってくる"」
「ありがとね〜」
「ほら、ホシノ先輩もそんな裸のガキ大将みたいな恰好から早く着替えてください」
「アヤネちゃんって本当に高一?」
こうして教室から離れた私は、少し開けた階段付近のスペースで立ち止まった。受話器のアイコンをタップし、着信履歴から先ほどの人物に折り返しの電話をかける。そうしてコール音が3、4回ほど鳴った後にようやく繋がった。
『もしもし』
「"おはようリンちゃん。ごめんね、さっきは出られなくて"」
『いいえ、こちらこそ不都合なタイミングでかけてしまい申し訳ありません』
電話の相手は先ほどの七神リンという少女。『連邦生徒会』と呼ばれるシャーレの上位組織に所属する生徒であり、つまるところ私の上司にあたる人物だ。しかし目上といえど子供であるのには変わりないため、ついつい『リンちゃん』と呼んでしまう事が多々ある。当初はそれに対して少し不満ではあったようだが、打ち解けた今においてはまんざらではないようだ。
「"別にいいよ。それより、何か私に用があって連絡したんだろう? それって?"」
『そうですね、では単刀直入に申し上げます。昨日、キヴォトス各所で赤い彗星の目撃情報が相次いだ事はご存じでしょうか?』
「"知っているよ。というより実際、私もこの目で見ていたからね。巷ではUFOだのなんだの言われているけれど……ねぇリンちゃん、これってさ"」
『ええ、はっきり言って異常です。無論これは根拠も無しに言っているわけではなく、それを裏付けるかのような話も届いています」
「"裏付けるような話?"」
『交通室長であるモモカの元に、航空課から「不審な飛行物体をレーダーが感知した」という旨の報告が上げられました。それも一回だけでなく、数回に渡って』
『それも恐ろしいことに、不審な物体が感知されたという時刻と、赤い彗星が観測されたとされる時間帯。なんとそれぞれ全てが合致していたのです』
「"それは……とても偶然とは思えないね"」
『ええ。ですが今のところ、この事実は連邦生徒会内でしか周知されておりません。SNS上でも、合成写真やフェイクニュースだろうという風潮も徐々に広まっているため、しばらくの間は民衆に不安を煽ることはないでしょう』
『ですがもし、彗星の正体が本当に地球外知的生命体の物であり、尚且つこの星に良からぬ考えを抱いていたら……』
「"あまり猶予は残されていない、のかもしれないね"」
『はい。そのため私共は現在総力を上げて捜査に乗り出しています。可能な限り先生にも、彗星の正体を突き止めていただくようご協力を願いたいのですが、いかがでしょうか?』
「"答えなんて決まっているよ、断る訳がないさ。もう二度とこのキヴォトスを混乱の渦に陥れさせない"」
『先生ならそう仰って下さると信じていました。しかし件の物は本当に未知数な存在です、十分にお気をつけください』
「"大丈夫だよ、私には信頼できる心強い生徒達がついているから。リンちゃんこそ無理はしないようにね"」
『お心遣い頂きありがとうございます。それでは先生、失礼致しました』
その言葉が言い終わった数秒後、彼女との通信が途切れる。そうして私はスマホをポケットにしまい、ホシノのマットを取りに行くべく、屋上を目指して階段を登り始めた。
いやはや、ヒナを追い詰めたという正体不明の少女に、異星人の物とされる謎の光。あんな大騒動を終えたばかりだというのに、とんでもない話が次々と舞い込んできてしまった。
しかしそれも仕方のない事だ。普通の物語ならラスボスを倒し終えるとハッピーエンド――となるのだろうが、現実の世界にはエンディングなんてものは存在しないのである。私は今まで通りシャーレの先生として生徒達の為、キヴォトスの為に奔走することだろう。休息を取れる日もきっと少ないと思われる。
("しかしそれでも構わない。私は先生としての役割をやり遂げるまで、ただひたすら粉骨砕身していくだけだ")
私はそう覚悟を決める。そして再び段差を一つ一つ上がっていき、ようやく最上階まで辿り着いた。そのまま流れるように鋳鉄製のドアを開いた瞬間、鋭い日差しが私の瞼に降り注ぐ。
(今日は一段と日差しが強いな。暑いし、早くマットを回収して皆の所に戻るか……)
確かホシノがいつも寝ている場所は、アビドスの紋章が側面に刻まれている本館の高台部分だ。容赦なく照らされる日の光をたまらず右手で遮り、その場所を横目に見た、その時だった。
(うん? 誰かいる……のか?)
何者かが、高台部分に立っているように見えるのだ。最初はいまいちその特徴を掴めなかったが、日差しに目が次第に慣れてくると、その姿が鮮明に見え始める。
するとシルバーグレーの短い髪と灰色のセーラー服。そしてドラゴンのような翼と尻尾を携えた少女が腕を組み、瞳を閉じながら立っているのがはっきりと分かった。彼女の頭上にはヘイローが依然浮かんでいるため、立ったまま寝ているという訳ではないようだ。恐らく瞑想か何かの類いだと思われる。
というよりも彼女、どこかで見覚えが――いや、この子!!
(間違いない。ヒナが今追っている生徒だ!)
そう、風紀委員会の皆を蹴散らしたという件の少女であった。そんな彼女がどうしてここにいるのか、という疑問はあったが、それは同時に嬉しい誤算でもあった。
なぜなら先ほども言ったように、一度彼女と話し合いたかったからだ。彼女を取り巻く何かがあるのならと、寄り添ってあげたかったのだ。ヒナ達には悪いけど先に見つけられて良かったと、心の中で安堵する。
しかしそんな少女との出会いがあんな事態を招く事になるとは、この時の私は思いもしなかった。
なんとか9月中には間に合わせられた……。読者の皆様には再三お待たせしてしまい申し訳ありません。
話は変わりますが、貴水博之の「Wish in the dark」ってホシノのキャラソンとしてピッタリだと思います。
素晴らしい曲ですので、是非とも聴いてみてください( ◠ ‿ ◠ )ニコッ