透き通る世界を照らす赫き星   作:お茶犬大家族

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生きてます。毎度の如く長引いてしまって申し訳ありません……。

こういう完全な独自のストーリーは展開や台詞、何から何まで自分で考えないといけないので、どうしても期間が長引いてしまうのが辛いところ。オリジナルの話をスラスラと書いて更新できる、他の作者様のそんなスキルが羨ましい……。

え、言い訳ばかりしてないで手ぇ動かせって? ……ごもっともでございます。




砂の園を訪れし危機

 

 

 ヒナを始めとしたゲヘナ風紀委員会の生徒達を圧倒し、姿をくらましたという少女。その本人が何故か、アビドス高校の校舎の屋上に立っているというまさかの事態。

 アビドスとゲヘナは地理的に近い位置関係ではあるとはいえ、他区でお尋ね者となっている彼女とこんな形で出会うとは考えもしなかった。

 

 それにしても……170cm以上はあるだろう長身のスレンダー体型。自身を照らす黄金の日差しとは対照的な、艶やかな白銀の髪に雄々しい燻し銀の剛翼。キヴォトスの生徒は美形な事が多いが、その中でも一線を画す整った顔立ち。

 金と銀のコントラストで織りなすその神々しい立ち姿は、最早芸術の域だと私に詠嘆させた。そんな圧倒的な存在感を放つ彼女の佇まいに心を奪われ、呆然としていると――

 

 

 

「いつまでそこで呆けている。私が気付かんとでも思うたか」

 

 

 

 そんな彼女の呼びかけで、ふっと我に返る。私の意識が戻ったのと同時に、彼女は瞼をすっと開いてこちらを横目に見下ろした。

 ターコイズブルーと真紅の二色で彩られたその瞳に射抜かれ、思わず心臓を鷲掴みにされたかのような緊張感が走る。恐らく――いや、きっと警戒されているのだろう。

 

 

「"い、いやぁ……なんだか集中していたみたいだから、邪魔しては悪いかなと思ってね"」

 

「む、そうか。どうやら気を使わせてしまったみたいだな」

 

 

 凍るような視線にあてがわれた私は、慌ててやましい事は考えていないと弁明する。すると意外にも、彼女はすんなりと警戒を解いて体をこちらに向けた。

 

 

「それにしても……ふむ、なるほど」

 

 

 そして組んでいた腕をおもむろに解き、右手を腰に当て、左手を顎に添えながらこちらを観察し始めた。まじまじと見つめられ、それに段々と小っ恥ずかしさを覚えていると彼女は再び口を開く。

 

 

女子(おなご)の顔貌を眺めるような痴れ者は、さぞどんな面をしているのかと思えば……。これはこれは、一片の穢れも無さそうな色男ではないか」

 

 

 

「まあ、()()()()()()()がな」

 

 

 品定めをするように私を観察していた彼女はそう言い終え、高台から屋上の床へと飛び降りる。

 

 

「人型の雄かつヘイローの無い大人。大方貴殿が、キヴォトスの外から来たというシャーレの先生とやらだな? 会えて嬉しく思うぞ」

 

「"うん、私がそのシャーレの先生だよ。よろしくね"」

 

 

 二人でそんな簡単な挨拶を済ませ、私は気になっていた事を彼女に問いかける。

 

 

「"ねぇ、聞いてもいいかな?"」

 

「ん? なんだ、申してみよ」

 

「"昨日ゲヘナの風紀委員会を襲ったという、とある少女の話を聞いたんだ。ただ……その外見が君と酷似しているのだけれど、君で間違いないのかな?"」

 

「ああ、何を隠そう私自身だよ。それがどうかしたか?」

 

 

 やはり彼女で合っているようだ。そう事実確認を取った私は、質問を続ける。

 

 

「"どうしてそんな事をしたのかの理由が知りたいんだ。もしかして誰かに脅迫されて、無理矢理従わされているのか。あるいは何か特別な事情を抱えてしまい、嫌々ながらも戦ったのか。その他にも色々な可能性を考えたんだけど……どうなの?"」

 

「なんだ、私の身を案じてくれているのか。だが心配には及ばん。奴らからも聞いたのだろう? 私はただ自分の欲求を満たしたかっただけ、それ以外の何物でもない」

 

「"そうなんだね。それはどうしても、戦う事でしか解決できなかったのかい?"」

 

「生憎と、私はこれしか退屈を埋める方法を知らない。大なり小なり、悪い事をしたとは思っているがな」

 

「"それが、人を心身共に傷付ける形にしかならないとしても?"」

 

「……私と貴様は赤の他人だろう。何故そこまで気に掛ける」

 

 

 すると彼女の眉間に少し皺が寄る。個人的な心情に、づかづかと踏み込まれる事に苛立っているのかもしれない。それでも私は――

 

 

「"子供が何かを抱え込んでいるなら、それをあるべき形で解消させ、その子にとって最善な道に導いてあげる。それが大人としての――先生としての責務だからね"」

 

「……殊勝な心掛けじゃないか」

 

 

 私は自身の信念を淡々と述べる。彼女はそれに対して少し目を見開くと、くすりと笑った。

 

 

「いいだろう。貴殿のその気高い矜持への敬意として、少し身の上話をしてやる」

 

 

 そう言いながら彼女は背中をこちらに向け青空をゆっくりと見上げると、ぽつぽつと語り始める。

 

 

 

 

「私はこれまでの生涯、変わり映えしない空虚な日々を永久と思えるほど過ごしてきた。唯一の楽しみとして、世界各地津々浦々の美しい景観を眺める事ぐらいにしか、生を見いだせなかった」

 

「だがある日を境に、そんな私にも生き甲斐というものが出来た。血潮が沸騰するかの如く、氷点下であったこの心を昂らせる存在を知ったのさ」

 

「しかしやっとの思いで手にしたそれすらも、私は手放してしまった。見つけ出すまでは莫大な時間をかけたというのに、無くなる時は泡沫のようにあっという間だった」

 

「私はそんな刺激が再び欲しいのだ。この乾いた心に潤いを与えてくれる、目覚ましい何かを」

 

 

 

 

「退屈すぎる永遠よりも、白くときめく一瞬がいい。そうは思わんか?」

 

 

 

 こちらに向き直りそう締め括った彼女の表情は、どこか聡明で凛々しい面持ちをしていた。

 

 

「"何だか君は大人びているというか、年相応って感じがしないね。なんだか子供とは思えないほどに"」

 

「子供、ね……」

 

 

 

 

 

「私からすれば、貴様のほうがよっぽどガキだがな」

 

 

 

 

 

「"? どうかした?"」

 

「なんでもない。まあそれは兎も角、そちらの問いに逐一答えてやったのだ。今度はこちらから問おうか」

 

「"うん。私で良ければなんでも聞いて"」

 

「貴殿に色々と尋ねたいことがあってな。時に、『龍歴院(りゅうれきいん)』や『ハンター』という言葉に聞き覚えはあるか?」

 

 

 龍歴院、そしてハンターか。後者はまだしも、『りゅうれきいん』なんて単語はキヴォトスはおろか外でも聞いたことがないぞ……。

 

 

「"ごめん、ちょっと分からないかな"」

 

 

 正直に告げると彼女は「……そうか」と、何やら少し寂しげな表情を浮かべる。

 

 

「やはり遠く離れた地というわけではなく、全くの別世界にやってきてしまったのか……」

 

 

「"期待に添えられなくてごめんね。でもそれなら、私のほうからも捜査を進めてみるよ"」

 

「謝る必要なんて無いだろうに。しかしまあ、前向きに検討してくれるのなら助かる。だが用件は他にもあってな」

 

「実際に見て確かめてみたかったのだ。シャーレの先生とやらが、一体どんな人間なのかを。このキヴォトスで起きた様々な問題を解決し、ひいては世界の存続が危ぶまれた事態でさえ乗り越えてみせる程だ、気にならないほうが可笑しいだろう?」

 

 

 彼女は私が今まで行ってきた活動をそう賞賛する。なんだか照れ臭いや。でもね――

 

 

「"私はただ先生として、生徒達の未来が奪われるような事があってはならないと動いただけだよ。無限大の可能性を持ち、キヴォトスの将来を担う彼女達の為にもね"」

 

「つくづく見上げた精神だ。そんな貴殿の事を考えれば考えるほど、興味が湧いた。ヘイローも持たぬ人間の分際で、どうしてそんな真似が出来たのかを知りたくて、な」

 

 

 そんな台詞と共に彼女の頬が吊り上がり、その私に浴びせていた視線もどこか鋭いものとなる。なんだが雲行きも悪くなったような気がするけど、気のせい……だよね?

 

 

「よし、ならば早速やろうか」

 

「"やるって、なにを?"」

 

 

 

 

「何って決まっているだろう。戦だよ戦。ほれ、早く構えろ」

 

 

 

 

 なっ、まさかこの子……私と直接戦うつもりなのか!?

 

 

「"待って! 私自身は全く戦えないんだ! あくまで皆のサポートに徹してきただけであって!!"」

 

「ああ、それは知っている。キヴォトス人でない貴様は、銃弾一発でいとも簡単に骸と化すとな」

 

「"それなら――「しかし」 え?"」

 

「それでいて、これまで幾つもの修羅場を潜り抜けてきたんだろう? 支援とはまた違った、()()()()()()()()()があっても不思議ではないんじゃないか?」

 

「"……っ!"」

 

「その反応は肯定と受け取るぞ。はてさて、一体全体どんな力なのかこの私に見せてもらおうか」

 

 

 その瞬間、辺りの空気は一変した。まるで自分の周囲だけ重力が倍以上になり、地面に押し潰されるかのようなプレッシャーが私を襲ったのだ! これがたった一人の少女が放つ覇気なのか!?

 それにしてもまずい、今の彼女はとても話し合いが通じる雰囲気ではない……。ここはひとまず――

 

 

「悪いが拒否権は与えない」

 

「"速っ――づぅっ!?"」

 

 

 この場から去ろうとしたのも束の間、私は襟元を掴まれ屋上のタイルを転がされていた。一定の距離は空いていた筈なのに、私はその接近に一切気付く事ができなかった。

 私は即座に立ち上がるが、昇降口へ続く前方は彼女によって阻まれ周囲にはソーラーパネル。後方に退いてもいずれ壁に付き当たるだけ。高台と屋上を結ぶ梯子はあるものの、今の彼女に背を向けるなんて自殺行為だろう。

 まさしく袋の鼠。私という獲物を確実に逃がさないよう、自身が階段側に背を向ける立ち位置に入れ替えたのだ。逃げ道は完全に潰されてしまっていた。

 それでもなんとかして、この状況から抜け出す打開策を考えていたその時。

  

 

「ほれ、なんだかんだ言いながらこんな物まで持ち歩いているじゃないか」

 

「"っ! それは……"」

 

 

 いつの間にか彼女の手に、スタングレネードが握られていた。あれは以前ホシノが私の為に、護身用として手渡してくれた物だ。

 これならば殺傷能力が低いため、私でも心置きなく使いやすいだろうと渡されたのだが、自身としては生徒に向けて使う気には中々なれなかった。

 

 

「こいつは確か、こんな風に起爆させるのだったかな?」

 

 

 すると彼女は閃光弾のピンを抜き、私達が向かい合わせに立っている場所の中心、その上空に高く放り投げる。

 

 

「"ゔっ゛っ!!"」

 

「おや、可愛らしい反応をするではないか」

 

 

 直後、強い閃光と耳を劈く爆音がアビドス高校に広がる。生じた光は花火のように降り注ぎ、私達を照らした。堪らず顔を腕で覆ってしまった私に対して彼女はまったく意にも介さず嘲笑い、こちらを揶揄う。

 

 

「閃光玉と音爆弾の性能を兼ね備えた小道具、人間の発明の進歩には毎度感銘を受けるな。さあ、次はどんな手を見せてくれる?」

 

 

 まるで何百年も生き続けた存在かのように、しみじみとそう言葉を漏らす少女。それにしても拙い。数少ない対抗手段を失っただけでなく、より一層彼女の好奇心を刺激してしまったようだ……。

 

 

「来ないならば、再度こちらから行くぞ。恨むなよ」

 

 

 その言葉と共に飛んできたのは、私の腹を目掛けたボディブロー。またもや一瞬で間合いを詰められ、高速で振るわれたそれは私の反射神経では到底対応できない。せめてもの抵抗として目を閉じ、その衝撃に身を備えようとした。

 

 

「ぬぅっっ!?」

 

 

 しかし私達の間に突然光の盾が展開され、彼女の鉄拳を弾き返した! これはアロナとプラナの持つ能力であり、彼女達が間一髪の所で防いでくれたのだ。

 

 

「へぇ。手を抜いたとはいえ、私の拳を防ぐとはな。なんとも摩訶不思議な力、実に優れた耐久性だ」

 

 

 跳ね返された自身の手をまじまじと見た彼女はにたりと笑い、再度こちらに目を向ける。すると今度は、背中にあった大きな翼を高く掲げる。そして――

 

 

「どれ、いつまで耐えられるか試してやろう」

 

 

 猛禽類の鉤爪の如き鋭利な先端で、勢いよく袈裟が落とされた! まるで刀と打ち合ったかのような激しい金属音が響き、夥しい量の火花が飛び散る。

 しかし彼女はそんな事はお構いなしに次の一手を繰り出し、そのまま激流の如き連撃へと発展する。襲いくる斬撃の嵐に負けじとバリアで対抗するアロナ達だが、その最中に発生している甲高い轟音に全身が恐怖で粟立つ。この子達がいなければ私はきっと、シュレッダーに放り投げられたヒヨコのように無惨な肉片と化していただろう。

 二人は必死に今の状況を維持しようとしているが、ずっとこうして防御膜を展開できる訳ではない。いずれ限界が来てしまう。

 一体どうすればと、思案していると――

 

 

「……守ってばかりか」

 

 

 彼女がふいに攻撃を止め、翼を引き戻したのだ。それを好機と見た私は即座に、コートの内ポケットに入れていたシッテムの箱を取り出す。するとディスプレイには、酷く疲弊した二人の姿が映っていた。体感的には小一時間受けたような感覚だったのに、実際には10秒も経っていない。そう錯覚させるほどの猛攻だったのだ。

 アロナ達には相当な無理をさせてしまった、もう一度頼る事はすぐに出来そうにない。だがそれはより一層、絶体絶命の状況に追い詰められてしまったということ。意を決した私は一か八か、全速力で彼女の横を通り過ぎようと足に力を込める。

 

 

「どうやら肉体的な強さが無いのは本当らしいな、手荒な真似をしてすまなかった」

 

 

 しかしその瞬間、彼女の口から飛び出してきたのは意外にも謝罪の言葉だった。纏っていた絶大なオーラもいつの間にか消え去っており、私は無意味に胸を撫で下ろし、地べたに尻餅を付いていた。

 

 

「なんだ腰を抜かしたのか。憂い奴だ」

 

「"それはそうだよ……。少し寿命が縮んだかもしれない……"」

 

「悪いな。近頃の私は人より少し血気盛んでね、興味のある相手にはついついちょっかいを掛けたくなるのさ。やはり貴殿は噂通り、崇高な魂とは正反対に体は貧弱なようだ」

 

 

 事実とはいえ、そこまではっきりと言われるとショックを受けるな……。内心そういじけていた、その時――

 

 

「まあそれも、()()()()()、だが」

 

「"? それはどういう――"」

 

「人間の成長性とは凄いものだ、時に私の想像を超えることもあるのだから。貴様も一端の男児ならば、その可能性は無きにしも非ずだろう」

 

 

 彼女の意味ありげな逆接に、思わず思考が遮られる。そのままかつての何かを思い出すように一人立論する少女。そうして彼女が導き出した結論はなんと――

 

 

 

「住処を探すついでに、攫って扱いてみるのも悪くないか」

 

 

 

 私を誘拐するという、事実上の犯行予告。そうして再び不適な笑みを浮かべ、その双眸を妖しく光らせる。

 

 

「さて、大人しくついてきてもら――ん?」

 

 

 そう言いながら少女は、へたり込んでいる私のほうへ右手を伸ばす。しかし突然その腕がピタリと止まり、彼女が後方へと顔を向ける。

 直後、昇降口の扉が吹き飛ばされ、小さな影が飛び出して来た! その正体とは――

 

 

「"ホシノ!?"」

 

「先生! 話は後!!」

 

 

 屋上に現れたホシノはすぐさま盾を展開し、弾丸のような速度で少女に突進する。痛烈無比なシールドバッシュを受けた彼女はたまらず身体をくの字に折り曲げ、除雪車に押し出される雪のようにずりずりと後退させられていく。ソーラーパネルやフェンスを破壊しながらグラウンドへと落下すると、大きな砂埃を発生させ彼女達の姿はそれによって覆い隠された。

 

 

「先生っ、無事で良かった……」

 

 

 一瞬で起きた出来事に呆気に取られていると、シロコがいつの間にか私の元まで駆け寄ってきていた。

 

 

「"うん、お陰様でね……。他の三人は?"」

 

「ノノミ達は反対側に向かわせてた。二分の一を外しちゃいけないから」

 

 

 なるほど、と安堵したその刹那。

 

 

「ん。先生、ちょっと失礼」

 

「"シロコ?  何を……って!"」

 

 

 私を俵のように担ぎ上げたシロコは突き破られたフェンスまで近付き、数cm突起した校舎の縁に足を掛ける。なんだろう、嫌な予感しかしない。

 

 

「"ま、まさかとは思いますが飛び降りる気じゃ"」

 

「そのまさか」

 

「"ちょっと! 心の準備がまだ出来て「ふっ!」ないんですのぉぉぉぉぉぉぉ!!!"」

 

 

 

 私の懇願は彼女には届かず、いつぞやのように地上へ自由落下していった。

 

 

 

 

 

「"川の向こうで手を振るプレナパテスが見えたような気がする……"」

 

「ん。悪いけど、このほうが手っ取り早いと思った」

 

 

 かつての同胞の姿を幻視し、未だ頭が覚束ない私をシロコはすっと下ろすと自身の愛銃を構えた。その直後周囲に鈍い金属音が響き、砂埃を割って背中から吹き飛んできたホシノが私達の目の前に着地する。

 

 

「"ホシノ! 大丈夫!?"」

 

「へーきへーき。中で押し合いになってたんだけど、途中で蹴り飛ばされちゃってね〜。まあそれはそれとして、来るよ」

 

 

 ホシノがそう言いながら目線を前方へと戻す。いつの間にか巨大な砂埃も、すっかり晴れていた。

 

 

「あの爆破で気付かれてしまったか。当然と言えば当然だが、少々はしゃぎすぎたな」

 

 

 するとそこには右手を左肩に置き、首を鳴らしながら私達を見渡す少女の姿があった。

 

 

「先生! ご無事で何よりです……」

 

「"ごめんね皆、こんな事態を招いてしまって"」

 

「謝らないでください。これまで先生がしてくださった事に比べれば、些細な事です」

 

「で、あいつが下手人って事でいいのよね?」

 

「どうやら少しばかりおいたが過ぎるようですね〜♫」

 

 

 それと同時に校舎から出てきたアヤネ達と合流し、三人は私を一瞥した後、彼女のほうを睨み付ける。相手もまた、揃い踏みしたアビドス生達に視線を返した。

 

 

「ひい、ふう、みい……複数人の気配があるのは感じ取っていたが、揃いも揃って小娘とはな。英雄色を好むとは良く言ったものだ」

 

「君だって学生でしょ。まあそれはいいとして、どうして先生を襲っていたの? まさかとは思うけどゲマトリアの仲間? 答えて」

 

 

 不審な相手といえど、普段は誰にでも剽軽に振る舞うホシノがここまで危機迫る表情で問い詰めるのは見たことがない。きっと彼女も確信しているのだろう、目の前の少女を相手に油断など一切許されない事を。

 

 

「貴様の言うゲマトリアなんてものは知らん。だが――」

 

「だが?」

 

「単にその男に興味があっただけさ。お前達が其奴にどんな感情を抱いているかは粗方察しが付くが、頂いていく。悪く思わないでくれ」

 

「連れ去って、その後どうするつもりなのさ」

 

「具体的には決まっていないが……まあ、多少なりとも(なぶ)る事にはなるかもしれんな。さあ、これを聞いてお前達はどうする?」

 

 

 ひりついた空気の中でも彼女は自身の目的を曲げず、怜悧にほくそ笑む。それに対しホシノ達は――

 

 

「させないよ、絶対に」

 

「はいそうですか。なんて言うわけないでしょ!!」

 

「ふふ、それだけは『めっ』で許されませんよ♪」

 

「ん。先生を襲うのは私」

 

「今の内であれば、事を荒立てるつもりはありません。どうかお引き取りを」

 

「"待って、聞き捨てならない台詞があったような気がするんだけど"」

 

 

 私を誘拐し痛めつけるという宣言に、怒りを露にする。そしてそれぞれの威勢を込めた言葉、もとい警告を言い放った。

 

 

「そうか、ならば仕方ない。力尽くで連れ去るとしよう」

 

 

 各々が切った啖呵を受けても彼女は揺るがず、それどころか再び凄まじいオーラを解き放つ。その威圧を感じ取ったホシノ達も臨戦体制に入り、それぞれの獲物を構える。

 あまり気が進まないけれど、今の彼女は言葉で抑えられないのは明白だ。ここはひとまず、ホシノ達の力を借りて沈静化させるしかない!

 

 

 だが私達はこの後、眼前の少女の脅威を改めて思い知らされることになる。

 





年下(仮)の女の子に弄ばれる先生、よわっちくて可愛いね♪

また、おまけ回についてのアンケートは今回で締め切りに致します。結果を見るとどうやら肯定的な意見が多かったため、掲載する方向で参りたいと存じます。

執筆時間が増えるよ!やったね作者!
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