透き通る世界を照らす赫き星   作:お茶犬大家族

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選ばれし者ならば

 

 

 ピピピッ……という電子音が耳元で鳴り響き、夢の世界から叩き起こされる。ひとりでに開いた瞼から見えたものは、まんまるとした照明やエアコンが取り付けられた天井――ではなかった。

 

 

「そろそろ起きろ寝坊助。いくら休日だからといって、いつまでもぐうたらしているんじゃない」

 

「"ああ、おはようホムラ。今の時間は?"」

 

「まもなく8時に入ろうとしているところだ。朝食は用意してある、さっさと洗顔して食っておけ」

 

 

 私と天井の間に割って入ったのは銀色の短髪を持つ少女、星流ホムラだった。今ではシャーレの専属として従事している彼女ではあるが、何もいきなり招き入れた訳ではない。

 

 あの日の翌日彼女を連邦生徒会まで連れ、アオイを始めとした室長達やリンちゃんに紅い彗星の正体が彼女であったことを話した。しかしいくらなんでも人間がそんな真似できる筈ないと全員から疑いの目を掛けられたが、ホムラに例の常識外れな飛行方法を披露させると、信じられないと言わんばかりに皆が目を丸くしていた。

 その後ゲヘナやアビドスでの出来事も伝えたものの、ホムラが語った内容は未だ打ち明けていない。ただしリンちゃんにだけは本当の事を話し、その上で彼女を本気でシャーレに入れるのかと再度問われたが、私は確固たる自信を持ってこう返した。

 

 

『"彼女は誇り高い子だ。人間(私達)天彗龍(ホムラ)を切り捨てない限り、彼女も私達を切り捨てる事はないよ"』

 

 

 すると彼女は深く目を閉じ長い静寂を経た後、数日間ホムラを連邦生徒会にて預かると言った。こちらでも彼女を見定めたいという、もっともな理由によるものだ。

 また世間にも彗星の正体が一人の少女であった事を、ニュースを通して大々的に公表した。すると『文字通りぶっ飛んでてカッコいい』といった肯定的が上がる一方、『どうして今まで存在を明かしていなかったのか』といった懐疑的な意見も当然飛び出した。中にはやれ『本当に宇宙人だったりするのでは?』なんて話がブラックジョークのように囁かれたりもしたが、その後大きな変化が起きる事もなかった故かどの声も彼女に対する関心が薄れ、次第に収まっていった。

 

 そうして数日間に渡る試験を経て、リンちゃんの合意を得たホムラは無事にシャーレの一員となる事ができたのだ。

 

 

「"どうりでいい匂いがする筈だ。ホムラはもう済ませたの?"」

 

「ああ。今日はやるべき事もあるからな」

 

「"やるべき事――ああ、あの件だね。大丈夫、君らしく堂々としていれば問題ないよ"」

 

「心得た。では少しばかり出掛けてくる」

 

「"うん、いってらっしゃい"」

 

 

 こちらに向けた背中に私はそう言って、彼女を見送った。実を言うと、彼女をシャーレの専属にさせたのは私の判断によるものだ。一つの学園に彼女を置いておくよりもシャーレに駐在させ、様々な学園の生徒との交流を深めるべきだと考えたためである。そのため、今までの当番制を廃止した訳ではない。

 そうしてシャーレにも着実に馴染んできているホムラだが、やはりというか結構変わっている。例えば先日、当番として来ていたフウカに料理を教わった時には――

 

 

「勧められたこの本の通りにやってみたのだが、どうだ?」

 

「どうだじゃないですよ。なんですかコレ? 食べ物なんですかコレ?」

 

「何って、決まっているだろう。ミネスト……いや、サムゲタ……ん?

 

(なんでこの人自分でも何を作ったか分かってないの?)

 

 

 見よう見まねと言いながら、何故か暗黒物質(ダークマター)を作り出したかと思いきや。

 

 

「そら、私特製のパエリアだ。今回は自信作だぞ」

 

「確かに見た目は大分マシになりましたけど……味はいかほど、うんッッ!?」

 

 

 

う、ゥンまああ〜いっ!! 群青の世界に生きる海洋生物達と、大地の温かみで生まれ育った野菜達が奏でるデュエット! これに比べたら冷凍の物なんてハイッ! 豚の餌ァァァァッッ!!

 

「どうやら気に入っていただけたようで何よりだ」

 

 

 このように、数時間後には彼女に太鼓判を押されるような腕前にまで成長を遂げたのだ。ちなみにこの時のフウカのとんでもない豹変っぷりに、隣でサポートをしていたジュリは涙目になりながら困惑していた。いやはや、あの顔はなんとも眼福だったね。

 

 業務に関しても同様のことが起きている。事の始まりとして、支給された彼女用のスマホを手渡した際、試しにメッセージを送るよう促した。そうして最初に届く文章はどんなものになるのか期待が膨らんでいたのだが、実際に送られてきたものがなんと――

 

 

 

『坊ちゃん、オッハー(^_^)!今日も夜遅くまでお仕事かナ( ̄ー ̄?)?そろそろご飯行こうよ(^o^)ご要望とかはあるのかナ♡⁉︎!?』

 

 

 

 目も当てられないほど壊滅的だったのだ。

 

 

「"え……なにこれ……?"」

 

「貴様が多少砕けてみろと言ったんだろう? 私なりに親しみを込めてみたんだがな」

 

「"いや砕けすぎだよ。原子レベルにまで分解されちゃってるよ"」

 

 

 彼女は口頭ではわりと普通なのに、どうしてああなってしまったのだろうか……

 

 

「"ごめん、私が悪かった。やっぱりいつものホムラらしい文面でお願いしたい"」

 

「よく分からんが……まあ(ぼん)がそう言うなら、そうさせてもらおう」

 

 

 なんとも不思議そうな表情はされたが、なんとかその場は丸く収まった。ちなみにこの『』というのは、私に対するホムラなりの愛称らしい。初めてそう呼ばれた時には、彼女のほうからも歩み寄ってくれているのだという実感のあまり転げ回ってしまった。いつもはポーカーフェイスの彼女が浮かべた、あの時の引きつった顔は当分忘れられない。

 

 話を戻そう。変異が起きたのはその二日後の事だった。

 

 

「"え、もう21時!? 軽く寝るつもりだったのに、まずい!!"」

 

「ん、ようやく起きたか。どうしたそんなに慌てて」

 

「"リンちゃんに送らないといけない報告書がまだ終わってないんだ! 仮眠のつもりが思いっきり爆睡しちゃって……って喋ってる暇じゃない! ごめん、用ならあとで――"」

 

「ああ、あの資料の残りなら私が代わりにやって送っておいたぞ。貴様が間抜けな顔を晒し、涎を垂らしている間にな」

 

("……終わった。あんな文章力の資料をリンちゃんに送ろうもんなら絶対引かれる……。あっ、通知来た")

 

 

 見たくない気持ちを抑えながら覚悟を決め、返信フォルダを開いてリンちゃんからのメールを確認したのだが――

 

 

『頂いた資料、確かに拝見しました。心なしか文面に普段よりも荒さが少しありましたが……ここ最近は働き詰めとのことですし、それが祟ったのかもしれませんね。この度はお疲れ様でした、ごゆっくりとお休みください』

 

「"え? 予想していた反応と違う……"」

 

 

 送信されたと思われるメールに添付された資料を開くと、確かに拙い箇所はいくつか見られるものの、以前のような壊滅的な文章の面影は無かったのだ。

 

 このように最初の頃は、とても現代を生きる人間とは思えない原始的な言動をとってしまうのだが、そこからしばらくも経たないうちに急激に成長してしまう。中には料理の時のように高い才能を開花させることもあり、言うなれば飲み込みが非常に良いらしい。この順応性の高さこそ、彼女を天下無双の龍たらしめる所以だったのだろう。

 

 さて、長々と語るのもここまでにしよう。でないとせっかく彼女が用意してくれた朝ごはんが冷めてしまうから。そうして洗面所で顔を洗い歯を磨いた後、リビングにあるテーブルに置かれた朝餉の前に腰を下ろした。その献立は白米にあさり入りの味噌汁と、お新香にハムエッグといった典型的でいて理想的な物だ。

 

 

「"よし、頂きます"」

 

 

 そう言って私は手を合わせ、手前に置かれた箸を手に取り料理を口へと運んでいった。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

『"彼女は誇り高い子だ。人間(私達)天彗龍(ホムラ)を切り捨てない限り、彼女も私達を切り捨てる事はないよ"』

 

「言ってくれるな、まったく……」

 

 

 あの男に勧誘された日の翌日、連邦生徒会という場所へと連れて来られると七神リンと名乗る少女に私のことを紹介された。彼女は私を視認するやいなや、体の隅々まで観察するように凝視していた。

 小僧は一連の騒動の元凶が私である事を彼女に話し、キヴォトスに対する敵意は本当に無いのかとリンに問いただされたが、奴は堂々としながらそんな台詞を吐いたのだ。

 すると彼女は怪訝な面持ちをしながらも、なんとかその場は丸く収まった。だがシャーレに入部する以上どこの学園にも籍が無いのは困るらしいため、監視も兼ねて連邦生徒会に所属する運びとなった。そこから数日間に渡る筆記試験や実技試験を経てようやく、彼女の信頼を勝ち得てやっとのこさシャーレに転属したのだ。とは言ってもやる事は主に彼の手伝いであり、生徒会の業務が直接割り当てられることはほとんど無いらしいが。

 

 人間達が定める法律や秩序――言わば掟のような物は、理解するのに大した苦労は無かった。あれやこれや言われたが、大前提としては無闇矢鱈に喧嘩を売らない事。もっと言えば無益な殺傷をしない事を戒められた。とは言っても私自身、最早そんな気を起こすつもりはさらさらない。

 

 そうしてまた数日間シャーレでの日々を過ごし、今の生活に少しずつ慣れてきた私は今どこにいるのかというと――

 

 

 

「委員長から来るとはあらかじめ聞いていたが、よくもまあのこのこと顔を出せたもんだな。星流ホムラさんよ」

 

 

 ゲヘナ学園に足を運び、先日交戦した銀鏡イオリと対面していた。その理由は一つしかない。

 

 

「そちらの怒りはもっともだろう。君達には多大なる迷惑をかけてしまったのだから」

 

 

 多くは語らない、言葉より行動で示す。

 

 

「本当に、申し訳なかった」

 

 

 私はただただ、彼女の眼前で深々と頭を下げる。するとイオリはにやにやと笑い始め、こう言い放った。

 

 

「そうだなぁ。本気で反省してるっていうなら、気の済むまで殴らせ――」

 

「構わん。女史がそうしたいのなら、遠慮せずに殴ってくれ」

 

「……え?」

 

 

 想定していた答えとは違ったのだろう。イオリはポカンとした表情を見せ、その背中をこちらに向けた。

 

 

「くそっ、どうする? 勢いで言っただけだし、本当に殴っていい流れなのかこれは!? ムシャクシャしているのは確かだが、抵抗の意思を見せない相手を痛めつけるのは風紀委員会の沽券に関わる気も――」

 

 

 そうして小言を唱え始めるが私には丸聞こえである。坊からは突っ走り過ぎる性格であるとは言われていたが、治安を守る者として後先考えないのはあまり感心しないな。

 そのまま悶々と葛藤する彼女の背中を眺めること数十秒後、ついに転機は訪れた。

 

 

「それでいいのよイオリ。後は私に任せなさい」

 

「委員長……!」

 

 

 会合の場に現れたヒナがイオリにそう諭し、そのまま彼女の横を通り過ぎると私の真正面まで移動した。

 

 

「あの日以来ね。シャーレでは上手くやっていけてるの?」

 

「暗中模索の毎日だが、大した不祥事を起こす事なく過ごせている。当番に訪れる生徒には日々教わってばかりだな」

 

「ならいいわ。ひとまずは今の調子で続けていきなさい」

 

 

 そんな受け答えをしていると、イオリが彼女の背後に回り怪訝な表情で問い掛ける。

 

 

「だけどよ委員長、このままなあなあで済ませていいのか? 蟠りを溜め込んだままじゃあ、あいつらも浮かばれないぞ」

 

「ええ、このままだと皆も溜飲を下げにくいのは理解してる。だからこの場はひとまず、私が代わりに一発殴って済ませるわ」

 

 

 ヒナはそちらに振り向きそう応えると、再び私のほうに顔を向けて握り拳を固める。

 

 

「それじゃあ重めの一発をお見舞いしてあげるから、腹を括りなさい」

 

「ああ。構わず来い」

 

 

 そうして腕を大きく引き、大地を蹴って私の顔の高さまで跳んだ瞬間――

 

 

「フンッッ!」

 

「ゴハァァッ!」

 

 

「容赦ないな……」

 

 

 鉄槌のような剛拳が頬に突き刺さり、私は背中から地面を滑っていった。なんならイオリですら困惑している程じゃないか。

 

 

「ホシノといい、何故その小さい体でこんな拳を放てるんだ。一体何を食えばそうなる」

 

「強いて言うなら里芋かしら。煮っ転がしはシンプルにしてベストよ」

 

 

 キヴォトスでは芋を食えば身体が強化されやすいのか? それよりもこの拳、私怨も少しばかり混ざっているような気がするぞ……。

 そう逡巡している私を横目に、ヒナは手をひらひらと払って再び口を開く。

 

 

「ちなみにアビドスにはもう謝りに行ったの? それともこれから?」

 

「彼女達には先日詫びを言いに行った。だがそう想定していた対応とは違って、内心驚いた」

 

「と言うと?」

 

 

 

 

「なぜかホシノに頭を撫でられたんだ。……悪い気はしなかったが」

 

「……そう、良かったわね」

 

 

 なんて言いながらヒナは微笑む。何が良いのかはイマイチ分からないが、穏便に事を済ませられたのは私としても助かったな。

 

 

「それはさておき、私達はこれからもやらないと業務がまだまだあるし、貴方にも何かしら用事があるでしょう。今日のところは帰りなさい」

 

「分かった。だが何らかの形できちんとケジメはつける、今一度考えさせてくれ」

 

「ええ、こちらからも考えておくわ」

 

 

 そうしてお互いに会釈をし、踵を返した私は天空へと飛び立つ。次の目的地への所用時間はあまりかからない筈、順当にいけば午前中にはシャーレに戻れるか。

 

 ならばと即座に体の向きを切り替え、その場所へとまっしぐらに向かっていった。

 

 

 

 

「それにしてもアイツ、変わり過ぎじゃないか? シャーレに入るだけであんな別人みたいになるとは……」

 

「イオリ。変わったというよりも、彼女は良い意味でも悪い意味でも自分に正直なのよ。言うなれば、思い立ったままに行動するタイプね」

 

 

 

性猶杞柳(せいゆうきりゅう)。導き教えを説く人間によっては、絶対的な善人にも悪人にもなり得る存在。もっとも、あの尊大な態度は根っからのものでしょうけど」

 

「アイツらしいといっちゃアイツらしいがな」

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

「あぁ^〜、生き返るわぁ^〜」

 

「どうしたよチズル。そんなオッサンみたいな台詞吐いて」

 

 

 ゲヘナ学園の牢獄から解放されて早数日。私はバリバリヘルメット団の手下を二、三人連れて大型スパ施設まで訪れていた。湯気が立ち昇る石造の室内で、浴槽に漲られた温泉に肩まで浸かり「風呂は命の洗濯」という誰かが言っていた台詞をこれでもかと実感する。

 そんな私の隣で野太い声を出したこいつは、副リーダーの壱式(いっしき)チヅル。正直実力面に関しては私よりコイツのほうがずっと上であり、あの風紀委員会の特攻隊長と同等以上に渡り合える程だ。

 まあ流石にあの風紀委員長には敵わないが、アレは比較対象外みたいなものだしな。ご愛嬌という事にしといてくれ。

 

 

「こういう時ってあの歌を歌いたくなっちまうよなぁ。確かバンバラバンバンバンだっけ?」

 

「それなんか違いますよチズルさん」

 

「どちらにせよ高校生とは思えない選曲だよ」

 

 

 そんな感じの雑談をしながら風呂を堪能した数分後、着替え等を済ませた私達はマッサージチェアやビリヤード台、自販機などが置かれた休憩所まで移動した。

 すると手下の一人が卓球台を指差しながら私に呼びかける。

 

 

「リーダー! ダブルスで卓球とか良くないですか?」

 

「そいつは名案だが、ちょっと喉が渇いちまったから水分をとってからにしたいな」

 

「ああ。そう言うと思ってほら、コーヒー牛乳だ」

 

「おっ、気が効くじゃねぇか! ……って、ん?」

 

 

 目の前に差し出されたそれを受け取った直後、チズルや他の二人でもない謎の声に違和感を抱いた私はそちらに目を向ける。

 

 

「久しいなジェシカ。そしてお前達も」

 

 

 なんとその人物とは、過去に私達を伸した姐さんこと星流ホムラさんだった。

 

 

「あ、姐さん!? なんでここに!?」

 

「リーダーは銭湯に行っていると、貴様の部下達から聞き出したのさ。ジェシカ、お前に少し用が合ってな」

 

 

 事の経緯を説明した姐さんは私のほうに目を向ける。連邦生徒会の人間が、こんな一介のヘルメット団の頭に用だって? まさか……私らと連んでた事を隠蔽するために抹殺しにきたのか!? いや、そうに違いない!!

 

 

(ああ、私の人生もここまでかぁ……)

 

「……そんな虚ろな目をするな。今日はこいつを返しに来ただけだ」

 

 

 己の生を諦めかけていた私を他所に、彼女は胸の内ポケットに手を突っ込むと何らかの物体を取り出した。なんとそれは――

 

 

「あっ、私の財布!」

 

「こいつをくすね取っていたのをあの男に知られ、しこたま叱られてな。とは言ってもラーメン一杯分しか使っていないが、これでチャラにしてくれると助かる」

 

「それはまあ、別にいいですけど……」

 

 

 そんな問答を姐さんとしていると、チズルがずいずいと彼女に迫っていく。

 

 

「おうおう、お前さんがリーダー達の言ってた姐さんとやらかい。その節はうちの奴らが世話になったみてえだな?」

 

「まあな。それにしても見慣れない顔がいると思っていたが、大方貴様がここの副将か」

 

「ああそうさ。バリバリヘルメット団の千両役者、壱式チズルとはウチの事でい!!」

 

 

 そんな謳い文句と共に群青色の長髪を振り回して見得を切ったチズルに、姐さんは口角を吊り上げ鼻を鳴らす。

 

 

「確かに中々の気配は感じ取れる。ならば一層、なぜあの日はいなかったのだ?」

 

 

 そんな当たり前の疑問を彼女がすると、チズルは豪快に笑いながらその答えを告げた。

 

 

「いやぁ実は朝飯にコーヒー飲みながら乾燥わかめ食べてたら、腹ん中で膨張してあの日ほぼ一日中寝込んじまってよ⭐︎」

 

「……そうか」

 

 

 そう言って笑い飛ばすコイツに姐さんは生暖かい目をぶつける。呆れすぎて何も言えなくなっているのだろうが、正直これに関しては同意見だよ。つーか朝食にコーヒーと乾燥わかめって組み合わせはどうなの?

 姐さんは息を吐いてそちらから目を逸らすと、再び私のほうに顔を向ける。

 

 

「ところで一つ聞きたい事があるのだが、構わんか?」

 

「どうしたんすか? 私らで答えられる範囲ならなんでも言ってください」

 

 

 

 

「その……なんだ。あのグレーのセーラー服はどこで売っていた? ずたずたになってしまったため新調したくてな」

 

 

 こめかみを指で掻きながらそう尋ねる眼前の少女。おっかない人でしかないと思っていたけど、女子らしい一面もちゃんとあるんだなこの人も。

 

 その後も小一時間の雑談をし、連絡先の交換をしてから姐さんと別れた。いつか私もヘルメット団(こいつら)のリーダーらしく、あの人のような勇ましさを持ちたいと願った。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 ゲヘナでの用事を終えた私は、D.U地区の喧騒な街中まで戻ってきていた。幾多に自動車が爆進する道路を左手に、一定の間隔で植えられた街路樹が立ち並ぶ歩道を歩く。

 太陽の位置から察するに、現時刻は正午手前といったところか。このままいけば、丁度昼飯時にはシャーレに戻れるだろうが――

 

 

(先にこいつを片付けておくか)

 

 

 それよりも優先すべき事ができたため、二つのビルに挟まれた薄暗い路地へと入る。室外機やポリバケツ等が置かれたその道を突き進むと、四方が壁に阻まれた少し広い空間に躍り出た。

 

 

「この辺りでいいだろう、出てこい」

 

「ククッ、やはりこの程度の気配の消し方では感付かれてしまいますか。まあ良いでしょう」

 

 

 この場所なら問題ないだろうと、後方にいる何者かに出てくるよう促す。するとそこから誰かの声が反響し、そいつは広場にぬるりと姿を現した。

 

 

 

「お初にお目にかかります、星流ホムラ様。どうも私、ゲマトリアという組織に属している『黒服』と申します。本日は貴方と是非お話ししたく、この度馳せ参じました」

 

 

 そうして物陰から姿を見せたのは、黒いスーツに身を包んだ男。だがそいつの頭部は消し炭にされたかのように真っ黒に染まり、青白く光る亀裂や空洞が所々散りばめられていた。

 なんだこいつは……というより、そもそも人間なのか? それらしき生気は感じ取れるが、こんなに掴みどころの無い輩に出会うのは初めてだ。

 

 それはそうとゲマトリア。こいつこそ、ホシノらが口にしていた組織の人間か。確かにこの気味の悪い雰囲気、彼女達が警戒心を顕にしてもおかしくはない。

 

 

「それにしても貴方のほうから一対一になる状況にしてくださるとは。私としてはありがたい限りですが」

 

「貴様からはただならぬ雰囲気が漂っているからな。市井(しせい)の民を巻き添えにするわけにはいかんだろう」

 

「ふふ。そうご心配なさらずとも、市民の皆様をどうこうしようなんて考えはごさいませんよ。ご用件があるのは貴方様だけです」

 

 

 このように表面上は丁寧な口調であるが、こんなに怪誕な空気を纏わせては誰だって警戒体制をとる。長々と付き合うのも馬鹿馬鹿しい、手早に終わらせてお帰り願うか。

 

 

「貴様の用件など大方察せる。どうせ勧誘目的だろう」

 

「ええまさしく。手間が省けて助かります。それでご返事は?」

 

「決まっているだろう、お断りだ。そもそもゲマトリアは解散したと小僧から聞いているのだが、何があって再結成した?」

 

 

 私はその勧誘を門前払いし、奴にそう聞き返す。すると奴は数秒間溜め込んだ後に再び口を開いた。

 

 

「確かに貴方の仰る通り、我らゲマトリアはとある存在によって離散せざるを得ない状態に見舞われました。しかし――とある少女達との出会いにより、晴れてゲマトリアは再起したのです」

 

「なるほど。私には興味のない話だが、坊にはそう伝えておくよ」

 

 

 そうやって受け流そうとしたのも束の間、突如黒服はくすくすと笑い始める。

 

 

「いいや。思いの外貴方にとっては切っても切り離せない話かもしれませんよ、星流ホムラさん」

 

 

 

「いいや、天彗龍バルファルクさん」

 

 

 っ! こいつ、私の真名を……? そいつは小僧やアビドスの面々を始めとした数人しか知らない筈だが……

 

 

「なぜ貴様がその名を知っている。まさか盗み聞きでもしていたか?」

 

「いえいえそんな、盗聴だなんて滅相もございません。ただ単に貴方の事をご存知であっただけですよ、件の少女達が」

 

「まさか……」

 

 

 

「そう、()()()()()()()()()()()()()()です。それも古龍という種族の来訪者から、バルファルクさんやその世界の事をお伺いしました」

 

 

 私と同様にこの世界に降り立った者。天彗龍たるこの私がいる時点で、その可能性を想定していなかった訳ではないが、まさか初っ端から古龍とはな。その上彼女達という口振りからして、少なくとも何らかの2頭の存在は確認できるようだ。

 

 

「魍魎犇く憩いの樹海。凶悪な二面性で生物を翻弄する広大な砂漠。地上に隆起した幻想的な海洋。数多の命を死滅させる極低温の雪原。濃霧の瘴気に包まれし死屍累々の谷。無尽蔵のエネルギーを秘めし結晶に囲まれた地。そんな色とりどりの舞台にて、ハンターとモンスターが殺陣を織りなす武の世界。実に興味深いお話をしてくださりました」

 

 

「その上で改めてお聞きしましょう。星流ホムラさん、我らに協力してくださる気はありませんか? 貴方にこれといった命令をする事はなく、その力の研究だけをさせてくだされば何も縛り付けるつもりはございませんよ」

 

 

 つらつらと並べられた戦地の詳細。それを鑑みるに、嘘八百やハッタリを仕掛けている訳ではないな。

 

 

「なるほど。そいつらのように貴様に付けば、再び自由気ままに生を送る事ができるとな? そうとなれば確かに悪くない提案だ」

 

「おぉっ、では!」

 

 

 そう笑ってやると黒服は嬉々とした反応を見せ、続けて私はこう続けた。

 

 

「だが断る」

 

「……ほぅ?」

 

「私は流れに乗って浮ついている奴の鼻っ柱をへし折るのが好きで堪らなくてな。もっと言えば、貴様のような不細工と連むのは御免被る。とでも言えばいいか?」

 

「……ならば交渉は決裂という事ですか。では仕方ありませんね」

 

 

 その瞬間、周囲の空気が一気に淀んだものへと変わる。その発生源は言わずもがな目の前の奴だ。

 

 

(拒めば強硬手段か、実に貴様らしい)

 

 

 眼前の敵に気付かれないよう、腰にしまっていた拳銃に慎重に手を当てる。

 しかしその刹那――

 

 

「では貴方の事は素直に諦めましょう。この度は無礼な事をお伺いしてしまい申し訳ありませんでした」

 

「……は?」

 

 

 意外にもあっさりとした答えに、思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

 

 

「すんなりと諦めるのか。その口調から無理矢理にでも連れて行くのかと身構えたのだが」

 

「まさか。一切の合意もなく生徒を誘拐なんてしてしまえば、それこそ先生の目の敵にされてしまうでしょう。それだけは御免ですし、第一に私の性分ではありませんからね」

 

 

「しかしまあ、やはり古龍というお方は考えが掴みづらいと再認識しました。ただし一言だけ言うなら――」

 

 

 

 

「本当にそれだけが理由ですか?」

 

 

 

 すると奴は食い気味に、再度私に問いかける。……こいつに隠し事は通用せんか。

 

 

「私は追究したいのさ、かつての好敵手に恥じない生き方を。あの男はその鍵となるような気がする」

 

「気が……ですか。もしかして彼の事が気に入ったので?」

 

「馬鹿を言え。奴はいわば使い魔のようなもの、(しもべ)としての利用価値があると思っただけだ。……それに私とて、恩義は大なり小なり感じる。だからこそシャーレに身を置いているに過ぎん」

 

「少々意外ですね。貴方はこの上なく自尊心の高いお方だと聞いていましたから」

 

 

 それは否定しないな。天彗龍たるもの、唯我独尊を貫いていた私自身、こうして人間に与するとは思いもしなかった。

 あの小僧の魔性という物なのか? いや、もしかしたらあの狩人と出会った時から? いずれにせよ、我ながら腑抜けてしまったな。

 

 

「それで貴様の目的は勧誘だけなのか? ならばとっとと失せてくれると助かるのだが」

 

「いいえ、無論それだけではございませんよ。実は貴方に見せたい物がございましてね」

 

 

 すると奴は懐に手を入れ、一つの小さな巾着袋を取り出す。次にそれをゆっくりと解き、中にあった何かが判明する。

 そいつは私にとって、非常に見覚えのある物体であった。

 

 

「こいつは……ウチケシの実か」

 

「ふむ、やはり貴方もご存知でしたか」

 

「ああ。私の龍気エネルギーにとって天敵と呼べる代物だからな」

 

 

 ウチケシの実。こいつは私の龍属性攻撃のみならず、火竜の火炎放射や雷狼竜の放電によって付与された負荷を一瞬にして消し去ってしまう物だ。龍だけでなく、植物までもがこの世界に……?

 

 

「ホムラさん達がキヴォトスに転移した事と関係があるのか、そちらの世界の動植物が所々で流れ着いているようなのです。もしかすると二つの時空が少しずつ融合しているのかもしれません。現時点では確証の一つもなく、私の憶測に過ぎませんがね」

 

「……なるほど」

 

 

 それが本当ならうかうかとはしていられんな。垂皮竜といった臆病なウスノロならまだしも、狗竜などのすばしっこく凶暴な肉食獣まで出没するとしたら、いたいけな少女達にとって脅威そのものだ。

 それ加え、もし古龍が野良として出現するような事があれば……現代社会の人間などひとたまりもないだろう。

 

 

「さて、本日の用件はこれにて以上です。貴重なお時間をとらせて頂き、ありがとうございました」

 

「そうか、出来れば二度とその面を見せないでくれると有り難いよ」

 

「連れないですねぇ。それと最後に一つだけ、『無名の司祭』と名乗る連中にだけはお気を付けください。彼らは一切の倫理観や道徳心を持ち合わせない、真のならず達です。もし接触してしまうと、あの砂狼シロコさんのような事になりかねませんからね」

 

 

 無名の司祭、そしてもう一人の砂狼シロコ。そいつらについては以前あの男から大まかに聞いているが――

 

 

「奴のように……」

 

「ええ」

 

「服装が派手に……!」

 

「そうではなくて」

 

 

 意外と冷静にツッコミを入れてきたな。ちょいとだけ揶揄うつもりだったのだが。

 

 

「分かっている。以前のような厄災の龍、いやそれ以上の存在に変貌する危険性があると言いたいのだろう?」

 

「理解しているのならよろしいです。では改めて、私は退散すると致しましょう。しかしホムラさんのほうからゲマトリアに入りたいとあらば、こちらはいつでも迎え入れる所存ですよ」

 

「そんな日は来ない。それと貴様の言う同郷の者とやらにに伝えておけ、私の邪魔立てをするならたとえお前達でも冥界へ送ってやると」

 

「ふふ、そうですか。しっかりと言伝しておきます。ではまたどこかで」

 

 

 そう言い残し、奴は目の前への暗闇の中に溶けていった。それにしてもまさか私以外の古龍が来訪し、あのような胡散臭い連中に関与しているとは。種族や個体によっては、私にとっても面倒な存在であるかもしれない。

 

 だが――

 

 

(来るなら来い。誰だろうが何だろうが相手になってやる)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰ったぞ、坊」

 

 

 黒服と分かれたその後、特にこれといった問題もなく私はシャーレへと戻って来ていた。

 

 

「"おかえりホムラ。えっと……なんか怖い顔してるけど、何かあった?"」

 

「ああ。つい先程、黒服という者に話しかけられた。私の事やその他について色々聞かれたよ」

 

「"なっ……!?"」

 

 

 奴と邂逅した話をした途端、小僧は勢いよく立ち上ると血相を変えてこちらに駆け寄る。すると私の両肩を掴み、大きく揺さぶってきた。

 

 

「"あの人に何かされたの!? 何を言われたの!?"」

 

「おい坊、少し落ち着け。案ずるな、私はなんともない」

 

 

 そう言って眼前の男を宥め、肩に置かれていた手をゆっくりと引き剥がす。

 

 

「"ご、ごめん。だけどあの人は普通じゃない、君の身になにかあったら私は……"」

 

「馬鹿者。この私があのような者に遅れを取ると思うか? それに――」

 

「"それに?"」

 

 

 

「貴様が先生(貴様)として存在する限り、私はその側から消える事はない。だからお前も私の隣から離れるな」

 

 

 私の言葉に奴は目を見開く。そのまま流れるようにそいつの胸板に指を添え――

 

 

「わかったな? ()()()()()

 

 

 そう言ってやると小僧は元気に頷いたため、こちらもその指を離す。先生なんてご大層に呼ばれているが、こんな子供っぽい一面もよく見せる。いや、それはお互い様か。

 

 

 そんな貴様がどのように私を手懐けていくのか見ものだよ、人間。

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

「少し想定外でしたね。成り行きとはいえ、古龍きっての自尊心を持つ彼女を手中に収めてしまうとは。ククッ、やはり先生……貴方はやはり私の探究心をとことん掻き立ててくださる」

 

 

 先程の場所から遠く離れた地点にある新生ゲマトリアのアジト内にて、黒服は薄ら笑いをしながら廊下を歩いていた。

 

 

「黒服、その様子はどうやら件の少女に会いに行ったようだな。それで成果は?」

 

 

 そんな彼に声を掛けたのは、燕尾服を着た木製のポーズ人形のような男性だった。その双頭や四肢を動かすたびに木が軋む音を鳴らし、ゲマトリアという組織の異質さを一層際立たせている。

 

 

「おや『マエストロ』。ええそれはもう、こっ酷く振られましたよ。不細工だの何だの言われまして」

 

「なるほど。やはり古龍という存在は気難しい、そう毎度上手く招き入れる事はできないか」

 

「ええ。快く引き受けてくださった彼女達には感謝しなくてはいけませんね」

 

 

 黒服がマエストロの言葉に同意した、その時だった。

 

 

 

「あらあら。お話して早々に勧誘しに行くとは、貴方も意外と欲張りさんなのですね」

 

 

 

「おや、噂をすればですか」

 

 

 その澄み切った声色と共に現れたのは、腰にまで届くライトブルーの髪を靡かせる一人の少女だった。彼女の背面には氷付けにされたかのような見た目の大きな翼があり、腰の後ろには先端が氷柱のように尖った尻尾も備わっている。

 そんな彼女の容姿を端的に言うならば、美しいの一言。その荘厳かつ窈窕(ようちょう)たる風貌は、見る人全てに息を飲ませるだろう。

 

 

「ご機嫌麗しゅう、黒服にマエストロ。貴方方の姫君でございます」

 

 

 そんな彼女は二人の目の前に立ち、ロングスカートを両指で少したくし上げると左足を右踵の後ろに下げ、お辞儀をしながらすっと腰を落とす。いわゆるカーテシーと呼ばれる礼儀作法だ。

 

 

「被験者は一人でも多いほうがいいですからね。しかし『マルザンナ』、貴方の仰る通り一筋縄ではいきませんでしたよ。不細工などと辛辣に拒否されてしまいました」

 

「あの方はひたすらに傲慢であるからこそ美しいのです。外見が変わろうが、その姿勢は失われていないようで安心しましたよ」

 

(不細工をやけに引き摺るな。もしかして気にしているのか?)

 

 

 そうして談笑する二人を見ながらマエストロは心の中でそう呟く。するとふとマルザンナは明後日の方向に目を向け、口元に人差し指の甲を当てる。

 

 

「しかし、まさかあの天彗龍が人間に付いてしまうだなんて……。ふふっ、その先生という殿方――

 

 

 

 

 

 

腸が煮え返りそうです。如何にして(わたくし)の天彗龍を誑かしたのですか……!」

 

 

 

 その瞬間マルザンナの眼光は刃物さながらに鋭くなり、周囲の空気は極地の如く凍りつく。そんな彼女を変わり様に、黒服は若干身を竦ませながらも宥める。

 

 

「まあまあ、そう邪険になさらないでください。何も脅されて従っているわけではないのですから」

 

「……そうですか。まあ人間とモンスターが手を結び、共に敵と戦う事はあるにはありましたから。それと似たようなものと思えば、そこまで不思議ではないのですかね」

 

 

 すると彼女は仏頂面でいながらも、そう自己完結する。落ち着きを取り戻したマルザンナの姿に胸を撫で下ろし、黒服は次にこう問いかけた。

 

 

「そういえば『アルティス』は、今どちらへ? 一緒にいると思っていたのですが」

 

「ああ彼女でしたら、現在デカルコマニーらと共に調査へ向かっていますよ。何やら新兵器の開発を企てているようでしてね」

 

「承知しました。しかしホムラさんと接触して改めて思ったのですが、どうして貴方方は私共に協力して下さる気になったのです?」

 

 

 その黒服の疑問に対しマルザンナは蠱惑的に目を細め、こう言い放つ。

 

 

「以前にも申したでしょう。私はただこのキヴォトスという美しい世界を、より一層素晴らしい物――楽園と呼べる物に創り上げたい。その為にはゲマトリアの技術が非常に役立つ。ただそれだけです」

 

 

 そう宣言した彼女の微笑みは聖母のような神々しさがありながらも、どこか不気味な空気も同時に漂わせていた。

 

 

「それでは私はこれにて。ご機嫌よう♪」

 

 

 そうして彼女は再びカーテシーを行い、花冠を模った氷彫刻のようなヘイローを連れながら黒服達の横を通り過ぎる。

 

 

 

「Diese welt ist grausam. Es ist traurig aber wahr ――♪」

 

 

 そうして何かの歌を口遊みながら去っていくマルザンナ。その背中を延々と眺めながらマエストロは肩をすっと落とし、黒服はクスクスとほくそ笑む。

 

 

「物は言いようだな」

 

「ええ。あのような優美な外貌かつ嫋やかな振る舞いであるにも関わらず、その内面は酷く残忍であるとは。世の中とは奇々怪々なものです」

 

 

 

「何はともあれ、これからも良いお付き合いを願っておりますよ。冬と死の女神 マルザンナ。真の名を――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冰龍(ひょうりゅう)イヴェルカーナ』様?」

 

 

 

 

 

To be Continued …

 

 

 

 





ホムラさんによる上手なゲマトリア勧誘の断り方


 ①はっきり「協力しない」と意思表示
 「消えろ」

 ②「協力しない理由」を話す
 「おととい来やがれ不細工が」チッチッ

 ③それでもしつこいなら逃げよう 
 「二度とその面を見せるんじゃないぞ」





 くぅ〜疲れましたw これにて完結です!  なんて冗談は置いて……後日活動報告も上げる予定であるため、よろしければそちらもご覧ください。
 今後の流れとしては、いくつかの閑話や各話の加筆・細かい編集等を挟み、そこからカルバノグ編に移りたいと構想しております。原作のストーリーをなぞりながら所々改変を加える形になるため、更新頻度を極力高められるようにしたいですね。

 ここまで拙作にお付き合いくださり、誠にありがとうございました。読者の皆様、どうぞ良い年末・新年をお過ごしください。
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