仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ディガルム×ハカイブ DARKNESS REBELLION 作:大ちゃんネオ
「くそ! なんなんだよぉ!!!」
士郎は街中を走りながらそう叫んだ。
指名手配犯扱いされ、そして今……。
「……!」
「なんなんだよあいつは!?」
自分を追いかけてくる黒衣の少女。
それも、かなり足が速い。差がどんどん縮んでいく。
士郎は戦闘で負った傷があるとはいえ、いくらなんでも速すぎる。
万全の状態であっても勝てそうにない。
「待ちなさい……!」
「ぐっ……俺は指名手配犯なんかじゃねぇ!」
叫ぶも虚しく、士郎はあっけなく確保されてしまった。
自分よりも小柄な細身の少女に首根っこを掴まれて。
「離せよ! 俺は!」
「はい、警察が来たら離してあげます。モシモシ、ポリスメン?」
「やめろ!」
「うるさいですね……」
「はっ!? うぁぁぁ!!!!」
喚く士郎は黙らせようと、儚は士郎を頭上で振り回し……最後は有名な剣を構えるカッコいいパースでキメた。
「な、なんなんだよお前は……」
目を回しながら尻餅をついた士郎がそう言っている間に、儚はキセキレジスターを開いていた。
そうして、怪訝な顔を浮かべる。
「……霊魂の所持は認められず、気配もない……。こいつじゃ、ない……?」
「だから、俺は……」
「まあ、霊魂の所持でなくとも普通に指名手配犯なので警察に連絡するのです……。にへへ、一日、一善……!」
「だから違う!」
「賞金いくらかな……」
「金目当てかよ!」
士郎はなんとか弁明を続けた。
逃げても、この女の驚異的な身体能力の前には無意味だと悟っているからだ。
それに、赤いディガルムに操られているわけではないから話が通じるはずとも思ったのだ。
しかし、儚は金に目が眩んでいた。
「お姉ちゃーん!」
「ん……ショータロ、来ちゃったの……?」
自転車で儚を追いかけていた章太郎が追いついた。
この少年ならばきっと話が通じるはずだと士郎は考え、必死に章太郎に話しかけ始める。
「聞いてくれ! 俺は指名手配犯なんかじゃない!」
「でも、指名手配されてたよ? 偽のディガルムなんでしょ?」
「違う! 俺が本物なんだ!」
「偽物はみんなそう言うもの……」
「お前は黙ってろ!」
「ひぃん……」
「俺は、いや俺達は銀色のオーロラみたいなののせいで、気が付いたら東京にいたんだ。そしたらエインでもない怪人が現れて、あいつが……! それで、マリアも……」
章太郎にすがり付き、自分の置かれた状況を士郎は説明した。
普通ならば信じられない話だが、章太郎はここ最近の短い間に普通でないことをたくさん経験してきたのだ。
ましてや、普通ではない儚もいる。
「銀色のオーロラってことは、お兄ちゃんも別の世界から来たの!?」
「別の、世界……?」
「……あのオーロラは、世界と世界を繋ぎ、世界を渡るオーロラです……。あなたは、それに巻き込まれたと……」
士郎は耳を疑った。まさか、東京へ瞬間移動させられただけではなく、別の世界に来てしまっていたなど思ってもみなかった。
「なんで、お前達そんなこと知って……」
「ディケイドでやってたから」
「戦士の墓場の空には、普通にあるものですから……」
ディケイド?
戦士の墓場?
なんのことかはさっぱり分からない士郎である。
「それに、他の世界からいろんな仮面ライダーが来てるんだ! お姉ちゃんも仮面ライダーみたい」
「こいつが? マジかよ」
「どういう意味ですか……」
士郎に抗議する儚であったが、三人の前に真っ赤なバイクが停められた。
ヘルメットを脱ぎ、不敵な笑みを浮かべたのは……浦賀英雄であった。
「指名手配犯を確保していただきありがとうございます。あとは、こちらで対応いたします」
「お前……!」
士郎は声で分かった。
こいつが、赤いディガルムであると。
立ち上がり、変身しようとするが先程の戦闘での負傷で満足に戦えそうになかった。
「くそ……」
「抵抗は無駄です。おとなしくするんだ」
優雅に歩み寄る英雄。だが、英雄の行く手を儚が阻んだ。
「お姉ちゃん!」
「何かな? 悪いけど、指名手配犯の逮捕に忙しいんだ」
「ええ、指名手配犯のことはどうしてくれても構いません。ですが……あなたからは、怪人の霊魂の気配がします。キセキレジスターも反応している……動かぬ証拠です」
真っ直ぐ、力強い視線で儚は英雄を見つめる。
儚がこの世界に来た理由が、目の前にいるのだ。儚が手にしているキセキレジスターは熱を帯び、怪人の霊魂の反応を示している。
「ふふ……ははは! あの女が言っていた墓守というのが君のような女の子とは」
「あの女……?」
「君、名前は?」
「……儚・インフェルニティ・ブツダンブッカ・ソナエモン・ハカイブ」
「なるほど。私は浦賀英雄。私の邪魔をするものには、実力を行使するのみ……変~身!」
『DEGARM』
何かの音声が響くと、英雄は両腕を広げ反時計回りに腕を回していく。
儚は左手に何かを持っていることに気が付くも、その何かは左手が下腹部を通りすぎる時には英雄の手の中にはなかった。
英雄の身体が赤く燃え上がり、変身完了と共に炎が人の形となって左右に分かれていく。
そして、赤いディガルムが姿を現した。
「おい、逃げろ!」
士郎の言葉を、儚は鼻で笑った。
「逃げる? さっき儚が言ったことも忘れたんですか? 儚は、墓守……仮面ライダーです」
そう言い、どこから取り出したのかも分からない真っ黒い金属質のベルトを巻き付けた儚はキセキレジスターを開き、ベルトの右横に提げていた細筆で記し始める。
《ボディ 蜘蛛男》
蜘蛛男と書かれたキセキレジスターがそう言うと、儚が身に纏っていた衣服とローブは消え、黒にオレンジ色のラインが放射状に広がるボディスーツ姿となる。
身体のラインがしっかり浮き出る姿を前に、士郎は視線を逸らした。
《アーマー アナザーアギト》
蜘蛛男の隣の頁に記されたアナザーアギトの文字。儚がキセキレジスターを閉じると、目を瞑り合掌しているように見えた。
そして、目を開くと同時に────。
「変身」
キセキレジスターを墓守ノベルトに填め、屏風のように開く。
すると、儚の両隣には蜘蛛男とアナザーアギトという文字が浮かび上がり、儚の身体は蜘蛛の糸で覆われ、眩い緑光に包まれていく。
《蜘蛛男×アナザーアギト》
《始まりの死 魂の遺志 怪奇強襲!》
《仮面ライダーハカイブ アサルトゴシック》
光が収まると、儚はアーマーと仮面を纏っていた。
暗緑の生体装甲は筋肉のようである。
真っ赤な複眼と翼のような黄金の角。額にはハカイブオーブと呼ばれる宝珠が輝き、その周りを赤い八つの瞳が輝いている。
肩甲骨のあたりから流れるオレンジ色の一対のマフラーが風に乗り、ハカイブは静かに息を吐きながら構えた。
「スゥゥゥ……」
「あれがお姉ちゃんの……!」
「別の世界の、仮面ライダー……」
「誰であろうと正義の前には敵ではない! とうっ!」
炎を纏った拳で、赤いディガルムが殴りかかってくるのをその場からは動かず、上体だけを逸らして回避するハカイブに赤いディガルムは小さく舌打ちをした。
拳の軌道が見えているのかというほど容易く回避され、反撃の一撃が赤いディガルムの胸を殴り飛ばした。
「がっ!?」
「スゥ……」
「……やるな。だが」
赤いディガルムは炎から剣を生成しハカイブへと斬りかかる。
ハカイブは剣戟を回避し、受け止め、確実に反撃の一撃を赤いディガルムへと叩き込む。
渾身のボディブローが決まり、赤いディガルムは肺から酸素がなくなったかのような感覚に陥った。
「カッ……! ぐっ!」
「……!」
後退する赤いディガルムの姿が突然消え、驚く儚。
次の瞬間には、無数の打撃が叩き込まれていた。
これまでの優勢とは打って変わりハカイブは窮地に立たされる。
「加速だ! 逃げろ!」
「お姉ちゃん!」
「無駄だよ」
高速の世界で、勝利を確信した赤いディガルムはトドメの一撃を喰らわせようと剣を構え、ハカイブの背に向かって加速────だが、途端に急停止。
目にも止まらぬ赤いディガルムの姿が、ハカイブ達の前に晒された。
「なに!?」
「なんで急に止まったの?」
「足下を見てみろ」
士郎はいち早く気付いていた。
ハカイブを起点に、巨大な蜘蛛の巣が広げられている。
赤いディガルムはまんまと蜘蛛の巣にかかり、あとは食われるだけの虫のようであった。
そして、ハカイブは赤いディガルムに背を向けたままベルトのキセキレジスターを一度閉ざし、再び展開。
必殺を告げる音声が流れる。
《怪奇強襲! 怪奇強襲! アサルトゴシックブレーク!》
地面に浮かび上がる蜘蛛とアナザーアギトに似た紋章がハカイブの足へと収束していく。ハカイブは振り向きながら回し蹴り。空を蹴るだけと思いきや、右足の先から蜘蛛の巣が放たれ赤いディガルムを更に拘束。
ハカイブは距離を詰め、赤いディガルムの胸部に強力な蹴り、アサルトゴシックキックを打ち込んだ!
「スゥ……たあっ!」
「があぁぁぁ!!!」
爆発し、変身が解除される赤いディガルム。倒れる浦賀英雄から飛び出す、ちょうど手のひらに収まるほどのサイズの物体を見て、章太郎は赤いディガルムの正体に気が付いた。
「あれは……ライドウォッチ!? てことは、あいつはアナザーライダーなんだ!」
「アナザーライダー? なんだよそれ、説明しろ!」
士郎に説明するより先にと章太郎はハカイブに向かって叫んでいた。
「お姉ちゃん! あいつはアナザーライダーなんだ! お姉ちゃんじゃ倒せない!」
「あれが……?」
章太郎と英雄を交互に見つめるハカイブ。すると、英雄は自身の身体から排出されたライドウォッチ……アナザーディガルムウォッチを手にしながら力強く立ち上がった。
「たとえどれだけ強大な悪にも……正義は屈しない! 何度でも立ち上がる!」
芝居がかった台詞回しと叫び。
だがそれが、見る者の心を掴む。
「がんばれー! ディガルム!」
「負けないでー!」
「え……ちょっと、悪いのは、あっち……。儚は、悪い子じゃない……」
「ありがとう、みんな! みんなの想いを背負って……変~身ッ!!!」
『DEGARM』
再び赤いディガルム・アナザーディガルムへと変身する英雄に民衆は歓声を送った。
自分達の正義は負けない。
自分達の正義は不屈だと。
自分達は正義だと。
民衆は、熱狂した。
「くそ……さっきと同じだ……」
「悪は滅びるのが運命だ! とうっ!」
「……うるさいですね」
ハカイブは殴りかかるアナザーディガルムの攻撃を躱し、左手から放った蜘蛛の糸でアナザーディガルムの右腕を縛り付ける。
身動きが制限されたアナザーディガルムをハカイブは殴り飛ばし、後退していくのを蜘蛛の糸を引っ張り近付けながら更に殴る。
戦いはハカイブ優勢だが、民衆の声はますます熱狂していく。
「卑怯だぞ!」
「正々堂々戦え!」
「どうしよう! あんな戦い方じゃどんどん悪役にされるだけだよ!」
「あいつ、おどおどしてるくせにあんな戦い方しやがって……」
「でも、お姉ちゃんじゃ……ハカイブじゃあいつには勝てないんだ! 一旦逃げなきゃ!」
士郎と章太郎がそんな会話をしている一方で、ハカイブの戦いはヒール味を加速させていた。
蜘蛛の糸でアナザーディガルムを拘束し、踏みつけ、蹴り飛ばすなど、普段の行いがこれでもかと出ていた。
そうして、民衆の正義感はピークを迎えた。
「俺達でディガルムを助けるんだ!」
「うおおおおお!!!!!!!」
「ひぃん……!? ひ、人がいっぱい……!」
「お姉ちゃん!」
「おい根暗女! 逃げるぞ!」
「……くう……!」
忌々しげにアナザーディガルムを睨み付け、最後にもう一度蹴り飛ばすとハカイブは民衆達を掻い潜って走り抜け、章太郎と士郎を脇に抱えて全力でジャンプ。
蜘蛛の糸も使い、縦横無尽に都会を駆け抜けて撤退するのだった。
「うあああああ!!!!!!!! 死ぬぅ!!!!!!!!!!!!」
そんな声が、ビルの谷間から聞こえてきたという……。
「大丈夫ですか!?」
「あ、ああなんとか……」
民衆達に助けられた英雄は高そうなスーツについた埃を払いながら笑顔を見せた。
「これまでの敵で一番強い奴です。ですが、皆さんの応援があればきっと倒せます! 共に戦いましょう!」
「おう!!!」
民衆達の心は一つであった。
悪を排除する。
正義である、自分達が。
「浦賀警部!」
警官達が英雄のもとに集まってくる。
浦賀警部と呼ばれたとおり、浦賀英雄は警察官であった。
それも、キャリア組と呼ばれる将来の幹部である。
更に言えば……アナザーディガルムの能力により、警察組織は彼に掌握されてしまっているのだ。
「逃走した奴等をすぐに手配するんだ。検問もだ」
「はっ!」
「さて……カンナが言っていたとおり、最大の障害がいよいよ来たか……。だが、これを排除すれば私が真の仮面ライダーディガルムに……。そして、計画を……」
警官達の背を見送りながら、英雄はそう呟くと不敵に笑い、自身もまたバイクに跨がり走り出すのであった。
喫茶Hamelnでは、千佳達とマスターの権兵衛が儚と章太郎の帰りを待っていた。
「儚ちゃん、遅いね……」
「やっぱりなんかあったんじゃねえか?」
「電話も出ないし……」
「神様仏様どうか章太郎だけでも無事に帰してくださいお願いします~!」
そう唱えながら手を合わせる権兵衛にあゆが噛み付いた。
「儚はどうなってもいいってのかよおっさん!」
「こらあゆやめなさい!」
「章太郎に……章太郎に何かあったら死んだ兄さんと義姉さんに顔向け出来ないんだぁ!」
あゆも流石にそう言われると言い返せない。
行き場をなくした怒りに任せ、深くソファーに座りこんだ。
「テレビは何かやってないの~?」
「そうね……」
千佳がカウンターの上にあったリモコンでテレビをつけると夕方のニュースが始まっていた。
特に指名手配犯に関することで進展があったわけではなさそうだったが、女性アナウンサーのところに新たな原稿が追加され、速報のテロップが流れる。
「速報です。仮面ライダーディガルムの名を騙り、悪事を働き指名手配された男に仲間がいたとして、新たに儚・インフェル……儚・インフェリュ……はきゃ! ……んんっ! 儚・インフェルニティ・ブツダンブッカ・ソナエモン・ハカイブ容疑者が全国指名手配されました」
ニュースを見ていた千佳達は、見事なまでに固まった。
まばたき一つもせずに。
莉緒以外は。
「ねえ、夕飯は何がいいかな? 儚ちゃんの好きなだし巻きは確定なんだけど」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!!」
莉緒の料理ボケによって動くことを思い出した千佳達は改めてニュースと向き合った。
「いやーすごい名前ですね」
「本名なんでしょうか?」
「どうでしょう、ふざけた名前ですからきっと偽名ですよ」
「名前のことはどうでもいいから何か情報! 情報を寄越しなさいよ!」
千佳の願いも虚しく、大した情報は報じられなかった。
検問が行われること程度のことが伝えられ、通常のニュースへと戻ったのだった。
「どうするの~?」
「このまま儚ちゃん捕まったりしたら……」
「ま、まあ儚なら警察程度じゃ相手にならないだろ。怪力だし……」
「とはいえ、問題は山積みよ。あの写真館のあれも壊れたままで私達で直せるわけがないし……」
そこまで言って、千佳はハッと気付いた。
自分も世界を越えて通話出来るアイテムがあるではないかと。
「墓場フォン! どうかお父さん出てくれますように~!」
発信音が響くと、すぐに儚の父、グラン・ノヴァ・インフェルニティは電話に出てくれたようだったが、千佳の耳に轟音と金属音が襲いかかった。
思わず、墓場フォンを遠ざける程度にはうるさかった。
「うるさっ!?」
「……し? 千佳女史か?」
「あっ……! もしもし! 新田千佳ですー!」
あちらの轟音ぶりに負けじと、千佳は声を張った。
「実は色々あって私達まで儚と一緒に別の世界に来てしまって! そしたらあの、世界移動する装置が壊れてしまって! 直したいんですけど、儚が指名手配されてしまって! 頼れるのがグランさんしかいないんですー!」
「そうか……分かった。すぐに向かいたいところだが、現在墓荒らしの一団と戦闘中のため、ここを離れるわけにもいかない。が、すぐにこちらを片付け、そちらに向かう。すまないが、待っていてほしい」
「はい……」
「安心してほしい。絶対にそちらに向かう。信じて待っていてくれ」
「分かりました……!」
グランとの通話を終えると、望がなんとも言えぬ顔で千佳の顔を見つめていた。
「な、なによ……」
「メスの顔してる~」
「はあ!?」
そんな顔していないと主張する千佳だが、望はまるで聞いてはいなかった。
ともかく、頼もしい援軍が来ることは確実となったので、千佳達の不安は多少和らいだのであった。
暗い部屋の中、光源はパソコンのモニターのみ。人並み外れた速さのタイピングでキーボードを打つのは、ドクターハカリ。オフの姿である。
眼鏡をかけ、長い髪はまとめて結い上げ、Tシャツとハーフパンツという出で立ち。
オフであるにも関わらず、仕事の時のようにパソコンに向き合うのには理由があった。
「クロフト部長が取ってきた案件……今時こんなに魂を定期購入しようとするなんて、一体どこの組織? 情報はかなり厳重に守られてる。この私でさえ閲覧出来ないなんて……」
まさか、と思ったが、それならば既にここにはいないだろう。
ファイアウォールの突破も難しく、突破出来たとして、待っているのは地獄だろうか?
地獄だろう。
流石にこれまでのように言い逃れは出来ない。
そう判断し、ドクターハカリはグレイダーのデータベースへの攻撃を取り止め、一切の痕跡を消し去った。
一度背伸びして凝り固まった身体をほぐすと、パソコンに通知があった。
とあるアプリからのもの。
その通知を見て、ドクターハカリは立ち上がるといつの間にか、いつもの白衣姿となっていた。
眼鏡も取り、必要な道具を白衣のポケットにぽいぽいと入れて、ドクターハカリは生活感のとてもある部屋を後にするのであった。
揺れる光が照らす中、純白の乙女カンナと浦賀英雄がいた。
「よもや、本当に来るとは。それも、ディガルムと墓守が同時に」
「問題ないわ……」
カンナはこの事態を予測していた。
数度の仮面ライダーとの衝突により、こちらが事を起こせば必ず仮面ライダーが現れるということを。
この世界を、仮面ライダーのいない世界を守るために。
それは一種のカウンターなのだろう。
世界が、世界そのものが仮面ライダーを呼んでいる。カンナはそう考えていた。
しかし、今回のこの状況は初めてのことでもあり、カンナは興味深く観測している。
「世界が呼んだ仮面ライダーが、悪として認識されている……。この世界のために来たのに、ね……」
「招かれざる客なのだよ、彼等は」
「ええ、そうね……。アナザーライダー……かつて、魔王を擁立すべく生み出されたもの……。でも、あなたは違う……」
「ええ。私こそが、真の仮面ライダーディガルムとなり、この世界唯一の仮面ライダーとなって、正義を為そう。裁きの塔の完全も近い……」
自信に溢れた笑みを浮かべ、英雄は去っていく。
その背を見つめながら、カンナは独り呟いた。
「アナザーライダーは魔王を擁立するためのもの……。ただし、己に都合の良い魔王、だけれど……」
マリアが連れてこられたのは、大きな屋敷であった。
その一室に監禁されていた。
とはいえ、監獄のような部屋ではなく、キングサイズのベッドが置かれ、気品ある内装、家具の置かれた客室である。
旅行か何かで泊まったホテルがこんな部屋なら、マリアもはしゃげるのだが、監禁されている以上、どんな部屋でも監獄と変わらないというもの。
服まで着替えさせられて、純白のシンプルなドレスという出で立ち。
ベッドに腰掛け、士郎が自分に羽織らせた黒のロングコートをじっと見つめていた。
「士郎さん……」
提供された豪華な食事にも手をつけず、ずっとこうしている。
そんなところへ、浦賀英雄が現れた。
「やあ、気分はどうかな」
「……最悪です」
「……ま、今はそうだろうね」
英雄はテーブルの上のグラスに水を注ぎ、一口で飲み干す。
そして、マリアの方を向いた。
「君は仮面ライダーディガルムと共にある女性だ。私の伴侶に相応しい」
「は……?」
予想外の言葉に、マリアはそんな声しか出せなかった。