透き通る世界を照らす赫き星   作:お茶犬大家族

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MH4G過激派ワイ
「ぶっちゃけガララアジャラ亜種よりG級原種のほうがめんどい。そんでもって最難関キークエは『サンドのメシよりドスガレオス』」

ただ言いたかっただけです、それ以上も以下もありません()




狐と兎が交わる刻

 

 

 

「"なるほど、だからミヤコ達は……"」

 

「己の尻は己で拭くつもりなのだろう。それを知って尚、奴らの問題に踏み入るか?」

 

「"元はと言えばシャーレが占領された事が発端なんだ。その管理者として、何より彼女達の教師として尚更黙っていられないよ"」

 

「貴様らしい答えだな」

 

 

 忽然と姿を消したミヤコ達の足取りを追跡するべく、シャーレの二人は降りしきる大雨の中を颯爽と駆ける。その最中にホムラは先生に事の経緯を説明するが、それは彼の決意をより一層固めるものだった。

 

 

「"しかし降水確率は高いと予報はされてたけど、ここまで悪天候になるとはね……。レインコートを持ってきていて良かった"」

 

 

(以前の肉体なら雨に濡れたところで気にもしなかったが、この体ではそうもいかない。この辺りは少々不便になったな)

 

 

 彼が言うように空を見上げると墨のように染まった雲が一面に広がり、激しい雨によって周囲には靄が発生し、下を見れば彼方此方に水溜りが形成されている。一方でホムラも自身の胸元に目を向け、心の中で恨み節を吐く。

 するとその刹那――

 

 

 

ビシャャァァァァンッッッッ!!

 

 

 

「"ゔっっ!?"」

 

 

 辺りに強烈な閃光と轟音が走り、先生はたまらず呻き声を上げる。段々と小さくなる雷鳴の余韻に合わせるように、彼は長く息を吐いて心を落ち着かせた。

 

 

「"ああびっくりした、寿命が少し縮んだかも……"」

 

「ははっ、落雷如きで怯むか」

 

「"いや、今のは普通誰でもびっくりするよ。ホムラの肝が据わり過ぎてるだけだって"」

 

「当然だ。時には荒天の中をも飛んでいたのだから今更臆さん」

 

 

 小動物のように縮こまる彼とは対照的にホムラは軽快に笑い飛ばし、荒れ狂う曇天の大空へと目を向ける。

 

 

(っ、あれは……?)

 

 

 その途端、彼女の目付きが一気に鋭さを増す。何故なら電光で点滅する雷雲の中に、翼を持った真っ黒な影が飛翔しているのだ。それがどのような姿をしているのか正確には分からないが、影の形からして人間である事は辛うじて理解できる。

 故に、激しい雷雨と気流が吹き荒れる空を平然と遊泳できるような人間はまず普通ではないと彼女は悟ったのだ。

 

 

「"ホムラ、どうかしたの?"」

 

「……いいや、なんでもない。急ぐぞ」

 

 

 いつもの雰囲気とは異なる彼女を不審に思い、先生は呼びかけるものの本人は何事もなかったように返答する。そうして再び目的地まで移動する二人であったが、ホムラは荒巻く雨雲から意識を逸らす事はなく、殺意にも似た覇気を向け続けていた。

 

 

 

 その数分後、彼らは一つの古ぼけた煉瓦造りの建物に辿り着く。その外壁は何者かによって人為的に破壊された痕跡があった。

 

 

「"ここに皆が?"」

 

「ああ、彼女達の気配がここからはっきりと伝わる」

 

 

 

「そしてミヤコ達とは()()()()()()もな。それも複数」

 

 

 彼女がそう告げると先生の表情も強張り、シッテムの箱を取り出すと画面に呼びかける。

 

 

「"アロナ、プラナ。この建物の図面は割り出せる?"」

 

『お安い御用です!』

 

 

 アロナが元気良く返事をしたその僅か数秒後、今度はプラナの声が届く。

 

 

『アナライズ完了。画面に表示します』

 

「"ありがとう二人とも。よし、じゃあ行こう"」

 

 

 ホムラは静かに頷き、二人は建物の中へと侵入していった。やはりというか屋内は碌に電気が通っておらず、その静寂さも相まって薄気味悪い雰囲気を醸し出す。そんな空間に彼らの乾いた靴音が仄暗い廊下に小さく反響する。

 

 

「"静かだね、戦闘はもう終えたのかな?"」

 

「だろうな。生体反応からして、ほぼ全員同じ部屋に集結していると見ていい」

 

 

 建物の間取り図と第六感を頼りに、二人は壁を伝いながら慎重に歩みを進める。

 そうして曲がり角に差し掛かり、その先にあった廊下を覗き込んだその時、突き当たりの右角からミヤコが姿を見せた。

 

 

「"ミヤコ! 無事でよかっ――"」

 

「いいや、何か様子が変だ」

 

 

 彼女の姿を視認した先生は安堵するが、何かに違和感を抱いたホムラが彼の言葉を否定する。その勘は正しかったらしく、直後に狐の耳を生やした少女がミヤコの背後にくっつく形で現れた。

 

 

(どうやら、制圧されたのは彼女達のほうらしい)

 

 

 それを理解すると二人はすぐさま息を殺し、彼女達が向かい側に進んでいくのをじっと待つ。そうして再び姿を消していった数十秒後、彼らはゆっくりと通路に躍り出る。

 

 

("恐らく彼女が流出したという武器の持ち主、そしてシャーレから何かを持ち出したという人物か。特殊な訓練を受けている筈のミヤコ達が捕えられたとなると素人ではないだろう。ただそれにしても――")

 

「"FOX……そしてSRTの武器? まさか……"」

 

「どうした、何か引っ掛かる事でもあるのか」

 

「"うん。さっきの子が持っていたバッグにFOXって書いてあったんだけど、それで気になる事があって――"」

 

 

 彼は頭に浮かんでいた心当たりをそのまま述べた。連邦生徒会長の失踪に伴いSRT特殊学園の閉鎖が決議されると、同日に連邦生徒会を襲撃して役員数名に重軽傷を負わせた集団がいる事。それがかつてSRT特殊学園に所属していた三年生、『FOX小隊』と呼ばれる少女達であった事を。

 

 

「なるほど。今の子狐が本当にFOX小隊の人間だとしたら、SRTの武器を所持していても何ら不思議ではない。だが……」

 

「"うん、より一層引き返す訳にはいかなくなった"」

 

 

 二人の考える事は全く同じであった。シャーレの件や連邦生徒会の件を含め、真偽の確証を得るべく即座に彼らはミヤコ達が歩いて行った方向へと進んでいく。

 

 そうして彼らはこの建物で一番広い空間、その手前で足を止める。そして先程のように角からゆっくりと覗くと、RABBIT小隊の四人が狐耳の少女達に包囲されているのが目に入った。

 

 

「これで全員集まったか」

 

「あのピンクの髪をした生徒、以前会った事がある。ただのアルバイトじゃなかったのか……」

 

「それにしても奴ら、何か話しているな。坊、聞き取りにくければ私が伝言するが」

 

「"大丈夫。囁いている訳でもないから私にも十分聞こえるよ"」

 

 

 その答えに彼女は「ならいい」と一言だけ返し、二人はミヤコ達の会話に耳を研ぎ澄ませた。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 シャーレに侵入した傭兵達が所持していたSRT特殊学園製の武器。それは市場でおいそれと入手できるような代物ではなく、方法があるとすればSRTの人間から奪い取るか、あるいは譲渡してもらうかの二択に搾られる。前者はともかく後者に関しては心当たりがあり、以前キャンプが浸水した時に使い物にならなくなった装備を一部だけ商人に売却していたのだ。

 自分達のせいで先生に迷惑をかけていた可能性があり、我が校の製品を不正に使用するような存在を見過ごせる筈もなく、モエに電子装備の所在を解析してもらい、その不届者がいるであろう古惚けた建物まで訪れた。

 

 すると現場で待ち構えていたのは、なんとかつてのSRT特殊学園の先輩方であるFOX小隊だったのだ。そこで彼女達によるサプライズと称したゲリラ訓練を受け、流石は先輩と言うべきか私達4人はものの見事に捕縛されてしまった。

 その後は私達の至らぬ点に対して指摘や叱責を多少受けて一段落を終え――

 

 

「なるほど、あの状況だと副武装に切り替えるよりも殴りかかったほうが合理的と……。その発想は思い浮かばなかったな」

 

「サキ、あんたは頭が固すぎるのよ。すべてにおいてマニュアル通りの行動をすればいい訳じゃないわ」

 

「うーん、独自性を求められるような戦況は苦手だ。これまで教範に従ってきたものだから……」

 

「ガリ勉になる事でベテランになれたら誰も苦労しないわよ、もっと頑張りなさい。……ってあれ、私がとっておいたイクラのお稲荷さんが無い!?」

 

 

 

「ニコ先輩の作ったお稲荷さん、やっぱり美味し――「ねえねえ! 偽装訓練で満点を取ったミユって君の事!?」うぇっ!? そ、そうですけど……」

 

「いやぁ、噂通りの完璧なカモフラージュだったよ! ニコが座標を教えてくれなきゃ永遠に分からなかったかもしれないし!」

 

「あ、ありがとうございま……というか顔が違いです……」

 

「一体どんな偽装技術を使っているかな? ああそれとスコープの倍率も知りたいねぇ!」

 

 

 今はこうしてニコ先輩が持参したいなり寿司を堪能し、先輩後輩水入らずと談笑していた。思わぬ形で同胞に巡り会えた事にサキとモエ、ミユも心からこの状況を楽しんでいるようだ。

 しかし私はどうしても、胸中で疼く幾つかの違和感を無視できなかった。

 

 

「まあ他に分からない事があれば私達になんでも聞いてよ。例えば私特製のお稲荷さんのレシピとか」

 

 

 すると丁度ニコ先輩がそう質問を促す。白黒はっきりさせるとなれば今しかないと、私は即座に立ち上がり彼女達に問いかける。

 

 

「それでは一つ、お伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

「ええ、なんでも聞いてちょうだい!」

 

 

「カイザーがシャーレを占領したあの日、貴方達はオフィスから一体何を持ち帰ったのですか?」

 

「あっ……いや、それは……」

 

「その他にも、SRTの閉鎖が決まった日には連邦生徒会を襲撃して数名を病院送りにしましたね。何故ですか?」

 

「ええと……なんというかその……」

 

 

 想定外の質問だったのか、いざ投げかけられた問いにクルミ先輩とニコ先輩はたじろぐ。するとそんな彼女達の代わりにユキノ先輩が起立し、淡々と答える。

 

 

「すまないが、それは教えられない」

 

「よほどの機密事項だからですか?」

 

「そうではない。君達はまだ、私達の同志とは言い切れないからだ」

 

「どういう事だ? 私達は同じSRT特殊学園の生徒じゃないのか?」

 

 

 意味深な返答に対しサキは当然の疑問を口にする。しかし先輩はポーカーフェイスを崩す事なく、こう続けた。

 

 

「なら言い方を変えよう。任務でシャーレの先生と敵対しろと言われたら、君達はどうする?」

 

「「「「……」」」」

 

「そう、今の君達は判断する事ができない。……武器とは意思を放棄してこそ意義があるのだから」

 

 

 彼女の問いに私を含めたRABBIT小隊全員が口を噤む。すると先輩は私に右手をゆっくりと差し出し、つらつらと言葉を紡いでいく。

 

 

「これまでの困難を極める作戦の遂行、大変ご苦労であった月雪小隊長。只今をもってRABBIT小隊は解体し、FOX小隊の支隊とする」

 

「RABBIT小隊を解体? それはどうして……」

 

「誤解が無いよう言っておくが、こちらとしても不利益を与えるつもりはない。月雪小隊長の裁量権も保有されたまま。言うなれば突発的な事故によって負わせてしまった責任を、上級生である私達が再び担おうというだけの話だ」

 

「しかし、私達もSRT特殊学園を再興させる覚悟は……」

 

「とは言っても、君達も長きに渡る野営生活で心身共に疲弊している筈だろう? 学園再建のためと言って、諸君らがこれ以上責任を感じる必要はないんだ。今後降り掛かるであろう困難な選択は、我々に任せるといい」

 

「それでも、我々は……」

 

「戸惑いに囚われたまま、なまくらを振り翳す姿ほど無様なものはないものだ。私達は自身の思考を捨て去り、上に立つ者の武器として振るわれる存在であればいい。それがSRT特殊学園の生徒としての本分……そうだろう?」

 

 

 

「さあ月雪小隊長、今こそ決断の刻だ」

 

 

 そう唱える彼女の声色はとても無機質であり、瞳も虚としていてまさしく機械(道具)そのものだった。その言いしれぬ不気味さに、肌に冷や汗が浮かび上がっていくのを実感する。心臓の鼓動も徐々に速まり、いずれその重圧に押し潰されるのも時間の問題であった。

 

 

 

 

「"少し待ってくれないかな"」

 

 

 私にとってとても馴染み深く、心が安らぐその声が聞こえるまでは。

 

 

「ん、侵入者?」

 

「ちょっ、なんでこんな所に……!?」

 

「貴方は……シャーレの先生? しかもそっちの子は――」

 

「……星流ホムラ」

 

 

 予想だにしない人物達の登場に私は無論、FOX小隊の先輩達も驚きや警戒を表に出す。

 

 

「先生、どうしてここが……?」

 

「"ホムラの優れた嗅覚のお陰さ。だから結構スムーズに来られたよ"」

 

「マジ? 耳だけじゃなく鼻も利くとか、なんというかズルだね」

 

 

 その時、モエと先生のやりとりを聞き取ったユキノ先輩の眉がぴくりと動いた。二人にとっては何気なく言ったつもりなのかもしれないけれど、もしかしたら……。そんな懸念を抱く私を他所に先輩は先生の正面まで進み、深々と一礼する。

 

 

「お初お目にかかります、シャーレの先生。我々は元SRT特殊学園所属のFOX小隊。そして私がその小隊長を仕る七度ユキノと申します」

 

「"やっぱり君達がFOX小隊なんだね。会えて嬉しいよ"」

 

「私達をご存知であるのなら細かい説明は不要ですね。こちらも貴方のご活躍は常々伺っております、連邦生徒会長の失踪で混乱続きだったキヴォトスを統率してくださったと。SRT特殊学園の名の下に、心より御礼申し上げます」

 

「"どういたしまして"」

 

「……しかしその連邦生徒会の人間とシャーレの先生とあろうお方が、長々と盗み聞きとは頂けませんね」

 

「"あはは……やっぱりバレちゃってたか"」

 

 

 彼はそう言って苦笑いを浮かべ、悪戯がバレた子供のように自身の頭をさする。

 

 

「待って、その言い方からして随分前から私達の会話を聞いていたって事?」

 

「"うん、皆が食事のために風呂敷を広げた辺りからだね"」

 

「いや、本当に結構前からじゃないか……」

 

 

 自分達の話をほぼ丸々聞かれていたという事実に、オトギ先輩とサキは分かりやすく唖然としていた。

 

 

「今になって飛び出してきた理由もやはり、我々が話していた内容についてでしょう。しかしこれは我らSRT特殊学園内の問題です。先生、貴方は生徒の意思を最も尊重するお方であるとも伺っています。故に過剰な看過は控えていただきたい」

 

「"私もそのつもりだよ。だからこそ唐突に言われてミヤコ達も判断がしづらくなっているみたいだから、皆に考える猶予くらいは与えてあげてほしいな"」

 

 

 彼がそう言うと先輩は目を閉じ、数拍置くように黙り込んだ後、再び口を開く。

 

 

「かしこまりました。流石は噂に名高いシャーレの先生。そんな貴方だからこそ、数多くの生徒達から信頼を受けているのでしょう」

 

 

 

 

「故に私達は、貴方のような大人が大嫌いです」

 

 

 その台詞と共に、ユキノ先輩は先生を睨み付ける。彼女がこれまで明確に見せなかった感情は、侮蔑の表情で初めて現れる形となった。それは皮肉にも、過去の自分が目の前にいるかのようだった。

 

 

「それでは失礼致します。またいつの日かお会いしましょう」

 

 

 彼女はそう言い終え今一度頭を下げる。そうしてFOX小隊の先輩方はテキパキと身支度を整え、私の横を次々と通り過ぎていった。だがユキノ先輩だけは素通りする事なく、私にとある情報を耳打ちする。

 

 

「月雪小隊長、貴官のスマホに一つの座標を転送した。我々と共に歩む覚悟ができたのなら、ここへ来るといい」

 

「私は……私達は……」

 

「君達にも理解できる日がいずれ訪れる。そう信じているぞ」

 

 

 その言葉を最後に今度こそ彼女は去っていった。その際先輩は肩越しにホムラさんのほうに振り向き、先程のような鋭い眼光を放つ。その瞳から温度は全く感じられない。

 

 私が憧れを抱き、SRT特殊学園に入学するきっかけとも言えるFOX小隊。本当なら私も、先輩達との久方ぶりの邂逅に心を躍らせたいのだ。

 だが小隊を解体するかしないか、もう一度物言わぬ道具になるかならないかという唐突に迫られた重大な選択。それは青臭い未熟者の私には即決できる訳がなく、唯一できたのは呆然と立ち尽くす事だけだった。

 

 

 

 

 遠く離れた場所で一部始終を見ていた、四人組の傍観者の存在も知らずに。

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

「うーん、美味しそうな稲荷寿司をあれだけ見せつけられたらお腹が空いてきたなぁ。今日の夕飯が待ち遠しいね♪」

 

「いや、明らかに空気が一変したタイミングでそれ言うか? ただならぬ雰囲気だぞありゃ」

 

 

 RABBIT小隊とFOX小隊が交戦した地点から離れた場所に建つ一基の鉄塔。その腕金部分にずらりと居並び、彼女らの動向を監視する数人の少女が存在していた。

 それはミヤコ達と同じく元SRT特殊学園の人間、BEETLE小隊の面々である。ツキノとセツカの二人が双眼鏡で向こうを観察し、コガネは周囲に不審な物はないか警戒を張り巡らせ、ミナトは音声を拾おうと機材の調整をしている最中だったのだ。

 

 

「ただやっぱ何言ってるかまでは分かんねえな。アタシは読唇術はできないし……なあミナト、まだかかりそうか?」

 

「ああ、さほど強くはないが電磁波を阻害する装置を起動させているみたいでね。抜かりない奴らだ」

 

「まあユキノくんのあの雰囲気から察するに、大方自分達と共に来いとか言ってるんだろうさ。離散しちゃったSRTの人間が一堂に会するに越した事はないけどね」

 

「それとRABBIT小隊の吸収はカヤ室長の意向でもありますからね。ところで隊長、私にもそろそろ見せていただいても……」

 

「ああ、ごめんごめん」

 

 

 平謝りをしながらツキノはコガネに双眼鏡を渡し、細く冷たい金属の足場に腰を下して物静かに天を仰ぎ始める。

 

 

(いやはや、物凄い悪天候だ。出来ることなら土砂災害が起きないよう祈りたいね)

 

 

 

(でもこれだけの大雨が起きていたら、()()()()はきっと――)

 

 

 

 足を前後にばたつかせ、暗い空を見上げながら胸中でそう呟く彼女。段々とその指先に力が籠り、沸々と何か黒いものが込み上げていたその時、視察を続けていたセツカが怪訝な表情を浮かべる。

 

 

「oh? あいつらって確か……」

 

「ん、どうかした?」

 

「一組の男女が突如割り込んできまして。あれはどうやらシャーレの先生と星流ホムラさんですね。ネットニュースで拝見した時と同じ顔です」

 

「マジ? 本物!? 見せて見せて!」

 

「私まだ少ししか見ていないのですが……まあ良いでしょう」

 

 

 先程までの様子とは打って変わり、幼い子供のように好奇心旺盛にはしゃぐツキノ。その姿にコガネもまた母親のように微笑み、更に続いてミナトの表情も恭悦に染まる。

 

 

「おっ、そのリアクションからして何か聞こえた?」

 

「ああ、たった今繋がったところだけど悪くない収穫があったよ。あのホムラってやつ、鼻と耳が非常に利くんだとさ」

 

「ほほう、それはそれは。こんな形で彼女の情報を入手できるとは思わなかったよ」

 

 

 ニヒルな笑みを浮かべるミナトに続き、ツキノもあくどい表情でそれに応える。その光景は時代劇でありがちな越後屋と悪代官のやりとりさながらであった。

 

 

「ん〜、ただ見るのにも飽きてきたな。なあ、アタシにもそのGirls talk聞かせてくんね?」

 

「お伺い立てといてひったくろうとするんじゃないよ! ったく!」

 

 

 そうしていつものように歪み合うセツカ達のやり取りにあははと笑い飛ばし、ツキノは廃墟のほうに向き直り双眼鏡を目に当てる。その刹那――

 

 

「ッッ!?」

 

 

 なんとレンズの奥に映るホムラが、自分達のいる方角をギロリと睨み付けたのだ。途端に心臓を鷲掴みにされたような緊張感が走り、ツキノは咄嗟に手に持っていた物を下げる。

 

 

(まさか僕達の存在に勘づいた!? あそこからはかなり距離があるというのに? ……視線が合わさったわけじゃないけど、大体の位置はバレている可能性は高そうだ)

 

 

 それでも彼女は即座に冷静を取り戻し、今置かれている状況を導き出す。一方でコガネ達はこれといった大きな反応を見せていないため、ホムラがこちらを察知した事を知るのは自分だけだというのも理解した。

 そんな彼女が真っ先に抱いたのは――

 

 

(いいね、ゾクゾクしてきたよ。この先しばらくは退屈しないだろう)

 

 

 なんと畏怖ではなく、新しい玩具を貰えた幼児のような興味だった。それに従うかの如く口角も三日月の如く吊り上がる。

 

 

「しかしどうしましょうか。計画が狂ってしまった以上練り直すべきか、このまま予定通り進めて良いのか……」

 

「いや、ここは出直そう。立て続けに襲撃されちゃあ、いくらミヤコくん達でも酷だろうしね」

 

 

 

(最も、それ以上にあの子がとても魅力的なのさ)

 

 

 コガネの懸念にツキノはそう答える。ミヤコ達への気遣いが全て建前という訳ではないが、本音はRABBIT小隊よりも興味を惹かれる相手を見つけた事によるものだ。

 

 

「ちっ、それならあたいの苦労はなんだったんだい」

 

「まあそうカッカすんなよ。なんだ、それならこのツケはFOX小隊(あいつら)に払って貰うとかどうだ?」

 

「……あんたにしちゃ悪くない話じゃないか。そこのお二人さんの許可次第だけどさ」

 

「私は異議を唱えるつもりはありませんよ。むしろそのほうが素晴らしい粟立ちを得られそうです」

 

「うん、僕もいいと思う! それも含めて再度作戦会議だね!」

 

 

 するとツキノは善は急げと言わんばかりに立ち上り、各々も出発の準備を整える。

 

 

「んじゃ、ひとまず戻りますか。Operation BEETLE,take off」

 

 

 ツキノがそう唱えた瞬間、蒼や金、緑や紫に透き通る各々の翅がばっと広げられ、暗く澱んだ曇天の空にフィルターのように重なる。彼女達はそれを強く羽ばたかせ、やがて広大な大空へと姿を消していくのだった。

 

 

 






鬼畜というほどではないですが、『砂地と虎鮫、私をサンド!』も中々にハード。G1のモンスターが繰り出していい火力じゃないですよあれは……

皆様の脳裏に刻まれているクエストはなんでしょうか。

FOX小隊の中で最推しは?

  • ユキノ
  • ニコ
  • クルミ
  • オトギ
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