仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ディガルム×ハカイブ DARKNESS REBELLION   作:大ちゃんネオ

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指名手配犯よどこへゆく?

 逃走した士郎、儚、章太郎は古びた細長いビルの狭い屋上に身を隠していた。

 

「し、死ぬかと思った……」

 

 ハカイブの小脇に抱えられ、絶叫アトラクションも顔負け、某蜘蛛のヒーローさながらの糸を使ったビルからビルへの高速移動に士郎と章太郎は参っていた。

 

「あの程度でへばるなんて……軟弱……」

「へ、変身してたらどうってことなかったからな!」

「どうだか……」

「んだと!?」

「やめてよ二人とも!」

 

 火花を散らす士郎と儚を仲裁するのは、最年少の章太郎であった。

 年下に注意され、流石に士郎と儚も一旦口を閉ざす。

 

「とにかくどうしよう。あいつがアナザーライダーなんて」

「なあ、そのアナザーライダーってのはなんだ?」

 

 士郎の問いに儚が答えた。

 

「読んで字の如く、もう一人の仮面ライダー……。つまりあいつは、もう一人のあなた……」

「もう一人の俺……? なんだよそれ」

「元々は仮面ライダージオウの怪人なんだけど、アナザーライダーが生まれると、そのライダーの歴史は奪われて無かったことになっちゃうんだ」

 

 あまりのことに、士郎は開いた口が塞がらない。

 ライダーの歴史が奪われる?

 言葉の意味が、飲み込めない。

 

「その、歴史がどうとかよく分からねぇけど、俺はここにいるぞ」

「ライダーが生まれた時代でアナザーライダーが誕生すると、アナザーライダーがその時代のライダーに成っちゃうんだけど……」

「でも、今回は違う……。あいつは、この世界で生まれたんでしょう……。だから、違う世界の住人であるお前のライダーとしての力は奪われてはいない……」

 

 アナザーライダーの詳細を説明する章太郎と儚の言葉を分からないなりに真面目に聞いた。

 文字通り、もう一人のディガルムなのだろうと士郎は無理矢理納得する。

 

「お前は見たことあるのか。他のアナザーライダーを」

「お前ではなく儚です。儚も、生きているものは初めて見ました」

「い、生きているもの?」

「はい。死したアナザーライダーであれば、それなりに知識もあります」

「お前、一体……」

 

 士郎の言葉にわざとらしくため息をつくと、儚は胸を張って名乗った。

 

「お前ではなく、儚です。儚・インフェルニティ・ブツダンブッカ・ソナエモン・ハカイブ。戦士の墓場の墓守、仮面ライダーハカイブです」

 

 士郎と章太郎は思った。

 

 名前、なっが。

 

 正直それしか記憶に残らないレベルであるが、章太郎は気になったことを訊ねた。

 

「せ、戦士の墓場って?」

「戦いの果てに死した戦士達が眠る世界……。仮面ライダーも怪人も関係なく、眠れる魂を守るのが儚、墓守の使命です」

「だから蜘蛛男とアナザーアギトなんだ……」

 

 どちらも死した者。

 ハカイブというライダーがそういった命を落とした戦士の力を使い、戦う仮面ライダーということを章太郎は悟った。

 

「で、その墓守だかがなんでこんなとこにいるんだ」

「使命のためです」

「使命?」

「この世界に、墓荒らしが盗んだ怪人の魂が持ち込まれたようです。儚は魂の奪還のために来ました」

 

 儚は自分の使命を告げる。

 

「あいつと会話した時、怪人の魂の気配を感じました。恐らく、あいつは墓荒らしから怪人の魂を買い付けたのでしょう……」

「……もしかして、ずっとアナザーディガルムが倒してた怪人って!」

「怪人の魂を利用して生み出した魂融合怪人です」

「俺がさっき戦ったやつか。エインとは違うと思ってたが……」

 

 アナザーディガルムと戦う前に倒した怪人のことを士郎は思い出していた。

 二種類の生物を組み合わせたような姿で、あれは別々の怪人が融合したものだったのかと一人納得する。

 

「どうせ俺に合わせるなら怪人もエインにすりゃいいのに」

「エインは倒せばエインハートが壊れてしまうから……。怪人の魂を使った魂融合怪人なら、墓守以外が倒せば戦士の墓場には戻らず、再利用出来る……」

「ケチりやがって。……てか、エインも知ってるのかよお前」

「お前ではなく、儚です。墓守なら、大体の怪人について知識はあります」

「儚姉ちゃん、怪人博士なんだ! すげー!」

「いやぁ、それほどでも、ありますけど……にへへ……」

 

 締まりのない顔で照れる儚を見て士郎は悟った。

 こいつ、褒めたらすごい調子に乗るタイプだと。

 

「それにしても、これからどうする」

「どうするも何も。さっきも言ったとおり、儚は使命がありますので。怪我人は治療に専念してください」

「でも、アナザーディガルムを倒すには士郎兄ちゃんの力が必要だよ」

「こんなの怪我の内にも入んねぇよ。俺は心配いらねぇ」

 

 そう言う士郎の目の前に、徐に儚が立つ。

 士郎の顔をフードの中から見上げる。この時、はじめて士郎は儚の顔をしっかりと目にした。

 少し長めの銀の前髪がかかった、長い睫毛に大きな銀色の瞳。仄かに香る甘い女性らしい匂いに思わずドキッとした士郎は儚から目を逸らした次の瞬間、儚は士郎の左腕を人差し指でつついた。

 

「でゅくし」

「痛ってぇぇぇ!?!? なにしやがる!?」

「強がった割りにめちゃくちゃ痛がるじゃないですか……。ぷっ」

「馬鹿にしやがって! こんのバカ女!」

「バカ女じゃありません儚です」

「じゃあバカナって呼んでやるよバカナ!」

「い、言いましたね……! 全国の儚さんが呼ばれたくないあだ名十六年連続第一位(全国儚協会調べ)を……!」

 

 再び始まった口論に章太郎はいよいよ我慢の限界だった。

 

「うわー!!!!! 燐兄ちゃん達助けに来てー!!!!!」

 

 残念ながら、この叫びは世界を越えることはなかった。

 数分後。

 士郎と儚は互いに背を向け座っていた。

 

「ふん……怪我人は怪我人らしくベッドで、すやぁ……してるべきです……。戦いの邪魔ですジャマ」

「うるせえ……。そんなことしてる場合じゃねえんだ。早くマリアを助けに行かねえと……」

「マリア……? 士郎兄ちゃん、仲間が捕まってるの!?」

 

 章太郎の言葉に儚も反応し、士郎の方へそれとなく目を向ける。

 士郎は首を縦に振り、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。

 

「あの男にマリアを連れ去られちまった……。俺が弱いばっかりに……くそ!」

 

 空を蹴り、やり場のない怒りをぶつける士郎が痛々しかった。

 章太郎はかける言葉が見つからず、俯くのみ。

 そんな中、儚が立ち上がった。

 

「儚姉ちゃん……?」

「いつまでもここにいても仕方がありません。儚は自分のやるべきことをやります」

「は、儚姉ちゃん……協力しないの!?」

「別に最初から力を貸せなんて言っちゃいねえよ。好きにやりゃいいだろ。俺は俺でやる」

「士郎兄ちゃんまで! 力をあわせて戦わないと駄目だよ! みんなそうやって平和を守ってきたんだよ!」

 

 士郎も立ち上がり、儚と士郎はやはり互いに背を向けていた。

 そんな二人に一緒に戦うべきだと必死に主張する章太郎の声が響く。

 だから、だろうか。

 

「あ、あー。アナザーライダーは倒せないの困ったなー(棒読み) 相手にするのめんどくさそうだなー(棒読み)」

「儚姉ちゃん……?」

「あ、あー。あのパクリ野郎と戦うのはいいけど、他の怪人の相手まですんのはキツいだろうなー(棒読み)」

「士郎兄ちゃん……?」

「どこかにアナザーディガルムを倒せる人いないかなー(棒読み)」

「どっかに怪人の相手してくれる奴いねぇかなー(棒読み)」

  

 とてもわざとらしく、聞こえるように一人言を言う二人。

 そうして、士郎と儚は互いに振り返った。

 

「今回だけ、力を貸してあげましょう」

「それはこっちの台詞だ」

「儚姉ちゃん! 士郎兄ちゃん!」

「あくまで利害が一致したから協力するってだけです」

「そうじゃなけりゃこんな奴と組むわけねぇ」

「それはこっちのセリフです」

 

 章太郎が二人は協力するんだと喜んだのも束の間、早くも二人の間には火花が散っていた。

 幸先が不安だと、章太郎はため息をつくのであった。

 

 

 ひとまず方針は決まった。

 士郎はマリアの救出とアナザーディガルムの撃破。

 儚はアナザーディガルムが下僕であろう魂融合怪人との戦闘及び怪人の魂の奪還。

 

「そうだ……チカさん達に連絡しておこ……ひぃん!?」

 

 スマートフォンを取り出した儚は画面を見てひどく驚いた。

 

「どうしたの?」

 

 章太郎に訊ねられ、儚はスマートフォンを章太郎に見せた。

 章太郎と、士郎もチラッと儚のスマートフォンを覗く。

 そして、驚いた。

 着信の数が、すごいことになっていた。

 

「うちを出てから連絡もなにもしてなかったからね……」

「とりあえず仲間と連絡取れよ」

「は、はい……」

 

 儚は恐る恐る電話をかける。

 電話をかけたら、一瞬で千佳が出たことに儚は驚いた。

 開口一番に「あんた今どこで何してんの!?」と大声で叫ばれ、儚は耳からスマートフォンを離した。

 

「あ、あの……実はかくかくしかじかで……」

「今日はそれ許さないからね」

「ひぃん……その……」

 

 儚は指名手配犯と報じられている士郎を追いかけていった後の顛末と現在の状況について千佳に報告。

 この世界でディガルムを名乗っていたライダーはアナザーライダーであること。

 戦闘するもアナザーライダーであるため儚、ハカイブでは倒すことが出来ず撤退して今は秋葉原の古びた雑居ビルの屋上に章太郎、士郎と共に身を潜めていることを伝えた。

 

「まさか、アナザーライダーだったとはね……」

「はい……儚ではどうしようもありません……」

「そうね、仕方ないわ。それで、指名手配されてるのが、本物のディガルムなんでしょ?」

「そうなんですけど……怪我をしてて、まだ満足に戦えそうになくて……」

「そう……。追われてる身で大変だろうけど、私達も出来る限りサポートするから」

「チカさん……。ありがとうございます。なんとか、やってみます……!」

 

 それではと電話を切り儚はほっと一息つく。

 

「さて、ひとまずは……」

 

 次の行動に移ろうとした儚から、大きな腹の音が鳴った。

 

「あうぅ……お腹、減った……。リオさんのご飯、食べたい……」

「はっ! 食い意地の張った女だな!」

 

 儚の空腹を笑った士郎だったが、士郎の腹もまた盛大に鳴った。

 

「はっ……食い意地が張ってるのはどちらだか」

「んだと!?」

「ああもうなんで喋ったら喧嘩になるのさ! でも、うん……僕もお腹減った……」

「こうなったら調達してくるしかないな」

「買ってくるってこと? 僕、お金持ってきてないよ」

「ガキからたかるかよ。お前は金あるか?」

「お財布ならここに……」

「よし……。俺も財布……」

 

 士郎は黒い財布を取り出し中を見る。

 財布の中を見て、固まってしまった。

 

「士郎兄ちゃん?」

「……なあ、お前はいくら持ってんだ」

「にへへ……諭吉……!」 

 

 ピン札一枚を見せつける儚に士郎はしぶしぶながら。

 しぶしぶながら、頭を下げた。

 本当に、嫌々ながら。

 

「……あとで返すから貸してくれ」

「まったく、悪ぶりツンデレ男の上に金までないとか……」

「こ、今回はたまたま手持ちがなかっただけだ!」

 

 こうして、三人の総資産は一万円。

 よほど贅沢しなければ三人余裕で空腹を満たすことが可能だ。

 金銭的な余裕からか、三人の表情は先程よりも柔らかいものとなる。

 これなら少しは落ち着いて話し合いも出来るだろう。

 

「ええっと、お金はひとまず良いとして……買いに行くにしてもあれだよね、二人とも指名手配されてるし、僕が行くしか……」

「でも、ここから降りるのには儚が必要……」

「まあ、お前ならフードで顔見えづらいから大丈夫だろ」

「よし、ショウタロ。あのツンデレ男に飛びっきり変なもの買ってこよう」

「待て俺も行く」

 

 不穏な気配を感じ、止める二人の言葉を無視して士郎もついていくことになった、のだが。 

 

「指名手配犯が往来を堂々と出歩かないでください……」

「お前だって指名手配されてるだろうが。それに、案外堂々としてればバレないだろ」

「そうかなぁ」

 

 おどおどして挙動不審な様子でいる方が目立つ。

 何食わぬ顔をしていればバレないだろうと士郎は考えていた。

 実際、誰も指名手配犯がここにいるとは思っていないように通りすぎていく。

 

「ブヒッ! そこのお姉さん!」

 

 通りすぎていくのだが、指名手配とは別の理由で三人、いや儚が声をかけられた。

 儚が振り向くと、突然のフラッシュに儚は驚き、目を瞑る。

 

「ひっ……は、儚のこと……? ひゃっ……!?」

「そうでござる! もしかしてグ○イたんのコスプレでござるか! 拙者、接写が得意なんでござるが……なんちゃってwww」

 

 パシャパシャとシャッターを切りながら矢継ぎ早に言葉を発する珍妙なカメラマンに儚は気圧されていた。

 儚が一番苦手な、独自の世界を築き上げているタイプ。

 儚でなくとも苦手ではあるとは思うが、儚は人一倍こういう手合いは駄目である。

 

「おい、なにやってんだよ」

 

 撮影される儚にこそっと耳を打つ士郎。

 街中を歩くので士郎は顔を俯けている。

 普段着ているロングコートがあれば多少は顔を隠せるが、そんなロングコートはマリアに着させていたため今はない。

 

「ひぃん……この人が……」

「かわいいよ~。すっごくかわいいよ~! 視線プリーズプリーズ!」

「あ、あう……」

「いいね~! めちゃくちゃいいでござるよ~! 次はフード取っちゃおうか~!」

「え……。えへへ……」

「おだてられてんじゃねえよ」

「痛っ!?」

 

 フードを取ろうとした儚の手を士郎が叩く。 

 手首のスナップが利いた、良いはたきである。

 

「お前……よくも儚をぶちましたね……! お父さんにもぶたれたことないのにー!」

「うるせえよ」

「儚姉ちゃんそれ言いたいだけじゃ……」

「お父さんにぶたれたことないのは事実です。組手も寸止めでした」

 

 何故か得意気、自慢気な儚に士郎と章太郎は呆れるばかり。

 儚も大概自分の世界で話す奴である。

 自分で思っていないだけで、儚もクセが強い。

 元来のものと、結城荘での暮らしが更に拍車をかけてしまった。

 それはさておき。

 

「ああー! 指名手配犯だ~!!!」

「あっ」

 

 カメラマンは士郎を指差し、往来で叫んだ。

 必然、衆目を集めることとなる。

 

「指名手配犯!」

「キャー! 指名手配犯よ~! オッペケテンムッキー!」

「捕まえろー!」

「ディガルムの敵だぁ!」

 

 わらわらと集まる民衆達が三人に迫る。

 警察官まで走ってくる始末である。

 

「や、やばい!」

「に、逃げよう!」

「ひぃん……どうして……」

 

 泣き顔のまま儚は士郎と章太郎を脇に抱えて跳躍。ビルの壁を蹴り、高く高く、空へと舞い上がる。

 真っ黒な儚は夜空に溶け込み、衆目を逃れることには成功する。

 だが、逃走に必死だった儚達は気が付いたら……見知らぬ河川敷に立っていた。

 

「ど、どこだよここ……」

「あ、荒川……」 

 

 近くの看板に書かれた名前を章太郎が震える声で呟いた。

 都心から離れ、鬱蒼と茂る草木と穏やかに流れる黒い水面。

 三人を歓迎するように、魚が跳ねた。

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