透き通る世界を照らす赫き星   作:お茶犬大家族

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デカグラマトン編のメインストーリー編入に伴い、当ストーリーのタイトルをEXからSEに変更致します。予めご了承ください。





アビドス戦線・異常あり!

 

 

 

(この闘気――少数ではあるが、各々の戦闘力は著しく高いな。特にあの桃色の小娘、奴らの中でも頭一つ抜けている。恐らく空崎ヒナと同等か、あるいは……)

 

 

 アビドス高校のグラウンドにて、本校の生徒達と相対する銀髪の少女。自身に突き刺さる複数の眼差し。その一つ一つから、彼女らが並々ならぬ人間だと少女は察知した。

 

 

(なら丁度いい。こいつらを完膚なきまで捩じ伏せ、さすれば私は更なる高みへと至る)

 

 

 しかしそれでも彼女は揺るがない。五対一という圧倒的不利な状況であるにも関わらず少女の口角は吊り上がり、獰猛な笑みを浮かべる。

 

 

「何笑ってんのよあんた……。いいわ、その薄ら笑いを消してあげる!!」

 

「直情的なのは頂けないな」

 

 

 それを見たセリカはわなわなと震え、声を張り上げたと同時に彼女のアサルトライフルが火を噴く。だが相手も猛者。軽々とその銃弾を躱し、すぐ隣にあったロッカーの陰へ飛び込んだ。即座に背中をそれに預け、彼女らがいるであろう方向を尻目に見る。

 

 

(やはりだ。気性に難ありではあるが、射撃の技術は厄介と見た。とすると他の人間達も……)

 

 

 

「ならば意識を切り替えよう。奴らは気を抜いていい相手ではないらしい」

 

 

 そんな台詞と共に彼女の声色は低くなり、目つきは鋭いものとなる。それは歴戦の王者としての勘が告げたものであり、その事実を再確認した少女は闘志を最大限に研ぎ澄ました。

 

 

 

 

 

「どこまでも傲岸不遜ねあいつ!」

 

「まあまあセリカちゃん落ち着いて。ほれ、ひっひっふー」

 

「あたしゃ妊婦か! ……まあ、頭は冷えたわ」

 

「それは良かったぁ」

 

 

 少女がロッカーの陰へ姿を消したと同時、恨み節と共にセリカは銃撃を止める。興奮冷めやらぬ彼女をホシノが宥め、その言葉選びにツッコミを入れつつもセリカは落ち着きを取り戻す。

 

 

「"それじゃあ指揮を取るよ。彼女との近接戦はホシノが重点的に。シロコとセリカはホシノの援護に加え、彼女の動きを制限。ノノミは隙を見て集中砲火。アヤネは指示に応じて物資の支給。皆、準備はいい?"」

 

「「「「「いつでも」」」」」

 

 

 彼女が落ち着くタイミングを見計っていた先生が指示を出し、それを受け取った五人は同時に応答する。

 

 

「"だけど皆、十分に気をつけて。彼女は只者じゃない"」

 

「みなまで言わなくても分かってるわよ。あいつがべらぼうに強いなんてことは、ひしひしと肌感覚で伝わってる」

 

「ええ、道場破りをするだけのその胆力に見合う実力はお持ちのようです」

 

「ん。ホシノ先輩くらいじゃないと、真っ向勝負ではまず勝てない」

 

「責任重大だぁ。んじゃ、行ってくるね〜」

 

「はい! 可愛いチャレンジャーさんにいい子いい子してあげてください⭐︎」

 

 

 そんな気の抜けた台詞を発しながらも、ホシノは散弾銃を片手に持ち、山積みにされた麻袋のバリケードから素早く飛び出していった。

 

 

(むっ、こちらに迫る気配……あの桃色の小娘か! 面白い、受けて立とう)

 

 

 対する件の少女は、自身の元まで迫ってくるホシノの覇気を感じ取り、緩やかに腰を上げる。すると――

 

 

「噴ッッ!」

 

 

 なんと壁にしていたロッカーを、ホシノのいるほう目掛けて蹴り飛ばす。そのずっしりとした重量と体積の鉄塊は、最早大砲に打ち出された砲丸そのものだった。

 

 

「あっぶないなぁ、もう!」

 

 

 ホシノはそれを横っ跳びで回避し、難を逃れる。だがそれによって彼女の意識が一瞬途切れ、その隙を突き――

 

 

「いい反応だ。殺すには惜しい」

 

「やばっ……」

 

 

 少女は既にホシノの懐を侵略していた。そして握り固めていた左拳が高速に振り上げられる。

 

 

「させない」

 

「ちぃぃ!」

 

 

 かに思われたが、今度は少女がサイドステップをとる。すると先程まで彼女がいた場所に5発の銃弾が降り注ぎ、砂塵を燻らせた。その射撃の主はシロコだった。彼女はホシノが飛び出した瞬間に自身も続けて機動し、少女の背後まで移っていたのだ。

 

 

「邪魔をするな野良犬!」

 

 

 少女は避けた先にあった跳び箱の一段を掴み、シロコに向かって豪速球に投げ飛ばす。

 

 

「づっぅ!」

 

 

 しかしシロコはギリギリのところで首を横に反らし、こめかみを掠りながらも跳び箱は軌道上を直進していった。仕留められなかった事に少女は不満を顕にし、鼻を鳴らす。

 

 

「おじさんの事忘れないでよ、寂しいじゃんか」

 

「忘れてなんていないさ」

 

 

 自身から目を離した相手に高速で接近するホシノ。次の刹那、ホシノはショットガンの標準をその大きな背中に合わせて砲火するが、その銃撃を少女はノールックのまま体をずらして躱す。

 彼女はすぐさま背後にいる人間と再び向き合った。だが少女の目の前に飛び込んできたのは――

 

 

「ぬぅぅ!?」

 

 

 なんと手榴弾だった。その位置は目と鼻の先、尚且つ起爆寸前の状態であった。

 

 

「ふっ!!」

 

 

 だが咄嗟の判断で彼女はバックステップをとる。次の瞬間投げ出された手榴弾が炸裂するが、少女が爆炎に飲み込まれる事はなかった。また、それによって付近は硝煙に包まれる。即座に体勢を低くした彼女は意識を研ぎ澄ませ、いつどこから来てもいいよう全方位に警戒を高めた。

 

 

「鬼さんこちら♪」

 

「おっと危ない」

 

 

 その直後、ホシノが煙を裂いて彼女の左隣に回り込む。そのまま立て続けに銃身を振り上げ、相手の頚椎を狙って振り落とした。しかし少女はすぐさま前へ跳び、銃身の制空圏から脱出してみせる。

 

 

「今のも避けちゃうんだね〜」

 

(反応速度が並の人間のそれじゃない。やっぱり難敵だなこの子)

 

 

 表面上では飄々とした口調で振る舞っているが、ホシノは内心目の前の人物が只者ではない事を改めて実感した。

 

 

「猫騙しからの闇討ちとは、随分味な真似をするじゃないか」

 

「あれれ、もしかしてもうビビっちゃった? 降参するなら今の内だよ」

 

「ほざけ。小細工なら好きなだけ弄するがいい、私を愉しませろ」

 

 

 少女の言葉の通り、その表情に萎縮の色は見えない。むしろ狂気が増し、悪魔のような形相を浮かべる。今までの一連の行動は、彼女の闘志に油を注ぐ結果となるだけだったのだ。

 

 

(痺れるほどにバトルジャンキーだねぇ、ここはひとまず)

 

「君メチャ強そうだし、一旦離れようかな」

 

「逃がす訳なかろう」

 

 

 ホシノはそう言うと後ろに跳び、少女との距離を離す。だが相手がそれを許す筈もなく、地面を蹴って追走を仕掛ける。

 

 

「むぅ!」

 

 

 しかしその刹那、彼女は嫌な空気を気取(けど)る。すると翼から龍気を噴出し、空中へと浮かび上がった。

 彼女の読みは正しかった。何故なら先ほどまでいた位置を、無数の鉛玉が通過していったのだ。少女はすぐさまその弾丸が飛んできた方向へ視線を移す。

 

 

「わぁ〜、まるで戦闘機みたいですね♧」

 

 

 その正体はノノミと、彼女の愛銃である機関銃『リトルマシンガン』だ。リトルとは名ばかりの無骨なそれから発射される銃弾は、まさしく一騎当千の破壊力を誇る。

 

 

(亜麻色の小娘の獲物、空崎ヒナが所持していた銃に匹敵しうる威力だろう。常に注意を向けておくか)

 

 

 機関銃の性能を瞬時に察知した少女は、下駄箱の陰に隠れる形で再びグラウンドに接地した。即座に周囲の状況を把握すべく、少し覗き込もうとした瞬間、何者かの殺気を探知してすぐに顔を引っ込める。

 それとほぼ同時、壁にしている下駄箱から激しい金属音が発生した。

 

 

「チッ! やたら勘がいいわね!」

 

 

 その狙撃を行ったのはセリカだった。スナイパーではないにしろ、彼女の標的を正確に撃ち抜く技術は折り紙付きである。

 しかし相手は歴戦の龍。僅かに漏れていた殺気を探知し、瞬時に身を退いたのだ。

 

 

(この障害物の多さ。そして場慣れしている分、やはりこの戦場では向こうに分があるか)

 

 

 彼女は遮蔽物の陰に身を潜め、自身や相手陣営の実力、周囲の状況等から現時点の戦局を見定めていた。

 

 

(奴ら相手に丸腰は少しきつそうだ。ならば)

 

「こいつを使ってみるか」

 

 

 すると少女は腰に巻き付かせていたホルスターから拳銃を引き抜く。そう、先日柴関の大将から譲り受けたものだ。

 

 

(こいつの撃ち方は風紀委員会の小娘達の動きを見て学んでいる)

 

 

 以前戦った者達の動作を思い浮かべながらセーフティー等を外し、マガジンを装填する。そして次の瞬間――

 

 

「確かこうだったかな?」

 

「っ!!」

 

「"シロコ!!"」

 

 

 彼女は拳銃を水平に構え、その標準が右斜め後ろにいたシロコに合わさる。隠密に気付かれたシロコが動揺したその刹那、辺りに一発の銃声が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

「……ノーコン」

 

「どこ狙ってんのよ!」

 

 

 しかし、弾丸はあらぬ方向へ飛んでいった。

 

 

「参ったな……」

 

 

 それもそのはず。拳銃の撃ち方は理解していても、そのテクニックまでは把握していなかったのだ。見よう見まねでは仕方ないのかもしれないが。

 

 

「茶番はそこまでにしてもらおうかな!」

 

 

 その瞬間、少女の正面にあったバリケードを飛び越える形でホシノが彼女の頭上を取り、唐竹割りの要領でショットガンを振り下ろす。この間隔では先程のように躱す事はできないとホシノは踏んでいた。しかし――

 

 

「固ったいなぁ、何でできてんのさその翼」

 

「暑苦しい。離れてくれ」

 

 

 少女がすんでのところで槍翼を間に入れ、その袈裟は受け止められる。そのまま鍔迫り合いになるかと思われた二人だったが、少女が強引に振り抜いてホシノを大きく吹き飛ばす。

 

 

「ただでは吹き飛ばされないよ」

 

「随分と器用だな!」

 

 

 しかしホシノは宙に浮かびながらも、すぐさま自身のショットガン『Eye of Horus』の狙いを定め3発の鉛玉を速射する。それは猛追をかけようとした少女への牽制となり、彼女が銃弾を避けている間に着地するまでの時間稼ぎとしては十分だった。

 

 

「ちょこまかするのは程々にして、いいかげん真正面からやろうじゃないか」

 

「接近戦に自信があるの? いいよ付き合ってあげる!」

 

 

 そうして彼女が着地したと同時、少女は眼前の相手へ向かって接敵する。対するホシノもまた折り畳んでいた盾を再度広げ、迎撃の態勢へ入る。

 

 刹那、二人は激しい近接戦へとなだれ込む。

 

 

「ちんまい体ながら素晴らしい身体能力だな。何を食ったらそうなるのだ」

 

「んー、ジャガイモかな。ジャガイモの可能性は無限大なのさ」

 

「なるほど、芋か。参考になるよ」

 

 

 まるで世間話でもしているかのような二人だが、乾いた銃撃音や鋭い金属音を響かせながら繰り広げる光景は、キヴォトス外の人間から見たら狂気でしかない絵面だろう。

 そんな両者の力は五分と思われていた。しかしその拮抗は、突如として崩れ去る。

 

 

「そろそろ懐が欲しいな」

 

「こりゃまずいね……!」

 

 

 常人離れした脚力で振るわれた左ハイキックにより盾が弾かれ、ホシノの懐は隙だらけとなってしまう。無論、その元凶である相手がそれを逃す筈がなかった。

 

 

「これぐらいでくたばってくれるなよ!」

 

「づぅ゛うう!」

 

 

 直後、槍翼による斬撃が繰り出される。ホシノは咄嗟に身を引くが、胴体を逆袈裟に斬り上げられてしまう。

 

 

「いったいなぁ、朝に食べたコーンフレークが飛び出したらどうしてくれんのさ」

 

「もっと鱈腹芋を食えば丈夫になれるんじゃないか?」

 

 

 幸いにもその傷は深くはないものの、彼女の制服には赤色の斜線が引かれていた。その事にホシノは口を尖らせるが、少女は小馬鹿に返す。

 そうして少女が再びホシノに襲い掛かろうとした瞬間だった。

 

 

「むっ、これは……!」

 

 

 彼女は目を見開く事になる。何故なら上から突然、スモークグレネードが目の前に降ってきたのだ。それを視認した刹那、手榴弾は彼女の真正面で起爆し、破裂音と共に大規模の白煙が少女を包み込んだ。

 少女は目を庇っていた腕を下げると、全方位の景色は白一色に染まっていた。しかしそんな中でも少女は気後れする事なく、息を殺して周囲の状況を探ろうとする。

 

 

(ぬぅ!)

 

 

 直後、背後から何者かの殺気を感知した少女がそちらに顔を向ける。少しだけ生じていた煙の切れ間から覗くと、目線の先にはライフルの銃口をこちらに向けるシロコの姿があった。

 それに対し自身もまた拳銃の標準を合わせ、牽制の発砲を行おうとした。しかし――

 

 

「ん。それでいい」

 

(何……?)

 

 

 シロコの謎めいた発言に、違和感を抱いた少女の行動が一瞬止まる。その直後だった。

 

 

「懐もーらい」

 

「ちぃぃ!」

 

 

 シロコの存在は囮。彼女達の真意は少女に懐を空けさせ、そこをホシノが突くというものだった。

 その策略はぴたりとはまり、少女に躱せる時間は無かった。

 

 

「勘がいいのが仇になったね」

 

「ぐおぉっっっ!?」

 

 

 そうして彼女の胸部に灼熱の散弾が浴びせられ、その長身を後ろに吹き飛ばす。更に軌道上には麻袋の障壁があり、それに突っ込んだ少女によって壁は少し崩れ落ちる。

 

 

(それにしても、ナイスタイミングで投下してくれたねぇアヤネちゃん。後で目一杯撫でてあげよ)

 

 

 頭を掻きむしりながらそんな事を考え、遮蔽物に身を預ける少女に一歩一歩近付くホシノ。

 

 

「さてそろそろ、大人しく捕まってもらおうかな?」

 

「づぅ……」

 

(このまま押し切られる訳にはいかない。態勢を立て直さねば……)

 

 

 すると少女は背にしていた麻袋を三枚掴み、眼前の相手に向けて手裏剣のように飛ばす。それはそれぞれ異なる軌道を描き、ホシノに向かって襲いかかる。

 

 

「君らしくない悪あがきだね!」

 

 

 ホシノは彼女のらしくない行動に落胆しながらも、その投擲を盾で防ぐ。しかしこの一連の行動はブラフだった。

 

 

「今度は私が黒煙の世界へ招待してやる」

 

 

 すると少女は翼を上に向け、天空に無数の光弾を放出する。打ち上げられたそれはグラウンドへ柳花火のように四散して落下し、広範囲に渡って赤黒い硝煙が立ち上る。彼女の真の目的はこれだったのだ。

 

 

「これはちょっとエグいなぁ!」

 

 

 流星群よろしく次々に降り注ぐそれを、ホシノは次々に避けていく。障害物の陰に隠れたと同時に爆撃が止み、彼女は息を整えた。その数秒後、付けていたインカムから先生の声が届く。

 

 

『"皆! 無事!?"』

 

「私は大丈夫だよ。シロコちゃん達は?」

 

『私も平気。それにしても翼に攻撃を受けても痛がらないって事は、やっぱり頭や胴体に当てるしかないみたい』

 

『っていうか何なのよ、今の弾幕といいさっきの飛び方といい! あいつ本当に人間!?』

 

『まさか本当に宇宙人……? いやでもヘイローはありますから、キヴォトス人でることには間違いない……?』

 

『う〜ん。何から何まで不思議なお方ですね……』

 

「いずれにせよ、ひっ捕らえれば分かる事だよ。でもこの視界じゃ、あの子がどこにいるか分からないや」

 

 

 

 

「ああ、もしかすると左にいるかもしれんな」

 

 

 

 その瞬間、ホシノの脳内にアラームが鳴り響く。彼女はすぐさま大地を思い切り踏み抜き、その場から離脱する。

 次の刹那、彼女がいた位置に少女の巨大かつ鋭利な翼が突き立てられる。串刺しになっていたかもしれない未来に、間一髪のところで気付けて良かったとホシノは胸を撫で下ろす。

 だが現実はそう甘くなかった。

 

 

「この距離なら当たりそうだ」

 

 

 少女は既に拳銃をこちらに向け、追撃の鉛玉が撃ち出されていたのだ。

 

 

「ぐぅっっ!」

 

「殺しはしない。だが2、3年ほど入院してもらおう」

 

 

 その言葉の通りに、彼女が放った弾丸はホシノの脇腹を捉えてしまう。更に痛みで止まった隙を突き、彼女はホシノの眼前まで迫っていた。

 絶体絶命――かに思われた。

 

 

「むぅぅっ!」

 

 

 すると二人の間で突然爆発が起き、少女は咄嗟に顔を腕で覆う。爆煙が徐々に晴れていくが、そこにホシノの姿は無かった。

 

 

「うへ〜、危なかったぁ」

 

「火遊びが好きなのかな。貴様達は」

 

(自ら吹き飛ばされたのか。中々大胆な事をするじゃないか)

 

 

 彼女はいつの間にか、遠い位置まで距離を取っていた。密かに牽制の為に転がしていた手榴弾だったのだが、機転を利かせて爆風に飛ばされることで難を逃れたのだ。

 そうして戦況はイーブンな状態に戻る。再度こちらへのペースに持ち込むべく、先生が作戦を立てていた時だった。

 

 

 

 

「ふぅ、まさかここまで私が翻弄されるとはな。こんな感覚は久々だ」

 

 

 息を吐いた少女が、乾いた笑いをしながらそう言葉を呟いたのだ。

 

 

「おやその口ぶり、もしかして今まで敵無しだった感じ?」

 

「ああ、昔は一族の最高傑作とまで言われたな」

 

「だろうね。だって君笑っちゃうくらい強いんだもん」

 

「お褒めの言葉をありがとう。だがそんな私は、諸君に一つ謝らなければいけないようだ」

 

「何? 今更お手上げって言いたいの?」

 

 

 少女とホシノがそんな対話をしている中、セリカが顰めっ面で問い質して会話に加わる。

 

 

「違うな。諸君の力量は肌で感じ取れるくらいには高いと考えていたが、ここまでとは……想定以上だよ」

 

「ん。私達の実力はまだまだこんなものじゃない」

 

 

 自分達を侮っていたという宣言に、シロコもまた不機嫌さを表に出しながらも肯定する。

 そんなシロコの言葉を受け、少女は軽快に笑い言葉を紡ぐ。

 

 

「ああ、そうだろうな。そんな女史達への誠意として……只今より私は、今持てる力の限りを以ってお相手する」

 

 

 次の瞬間

 

 

 

 

「カアアァァァッッッッッ!!」

 

 

 

 

 彼女は自身の喉が張り裂けんばかりの雄叫びを上げる。そうして甲高い吸引音と共に、辺りの大気が気流となって少女に集まっていく。常軌を逸した肺活量で行われたそれにより、周囲の空間がまるで捻じ曲げられたかのように錯視させた。

 

 すると彼女の体に変化が訪れる。髪や翼の先端が柘榴石(ガーネット)のような暗赤色に染まり、それと同時に周囲の空気は永久凍土と錯覚する程に凍りついた。

 

 

(やばいねぇこの空気……。もしかしておじさん達、ものすっごいピンチだったりする?)

 

 

 その異様と言える変化を真っ先に察知したのはホシノだった。普段ののほほんとした雰囲気はまるでなく、表情は強張り冷や汗が浮かぶ。他の人間達はそのプレッシャーに戦慄し、目を大きく見開いていた。

 

 

 

「お前達に教えてやる。身分の違いというものを」

 

 

 

 ホシノ達を凄む目付きは、最早それだけで人間を殺せるかのように鋭さが増した。彼女との戦いは、ここからが本番だったのだ。

 






ユーザー:生徒は相手のヘイローを識別できるん?
公式:なんか浮かんでんな、くらいの感覚。形までははっきりと目視できない。

ワイ(……ジェシカさんによるバルクヘイローの評論描写どないしよ)

 

まあそれはさておき、こんな感じの強者だからこそできる戦闘中にベラベラ喋る戦闘描写。小生は見ていて好きなんですが……皆様はどうお考えなのでしょうか?

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