透き通る世界を照らす赫き星   作:お茶犬大家族

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そういやマルクトお姉様って貴重な長身スレンダーキャラなんですよね。私の性癖にピッタリすぎるがあまりなんていうか、その……下品なんですが……フフ……




下品なんでやめておきますね。



仄暗い森林の奥から

 

 

 

 D.U.地区郊外のとある山奥。生い茂る木々や凸凹の岩肌、力強く流れ落ちる一つの滝。それらに囲まれたエメラルドグリーンの滝壺の川岸に、坐禅を組む一人の少女がいる。金髪のレイヤーボブをした彼女は額から一対の漆黒の角を生やし、背中には甲虫の翅を思わせる金色の翼が備えていた。

 喧騒とした都会から大きく離れ、大自然が創り出した未開の空間にて精神統一を図っている少女。その凛とした居住まいは一見すると、己が流派を極めんとする修行僧に思えるだろう。

 しかしそんな少女の服装はセーラー服の上にパイロットジャケットという風変わりなもので、頭部に着けたT字のヘッドギアにはインカムマイクやモノクル型の小型スクリーンが搭載されており、彼女がただの学生ではないことを物語っている。

 

 ただし当の本人はそれを憚る様子はなく、毅然とした態度で河岸に鎮座。そよ風に髪をゆらりゆらりと煽られ、たた一心に己の精神を研ぎ澄ませていた彼女だったが――

 

 

(気配……しかし敵意は感じない。それにこの生体反応はきっと――)

 

 

 自身の元に背後から迫る何者かの気配を感じ取る。あろうことかそいつは砂利だらけの足場を、一切音を出さずに忍び足で近づいてくる。そうやって一歩、また一歩と近づいてくる曲者。やがてその者が自身の真後ろに立った瞬間。

 

 

 

「破ッッッ!!」

 

 

 

 標的目掛け、カウンターの拳を高速で放つ。しかし必殺の剛拳はばっしりと受け止められ、空気が破裂するような音が周囲に木霊した。それは轟々たる渓流の音をも掻き消し、木々の木の葉は衝撃波で揺らされる。

 

 

「限りなく気配は消してたつもりなんだけど、末恐ろしいな君は」

 

「ツキノ隊長。やはり貴方でしたか」

 

 

 その剛拳を防いでいたのは彼女の仲間であった。その事実を視認すると彼女は腕をゆっくりと引き、おもむろに腰を上げる。隊長と呼ばれた少女もまた、鈍い痛みが走り続ける両手を軽く払う。

 

 

「ったた……流石は武術の申し子『鬼ヶ島(おにがしま)コガネ』だ。気配の読みは他と一線を画すね」

 

「お戯れを。貴方の本気の隠形(おんぎょう)であれば私に触れる事など造作もないでしょうに」

 

「戯れでもないさ。そろそろ夜明けが近いから迎えに来たんだよ」

 

 

 飄々と受け流す彼女の言葉を受けてコガネが上を向くと、薄紫のグラデーションが掛かった空に気が付く。

 

 

「あら、本当ですね。現時刻は?」

 

「0420。現在から昼過ぎにかけては晴れるだろうけど、雲の流れを見るに、夕暮れには80%の確率で土砂降りになるかな。まあこんな所で井戸端会議するのもなんだし、ひとまず二人と合流しよっか」

 

「御意」

 

 

 ツキノにそう二つ返事をした彼女は外していた武装を再度整え、共に野営地へと向かい始める。薄霧が立ち込める空の中、鬱蒼とした森林の上を飛行していくと、不自然に円形状に切り拓かれた地点に到着する。地上には焚き火を囲う形で二人の少女がそれぞれ異なる行動をとっていた。

 左からは二本、右には一本という左右非対称の頭角を生やした彼女は研磨剤を使い、自身の愛用するロングナイフを念入りに研いでいる。紫がかった黒髪を持つもう一人の少女は、先日仕留めた獲物である焼けた肉を貪り、続けてマグカップに注がれた飲料で喉を潤す。

 

 そんな二人の元にツキノ達は着地し、隊長である少女は上機嫌に呼びかける。

 

 

「ねえねえセツカ、ミナト! さっきそこで大っきいクワガタ捕れたんだ! そのサイズなんと1620mm!」

 

「そいつはpreciousな大物じゃねぇか。ただあたしらの目には副隊長のコガネさんにしか見えないけどな」

 

 

 ネイティブなEnglishが入り混じった話し方をしているのは左右非対称の頭角を有した少女、BEETLE3の『白鷺城(しらさぎじょう)セツカ』。その刺々しい緑色の髪は短く整えられており、研いだナイフの細部を見渡しながらセツカは言葉を返す。

 

 

「しかしアンタも中々に図太いねぇ。近頃何があるか分からない森林の中で堂々と瞑想するなんてさ」

 

「それは重々承知しております。恥ずかしい限りですが、こうでもしないと落ち着かなくて」

 

 

 続けてコガネにやいやいと揶揄ったのは、BEETLE小隊のスナイパーである『牛ヶ瀬(うしがせ)ミナト』。ウェーブのかかった長髪は肩甲骨辺りで大きく二又に分かれて膝裏まで伸び、ミステリアスな雰囲気の彼女をより強調している。

 

 

「確かにここ最近の自然界は奇妙な事ばっかりだからねぇ。ついこの間だって真っ白な髭を生やした大きなイノシシと戦ったんだし。あんなに巨大になる種類は初めて見たよ」

 

「その上あれだけのサイズとなると、農家の方や作物への被害は尋常ではないでしょう。あの者の討伐指令が私達に下されたのも、ある意味必然的と言えます」

 

「とは言っても、突進しか芸のないノータリンだったのは拍子抜けだったよ」

 

 

 そう悪態を吐きながらミナトは懐から一枚のカードを取り出す。そのを表面をちらりと確認した後、三人にもそれを見せた。

 

 

「ほら、『戦車(チャリオット)』の正位置だね。あんなイージータスク、あたい達にとっては役不足もいいとこだったのさ」

 

 

 彼女が掲示したのはタロットカード。Ⅶという数字が印字され、2頭の馬に引かれた台車に乗る人物が描かれた札を見せながらそう唱える。戦車の正位置が意味するのは本来、勝利・活力・僥倖などの前向きなものであるが、彼女の解釈は少々偏屈なものであった。

 

 

「まあアタシも正直言ってアレは物足りなかったな。その前は蜂とガガンボのhybridみてぇな虫の大群の相手だったし、出てくるならもう少し骨のある奴が出てこないもんかねぇ」

 

「それもこれも、空が毒々しい赤に染まった日以降の事ですね。あの事象と何しら関与しているのでしょうか……」

 

 

 数ヶ月に起きた大惨事を想起し、コガネの表情は一気に険しいものとなる。思い詰めているそんな彼女にツキノはただこう言った。

 

 

「それはまだ分からない。ただもし本当に因果関係があるとするのなら、僕達は目の前の問題を解決させていくだけさ。SRT特殊学園を復興させ、まだ見ぬ後輩達に未来を託すためにも――ね?」

 

「……ええ、仰る通りですね」

 

 

 彼女がそう言って笑ってみせると、コガネもまた微笑みを返す。

 

 

「……で、これからどうすんだい? さっきコガネが言ってた日の影響で多少の支障は出ちまったが、昨晩終わらせた任務であたいらやることなくなったんだろ?」

 

 

 ミナトにそう問われるとツキノはうーんと顎に手を当て、朝焼けの空を流し目で見る。

 

 

「そうだなぁ。僕は一旦、カヤ室長の元に顔を出しにいこうかと考えているよ。ユキノくん達にもしばらく顔を見せてないからさ」

 

「言われてみれば、長きに渡ってホログラムなどによる遠隔の指令ばかりで面会はしていませんでしたね。積もる話もあるでしょうし、いっそのことBEETLE小隊総員で――「だ・け・ど」 ん?」

 

 

 自身の言葉を遮られたコガネが不審に思った直後、ふふんと笑いながらツキノはこう言った。

 

 

「その前に、可愛い子兎達を愛でに行くのも悪くないかな?」

 

「子兎――まさか前に公園でどんちゃん騒ぎしたっていうRABBIT小隊の事かい?」

 

 

 思い当たる節があったミナトに再び聞かれると彼女は頷き、やれやれと言わんばかりに両の手のひらを上に向ける。

 

 

「まああの子達の気持ちが分からないと言えば嘘になるね。自分達の通う学園を管轄する責任者が突然蒸発して、別のお上から『今日から君達の学園なくなるから』なんて言われたら混乱するに決まってるさ。ただでさえまだまだ青臭いピッカピカの一年生なんだから」

 

「それに彼女達の直近の世評は良いものばかりですよ。心の拠り所が生まれた事やヴァルキューレでの一件を経て、実力は勿論、精神面でも大きく向上したと思われます」

 

 

 後輩達の昔の所業にツキノとコガネができる限りのフォローを入れていくと、今度はセツカが軽快に笑ってみせた。

 

 

「学園が閉鎖する前でも破茶滅茶だったrookie達がか? そりゃまた随分と角が取れたんだなアイツら」

 

「はっ、角だらけのあんたがそれを言うのかい。いい機会だ、奴らの煎じた爪垢を飲ませてもらったらどうだ? 血腥い性格が多少マシになるかもしれないよ」

 

「……ああ゛?」

 

 

 しかしミナトのその挑発を受けた瞬間、彼女の額に青筋が浮かび上がる。並々ならぬ怒気を纏いながらぐいぐいと接近し、鼻が触れ合いそうになるほど互いの顔が切迫する。

 

 

「性根が捻り切ったテメェにだけは言われたくねぇよ。まあナイフも研いだばっかだ、最初の血祭りの相手はお前か?」

 

「へぇ、このあたいと殺るってのかい? いいよかかってきな!」

 

「ああ、テメェをGの付くR-18にしてやらぁ!」

 

 

 しかしミナトはまったく怯まず、それどころか二人は徐々にヒートアップしていく。一触即発の状態の彼女達を見て流石に拙いと思ったのだろう、ツキノが慌てて諌めに入る。

 

 

「まあまあ二人とも、その辺にしときなよ。隊員同士のマジ喧嘩は御法度だし、それにほら、うちのBEETLE2さんのお顔が……」

 

 

 どこか及び腰な彼女の言われるがまま、セツカ達はコガネのいるほうへと顔を向ける。

 

 

「ふふっ。お二人とも、相変わらずお元気がよろしいですね」

 

「「……すまん」」

 

 

 すると彼女は満面の笑みであるにも関わらず、二人はその面持ちを見るやいなや全身の毛が逆立つ程の悪寒に襲われる。すっかり頭が冷え切った彼女達のできる行動はただ謝る事だけだった。

 

 

(まあ喧嘩するほど仲がいいとは言うけど。その我の強さが二人の傑出した才能の理由にもなっているんだからね)

 

 

 そうして張り詰めた空気も次第に収縮していき、そんな事を考えながらツキノはほっと息を吐いた。

 

 

「ただセツカの言った通り、出会ったばかりの彼女達はウサギというよりノウサギのような気性だったね。色々と手を焼いた記憶ばっかりだよ」

 

「同学年では比較的優秀であったのは認めますが、故に自信過剰になって物事の先を見据えないのが難点でした。それがどのように改善されたのか、私も気になる所ではあります」

 

「君が問題ばかり起こす一年生達に拳骨をかましていた頃を思い出すよ。特にモエくんが餌食になる事が多かったなぁ」

 

「いえっ、それは……まあ……」

 

 

 過去の出来事をしみじみと噛み締めるツキノ。その一方でコガネはかつての行いに若干の羞恥心を抱いていたのか、うっすらと顔を赤くしていた。それを踏まえて空気が一変した事を確信したツキノは再度切り出す。

 

 

「で、改めて皆はどうする? 強制はしないから別に待機していてもいいけど、それじゃあまずコガネから」

 

「武術の師範代だった者として、あの子達にまた教えられる事もあるでしょう。是非ともご同行致します」

 

「そう言うと思ったよ。セツカはどうだい?」

 

「愚問だぜ。最高にjoy joyなfestivalにしようじゃねぇか」

 

「yeah! そして最後にミナトだけど――」

 

「『魔術師(マジシャン)』の正位置。まあ乗り掛かった船だ、盛大にもてなしてやろうじゃないか」

 

 

 順に隊員達の肯定的な返答を受け、彼女もまた満足気に頷く。

 

 

「うんうん。皆の反応を見る限り反対意見が出る事は無さそうだね。よしっ、それじゃあどんな風に遊んであげるか算段を立てようか。 Do you copy?」

 

「「「copy that」」」

 

 

 その受け答えを終えるとツキノは大空を仰ぎ、乳白色の月を見つめながら不敵に口角を上げた。

 

 

 

 

(いずれにせよ、僕らBEETLE小隊のご挨拶は一風変わっているよ? 子兎くん達♪)

 

 

 

 






どうしても出したかったオリジナル生徒をようやく登場させられて、小生は一安心でございます。

彼女達の元ネタは言わずもがなカブトやクワガタな訳ですが、四人全員のモチーフが分かる方がいらっしゃれば昆虫マニアか、あるいは私と同じように某アーケードゲームの経験者でしょうね。

FOX小隊の中で最推しは?

  • ユキノ
  • ニコ
  • クルミ
  • オトギ
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