日に日に増えてゆく感想、お気に入り登録に手舞足踏する私。
皆様のご厚意に感謝感激雨あられ!……え、古い?
何はともあれ大変励みになっております。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。
「むぐっ、なるほど。ざっくり纒めると、ここは死後の世界などではなく『学園都市キヴォトス』。全国各地の学園に所属する生徒達が周辺地域を治める地で、そこに暮らす人々を主にキヴォトス人と呼ぶ。キヴォトス人の一部は頭の上に『ヘイロー』というものを浮かべており、それによって身体は外の世界の人間より頑丈であると」
「ハイ、大体そうです……。あの姐さん、私らの懐に免じて注文はそろそろ――」
「おっ、このラーメンというのも美味そうだな。そこの店員、こいつも頼めるか?」
「かしこまりました! 魚介だし醤油ラーメンですね、少々お待ちください!」
「「「「……ガッデム」」」」
前にも言った通り、第一に知っておくべきなのはこの世界がどういった場所なのかだ。となればあちこち回って文献を読み漁るよりも、現地に棲む者達に直接情報を聞き出したほうが手っ取り早い。
という訳で先程伸したやつらを叩きおこし、ファミレスという施設で腹を満たしながら、このキヴォトスと呼ばれる世界の話を聞いていた次第だ。ただ飯を食うには金という対価が必要らしいが、そんなもの私が持ち合わせている筈がないためこいつらに払わせている。勝者は私だ、文句など言わせん。
あとついでに衣服というのも見繕ってくれた。「流石にマッパで街を練り歩くのはヤバいです……」と言われたのでな。こいつらが揃って着ているセーラー服やスカートやらを、私の髪色である灰色を基調として着用させてもらっている。なんだか自分自身、意外にも結構気に入っているよ。
それにしてもこのキヴォトスは、前にいた世界よりも遥かに文明が進んでいると窺える。こいつらと戦っていた場所の近辺でも些か発展していたのに、ファミレスまで来る道中に至っては見たこともない巨大な建造物がいくつも聳え立っていたのだから。
他にも丸鳥の力も借りずに走り、いやむしろそれ以上の速度で駆ける自動車という鉄の塊。平べったい箱の表面に人間や風景が映り込んでおり、その光景が目紛しく変化するテレビという珍妙なカラクリもあったな。
街中に存在する物の数々が、目新しい物ばかりで実に面白い。この世界のことをもっと知りたいと、年甲斐もなく好奇心が掻き立てられていくのを実感する。
おっと、いかんな。私としたことがはしたないと、そわついていた気分を抑え込んだ。
「しっかし姐さん、本当になんであんな所で暴れてたんすか? それもマッパで。アタシらが言うのもなんですが、不審者とかいうレベル超えてますよ?」
すると首領だという橙色の髪をした人間、生天目ジェシカに疑問をぶつけられる。さっきまでの喧しさは消え失せ、すっかり及び腰になってしまっている。こちらとしては子分の顔面に拳を捩じ込んだ時、力を極力抑えたとはいえ軽傷で済んでいたのは内心驚いたんだがな。それが頭上の光輪によるものとは思わなんだ。
空撃の試し撃ちにしてやったのも、そいつの丈夫さに鑑みた故の行動だ。四人仲良く二、三時間程度気絶し体の至る所を包帯でぐるぐる巻きにしているが、いずれも五体満足である。
「言っただろう、別に好きでやっていた訳ではない。不慮の事故だよあれは。私自身、なるべく思い出したくもない」
「要するにあまり触れるなって事ですね……。はい、わかりました」
「話が早くて助かるよ」
この小娘達、言葉遣いは少々汚いが意外と素直じゃないか。倒れた仲間の安否を気遣うような素振りも見せていたからな。
キヴォトスは以前の世界とは違って銃を人に向けることは珍しくないらしいが、性根はそこまで捻じ曲がってはいないみたいだ。執っていた戦術もまだまだ甘い部分はあるものの、此奴らの年齢を加味するなら及第点と言える。将来が楽しみだ。
「まぁでも、最初に会ったのが私らだったのは幸いだったんじゃないんですか? もし風紀委員会とかに先に見つけられていたら、今頃どうなっていたことか……」
「確か先程も、風紀委員会とやらの名前を出していたな。そんなに面倒な連中なのか?」
「マジでキヴォトスについてまったく知らないんですね……。いいでしょうお教えします」
此奴らが言うには、風紀委員会とは『ゲヘナ学園』という学園における組織の一つであり、主にゲヘナ周辺の地区の治安を取り締まっているらしい。学園の頭にあたる組織は別に存在しているものの、そちらのグループは揉め事が起きても大して動こうとしないため、周囲には風紀委員会こそが実質的な学園のトップだと見られているのだとか。
「一般兵のやつらもそれなりに強いんですが、それ以上に厄介なのが四人いるんです。幹部の『
「そして……風紀委員長である『
「治安維持組織の長ともなれば相応の実力は求められるのだろうが、やけに含みを持たせるんだな。余程の事なんだろう」
そう相槌を打ちながらソファの背もたれに肩を預けると、ジェシカの手下達も次々に口を開き始める。
「ええ、一言で表すなら怪物。はっきり言って風紀委員会自体、奴の存在ありきで成り立っていると言っても過言じゃありません」
「アイツがいるからこそ、他の学園よりずっと治安の悪いゲヘナでも、なんとかギリギリ秩序を保てている状態なんです。それほどまでに圧倒的な人間なんですよ、あの女は」
「ゲヘナはおろか、キヴォトス全体で比較してもトップ層にいるような実力者です。サシでヤツに勝てる人間なんてそうはいませんよ」
「なるほどな……」
ジェシカの言葉を付け足すように、ヒナという女の恐ろしさを悶々と語る三人。実質一人の生徒による絶対王政、素行の悪い連中ですら皆そいつに恐れ慄くような存在か。一体どれほどの猛者なのだろう。
話を聞けば聞くほど、己の闘争本能が刺激されていくのを感じられる。正直こいつらとの戦いは物足りず、不完全燃焼もいいところだった。どうにかして鎮めたい。
ならばやることは一つだ。
「ああもう! アイツらのことを話していたらムカついてきた! くそっ、いつか絶対見返してやるからな!」
「でもリーダー、そんないい方法あるんですか? 他はともかく風紀委員長だけはどうしようもないですよ……」
「いや、それは……そうだけどさぁ」
「ふん。どうやらお前達、其奴らのせいで散々な目にあっているようだな」
「え? まぁ、はい。それが一体?」
施しを受けっぱなしというのも古龍のプライドが許さん。先の戦いで超高速での飛び方も熟知したため、あのような失敗は二度と起さんと誓える。これといった大きな問題は無いだろう。
「面白そうだ。今回限りだが手を貸してやる」
「よーし! だいぶ片付いてきたし、このまま何事もなく終われそうだね」
「ナルミってば張り切ってるね〜。熱心な同僚ができて、こっちも心強いよ」
「今の私じゃ皆についていくだけで精一杯だからね、早く追いつくためにも人一倍頑張るつもりなんだ。それじゃ、先に行ってくるね!」
「若いなぁ……。私も負けてらんないや」
私こと『
所詮自分はちっぽけな存在。この世界に無数に存在する脇役の一人に過ぎないと、改めて認識させられてしまったのだ。
しかし彼女達は違った。何もかもが未知数の敵に対して全く臆することなく、全力で立ち向かっていった。そうやって全員が手を取り合ったことにより、あんな前代未聞の事変をも乗り切ってみせたのだ。
そんな彼女達の勇姿に心を打たれ、私はただ無力だった自分を変えたいと決心し、風紀委員会の一員となった。暇があればひたすら鍛錬に勤しみ、先輩方や友人達も訓練に快く付き合ってくれたことで実力が認められ、今日やっと初陣に赴くことを許可された。
最初の任務として割り当てられたのは、とあるスラム街一帯を縄張りにしているバリバリヘルメット団の弾圧。彼女達による被害にあった生徒は数知れず、なんなら私もその中の一人だった。
風紀委員会という存在がなければ泣き寝入り状態だっただろうけど、今となっては全く怖くない。現にこうしてほとんどの団員は制圧でき、残っているのは目の前の黒ヘルメットだけだ。積年の恨みの雪辱も兼ねて、きっちりお灸を据えてあげようか。
「ちくしょう! こうなったら!」
すると何やら意味ありげな捨て台詞を吐いたヘルメット団員は私達に背を向け、とある一つの戦車へと走っていく。恐らくそれに乗って逃亡を図る気だろうけど、させる訳がない。
「っ、逃がさないよ!」
そうして戦車までたどり着いた彼女は車上に飛び乗り、内部へと通ずるハッチを開く。エンジンをかける前になんとしてでも破壊しないと!
だけどあの人のとった行動は、そんなものじゃなかった。
「お願いします姐さん! 出てきてくれませんか!?」
『ぅん……。なんだ、もう出番か?』
彼女の真の目的は、内部にいる誰かに助けを求めることだった。それに応えるように、戦車の中から誰かのくぐもった声が聞こえてくる。
「まったく、世話の焼ける連中だ」
ため息混じりの言葉と共に車長席から外へと上がってきたのは、灰色のセーラー服を着た少女。服と同じようにグレーの髪をした彼女には巨大な翼と尻尾が備わっていて、まるでアニメや漫画でよく見る竜人といったような印象を持たせる。
ただ少し奇妙なのが、ヘルメット団と行動を共にしているというのに何故か彼女はヘルメットを被っておらず素顔のままだ。
というかそもそも、あんな子前までいたっけ?
「すっ、すみません姐さん。何だかあいつらいつも以上にやる気で、アタシらじゃ手に負えませんでした……」
「そうか、まあ良い。さて……そこの
なっ、目的はヒナ委員長!?
「い、委員長に何の用なの!?」
「そやつはかなりの強者なのだろう? だから少しばかり興味が湧いてな、簡潔に言えば喧嘩を売りに来たのだ」
「だが烏合の衆に用はない。わかったなら早急に空崎ヒナを連れて来い、さすれば貴様らだけは見逃してやる」
……言ってくれるね。ヒナ委員長を潰そうとする身の程知らずな上、私達の事は一切眼中に無いだなんて。
「私達を舐めてるつもり!?」
「あの人だけが風紀委員会だと思わないことね」
「その減らず口を黙らせてやる!」
無論そんな事を思っていたのは自分だけではなかったようで、部隊の皆が彼女に対し様々な台詞で捲し立てる。
「貴方なんて委員長が出るまでもない!」
かく言う私も風紀委員会の一人、皆に続けてありったけの言葉をぶつける。だが大勢の人間からの怒号を受けても彼女は不適な笑みを崩さず、こう続けた。
「ほう。小娘の形をしてはいるが、内に秘める魂は一回りほど大きいと見える。いい気迫だ」
「勇敢なるお前達に敬意を表し、良いことを教えてやろう。私に向かってそういった生意気な目付きをした人間は――
皆、早死にしていったよ」
『ッッッ……!?!?』
その言葉が吐かれたと同時、常軌を逸した重圧が私達の肩にのしかかった! このぺしゃんこにされるかのような威圧感、間違いないっ……!
彼女は……このキヴォトスにおいて最強格と称されるヒナ委員長と同等クラスだ!!
それを理解した途端、私の本能が警鐘を鳴らした。「今すぐ逃げろ」と。自身でもそうしたい気持ちは山々なのに、両足が悴んでしまっていて満足に動かす事が出来ない。
どうする、どうすればいい!?
「怯むなッ!」
威圧感だけでグロッキーだった私を正気に戻したのは、先程まで私と一緒にヘルメット団を撃退していた友人。同学年ではあるが彼女はこの部隊の隊長を任せられており、その実力はイオリ先輩のお墨付きだ。
しかし目の前のあの子からすれば、高々その程度でしかないのだろう。委員長とイオリ先輩の間でさえ途方もない力の差があるのに、先輩から多少評価されるようなくらいでは彼女に勝てる筈もない。実際喝を入れた本人でも、微かにその肉体が震えているのだから。
それでもなお、彼女は自身の身体に鞭を打って私達に発破をかけているのだ。
「私達では敵わない事は重々理解している! だが我々は風紀委員会、退くことは許されない!」
「だがそれは決して、義務だとか自棄だとかではない! たとえ相手が何者であろうと、己の正義という信念を貫き通す!! だからこそ我らはここにいる、違うかッ!?」
……そうだ、危うく忘れてしまうところだった。今の私は、ただ守られるだけの無力なあの頃の自分じゃない。キヴォトスの未来の為、仲間と切磋琢磨し続ける石黒ナルミなんだ!
隊長の激励で各々が気を引き締め、戦車の上から見下ろす少女へ向き直る。
「隊長! たった今無線でイオリ先輩に繋いだところ、すぐに駆けつけるとのことです!」
隊員の一人がそう彼女に報告を上げ、その後に私達が頭に浮かべた事は全員同じだった。
「それじゃあ私達がやるべきことは……」
「先輩の部隊がここに来るまで、可能な限り消耗させておく……かな?」
玉砕覚悟の特攻。いいや覚悟どころか確実にそうなるだろうけど、今の自分達に迷いはなかった。
「そうだ、我らを雑草と侮るようなエリートさんに見せつけてやれ! 雑草なりの執念というものを!!」
『はい!!』
お通夜ムードから一転。気勢が劇的に高まった私達に対し、少女は驚いたように目を少しだけ見開く。そして――
「……嫌いじゃないよ、お前達」
なんて呟いた彼女の笑みは、今までの高を括ったしたり顔とは違い、どこか朗らかな表情であった。
初陣でヤベーやつの相手をしなきゃならないなんて、ナルミちゃんも不憫よのぉ……。
ドンマイ!いい事あるよ!
ここから先はまったくの余談になりますが、でん◯らす◯ーさんの作者として有名なS先生が以前Twitterにて、「シーンの一つ一つはみんな簡単に想像できるけど、それらを繋げるのが凄く大変」とおっしゃっていました。
ええはい、身に染みて体感しております…。ここ最近ずっと頭が痛いでござりまする。ただでさえ文才のない私でも原作という名の土台があるからまだ頑張れますが、その土台も一から作り出す原作者の皆様って本当に偉大だと思います。
すべてのクリエイターの皆様へ感謝を。
おまけ回的な物は?
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(いら)ないです。
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かくべき、やくめでしょ
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ん。作者に任せる。