仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ディガルム×ハカイブ DARKNESS REBELLION   作:大ちゃんネオ

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正義の味方

 数多の世界で、数多の悪が生まれた。

 それは秘密結社であった。侵略者であった。古代の殺戮者達であった。神の遣いであった。鏡の中に潜むモンスターであった。人類が進化した姿であった。生物の祖であった。自然が魔と化したものであった。閉ざされた未来から来たものであった。魔族の頂点を自負するものであった。数多の世界を手中に収めようとするものであった。

 

「ガイアメモリ……オーメダル……アストロスイッチ……」

 

 白百合のような手が、様々なガジェットが並ぶカウンターの上を撫でていく。

 数多の世界で産み落とされていった、力の数々。

 

「次の悪は……どれがいいかしら……」

 

 真黒い部屋の中に一輪の白百合が佇んでいるようであった。

 ヴァンダル・リーグの幹部、カンナである。

 これまで、仮面ライダーが創作物の世界にガイアメモリを持ち込み流布させたり、仮面ライダームラサメの世界からは冥界の女神ヘルを招き、死者の国を造り上げようとするなど、様々な計画を実行してきた。

 次なる一手はと思案している時、カンナはふとあることを思い出した。

 

「魔人教団のマーダーシリーズ……。ライダーの力というのも、一興……」

 

 表情には表れていないが、内心で不敵な笑みを浮かべるカンナはカウンターに置かれていたとあるガジェットを手に取った。

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、深夜のとある路上。

 一人の男が歩いているところであった。

 突然、全身黒ずくめでフードを目深に被った何者かが立ちはだかった。

 

「な、なんだよ……」

 

 男は困惑するが、すぐに恐怖へと変わった。

 黒ずくめの者の手に、警棒が握られたからだ。

 振り上げられる凶器。一切の躊躇いなく振り下ろされたそれは、男の額を強打した。

 

「お前は、有罪」

 

 低くくぐもった男の声であった。

 倒れた男に対して、何度も何度も警棒を叩きつけた後、黒ずくめの男はポケットから取り出した紙を広げ、男の上へと落とした。

 紙には、男の罪が書かれていた。

 暴行罪、と。

 

「証拠不十分で不起訴? そんな甘っちょろいことをしているから犯罪が起こり続けるんだ……! お前は有罪だ! お前は悪だ! そして俺が……」

「────正義」

 

 いつの間に、そこにいたのか。

 黒ずくめの対極、真白の和装に身を包んだ女・カンナが立っていた。

 見られた。

 こいつもやるか?

 いや、しかし、と黒ずくめの男は葛藤した。

 

「あなたは、正義……」

「なに……?」

 

 カンナは手にしていた黒い懐中時計のようなものに視線を落とし、上部のボタンを押し込んだ。

 すると、無彩色のそれに色がつく。

 紫と黒。そして、怪人のおぞましい顔が描かれた。

 

『DEGARM』

 

 野太くおどろおどろしい音声が響くと、カンナは男の身体にその懐中時計型のアイテム、アナザーウォッチを埋め込んだ。

 

「う、うぁぁぁ!!!!」

 

 苦痛に呻く男の身体が変化していく様をカンナは見つめていた。

 

「この世界に……ライダーが、生まれた……」

 

 生まれ落ちた仮初めの仮面。

 新たなる波乱の幕が開く────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界の日本に存在する町、聖宮市。

 その町の中央部で、怪人・エインと戦う黒の仮面ライダーがいた。

 仮面ライダーディガルム。

 正義を騙る者の悪となりて戦う、この世界の仮面ライダーである。

 

「ニャア! 猫! ネコチャンハミンナ私ノペット!」

「うるせえ!」

「ニャ!?」

 

 炎を纏ったディガルムの拳が、猫の特徴を持ったキャット・エインを殴り飛ばす。

 キャット・エインが地面を転がっている隙にベルトを操作し、必殺技を発動させる。

 

 RYUGA!

 

 RYUGA !FINAL・BREAK!

 

 黒龍ジャアクドラグが出現し、ディガルムはジャアクドラグと共に跳躍。

 ジャアクドラグの放った炎を纏い、キャット・エインに向けて強烈なボレーキックを叩き込む!

 

「ブレイジングクラッシュ! ハアッ!」

「ニャアァァァァ~!!!!!」

 

 キャット・エインは爆発すると、エインになっていた中年女性が地面に倒れる。

 こうして聖宮市の平和は今日も守られたのであった。

 ディガルムは周囲に自身の関係者以外の人影がないことを確認すると変身を解除する。

 黒道士郎。それが、仮面ライダーディガルムの素顔であった。

 ぶっきらぼうな顔のままキャット・エインであった女性を担ぎ上げて安全な場所に移すと、やはりぶっきらぼうに言い放った。

 

「ったく、猫を保護だかなんだか知らないが、猫だって誰かの大事な家族なんだよ。それを拐いやがって……」

「士郎さん!」

 

 士郎の名を呼び、駆け寄る銀髪の修道服姿の少女。白金マリアである。

 士郎はそんなマリアの姿を見て、つい小さく微笑んでしまう。すぐにそんな自分に気付いて微笑みを隠し、仏頂面でマリアと対面した。

 

「マリア、帰るぞ」

「え、はい……」

 

 素っ気ない態度にマリアは少しがっかりした。

 せっかく共に過ごすようになって、少しは距離が縮まったと思っていたからだ。

 すたすたと歩く士郎に追いついて、なんとか会話を繋げる。

 

「士郎さん、お怪我とか……」

「してない」

「そうですか……」

 

 やはり、淡白な態度。

 少しの間だけれど士郎とは濃い時間を過ごしてきたとマリアは思っている。なんなら士郎は命の恩人である。

 そんな人物には、やはり報いたいと思うのが人情だろう。

 宿のない士郎に住まいを提供しているが、それだけでなく、もっと何かをと思わずにはいられない。

 

「そうだ、晩ごはん何がいいですか? 士郎さんの好きなものを作ります!」

「なんでもいい」

 

 むうとマリアの頬が膨れた。

 なんでもいいとは、一番困るというが、まるで自分の料理に興味がないみたいではないかと。

 

「士郎さん、好きな料理とかないんですか?」

「食えればなんでもいい」

「じゃあトカゲの丸焼きとかでもいいんですか!」

 

 立ち止まり、士郎の背中に抗議するようにマリアは言うと、士郎は立ち止まって振り返り、こう言い放った。

 

「食えればな」

 

 憮然と言うと、再び士郎は歩き出す。

 そんな士郎の背を追いかけるマリアであったが、何か、誰かの声が聞こえた気がした。

 

「────けて」

「えっ……?」

 

 謎の声に立ち止まり、マリアは周囲を見渡す。だが、士郎以外の人影は見当たらない。

 怪訝に思ったマリアは再び歩きだすが、突如マリアの背後に銀色のオーロラが現れた。 

 

「ッ! マリアッ!」

「士郎さん!」

 

 謎の気配を察知した士郎がマリアへ目を向けると即座に駆け出す。

 マリアへと手を伸ばす士郎。マリアもまた手を伸ばしたが、二人とも謎のオーロラに飲み込まれてしまった。

 その時、二人の耳には少年とも少女ともつかない声が耳に届いた。

 

「助けて────」

 

 

 

 揺らめくオーロラに導かれた士郎とマリアの目に入ってきたのは、つい今までいた場所とは違う景色であった。

 どこかのオフィス街のような場所で、少し歩いて表通りに出ればスーツ姿のサラリーマンやOLが多く見られた。

 また、すぐ近くにはカメラマンや数人のスタッフ、女性アナウンサーと思われる女性が忙しなく動いていた。

 撮影か中継でも行うようだ。

 

「どういうことだ……? どこだここは」

「士郎さん!」

 

 マリアは電柱の前に立って士郎の名を呼んだ。

 電柱には、東京都千代田区と住所が記されていたのだ。

 

「ど、どういうことなのでしょう……?」

「分からないが……あの光の壁みたいなやつのせいで、聖宮市から東京に来ちまったのか? マジでどうなってやがる」

「……あ! 士郎さん、あれ警視庁じゃないですか! ドラマでよく見るやつですよ!」

 

 士郎はマリアが指差した方を見ると、たしかにテレビでよく見る建物だと思った。それと同時に、マリアから少し距離を取るのであった。

 

「士郎さん?」

「おい、やめろよ……恥ずかしい」

「何がですか」

「その、お上りさんみたいだろ……。あと」

 

 マリアを指差す士郎。マリアは私?と不思議そうな顔を浮かべる。

 

「周り、見ろよ」

 

 言われたとおりに見渡すと、通行人達の視線がマリアに向けられていることに気が付いた。

 

「その格好は目立つ」

「は、はい……」

 

 周囲の視線に気付いたことで襲い掛かってくる羞恥心に俯き、マリアは士郎に身を寄せた。

 少しでも隠れようと思っての行動だった。

 

「お、おい……」

「う、動かないでください……」

「いや、あ、あんまり近寄るなって……」

 

 近付いては離れ、近付いては離れを繰り返す二人。傍から見れば挙動不審。余計に衆目を集めていることに、二人は気が付かなかった。

 とにかくこれでは埒があかないと、士郎はいつも着用している黒のロングコートをマリアに羽織らせた。

 

「これで少しはマシだろ」

「……はい。ありがとうございます、士郎さん」

 

 満面の笑みで感謝を伝えるマリアから目を逸らし、頬をかく士郎。

 そんな二人のすぐ近く。

 警視庁を睨み付ける若い男がいた。

 

「警察……絶対許さねぇ……!」

 

 男は黒いパーカーのポケットに潜ませたナイフを強く握り締め、警察への復讐心に煮え滾っていた。

 そんな負の感情につけこむ、悪がいる。

 男に入り込む二つの霊魂が、男を怪人へと変貌させた。

 

「ぐぁぁぁ!!! 」

 

 豹柄のような毛皮と黄緑色の甲殻が入り乱れた体躯。

 ジャガーとカマキリの顔を斜めに縫い合わせたかのような顔面。

 腕にはカマキリの鎌が、手には鋏を分割したかのような得物を構える。

 突然のことに周囲の人々は悲鳴をあげ逃げ惑う。

 

「叩きKILL!!!」

 

 怪人は刃を乱暴に振り回して斬撃波を放ち、破壊活動を開始する。

 

「あぶねぇ!」

「きゃっ!」

 

 士郎はマリアに覆い被さるようにして屈み、斬撃波を回避する。

 

「ッ! エインか! いや……違う」

 

 普段自分が相手しているエインとは違うものをあの怪人から感じた士郎は疑問を抱いた。

 しかし、それどころではないとドライバーを構えた。

 

「マリア、下がってろ」

「はい!」

 

 マリアが走り去っていくのを横目にしながら、士郎は変身ベルト・ガルムドライバーを下腹部に当てた。

 ベルトが自動的に巻かれ、ガルムドライバーは起動する。

 

 

 ガルムドライバー!

 

 

 士郎は二つの小さな十字架、ライダースピリオを取り出しバックルの両サイドへと突き刺す。

 ライダースピリオにはそれぞれ龍と剣士の紋章が象られていた。

 そして、それぞれのスピリオに対応するダークライダーが骸骨男とでも言うべき姿に変化した士郎の隣に並び立つ。

 黒き龍の騎士・仮面ライダーリュウガ。

 裏切りの闇の剣士・仮面ライダーカリバー。

 二人のダークライダーの力を組み合わせ戦う。それが、仮面ライダーディガルムという戦士である。

 

 

リュウガ! カリバー!

 

 

DARK・REALIZE!

 

 

「変身……!」

 

 

CROOSS FUSION!

 

 

 龍の咆哮と燃え上がる炎の音を響かせ、リュウガとカリバーが士郎へと重なる。

 

 

 暗黒龍を従えし裏切りの剣士!ダークドラゴン!

 

 

 黒色のアンダースーツ。リュウガとカリバーを融合させたかのような仮面とアーマーを纏い、左腕には変幻機ドラゴバイザーなる手甲を備える。

 力強く発光する赤い複眼が怪人を睨み付ける。

 手に宿った黒炎がカードへと変化し、ドラゴバイザーへと挿入させると電子音声が鳴った。

 

 SWORD VENT!

 

 ドラゴバイザーから黒炎が噴き出し黒と紫の剣、黒龍剣ドラゴブレードへと変化。ドラゴブレードを握り締めディガルムは怪人へと向かい駆けていく。ディガルムは雄叫びと共に破壊活動に勤しむ怪人の背を袈裟に斬り込んだ。

 火花が上がり、怪人は前へと倒れそうになるも踏み留まって背後のディガルムを睨み付ける。

 

「邪魔すんじゃねぇ!」

「悪いが邪魔する。俺は悪だからな!」

 

 怪人の鋏とドラゴブレードが斬り結ぶ。

 並大抵のエイン相手にはそう遅れは取らないと自負しているディガルムではあるが、目の前の敵に対しての疑問は尽きない。

 

「お前、エインなのか?」

「知るかぁ!」

 

 鍔迫り合いながらの問答は無駄だった。

 どうにもまともな精神状態ではない。

 

「シャッ!」

「おっと!」

 

 怪人の前腕の鎌が起き上がり、鋏の斬に織り交ぜ鎌の刃がディガルムに迫る。

 間一髪のすれすれで胸部を狙った刃を回避し、バックステップで後退したディガルムは改めて怪人の姿を見つめた。

 鋏の二刀流に加え、両腕の鎌の四刀流。

 対してこちらはドラゴブレード一本。白兵戦では、ディガルムが不利。

 

「斬り刻んでやる……!」

「チッ……」

 

 余裕ぶって歩む怪人を前に、ディガルムは警戒しながらドラゴブレードを構える。

 その時だった。

 ヒーローの登場を告げる、バイクのエンジン音が響き渡った。

 

「なんだ……?」

 

 新手かと警戒するディガルムだが、逃げ惑う市民達の反応は違った。

 

「この音は……!」

「来てくれたんだ!」

 

 恐怖に支配されていた人々に笑顔が取り戻される。

 その様子を眺めていたマリアは不思議そうに周囲を見渡すと、耳を疑う言葉が聞こえてしまった。

 

「ディガルムだ!」

「え────」

 

 深紅のマシンが怪人の頭上を飛び越えた。

 苦もなく着地したマシンは停車し、マシンを駆っていたライダーの赤い複眼が怪人を捉えた。

 長い足がバイクを越えて、ヒーローが立ち上がった。

 

「なんだ、あいつ……」

 

 赤いボディに銀色のアーマー。

 優しげな赤く大きな複眼とそれを覆う鉄仮面。

 額からは勇者の剣とでも言ってしまえそうな剣が生えて、赤いマフラーが風に靡いた。

 彼のライダーの名は────。

 

「仮面ライダーディガルム……。悪を許さぬ、正義の使者! とうっ!」

 

 ディガルム……士郎は事態を飲み込むことが出来なかった。

 奴が、仮面ライダーディガルムだと?

 

「とうっ!」

「ちぃっ! 二人目が来たところで~! がっ!」

 

 赤い炎を纏った拳が怪人の胸部を直撃。

 立て続けに赤いディガルムはパンチ、チョップのラッシュ。そしてふらつく怪人を担ぎ上げ、投げ飛ばした。

 もたつきながらも立ち上がった怪人は赤いディガルムへと鋏の鋒を向ける。怒りで、わなわなと震えながら。

 

「この野郎!!! よくも!」

「悪が私に敵うと思うな!」

「黙れぇ!!!」

 

 怪人は乱暴に鋏を振り回し斬撃波を放ちまくり。

 そんな中、この状況を中継しようとでもしていたのか、テレビ局のスタッフ達がまだ危険域の中にいた。

 

「やべぇ!」

 

 無闇に放った斬撃波がテレビ局の面々に向かって放たれたのを見たディガルムは全力で走り、死を悟る女性アナウンサー達の前に庇い立ってドラゴブレードを振り下ろした。

 斬撃波は斬り捨てられ、女性アナウンサー達は九死に一生を得て、ほっと胸を撫で下ろす。

 

「助かった……」

「おい」

 

 あまりのことに足から力が抜けて座り込んだ若い女性アナウンサーに向かってディガルムはこう言い放った。

 

「危ないから下がってろ」

「は……はい……!」

 

 女性アナウンサー達にそう告げて、ディガルムはドラゴブレードを手に疾走。

 放たれる斬撃波を斬り捨て、赤いディガルムを追い抜きながら、ディガルムはバックルからカリバーのスピリオを抜き取り、ドラゴブレードの鍔にスピリオを挿入する。

 

 SCAN!CALIBUR!

 

 FINAL・BURST!

 

「龍炎十文字斬り!」

 

 紫の炎を纏ったドラゴブレードで怪人を十字に切り裂く。

 防御しようとした怪人の鋏すらも砕いて。

 

「うあああ!!!!」

 

 怪人は断末魔を上げ爆発。

 男の姿に戻ると、男の背から謎の球体二つが逃げるように飛び出ていくのをディガルムは目撃した。

 

「こいつ、やっぱりエインじゃない……」

 

 エインであれば、エインハートが排出し砕け散る。

 なにより、ジャガーとカマキリ。二種類の生物の特性を備えたエインなど聞いたことがない。

 

「どうなってやがる……」

「君がそれを知る必要はない」

 

 赤いディガルムが、ディガルムに向けてそう言い放った。咄嗟に振り向くディガルム。赤いディガルムは既に背後に来ていた。

 そして、ディガルムの仮面を力強く殴りつけた。

 

「がっ!?」

「士郎さん!」

 

 突然のことにマリアは士郎の名を叫んだ。

 士郎はというと、今ので完全に怒りに達した。

 

「何しやがる!」

「本物が偽物を排除する。当然のことだよ」

「なに?」

「名乗ったはずだよ、私は仮面ライダーディガルムだと」

「ふざけたことぬかしてんじゃねぇ!」

 

 ディガルムは怒りに任せ、ドラゴブレードで赤いディガルムに斬りかかる。

 余裕綽々という風に回避する赤いディガルム。だが、ディガルムとて戦いのプロだ。

 あえて回避させ、本命の一撃を叩き込む。

 そこだと一閃、ドラゴブレードを振り抜く……が。

 赤いディガルムの前に現れた棒状の赤い炎がドラゴブレードを阻んだ。

 

「チッ!」

「君が剣を持つなら、私も剣を持つ」

 

 赤いディガルムは炎を掴むと、炎はドラゴブレードに似た赤と銀の剣へと変化し、ドラゴブレードを弾き飛ばすとがら空きとなったディガルムの胴にバツ字を刻んだ。  

 火花を散らし後退するディガルムに、赤いディガルムは剣先を向ける。

 

「ぐあっ!?」

「その程度なのかい? 仮面ライダーディガルムを名乗るには……弱い!」

 

 繰り出される刺突を回避し、ディガルムは別のスピリオを手にしていた。

 リュウガとカリバーのスピリオをバックルから抜き、新たな二本を装填。

 

「クロスアップ!」

 

 未来を駆ける黒き太陽!ソニックアポロ!

 

 ディガルムにダークカブトとダークドライブが重なり、スピードに特化した形態、ソニックアポロへと変身。

 黒いアンダースーツには電のような青いラインが走り、基盤が剥き出しとなっているような赤と黒のアーマー。  

 両手と両足には小さなタイヤが装着され、仮面にはダークカブトを思わせる一本角の姿。が、一瞬にして赤いディガルムの視界から消え去った。

 

「ほう……。ならば」

 

 ディガルムは高速で駆け、青いクリアな刀身のクナイガンナーで赤いディガルムに接近し斬りつける。

 高速で動くディガルムからすれば、赤いディガルムは止まっているも同然。

 攻撃を当てることは容易い、はずだった。

 空を切るクナイガンナー。赤いディガルムは、当然のように避けていた。

 

「君が加速するなら、私も加速する」

「なっ……!?」

 

 ディガルムの仮面に繰り出される掌底。

 顎を打たれ、士郎の意識が一瞬消えかけた。

 

「士郎さん!」

 

 高速で動けるディガルム・ソニックアポロの姿が目に止まったマリアの悲鳴のような声が響く。

 それが、ギリギリで士郎の意識を引き戻した。

 

「お前は……一体なんなんだ!」

「ふっ……仮面ライダーディガルム。私こそが、真。私こそが、正義! ……聞け! この者は私の名を騙り悪を為すものだ! 悪を排除しよう! 私達の手で! 私達の正義で!」

 

 声高らかに周囲の民衆に煽動する赤いディガルム。

 すると、民衆達は何かに取り憑かれたかのように動き出し、ディガルムを取り囲んだ。

 

「なにを……」

「悪は滅びろ!!!」

 

 サラリーマンの一人がそう叫び、ディガルムへと殴りかかる。あまりのことに、ディガルムは動揺した。

 

「やめろ!」

「悪は許されない!」

「死ね!」

「クズが! 消えろ!」

 

 暴動のようであった。

 民衆達はディガルムへ暴言を吐き捨て、暴力を振るう。

 当然、ライダーの姿であれば人の攻撃など大したことではない。

 だが、ライダーの姿ゆえにディガルムは抵抗出来なかった。

 もしも自分が抵抗してしまえば、生身の人間であれば怪我を負わせることは確実。最悪の場合は、相手を死なせてしまうかもしれない。

 

「くっ……」

「待って! やめて! やめてください!」

「マリア!?」 

 

 民衆をかき分け、マリアがディガルムを庇うように立った。

 だが、その目は恐怖からか涙で滲んでいた。

 

「士郎さんは悪なんかじゃありません! 困ってる人を助ける正義のヒーローなんです!」

 

 民衆に強く訴えかけるマリアのことを、赤いディガルムは見つめていた。

 民衆もまた、マリアに注目していたが……。

 

「悪いやつを庇うのか!」

「悪に味方するならこいつも悪だ!」

「そんな……! 皆さん、私の話をどうか聞いてください……!」

「消えろ!」

 

 男の拳がマリアに振り下ろされようとする。

 その時だった。青い斬撃がマリアの眼前で閃いたのだ。

 

「士郎さん……!」

 

 民衆の最前線にいた者達は腰を抜かし、怯えていた。

 ディガルムが、マリアを守ろうとクナイガンナーを振るったのだ。

 

「こ、こいつ……! 俺達のことを殺そうとしたぞぉ!」

「殺されるぞ!」

「こ、殺される前にやっちまえ!」

「正当防衛よ!」

 

 民衆達の感情は今ので完全にピークに達した。

 もう、ディガルムを殺しても構わないと。

 

「士郎さん……!」

「マリア、お前は逃げろ」

「そんな! 士郎さんはどうする気ですか!」

「あの偽物を倒す。こいつらがおかしくなったのはあいつのせいだ。あいつを倒さなきゃ、終わらねえ。だから行け、走れ!」

 

 士郎の本気の言葉にマリアは意を汲んで走り出した。

 マリアは追わせないと立ち塞がったディガルムはクナイガンナーを構えて民衆へ向けて、赤いディガルムへと向けて駆け出した。

 クナイガンナーを大袈裟な大振りで振り回し、民衆達を近付けないようにしながら。

 それでも、正義感に突き動かされる民衆達はクナイガンナーを恐れずにディガルムに取り付いた。

 民衆は傷付けてはならないと、ディガルムがクナイガンナーを振るうのをやめた瞬間を見計らって。

 

「くそぉ!!!」

 

 民衆達のうち何人かはマリアを追いかけていく。

 それを見て、マリアにだけは危害を加えさせまいと民衆を振り払おうとする。

 だが、それより早く赤いディガルムの声が響いた。

 

「皆さん離れてください! とうっ!」

 

 赤いディガルムがジャンプすると同時に火柱が燃え上がる。火柱は炎の龍となって、キックの体勢に入った赤いディガルムを飲み込み、加速。

 ディガルムは咄嗟に腕を構えて防御の構えを取るが、赤いディガルムの必殺の一撃をそんなもので防げるわけがなかった。

 

「烈火ライダーキィック!!!!」

「うあああ!!!!」

 

 赤いディガルムのライダーキックを喰らい、ディガルムは吹き飛ばされた。

 地面を転げ、変身を維持出来ず士郎の姿に戻る。

 それと同時に、マリアの叫びが聞こえた。

 

「士郎さん!!!」

「マリ、ア……!」

 

 マリアは捕らえられ、連行されているところであった。

 マリアを助けようと起き上がるが、ダメージが大きく満足に力が入らない。

 

「士郎さん! 逃げてください!」

「そんな、こと……!」

 

 士郎を捕らえようと、民衆達が迫っていた。

 マリアを助けるか、このまま捕らえられるか。

 苦渋の決断を迫られた士郎。

 

「……くそぉ!!!」

 

 士郎はマリアへと背を向けて走り出した。

 悔しさに声を上げながら。

 そんな士郎の背を、マリアは良かったと安堵の瞳で見つめていた。そして、力強くもあった。

 

「……信じています、士郎さん……」

 

 そう呟くマリアの前に、赤いディガルムが立っていた。

 

「彼女のことは私が預かろう」

 

 そう言うと、男達はマリアを赤いディガルムに引き渡した。赤いディガルムはマリアを連れて歩き、老いた執事が待つ黒塗りの高級車にマリアを乗せた。

 そして、赤いディガルムは執事に言うのだった。

 

「彼女を頼むよ。丁重にもてなしてくれ。彼女は……ディガルムのヒロインだからね」

 

 赤いディガルムは変身を解除する。

 若い、マリアから見ても爽やかな印象を振りまく好青年であった。

 

「かしこまりました。英雄ぼっちゃま」

「ぼっちゃまはよしてくれ。……それじゃあ、また」

 

 マリアにそう告げて、英雄と呼ばれた青年は車のドアを閉めて去っていった。

 動き出す車。

 マリアはある一言が気になっていた。

 

「ディガルムのヒロイン……?」

 

 どういう意味だろうかと悩むも、車窓を流れる景色に士郎のことが気にかかった。

 あの後、無事に逃げられただろうかと……。

 

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