透き通る世界を照らす赫き星   作:お茶犬大家族

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初の三人称視点に挑戦、上手く伝わってくだされば幸いです。




白銀に誘われて

 

 

「恐らくこれが、例の音の正体と捉えても良さそうね」

 

『はい。念のため周辺を見て回らせましたが、それに繋がるようなものは他に無いとのことでした。この有り様を見る限り、ほぼ間違いないかと』

 

「そう、分かった。ひとまず本部に戻って資料の作成と尋問ね。アコ、委員会の皆に撤収するよう通達してくれるかしら。暴れ回っているというヘルメット団の制圧も、今ならもう終わっている頃でしょうし」

 

『かしこまりました、ただちに』

 

 

 キヴォトス中を震撼させたあの大事件から数週間が経ち、このゲヘナも少しずつ以前のような平穏な日常を取り戻している。

 いや……美食研究会や温泉開発部の所業をはじめ、多くの不良生徒たちの問題行動を日常と呼ぶのは少しおかしい気はするけれど……。それでも手早く片付けられる分、あの時ほど気を張る必要は無くなったとは言える。

 

 ここ暫くはそんな変わらない日々を過ごしていたのだが、今朝方一人の生徒から「スラム街から尋常ではない閃光と爆発音がした」という報告が上がった。またカスミかハルナ達の仕業ではないのかと思ったけれど、アコ曰く今は両者とも部員らと一緒に牢屋で反省中だというので違うみたい。

 彼女達でなければ一体誰なのか? もしかすると、何かとんでもない事が起きるかもしれない。そんな懸念が脳裏を過ったが、素行の宜しくない生徒はこのゲヘナには多く在籍している。それ故単なる杞憂かもしれないと、若干のきな臭さを感じながらも優先度の高い業務を先に進める事にした。

 数時間それを続けていると、その合間に「ゲヘナ上空で長く尾を引いた紅い彗星を見た」という情報が度々寄せられた。彗星……それこそが、今朝に聞いた証言の真相かもしれない。スラム街といえば、あの付近は確かバリバリヘルメット団が根城にしている筈。何かしら知っている可能性はあるだろう。

 そう考えついた矢先、連中がいつもの如く暴れて回っているという通達を受けたため、音の正体の調査も兼ねて風紀委員会の皆に鎮圧に向かわせていたのだ。

 

 そうして私は今、騒動の発端であろうこの場所まで来ている。現場には焼き爛れた地面に、直径12m深さ3mの巨大なクレーター。衝撃の際に発生しただろう爆風により、周囲の建物は完全に崩壊しているか、あるいはなんとか形を保っているかのどちらかという凄惨な光景だった。

 ただこの周辺地域が過疎化の一途を辿るゴーストタウンであったのは、不幸中の幸いと言える。もしこれが都心部で起きていたなら、より甚大な被害を与えていたでしょうね。

 しかしこの惨状を引き起こした隕石と思わしき肝心の物体は、影も形も無かった。隕石というのはとても高価で取引される代物。やはり売買目的で、ヘルメット団に先に回収されてしまったのかもしれない。皆を出動させたのは正解だったかしら。

 

 

「はぁ、おちおち昼食もとっていられないわ」

 

 

 時刻は既に13時を過ぎているが、この後もやらなければいけない仕事が山ほどあるためゆったりと食事なんてできやしない。

 今に始まったことではないけれど、こうも毎度立て続けにされると流石に堪える。

 

 

「できるだけ厄介な案件にならないといいわね、アコ」

 

 

 なんて願望を吐露しながらアコのいるほうへと振り返る。だがドローンから照射されているホログラム状の彼女は、何かとても慌てふためいた様子をしていた。彼女らしくないそんな違和感から「一体どうしたの?」と、声を掛けようとしたその時。

 

 

 

『なんですって……劣勢なのはこちら側!?』

 

『ヤバいぞアコちゃん! バリバリヘルメット団の奴ら、知らない内にとんでもない用心棒を雇ってやがった!!』

 

『たった一人で隊員はほぼ倒され、残っている人間は私達を含めて十数人です! 至急応援を要請します!!』

 

 

 アコの持っている通信機越しに、イオリとチナツの切羽詰まった声が聞こえてきた。二人を含めた風紀委員会が、たった一人に……? そう驚愕していると、今度は私がつけている無線機からも風紀委員達の決死の訴えが次々に届く。

 

 

『助けてください委員長! このままじゃ私達……ひいっ!? こっちに来ないでぇぇぇ!!』

 

『こんな奴にいいようにされたままではいられません! 一刻も……ぐぁっ!?』

 

『うぐぅっ!?』

 

『ああ゛っっ!?』

 

『あんな事が起きたばかりなのに……なんでっ!』

 

『無駄口を叩くな! 狼狽える暇があるなら銃を構えろ!』

 

 

 これは……悠長に構えている暇じゃない!

 

 

「ッ、アコ! 皆は今どこにっ!?」

 

『は、はい! 委員長が今いらっしゃる場所から……出ました! 7時の方向へ3kmの地点です!!』

 

「了解」

 

 

 情報を受け取ると同時に大地を蹴り抜き、座標まで一気に街中を駆ける。

 用心棒……まさか以前手を結んだという災厄の狐、もしくは錠前サオリ?

 

 いや、それは無いでしょうね。あの二人が前に与したのはまた別のヘルメット団。第一、風紀委員会と交戦することで大きなメリットがあるとは思えず、その上で一介の不良集団と再び連むとは考えにくい。

 

 

「いずれにせよ、ちょっとやそっとで解決できることはないわね……」

 

 

 たかがヘルメット団と侮り、数隊だけを動かしたのは迂闊だった。だけど恐らくアコも同じ事を考えているはず、すぐにでも他の部隊を動かしてくれるでしょう。

 私がすべきことは一刻も早く合流し、被害を最小限に抑えること!

 

 

「お願い皆、無事でいて……!」

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 ヒナが応援要請を受けて走り出したのと同時刻。銀鏡イオリと火宮チナツ率いるゲヘナ風紀委員会は、圧倒的に優勢だった戦況をたった一人の人間にひっくり返され窮地に陥っている最中であった。

 戦闘の余波によって生活道路の周囲にあった町は消し飛ばされ、更地も同然の状態となっていた。

 

 

「みんなは下がってろ!」

 

 

 彼女達の中でも抜きん出た実力を持つイオリでさえ、先程から幾度となく一蹴されてしまっている。しかし彼女はそれに一切臆しておらず、これ以上犠牲を増やさせないため愛銃を手に用心棒の女へ再び接近。速射を交えながら距離を詰めるが、弾は全て鉄壁のような翼で防がれてしまう。

 

 

「銀髪の、やはり貴様は他の者達とは一味違うようだ」

 

「それって褒めてるんだよ、なっ!」

 

 

 それでも至近距離まで近づいたイオリは即座にライフルを180度ひっくり返すと、少女の頭部目掛けてバッターの如くフルスイング。

 

 

「ああ、もちろんだ」

 

 

 しかし少女は背中をひょいと反らし、それを当たり前のように躱してみせる。そして振り終わりの隙を狙いイオリの懐へ入り込むと、彼女の足を思い切り踏みつけた。

 足の甲にのしかかった鈍痛にイオリは堪らず苦痛の声を上げ――

 

 

「その歳で大したものだよ、本当に」

 

「がぁっっ!?」

 

 

 続けてガラ空きとなっていた胴体に、痛烈な右フックを捻じ込まれる。その威力によって彼女は大きく吹き飛ばされ、直線上にあったブロック塀に衝突。ブロック塀は粉々に崩れ落ち、巻き上がった白塵によってイオリの影は煙の中へと溶けていく。だが少女は目線を変えることなく、じっと白煙のほうを見続けていた。

 

 

(だからできるだけ、この程度で倒れて欲しくはないのだが……ん?)

 

 

 そう独りごちた刹那、煙の奥から凶弾が放たれる。首を横に倒して避けたと同時、イオリが白煙を裂いて俊速に肉薄した。だがそんな急速な接近さえ少女の目は難なく捉えており、迎え撃つように握り拳を突き出した。

 

 だがイオリは直前で大きく身体を反らし、彼女の剛腕を胸先すれすれで躱す。そこから地面に手を付き逆立ちの体勢になると――

 

 

「お前も一発ぐらい喰らっとけッ!!」

 

 

 体を大きく捻り、相手の左側頭部に向けて渾身の回し蹴りを放った。直後、けたたましい音が周囲に鳴り響く。

 

 

「今のは肝が冷えた」

 

(っ!! この体勢はまず……)

 

 

 だがそれは、彼女の右手によりがっしりと受け止められたがために発せられたものだった。

 イオリは即座に体勢を戻そうとしたが、少女はそれよりも早くもう片方の手でイオリの足を掴む。そして彼女をハンマー投げよろしく振り回し、風紀委員会が所持する戦車に向かって投擲。凄まじい速度で迫ってくるイオリに、戦車の近くにいた風紀委員会の面々は蜘蛛の子を散らすかの如く避け、本人はその頑強な車体に背中から大激突した。

 

 

「がぁ……っ゛!」

 

(さっきから……人を簡単に飛ばしやがって……!)

 

 

 大地に肘を付き、激しく咳をしながら顔を伏せるイオリ。そんな彼女を見下ろしながら少女はゆったりと歩み始める。

 

 

「銃の腕前は申し分無い、体術も目を見張る物がある。きっとこの世界でも上澄みと言っていい程だろう」

 

 

 

 

 

「だが……長年大自然を生き抜いてきた私からすれば、貴様程度の人間は珍しくないんだよ」

 

 

 

 

 

「舐めん……なっ! 私はまだまだこんなもんじゃないよ!」

 

 

 イオリはライフルを杖代りにしてゆらゆらと立ち上がり、猛獣とも言える目つきで怨敵を射抜く。そんな並々ならぬ眼光を受けても、肝心の相手は怯むどころか悠々と口角を上げた。

 

 

「そうでなくては……っ!? ちぃ!」

 

「これ以上貴方の好きにはさせませんよ!」

 

 

 ふらつくイオリに再度迫ろうとした少女を狙い、これ以上戦友を傷つけさせまいと拳銃を発砲したチナツ。しかしその行為は、彼女にとってあまりにも無謀過ぎた。

 

 

「彼方まで吹き飛ぶがいい」

 

「ぐぅっ……!?」

 

 

 少女は銃弾を躱すと即座に標的をチナツに切り替え、龍気を利用した超高速のショルダータックルで彼女を轢く。まともに反応することもできず、その突進を諸に喰らってしまったチナツは天高くかち上げられ、身体を激しくスピンさせながら地面に落下した。

 

 

「お前っ! いい加減にしっ゛……!?」

 

 

 戦友を撥ね飛ばされたイオリはすぐさま飛びかかろうとしたが、上手く力が入らず再び崩れ落ちる。先程から度々披露されているジェット機のようなこの芸当。それを初めて目の当たりにした風紀委員達は、あの女は果たして本当に人間なのかと戦慄する他なかった。

 

 

「チナツといったか。貴様は期待ほどではなかったな」

 

(……っ゛! そんなこと、私が一番よく分かってるんですよ!)

 

 

 力無く倒れるチナツの背に、少女は幻滅の言葉を投げかける。二人が言うように、お世辞にもチナツの戦闘力は高いとは言えないのだが、それは無理もない話だろう。彼女は本来後方支援に長けている生徒であるため、実力としては一般の風紀委員と大して変わらないのだ。

 興味を無くした少女がチナツから目を逸らすと、今度は大勢の生徒達を見渡す。

 

 

「さて、上官二人は満身創痍だがお前達はどうするんだ?」

 

 

(ど、どうするって言われても……)

 

(イオリ先輩を軽くあしらう相手に、私達が何をできるっていうのよ……)

 

 

 

「……立ち向かうなら立ち向かう、逃げたいなら逃げるとはっきりしろ。優柔不断に突っ立っているのが最も目障りだ」

 

 

 生まれたての子鹿さながらに足を震わせる一同の様子に少女は溜め息を吐き、目の前の有象無象を殲滅するべく踏み出そうとした。その時――

 

 

(うん? こちらに近づく桁違いの闘気……。はっ、待ちくたびれたぞ)

 

「喜ぶといいお前達。親玉のご登場みたいだぞ」

 

 

 この戦場まで向かってくる何者かの強大な気配を感じ取って足を止めると、不遜な笑みを浮かべて目の前の集団に呼びかける。

 いきなりどうした、と風紀委員会の者達が頭に疑問符を浮かべた次の瞬間。

 

 

 

「どうやらあなたが、例の用心棒みたいね」

 

 

 

その声に釣られるように、全員がそちらに目線を送る。するとそこには瓦礫の山頂に足をかけ、鬼神の如き怒気を放ちながら少女を見下ろす空崎ヒナの姿があった。

 

 

『いっ……委員長っっ!!』

 

 

 自分達のリーダーであり、学園最強の生徒である彼女が現れたことで士気は瞬く間に最高潮に達し、風紀委員達の気色は希望に満ちたものへと様変わりする。

 

 

「遅れてしまってごめんなさい貴方達。けどもう大丈夫よ」

 

 

 

「彼女は、私が討ち倒してみせるから」

 

 

 

 瓦礫の山から飛び降り、そう告げるヒナ。そんな彼女の言葉には並々ならぬ存在感があった。

 

 

「へへっ、悪いな委員長。こちらとしても精一杯やったんだけど、ちょっとばかし荷が重たかったわ……」

 

「何を言っているの。貴方も含め、全員よく持ち堪えてくれた。誰にも恥だなんて言わせないわ」

 

 

 風紀委員の一人に肩を借りながら起き上がり、乾いた笑いをするイオリ。それに対してヒナは聖母のような微笑みを返し、全員の労をねぎらう。

 次に用心棒の女に視線を戻すと――

 

 

(相対しただけで理解できる。彼女、相当の手慣れね。皆が圧倒されるのも納得がいくわ)

 

 

 眼前の少女が放つ覇気を感じ取り、このような事態に陥った要因を瞬時に察知する。それを踏まえてヒナが下した決断は、イオリ達にとって予想外なものだった。

 

 

「イオリ、チナツ。あなた達は今すぐ委員会の皆と撤退しなさい。鎮圧させたヘルメット団員も連れてね」

 

「なっ!? 何を言ってんだ委員長!!」

 

「そうです! 彼女を制圧するには今しか!」

 

「……貴方達を劣勢に追いやったという彼女の実力、私も肌で感じ取れたわ。彼女は途方もなく強いと」

 

 

 二人の狼狽した声にもヒナは淡々と返し、言葉を紡ぐ。

 

 

「確かに本来なら総員で彼女の捕縛にあたるべきでしょうけど、今の状況ではそうはいかない。よく考えてみなさい、私達がこのまま戦闘に移ったらどうなると思う?」

 

 

「意識を失っている皆を、乱戦の中に巻き込んでしまう恐れがあるのよ。それにあの顔色からして、まったく本気を出していないでしょうね」

 

 

 辺りに散らばって倒れている人間達の安否を最優先、彼女の真意はそれだった。

 また自身の実力をそれなりに自負していたつもりのイオリだったが、彼女に本気を出させることもできなかったという事実を再度突きつけられ、顔を歪め歯を食いしばる。

 

 

「計り知れない彼女の全力からあの子達を庇いながら戦うなんて、とてもじゃないけど手に負えない。だからこれは命令じゃない、お願いなの」

 

「しかし……彼女がそれを許してくれるはずが――「別に構わん、逃がしたいならそうするといい」なっ!?」

 

 

 先程から黙っていた少女が再び口を開いたかと思えば、同調するように撤退を催促したことに驚嘆の声を上げるチナツ。

 

 

「なるべく加減はしたつもりだが、実際どうかは分からんからな。早く連れていってやれ」

 

「だそうよ。二人とも、頼んだわ」

 

「……分かった。皆、一時撤退だ!!」

 

 

 指令を受け入れたイオリは半ば不本意ながらも風紀委員会の面々に撤退を促し、意識がある物達は倒れた仲間やヘルメット団員を背負い、次々と去っていく。

 

 

「委員長、私達は必ず戻ってきます。どうかご武運を!」

 

 

 そう言い終えたチナツも小走りで戦車へと乗り込み、姿を消していった。

 

 

「ええ、待ってる」

 

 

 チナツのその言葉に、ヒナは遅れてぼそっと返す。去っていく一同の背中を横目に見ること数秒後、ヒナは件の少女に振り返り問いかける。

 

 

「それにしても……私達が悠長に話している所を襲撃せず、あまつさえ逃すだなんてどういう魂胆なのかしら」

 

「元々の目的は貴様だったのでな、別に奴らに執着する必要はないんだ。それに邪魔者がいないほうが、お互いやりやすいだろう?」

 

「なら最初から私だけを狙えばいいでしょう。あの子達を傷付ける必要はない筈」

 

「私もそのつもりだったんだが、そうは問屋が卸さんと奴らのほうから挑んできたんだよ。仕方のない事だったのだ」

 

 

 

 

「まあ、塵芥(ちりあくた)にしては良くやったほうさ。後でまた労ってやるといい」

 

「……っ」

 

 

 

 仲間を虚仮(こけ)にされたヒナは心の中で怒りを覚えながらも、それを堪える。だが少女の悪舌は止まる所を知らなかった。

 

 

「そう言えば、ヘルメット団(やつら)から聞いたぞ。貴様ら、以前他の領地に踏み込んで街を破壊した事があるらしいな?」

 

「それがどうしたの?」

 

 

 

()()()()()()()。自由と混沌を重んずるゲヘナを体現するような組織じゃないかと。話によれば貴様が自ら頭を下げて手打ちを申し込んだそうだな。部下達は無法者集団、大将は腰抜け。それがゲヘナ風紀委員会、実に愉快な者達じゃないか」

 

 

 

 風紀委員会が過去に行った所業を題材にヒナを煽り立て、嘲笑する少女。ここまですれば奴も怒りを顕にするだろうと、彼女は小さくほくそ笑む。しかし――

 

 

 

「撤回する必要はないわ。高々破落戸(ごろつき)の戯言、気に留める必要もない」

 

「……そうかい」

 

 

 少女の思惑を裏切り、至って冷静沈着に返されたヒナの言葉に彼女も自然と大人しくなるしかなかった。

 

 

「質問を続ける。その上で私を狙った理由は何?」

 

「興味本位さ。この世界で頂点に等しい実力という噂を聞き、そのご尊顔を拝みたかっただけに過ぎない」

 

 

 ヒナの問いに少女は右手を差し伸べるように前に出し、答えを述べる。次に胸元に持ってきた自身の手を見下ろし――

 

 

「何より、今の私が貴様という存在にどれだけ通用するのかを知りたかった。そんなところだ」

 

 

 親指から順に折る仕草をゆっくりとした後、再びヒナに目を向けた。

 

 

「なるほど。じゃあ最後に一つだけ」

 

 

 

 

 

「投降する気は無いのかしら?」

 

 

 

  

 

 その言葉と共に、周囲の空気は一瞬にして凍てつく大地へと激変する。もし返答を間違えようものなら、地獄を見る羽目になるのは容易に想像できる圧力が少女にのしかかった。

 だが――

 

 

「無い。と言ったら?」

 

「……そう、分かったわ」

 

 

 絶対零度とも言えるヒナの威圧を意にも介さず、少女はさも当然かのように否定。

 もはや交渉での解決は不可能。そう理解したヒナのスイッチが起動する。

 

 

 

 

「なら思う存分知ると良い。このゲヘナ風紀委員長空崎ヒナの首、易々とは獲れないわよ」

 

 

「やはりその闘気……素晴らしい。楽しい戦闘になりそうだな」

 

 

 

 

 お互いの言葉が開戦の合図である事を両者共に理解した。だがこの戦いは二人にとって、過去に類を見ないほど熾烈なものとなる。

 




次回、ついに両雄の激突。

結構いい性格をしているバルクさん。こういう高慢ちきな娘が段々と丸くなっていくのが好きなんですよ、私めはぁ……

おまけ回的な物は?

  • (いら)ないです。
  • かくべき、やくめでしょ
  • ん。作者に任せる。
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