仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ディガルム×ハカイブ DARKNESS REBELLION   作:大ちゃんネオ

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士郎復活

 暗い橋の下に三人はいた。

 たまに上を走る車に揺れる中、三人は並んで小さく座り込み、無言で川の流れを見つめ、鳴るのは腹の虫だけである。

 

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「…………お腹、減った」

 

 力なく項垂れた儚の呟きに、士郎と章太郎も頷いた。

 

「指名手配って、辛いんだね……」

「逃げ延びてる奴はマジですげぇな……」

「指名手配犯に逃げ方と生活の仕方、教えてもらいたい……」

 

 疲労のせいか、三人のメンタルは落ち込んでいた。

 士郎と儚も口喧嘩せず、普通に会話出来るほどに。

 

「くそ、なんだってこんなことに……」

「あれもこれもアナザーディガルムのせいです……」

「士郎兄ちゃん、アナザーディガルムの男とは本当に何にも関係ないの?」

「ねえよ。まったく見覚えねぇ。うぐっ……!」

 

 突然、士郎は苦痛に顔を歪める。

 胸を押さえ、力なく倒れ込む士郎に章太郎が慌てて呼び掛けた。

 額から汗が滲み、苦しむ士郎を前に章太郎は何も出来ない。

 

「士郎兄ちゃん! どうしよう、病院も連れていけないし……」

「……ショウタロ、ちょっと」

 

 儚に声をかけられ章太郎は位置をずれると、儚は倒れる士郎のシャツを捲りあげた。

 胸部の青痣が痛々しく、他にも無数にある傷痕の迫力に章太郎は息を飲み込んだ。

 

「儚姉ちゃん……」

「痣の他に火傷も……あいつ火を使ってましたか、そういえば」

「なに冷静に言ってるのさ! このままじゃ士郎兄ちゃんが!」

「おれは、大丈夫、だ……」

「士郎兄ちゃんも強がるなよ!」

 

 そうは言うものの章太郎になす術はない。

 慌てふためく章太郎の隣で、儚はため息をついた。

 

「仕方ありません。あれを使いますか……」

「あれ?」

 

 首を傾げる章太郎を横に、儚はキセキレジスターと細筆を取り出していた。

 キセキレジスターにさっと書き込むと、キセキレジスターの音声がおどろおどろしく鳴り響く。

 

《ウェポン アナザーアギトゴッドハンド》

 

 黒衣に袖を通し、黒いマスクの紐を結び、薄いゴム製の手袋を皺なく指先まで纏った儚。

 その姿は正しく。

 

「お、お医者さん……?」

「緊急しゅじゅちゅで……緊急手術です。メス」

 

 何故か手術道具もばっちり揃っている。

 煌めくメスの切先が士郎の胸に迫り、患部を切り開こうとする。

 だが、寸前で士郎の手が儚のメスを握る腕を掴んで止めた。

 

「動かないでください。死にたいんですか?」

「うるせぇ! いま絶賛殺されそうになってたとこじゃねえか!」 

「安心してください。儚、失敗しないので……!」

「嘘つけ! お前みたいな無免許医に診てもらいたくなんかねぇ!」

「悪ぶってるくせにかかりつけ無免許医もいないんですか。お行儀がいいことで」

「普通いねぇよそんなかかりつけ医! 大体、無免許どころか手術だってしたことねえだろお前!」

「失礼な。これでも成功実績はちゃんとあります。前にコマちゃん……友達を手術したら、もう二度と大怪我しないって誓ってくれました」

「嫌がられてんじゃねえか! くそ、こんな傷どうってこと……ぐっ……」

 

 大声をあげたせいか、余計に傷に響いたらしい。

 呻く士郎を目の前にした儚は、まな板の鯉という言葉を思い出していた。

 

「そんな傷ではアナザーディガルムには勝てませんよ」

「……」

「それではマリアさんという方も救えませんね……」

「っ……!」

「どうする? ここで野垂れ死ぬか、それとも儚の手術を受けるか……」

 

 二択、投げ掛けられる。

 士郎は目を閉じ、深く息を吐く。

 既に、覚悟は出来ているようだ。

 

「煮るなり焼くなり好きにしろ」

「えっ!? 本当にいいの士郎兄ちゃん!?」

「男に二言はねぇ」

「分かりました。それでは」

 

 容赦なく、儚のメスが士郎の胸に突き立てられる。  

 あまりのことに士郎と章太郎は目をぱちくりとさせていた。

 もう少し、間を置くものではないだろうか。

 ましてや、手術など慎重に慎重を重ねる作業のはず。

 それがこんなバターにナイフが刺さるかのように簡単なはずがない。

 やがて、困惑という麻酔が切れて士郎に痛みが襲いかかり……。

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 夜の荒川に男の叫びが響き渡る。

 あまりの光景に、章太郎は目を背け続けた。

 

 

 

 

 

 

 喫茶Hamelnでは大人達が章太郎と儚の心配をしていた。

 ひたすらテレビやネットでニュースを調べては捕まっていないかと胸をざわつかせている。

 当然、Hamelnは臨時休業の看板を下げて客が入らないようにしていたが、扉の鈴が鳴り、自然と出入口に視線が集まった。

 入店してきたのは二十代半ばほどのスーツ姿の女性であった。

 美人で清楚系、アナウンサー顔だと千佳は感じた。

 女性は店内にいた千佳達に一礼すると、自身の身分を明かした。

 

「すいません。あの、テレビ朝陽の白瀬陽子という者なんですが……」

 

 白瀬という女性が名乗ると、腰を痛めていた権兵衛が咄嗟に反応した。

 

「あっ! アサヒモーニングニュースの白瀬アナ!? あいたたた……」

「本当に女子アナだった……」

 

 白瀬陽子は再び一礼すると、千佳達に向かって質問を投げかけた。

 

「あの、ここに指名手配犯……男性の方が来たというのは、本当ですか?」

 

 千佳達は、一気に白瀬陽子に対して警戒を始める。

 指名手配犯来ましたし、なんなら追加された方の指名手配犯は同居人です。なんてこと、言ってしまったらどうなるものか分からない。

 ましてや相手はテレビ局のアナウンサーである。

 そう、アナウンサー。

 

「すいません。これ、取材ですか~?」

 

 パソコンにずっと向かっていた望がそう問うと、白瀬陽子は首を横に振った。

 

「その、違うんです」

「違うって、どういうこと?」

「私は、あの指名手配犯に……もう一人の仮面ライダーディガルムに助けられたんです」

 

 白瀬の言葉に、千佳達は顔を見合わせた。

 

「今朝、警視庁前で撮影の準備をしていた時に怪人が現れて……。怪人の放った攻撃が私達に向かって飛んできたのを、もう一人の仮面ライダーディガルムが助けてくれたんです。だから私、あの人のこと、悪い人だと思えなくて……。あの、本当に私のことを助けてくれたんです! 信じて、もらえないかもしれないですけど……」 

 

 その言葉から、既に白瀬陽子が第三者に仮面ライダーディガルムが悪い人とは思えないと話して否定されたのだろうと分かった。

 いまや世間では本物こそがもう一人の仮面ライダーディガルムとして、悪として扱われている。

 だが、こうして疑問を呈している者もいたのだ。

 

「白瀬さん。私達、あなたのことを信じるわ」

「え……本当、ですか?」

「ええ。私達も、同居人の一人が指名手配犯扱いされて困ってたところなのよ」

「えっ」

「本当に悪いのは、あの赤いディガルムの方。あなたを助けたのは、もう一人なんかじゃない。正真正銘のディガルムよ。一緒に、助けましょう。……仮面ライダーのこと!」

 

 笑顔で右手を差し出した千佳。白瀬陽子はその手を、恐る恐るであったが確かに握り返した。

 同盟成立である。

 

「助けるっつったって、どうすんだよ。アタシ達なんも出来ねえぞ」

「汚名を晴らしてあげたいけど……」

 

 あゆと優李は自信なさげに言う。

 助けようと話した千佳自身、正直何をすればいいか分かっていない状況だ。

 そんな千佳に、望が言葉をかけた。

 

「もう、考えなしに助けようとか言わないことね~」

「な、なによ。望はなんか考えがあるの! パソコンばっか見て」

「パソコンがあれば、いろんなことが出来るわ~。アナザーディガルムのことを調べたり、浦賀英雄って男についてもちょっとだけ調べたし」

「マジ!? なんか分かった!?」

 

 食い気味に訊ねる千佳。

 望は笑顔のままパソコンを千佳達の方に向けた。

 モニターに表示されていたのは。

 

「仮面ライダーディガルム……」

「アンチスレ……」

「part151……」

「どこの世界にもいるのよね~。逆張り野郎って~」

 

 やたら良い笑顔でそう語る望に千佳は内心引いた。

 

「そんなの見てたら性根が腐るわよ」

「投資なんて博打で生活してる私の性根が腐ってないとでも?」

 

 ブラックホールのような目をして望は言っていたと、後に千佳は語ったという。

 

「ちょっと興味深い情報もあったしね~。今からオフ会してくるわ~」

「オ、オフ会……?」

「あ、あゆちゃんも来て~」 

「なんでアタシが……」

「顔面が強い女がいた方が話しやすいと思って~」

「あの、私もついて行ってもいいですか?」

 

 こうして、困惑気味のあゆと白瀬を連れて望はHamelnを出た。

 店内に残ったのは、千佳と優李、腰を痛めた権兵衛と莉緒である。

 

「そういえば莉緒は?」

「ああ、あっちのお姉ちゃんならキッチン貸してくれって言うから貸してるよ。調理師免許持ってるっていうし」

「莉緒ったら、こんな時まで料理して……」

「でも、莉緒さんらしいよ。それに、帰ってきて莉緒さんの料理があったら儚ちゃんも喜ぶと思うし」

 

 優李の言葉に千佳は微笑み、キッチンの方を見つめた。

 

「ま、お腹空かせてるでしょうしね。さて、私達も望を習って色々と調べてみますか」

「了解!」

 

 千佳は望が使っていたパソコンを、優李は自分のスマートフォンを使って検索を開始。

 なんでもいいからとにかく情報を収集し、儚達のサポートを行おうと動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 手術開始から40分。

 

「治っちまった……」

「嘘でしょ……」

 

 傷だらけの身体を丸ごとすげ替えたのではないかというほど、士郎はすっかり完治していた。

 術後経過なんてものはすっ飛ばし、まったくの健康体。

 普通ならこんな奇跡のような手術をした医者に感謝するものだが、執刀医が儚のため士郎と章太郎は釈然としてはいなかった。

 

「と、とにかくすごいよ儚姉ちゃん! アナザーアギトの力(?)をしっかり使いこなすなんて! ね、士郎兄ちゃん!」

「ま、まあ感謝してるぜ……」

 

 がらにもなく素直に礼を述べた士郎だが、儚は何も言い返してこない。

 士郎が感謝なんてしようものなら、そのことをネタに調子に乗るだろうにと怪訝に思った士郎と章太郎が顔を見合わせる。 

 すると、儚は苦痛に呻きながら倒れてしまった。

 

「おい、どうした!?」

「ぐっ……これを、使うと……」

「使うと……?」 

 

 左手で右腕を押さえる儚に二人の視線が集まる。

 汗ばみ、涙ぐむ儚は痛みに喘ぎながら説明した。

 

「これを、使うと……右腕がめっちゃ痛くなる……ぐぉぉぉ!」 

「どんなデメリットだよ!?」

「うぉぉ……! マサトォ!!!」

「誰だよマサト!?」

「木野さんの亡くなった弟さんだよ! 木野さんの右腕は弟の雅人さんから移植されたものなんだ!」

「なんだよその設定は! おい、それは治るんだよな!」

 

 士郎は本気で心配していた。

 自分を治した代償に、右腕の強烈な痛みに襲われる儚を前にして悪ぶれは出来ない。

 この痛みが果たしてどの程度続くものなのか。

 場合によっては、これからの戦いについてこられないかもしれない。

 

「馬鹿野郎が……! 俺を治して、てめぇが苦しむんじゃ意味ねぇだろ……!」

「……元凶のアナザーディガルムを倒せるのは、現状マサト、じゃない。あなただけ……。儚は、最善を選んだだけ……。うっ、マサト……」

 

 魘される儚は痛々しく、自分を救った彼女を助ける術を持たない無力さを士郎は痛感させられる。

 この献身に報いるためには、なんとしてもアナザーディガルムを討たなければならない。

 奴と戦う理由がまたひとつ増えたと士郎は心に刻み、立ち上がった。

 

「章太郎、儚とどっかに隠れてろ」

「士郎兄ちゃん……?」

「俺はあいつを倒す。そうすれば、全部……」

「おい! お前達!」

 

 突然、光が当てられる三人。

 懐中電灯を照らす警邏中の巡査が、橋の下に潜り込んできたのだ。

 

「あっ! 指名手配犯!」 

「くそっ!」

 

 逃げなければいけない。

 しかし、儚がこのような状況では逃げられるわけもない。

 どうするべきか必死に頭を回転させる士郎。ジリジリと迫る警官。

 

「マサトォ!!!」

「お前はうるせぇよ!」

 

 窮地にも関わらず叫び続ける儚に士郎はツッコミを入れるも現実逃避にしかならない。

 このままおとなしく捕まる気はないが、逃げる術はない。

 士郎の頭に、一人で逃げるという選択肢は存在し得なかった。

 

「おとなしくお縄につくんだ!」

「古風なおまわりだな……。いや、待ってくれ。俺達は」

 

 士郎が警官を説得しようとした時だった。

 

「邪魔だ」

「な、誰だ!」

 

 警官の背後に立つ何者か。懐中電灯に当てられ、その姿が露となる。

 全身にステンドグラスのような鱗を備え、鳥のようなシルエットの頭部には大きなオレンジ色の球体。側面には白鳥の彫刻を備えている。

 

「うわぁ!?」

「怪人……!」

「スワローテイルファンガイアと……レギオン……マサト……」

「マサトは入ってないだろ!? くそ! てめぇ何者だ!」

「お前らを捕らえれば、懸賞金を貰えるからなぁ……。サツになんか渡してたまるか」

 

 二つの刃を備えた薙刀を警官に振るう怪人。

 だが、その薙刀を士郎が蹴って弾き警官を救った。

 

「逃げろ!」

「ひっ……」

 

 警官が走り去るのを見届け、士郎は怪人と相対する。

 警官に見つかった以上の窮地に見えるが、士郎の口角は上がり、不敵に微笑んでいた。

 

「なにを笑っている。頭イッちまったのか?」

「はっ。悪いな、こちとら生身の人間相手にするより、てめぇみてぇな怪人相手にする方が、気が楽なんだよ!」

 

 ガルムドライバー!

 

「なにっ!?」

 

 ガルムドライバーを腰に巻く士郎に驚く怪人は薙刀で襲いかかるも、士郎は薙刀を回避し怪人の顔面に肘打ちを食らわせる。

 後退した怪人へと、士郎は言い放つ。

 

「人生最高にストレスが溜まってたとこだ。お前で発散させてもらうぜ」

 

 リュウガ!カリバー!

 ダーク・リアライズ!

 

 ガルムドライバーへと二つのロザリオを突き刺し、士郎の姿は骸骨を思わせる姿へと変貌。

 仮面ライダーリュウガと仮面ライダーカリバーが士郎と並び立ち、士郎は怪人へと指を差した。

 

「変身!」

 

 CROOSS FUSION!

 

 リュウガとカリバーが士郎へと重なり、二人の戦士の力を宿す戦士。

 仮面ライダーディガルムへと変身を遂げ、怪人へと殴りかかる。

 

「うおぉりゃっ!!!」

「べっ!?」

 

 炎を纏った渾身の右ストレートが怪人を殴り飛ばす。

 河川敷を転げ回る怪人へ、ディガルムは悠々と歩み寄る。

 その背を、章太郎と儚は見つめていた。

 

「あれが士郎兄ちゃんのライダー!」

「マサト……」

「ディガルムね」

 

 ディガルムは黒龍剣ドラゴブレードを呼び出し、怪人の振るう薙刀とぶつかり合い火花を散らす。

 リーチがある薙刀相手にディガルムは攻めあぐねている。

 

「大口を叩いたわりにその程度か!」

「チッ……!」

「食らえ!」

 

 振り下ろされる薙刀。

 凶刃を前に、ディガルムは動じなかった。

 左肩を直撃する刃。火花が弾けるが、まるでディガルムには効いていないかのよう。

 更に、ディガルムは左手で薙刀を握り締めて怪人の動きを封じた。

 

「なっ……!」

「捕まえたぜ……たあッ!!!」

 

 ドラゴブレードが一閃。怪人の胸部を右から左へと切り抜け、怪人は薙刀から手を離して後退。

 ディガルムは薙刀を投げ捨て、怪人へと追撃をかける。

 そこへ、新たなる怪人が飛来する。

 

「けひゃ! 金金ぇ!」

「もう一体かよ!」

 

 ディガルムの前を横切った二人目の怪人は翼とバーニアを持ち、自由に空中を駆けるとディガルムへと向けて吹矢を放つ。

 

「今のうち……! はっ!」

 

 吹矢の攻撃を避けているディガルムへと向け、第一の怪人が鱗粉を撒き散らす。

 

「ぐあっ!?」

 

 全身から火花を出し、ディガルムは膝をつく。

 今のは流石に効いたようだ。

 そこへ更に、第二の怪人が吹矢を放つ。

 ディガルムの瞳に、放たれた矢が映り胸部装甲が弾ける。

 

「終わりだ!」

 

 再び、鱗粉がディガルム目掛けて放たれる。

 またあの攻撃を諸に食らうのはまずい。

 だが回避はもう間に合わない。

 大きな爆発が、ディガルムを包み込んだ。

 

「士郎兄ちゃん! 儚姉ちゃん!」

「ふっ……」

「おい! 死んでたらどうすんだ!」

 

 怪人達は一触即発。

 それぞれ懸賞金目当てのため、お互い邪魔らしい。

 ここからは怪人同士による戦いが始まる……と、思われた。

 

《仮面ライダーハカイブ パニッシャーマグナム》

 

 爆煙の中から響いた音声に、怪人達は意識が向いた。

 白煙が流れ、その中に立つ二人の戦士の姿が浮かび上がる。

 

「なに!?」

 

 あの爆発だが、寸前のところでハカイブ パニッシャーマグナムがディガルムを守っていたのだ。

 ハカイブの数ある姿の中でも防御力に特化したこの姿であれば、まったく問題ない。

 

「お前、右腕はいいのかよ」

「心配いりません。この姿の間は、死んでいるので。痛みとか関係ありません。……お前は、あっちのムラタ男を」

「ムラタ……? ま、まあ分かった。はあっ!」

 

 ディガルムは仕返しだと怪人ムラタ男へと駆ける。

 ムラタ男は片手剣を生成し迎え撃つも、ディガルムの勢いに圧され、形勢逆転。

 強力な斬撃を幾度も浴びせられ、ムラタ男は吹き飛んでいく。

 

「ゴ・ブウロ・グとバーニアバグスターか……」

「爆撃!」

 

 ミサイルがハカイブへと向けて放たれる。

 雨のように降りしきるミサイルだが、ハカイブはまったく怯まず、ガイストマグナムの銃口を怪人へと向けた。

 次々と上がる火柱、爆炎。ハカイブにもミサイルが直撃するも、一歩も退かない。

 

「回避もしないだと!?」

「飛行男……は、他所様のところにいらっしゃるから……。お前は爆撃男です……」

 

《日輪骸装! 日輪骸装! パニッシャーマグナムブレイク!》

 

 常に銃口は爆撃男へと。

 左手でベルトのキセキレジスターを操作し、必殺の弾丸をガイストマグナムへと装填。

 折り畳まれていた銃身を起こしライフルモードへと移行させる。

 

「これで終わりだ!」

 

 ガルムドライバーからリュウガのロザリオを引き抜き、右腰のフィニッシュスロットへと装填。

 

 RYUGA!

 RYUGA!FINAL・BREAK!

 

「ブレイジングクラッシュ!」

 

 黒龍、ジャアクドラグがディガルムの背後に現れ、口内に炎を滾らせる。

 駆け出し、跳躍したディガルムへと黒炎を放つジャアクドラグ。

 黒炎を纏い、ディガルムはムラタ男の側頭部を蹴り飛ばし爆発。

 炎に照らされ、ディガルムは静かに、雄々しく立ち上がった。

 

「食らえ! 食らえ! 食らえ! 食らえ! 食らえ!」

 

 吹矢、ミサイルの一斉射。

 無数の火力に屈することなくハカイブが放った弾丸は一発のみ。

 ミサイルの雨を切り裂き、炎を纏った髑髏の弾丸が爆撃男を穿った。

 悲鳴を上げ、川へと落下した爆撃男が爆発し水柱が立つ。

 

「あー……面倒なところに……」

 

 儚は変身を解除し、爆撃男だった男を回収するため蜘蛛男のボディを宿し、右手から放った糸を川面へと向かって投げた。

 

「あ、かかった……」

「釣りかよ。それより、右腕はいいのか」

「あっ」

「あっ?」

 

 その一言が、決定的だった。

 

「うごぉぉぉ!?!? マサトォォォ!!!」

「まだ痛むのかよ!?」

「せっかく忘れてたのに思い出させるからです!」

「てか、川に落ちた奴がやべぇ! 暴れんな!」

「ひぃっ!? どこ触ってるんですか! このマサト!」

「とにかくちょっと我慢してじっとしてろ! あいつ引き揚げなきゃいけねぇだろ!」

「僕も手伝う!」

「くっ……この儚を釣竿のように扱うなんて……」

 

 痛みを我慢し、釣竿に徹した儚。

 士郎と章太郎により爆撃男だった男は無事に釣り上げられ、ムラタ男だった村田という男と一緒にして河川敷に寝かせておいた。

 季節的にもそのまま放置しておいても大丈夫だろうと判断したのだ。

 

「騒がしくなってきたな。ここから離れるぞ」

「う、うん。でも、どこに行けばいいの?」

「とにかくあいつのところだ。あいつを倒せば、全て終わる!」

「そのあいつ。アナザーディガルムの男は、どこにいるんですか……」

 

 それが分からなければ闇雲に動くだけである。

 しかし、動き回れば体力の無駄になり、見つかるリスクも高まるだろう。

 

「……あいつの居場所が分からないならさ、逆にあいつをこっちに誘い出せばいいんじゃないかな?」

「なるほど……。一理ある……。ショータロ、頭いい……」

「奴もこっちを探してるだろうからな……。俺達がちょっと目立てば、きっと出てくるはずだ」

「じゃあ、シローが銀行強盗して、儚が取り押さえて警察に連行するとか……どう!」

「どう! じゃねえ!」

「ひぃん……」

 

 三人揃えば文殊の知恵と言うが、果たしてこの三人で良い案は浮かぶのだろうか……。

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