透き通る世界を照らす赫き星   作:お茶犬大家族

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本編とはあまり関係のない短編集。ギャグセンスをもっと高められるようにしたい…





間話
たまには小話でもいかが?


 

 

 

狼と龍

 

 

 

「まさかこんな所にいたとは。まあ見つけられて何よりだ」

 

「ん。ご苦労様」

 

 

 アビドス自治区の大半を占める広大な砂漠にて、ホムラは探していた人物であるシロコ*テラーと再会する。対策委員会の面々とは和解したものの、彼女とは話ができていなかったため今の今まで探していたのだ。

 地べたに座り込むシロコ*テラーの隣に並ぶとホムラ自身も腰を降ろし、二人共に月明かりを浴びる。そうして静かに夜風に当たること数刻、シロコ*テラーが口を開く。

 

 

「シャーレでは上手くやっていけてるの?」

 

「なんとかな、当番の生徒達には日々教わってばかりだ。そちらこそ腹の傷はもう平気なのか?」

 

「ホシノ先輩にも言われたけど、全然平気。むしろあの程度何回食らっても大丈夫」

 

「ぬかせ」

 

 

 自慢げににやつく彼女にホムラもまた失笑し、言葉を続ける。

 

 

「確かにあの捨て身の執念、とんでもない気迫を感じた。あのような無茶をする人間は、私は嫌いじゃない」

 

 

 

「だがあの男は、もっと自分の体を大事にしてほしいと呟やいていた。それだけは伝えておく」

 

 

 ホムラがそう言った直後、シロコ*テラーの眉がぴくりと動く。

 

 

「……それ、本当?」

 

「ん? ああ本当だが」

 

 

 食い気味に聞かれたホムラが若干たじろぎながらも肯定すると、彼女は黙々と思考を巡らせる。

 

 

 

(もっと自分の体を大事にしろ = 君に傷付いてほしくない = 私には君が必要だ = 私と結婚しよう!!??)

 

 

 

 一瞬にしてその連想に至ったシロコ*テラーはふんすと鼻を鳴らし、そそくさと立ち上がった。

 

 

「だいたい分かった。とりあえずゼク◯ィ買ってくる」

 

「うむ、何も分かっていないな」

 

 

 大胆な行動を取り始める彼女の肩を押さえ、再び大地に座らせる。その後もあれやこれやと雑談を繰り広げ、溝が少しずつ埋まっていくのを互いに理解した二人であった。

 

 

 

 


 

 

 

失言

 

 

 

 あれは以前、阿慈谷(あじたに)ヒフミという生徒が当番としてシャーレに訪れた日の事だった。

 

 

「なんだこの鳥……いや、鳥なのかこいつは?」

 

「はい! このお方はペロロ様と言ってですね、モモフレンズという作品に登場するキャラクターでして――」

 

("楽しそうだなぁヒフミ。というか押され気味なホムラがちょっと面白い")

 

 

 彼女はペロロと呼ばれるキャラをこよなく愛しており、ホムラにもその魅力を布教せんと熱弁している。私はそんな二人の姿を離れて見ていたのだが、それに対するホムラの回答は――

 

 

「とても素晴らしいと思いませんか!? この焦点の合っていない眼差しとか、両手足の短さとか、力無く垂れる舌の靡き方とか!! ですからホムラさんにも是非、ペロロ様の魅力を知っていただきたく――」

 

 

「悍ましい。こんな形相の鳥公を愛せなどと無理がある」

 

 

("あっ")

 

 

 ヒフミの前で言ってはいけない禁句だったのだ。その瞬間彼女は目を細め、ニッコリとした笑みを浮かべる。

 

 

「……ホムラさん、実は貴方にだけ見せたい物があるんです。そのため先生には内緒にしたく、よろしければ向こうの部屋でどうですか?」

 

「? 別に構わんぞ」

 

「"ヒフッ!?"」

 

 

 私は急いで立ち上がり二人を止めようとしたのだが、ヒフミがぐるりと首を回転させてこちらに見せた笑顔には温度が全く無かった。「来るな」という警告だろう。

 

 

「いやはや、実に楽しみだ」

 

("ごめんホムラ。今のヒフミは私でも止められない")

 

 

 ヒフミと共に退室していくホムラの背中に、私は心の中で謝罪をしながら彼女の無事を祈った。

 やがて二人は戻って来たのだが、上機嫌なヒフミとは対照的にホムラはどこか虚ろとしている。そんな彼女に声をかけようとした瞬間――

 

 

 

「ペロロ様はこの世で最も崇められるべき尊いお方である。ペロロ様を信仰しない事は人道に反する事と同義であり、それ即ち――」

 

「"ホムラッッッ!?"」

 

「ふふっ♪」

 

 

 壊れたラジオのようにホムラは淡々と言葉を紡ぎ、その姿にヒフミはくすくすと笑う。彼女に一体を何をしたんだ君は……。

 

 

 この後元の調子に戻った彼女に聞いても、本人に当時の記憶は無いという。私はこの日、ヒフミだけは絶対に怒らせないようにしようと心に誓った。

 

 

 

 


 

 

 

折衷案

 

 

 

 これはホムラがシャーレに配属される前、連邦生徒会の人間として過ごしていた時期の話。

 

 

 

「もし、女史に少し聞きたい事が――」

 

「ひゃっ、ひゃい!? なんでしょう!?」

 

「……そんなに驚かなくてもいいじゃないか」

 

 

 

 

「ちょい、これはどのようにすれば良いのだ?」

 

「えぇとですね!? まずはこれをこうして――」

 

「待て待て、そう焦るな。ひとまず呼吸を整えろ」

 

 

 

 

 

「と、このように毎度相手を萎縮させてしまうのだが……私はそんなに怖いか?」

 

「なるほど、相談したい事とはその件でしたか」

 

 

 彼女は役員達に恐れられている事に少し気が滅入っているらしく、リン達に相談に乗ってもらっていたのだ。

 

 

「実は丁度、あの子達からも相談を受けていてね。みんな貴方の事を『まるで猛獣と対峙しているよう』と表現していたわ」

 

「勇ましい容姿も相俟って、ホムラさんはなんというか存在感がありますからね……。気圧されてしまうのも無理はないかもしれません」

 

「うーむ。どうしたものか……」

 

 

 アオイとアユムからの批評を受け、ホムラは顎に手を当てながら思案に暮れる。

 

 

「こればかりは慣れの問題かもしれませんが、まずは彼女達とフランクな受け答えをしてみてはいかがでしょう。そうすれば次第に親しみやすさが生まれるかと」

 

「まあいきなり強引に直させるよりは、ちょこっとずつ指摘してあげたほうがこの子のためになるだろうね。それじゃあホムラ、試しに砕けた口調かつ敬語は捨てていない話し方をしてみて?」

 

「心得た」

 

 

 

(フランクな口調かつ丁寧さも混える……よしっ)

 

 

 リンとモモカのアドバイスを元に沈思黙考し、彼女が真っ先に出した台詞は――

 

 

 

 

「パイセン方、相談に乗って頂きアザッス⭐︎」

 

「違和感しかありませんね」

 

「間を取るどころか突き抜けてるじゃない」

 

「参ったねこりゃ」

 

 

 振れ幅の激しい彼女にリン達は一層頭を悩ませた。しかし後になってエピソードがどこからか漏れ、以前に比べて連邦生徒会の生徒達と交流しやすくなったという。

 

 

 

 


 

 

 

夜雨対牀(やうたいしょう)

 

 

 

 風紀委員会に溜まった仕事を連日かけてようやく終え、今や朝の8時を回っている。体力も精神もすり減った私は先生に甘えたい一心でシャーレに向かい、そのオフィスへと入った。

 

 

「お邪魔するわ二人とも――あら、ホムラだけなのね。先生は?」

 

「なんだヒナか。奴なら徹夜で業務していたため、今は休憩室で仮眠をとっているぞ。そういう貴様もあまり顔色がよろしくないが?」

 

 

 しかし先生は室内にいなくてホムラだけがおり、ソファに座っていた彼女は本を読み進めながら私にそう答える。

 

 

「ええ、実を言うと私も三徹明けでね。思考もままならないわ……」

 

「……ほう、お前も激務上がりなのか」

 

 

 するとホムラは読んでいた本をパタンと閉じ、ゆったりと椅子から立ち上がる。そんな今の彼女には何か怪しげな雰囲気が纏わりついていた。

 

 

「……一体何を考えているの?」

 

 

 それを感じ取った私は即座に臨戦体制に入り、目の前の人物を聞き質す。すると彼女は獰猛な笑みでこう返したのだ。

 

 

「なぁに、貴様を安らかな眠りに就かせてやるだけだ。奴のようにな」

 

「ッ! 貴方ッ!!」

 

 

 まさかこんな所でやり合うつもりなのかと、彼女に怒りの感情が湧き上がる。しかしシャーレの建物内で戦闘を行うわけにはいかない。だからひとまず彼女を外まで誘導しようとしたのだけれど――

 

 

(っ! 体が思うようにっ……!)

 

 

 想像以上に疲弊していたのか、体がコンマ数秒硬直する。体制を立て直そうとした時には遅く、既に距離を詰められ組み伏せられてしまった。覚悟を決めた私は目を閉ざし、襲いくるであろう衝撃に身を備える。

 

 

 

 しかしいつまで経っても痛みはやって来なかった。むしろ何かふわふわとした感覚が全身を覆っている。

 恐る恐る目を開くと、隣には私と同じように寝転がるホムラがいた。背中の柔らかな感触の正体はソファベッドで、気付けば毛布まで掛けられていた。

 

 

 

 ……もしかしなくてもこの状況。

 

 

 

(添い寝!!??)

 

 

 

 この後私はぐっすりと快眠できたのだけれど、なんだか複雑な気分だわ。

 

 

 

 


 

 

 

()()記念物

 

 

 

『リベンジしたいなら、いつでも受けてあげるよ〜』

 

 

 星流ホムラは考えていた。ホシノ達とは確かに打ち解けたものの、彼女達から受けた敗北感は解消されずに残っていたのだ。

 

 

(ここは一つ奴らの不意を突くやり方で一泡吹かせてやりたいが、何かいい方法は――ん?)

 

 

 そんな事を企てながらアーケード街を歩いていた彼女だったが、ふと視界に写った商店に目が留まる。その窓ガラスに貼られたポスターの煽り文句にホムラは閃いた。

 

 

(っ! こいつだ!!)

 

 

 

 

 

 

「やあやあ、いらっしゃいホムラちゃん。お? その手に持ってる袋は何かな?」

 

「ここに来る途中に買った和菓子だ。心許りの品だが良ければもらってくれ」

 

 

 そうして対策委員会の部室にてホシノ達と再会すると、右手に携えていたレジ袋を皆の前に差し出す。

 

 

「あんた、誠意とか何とか言って変な物でも混入させてんじゃ――「ん。いい気構え」シロコ先輩、そんな簡単に懐柔されないで?」

 

 

 警戒していたセリカを他所にシロコが袋を掻っ攫い、彼女を叱咤するセリカ。そうして袋が広げられ、一人また一人と中を覗いていくとノノミが何かに勘づく。

 

 

「おや、これは岩船庵の苺大福ですね」

 

「あれ、ノノミちゃん知ってるの?」

 

「はい。練乳を混ぜ合わせた餡子を使った人気の老舗らしいのですが、私も実物を見るのは初めてです」

 

「調べてみたところ一つ400円弱とは中々のお値段ですね。頂いてしまって本当によろしいのですか?」

 

「ああ、遠慮するな」

 

 

 アヤネのお伺いもなんのそのと、ホムラが催促したのも束の間――

 

 

「それじゃあ一個もらい♪」

 

「じゃ、じゃあ私も!」

 

(ふっ、浮ついていられるのも今の内だ。さあ阿鼻叫喚を聞かせるがいい!)

 

 

 ホシノを皮切りに次々と大福に手をつけるアビドス生達。そんな姿を内心ほくそ笑み、計画通りに進んでいるとホムラは考えていた。

 

 

「っ! これは美味しい……!」

 

「ええ、ホムラちゃんの心遣いにノノミは感激です♣︎」

 

(……おかしい。どうして何も起きない?)

 

 

 しかしどれだけ待っても想定していた結末は訪れず、むしろ和気藹々とする空間にホムラは呆然とする。

 

 

「? どうしたのホムラ。私達のほうをじろじろ見て」

 

「え、なに? まさか本当に変な物でも入れてた?」

 

「そんな小汚い真似を私がするか! ただ……」

 

「「「「「ただ?」」」」」

 

 

 

「こいつを食えば()()()()()()()と銘打っていたんだぞ。なのにどうして平気なんだ?」

 

 

 真剣な表情で問いただすホムラにその場が静まり返る。すると次の瞬間――

 

 

「あっはははは! そゆこと!」

 

「あらあら、ホムラちゃんもお茶目さんですね♪」

 

「以前から思っていましたが、ホムラさんって結構天然ですよね」

 

「え」 

 

 

 ホシノは吹き出し、ノノミとアヤネはくすりと鼻を鳴らす。室内は笑いに包まれ、一人だけ状況を掴めていないホムラはぽかんとした顔を浮かべた。

 

 

「あ、今のあんたの間抜け面うける。撮っとこ」

 

「セリカ、それ後で私にも送って」

 

「……っ!」

 

 

 シロコ達のやりとりで彼女もようやく事態を理解し、わなわなと震えだす。

 

 

「お? ホムラちゃん顔真っ赤だねぇ♪ おじさんが慰めてあげようか〜?」

 

「いらん!!」

 

 

 

 


 

 

 

逞しい

 

 

 

「ムニャムニャ……ユウカしぇんぱい、競馬はロマンだからこそ大博打するのであって……」

 

「どんな夢を見ているんだか。こんな所で寝ていたら体を壊すぞ、せめて毛布を羽織れ」

 

 

 私の眼前にはソファですやすやと昼寝をするコユキと、彼女にそっと毛布を被せるホムラの姿がある。以前ヒナも彼女に寝かしつけられた事があったらしく、何故かは分からないがとてもリフレッシュできたとか。

 

 数日間ホムラと過ごして分かった事だが、彼女は案外世話焼きなのかもしれない。例えばココナが当番としてシャーレにやって来た日、昼食として青椒肉絲が振る舞われたのだが――

 

 

「ピーマンはいまいち苦手です……どうしても食べないと駄目ですか?」

 

「立派な大人のレディとやらになりたいのなら、下らん好き嫌いをなくすんだな。ちんちくりんなままでいたいのか?」

 

「ちんちく!? 上等ですよ、こんなものすぐにでも克服してあげます!」

 

 

 ホムラにそう挑発されたココナは意地になり、それを完食してしまったのだ。更にはその日以降、ピーマンを進んで食べるようになったとシュンから連絡を受けた。もしかするとそれを見越して……?

 

 ケースはそれだけではない。以前レッドウィンターへ共に向かい、道中運悪く猛吹雪に巻き込まれた時には――

 

 

「"今日はいつにも増して吹雪が強いな……歩くので精一杯だ"」

 

「坊、私の背後にくっついておけ。私は体温も高い上、羽も多少の風除けになるだろう」

 

「"いやそれは流石に悪いよ。校舎に着くまでこのままで――"」

 

「いいから黙って身を寄せていろ。貴様に凍え死んでもらっては困る」

 

 

 結局有無を言わさず強引に寄せられ、学園に到着するまで彼女と密着したままだった。尊大な口振りでいながら、この豪胆さと甲斐甲斐しさは――

 

 

「"なんというか、オカン?"」

 

「私に子育ての経験はないぞ」

 

「にゃははは! ホムラさんはオカンというよりオバ」

 

 

 その後、コユキの姿を見た者はいない。

 

 





飲酒←ダメ、絶対
タバコ←guilty
ギャンブル←イイヨ!

ブルアカの未成年あれこれの基準はいまいち分からぬ。


余談ですが岩船庵のモデルは静岡県のとある店です。ご興味のある方は検索してみてはいかがでしょう。

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