仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ディガルム×ハカイブ DARKNESS REBELLION 作:大ちゃんネオ
どこか寂れた雰囲気の住宅地の只中に、これまた寂れた古めかしいアパートが建っている。
そこの一階の最奥の部屋の扉をノックする望がいた。
「こんばんは〜。陰謀論マスクさ〜ん、DMで話したノゾミンゴです〜」
「アカウント名、なんかあれだな」
「ツ◯ッターをエッ◯スとかに改名しそうな名前ですね……」
望の後ろにはあゆと白瀬陽子が立ち、ぼそぼそと思ったことを話していた。
「いないのかしら〜?」
望が訝しむと、部屋の中からボソボソとした男の声が聞こえてきた。
「……合言葉を言え」
「え? 合言葉なんて私聞いてないんですけど〜」
「知らないのに合言葉もクソもあるか! 開けろよ!」
「あゆさん落ち着いて……! 近所迷惑になります」
陰謀論マスクなる男への疑念と苛立ちが強くなる中、陰謀論マスクは望達に構わず言葉を続けた。
「それでは……。ジュンヂグ・ドドボデデバギ」
「「ここではリントの言葉で話せ」」
「えっ? えっ?」
望と苛立っていたあゆまで同時に話していた。
すると、部屋の扉が開いて年齢は小太りの三十代半ばほど。赤チェックのシャツを着た黒縁眼鏡の男が扉を開けて、紳士的に案内した。
「どうぞ中へ」
「ありがとうございます〜」
「いえいえ、散らかっていますがどうぞ」
「お邪魔しま〜す」
「します」
「あの、えっと、どういうことなんです?」
ぞろぞろと部屋に上がっていく望とあゆ。
陽子は展開についていけず、慌てふためいていると陰謀論マスクと目があい、どうぞお入りくださいというジェスチャーに従い、恐る恐る部屋へと入った。
部屋の中は汚い、というわけではないが古いアパートであることと様々な本や資料などが豊富で狭苦しいもの。特撮物や都市伝説、UMAなどが好きらしく、それらの本ばかりである。
そんな部屋の中央のちゃぶ台を囲み三人は座ると、陰謀論マスクは麦茶を注いだコップを人数分置いた。
「いや〜すみませんな。ノゾミンゴさん、ライダー好きとプロフに書いてありましたから、つい試したくなってしまいました。過去の投稿を見ても、なかなかのマニアとお見受けしたもので」
「私なんてまだまだですよ〜」
「そちらのお若い方も」
「若い?」
陰謀論マスクがあゆを指してそう呼ぶと、望がそう聞き返していた。
あゆ曰く、とても迫力があったという。
陰謀論マスクも若干怯えながら言葉を選んで話を続けた。
「ああいえ、そちらの金メッシュの方も流石ですな。流石ノゾミンゴさんのお知り合いでいらっしゃる」
「……どうも」
あゆは人見知りが発動し、ぶっきらぼうに答えた。
「しかし、そちらの方は分かってらっしゃらないようで私としては部屋に上げるのを躊躇ったのですが……。いや、あの、もし人違いなら申し訳ありませんが、もしや貴女はテレビ朝陽の白瀬陽子アナでは?」
「そ、そうです」
「先程の発言、無礼をお許しください。私ファンなのでぜひサインを……」
「さ、サインなら後で書いて差し上げますので、今は本題の方を……」
陽子に促され、陰謀論マスクはこれまた失敬と片手で謝り姿勢を正した。
「仮面ライダーディガルムの件でしたね。いやぁ、私の調査に興味を示してくださる方と出会えて、感激でございます」
「何故、陰謀マスクさんはディガルムのことを調べていたんですか?」
「陰謀論マスクです」
「あ、すいません失礼しました」
陽子が謝ると、陰謀論マスクは咳払いし話を再開させた。
「えー私、ご覧の通りオタクでして、最初は仮面ライダーディガルムの登場に心躍らせたのですが……」
「ですが〜?」
「実は、あることに気付きましてですね、えーこれなんですが」
せっかく出した麦茶のコップを床に置き、陰謀論マスクは地図をちゃぶ台の上に広げた。
地図は霞ヶ関一帯のもので、赤い点と日時が複数記されている。
「この赤い点が仮面ライダーディガルムが怪人と戦闘した場所になります」
「これが、全部なのか?」
「ええ。あらゆる目撃情報等をかき集めた結果、全てと断言します」
「でも〜人知らず戦ってたりしたら〜?」
「その場合は戦闘が行われた痕跡が残り、警察に通報されるでしょう。あ、私、警視庁で鑑識をやっていまして、ディガルムの戦闘場所も調べていますのでそのあたりの情報も含めて、これが全部だと断言します」
警視庁の鑑識ということもあり、陰謀論マスクが意外とすごい人だと三人は男のことを再評価した。
ただのオタクではないと。
「今日、神田の方で発生した件を除くと、これまでディガルムはこの霞ヶ関周辺でばかり戦闘を行っているのです。そして、その戦闘についてはマスコミが撮影し大々的に報道されているということに気付き、私は思いました。このディガルムというやつは名声が欲しいのではないかと。仮面ライダーは人知れず悪と戦うというのにですよ!」
「拗らせてんなぁ。クウガとか報道されてるライダーもいただろ」
「それだけではありません!」
「うおっ!?」
陰謀論マスクは身を乗り出し、声を張って捲し立てるように自身の調査内容を口にする。
オタク特有の早口で培われたスピードである。
「浦賀英雄、あの男についてもさっきまで調べていました! キャリア組のエリートで、将来有望視されている男です。霞ヶ関周辺で戦闘していた理由も恐らく仕事場から近場でマスコミが報道しやすいからでしょう! 更に霞ヶ関は皇居や国会議事堂も近いですお偉方に認めてもらいたいという欲求があったのではないでしょうか! それに最近、あまり見たことない業者が警視庁によく出入りしていまして、尾行したら突き当たりで消えていたりなんてこともありました。それに!」
あゆに向けてそう言うと、陰謀論マスクは地図の上に写真や新聞などの切り抜きを広げ始めた。
写真は全て、怪人の姿を捉えたものである。
「これを見てください。まず、今日現れた怪人はカマキリとジャガーと思われる、ネコ科動物の怪人が組み合わさった姿でした」
「私も見ました。現場にいたので……」
陽子の言葉に陰謀論マスクが頷くと、次の写真を見せた。
「これは一週間前に現れた怪人です。これは何かしらの鳥とカマキリの怪人と思われますが、次にこの二つ。これは二週間前と三週間前のものですが、こちらは鳥とジャガー、こちらはカマキリと蝶のような生物の怪人かと。更にこちらは鳥と蝶、こっちはカマキリと飛行機のようなものの怪人。これは飛行機とジャガーで……」
「怪人のモチーフが、縛られてる……ってことですか?」
陽子がそう言うと、陰謀論マスクはキメ顔で「ええ」と答えた。
あゆが写真の一枚を手に取り、望へと向かって口を開く。
「こいつら、魂融合怪人だよな」
「そうね〜。多分、倒したと思わせていくつかの魂を再利用して色々組み合わせて敵を作っているんでしょうね〜」
「流石ノゾミンゴさん、私もそう思っていました。これらのことからディガルムは怪人騒動を自作自演しているのではないかと考えて、ネットを使って発信していたのですが……やはり世論はディガルムを応援する声が圧倒的で、私含む同志達はすっかり捻くれ拗らせ嫉み誹謗中傷野郎扱いです」
肩を落とす陰謀論マスク。
彼自身、そういう扱いをされることに傷を負っていたのだ。
そんな陰謀論マスクの肩に、望が手を置いた。
「大丈夫ですよ陰謀論マスクさん。あなたは"真実"に辿り着いた人なんですよ〜」
「わ、私が真実に……?」
「ええ〜。まさに"優れた"、"選ばれた存在"なんです〜」
「優れた……選ばれた存在……!」
「ええ〜」
「いやいや待て待て! なんかガチっぽいから! "本物"になっちまいそうだからやめてくれ望さん!」
「あら、そう〜?」
さながら教主にでもなりそうなオーラを醸し出していた望だったが、オーラを仕舞い込んでふふふといつもと変わらない笑顔を浮かべた。
「弱ってる人間ほどコロリと落とせるから、あゆちゃんも覚えておいてね〜」
「覚えときたかねぇライフハックだな……」
「うーん。そもそも陰謀論マスクなんて名前ですからそういう風に見られてしまうんじゃないですか? もっと受け入れやすい名前にした方がいいですよ」
「白瀬さん? なに言ってんの?」
「た、たしかに……世間一般にウケる名前の方が仲間を増やせるかもしれません……」
「それじゃあ◯棒マスクなんてどうです〜?」
「ド下ネタ!!!!!」
「だって〜髪型と首がないせいでずっとそれにしか見えてなくて〜。うふふ」
「うふふじゃないんだって! いっつもニコニコしてるその目をかっ開いてよく見ろよ! どっからどう見ても……」
そう言い、あゆは陰謀論マスクへと目を向ける。
「…………ぷっ」
「え、今笑いました? 笑いましたよね。私の顔見て」
「……笑って、ねえよ……ふふっ」
「もう〜あゆちゃんったら、人の顔見て◯棒を連想するなんて失礼よ〜」
「あんたが言い出したんだろうが! くそ、年中欲求不満女め……」
「あゆちゃん? 今なんて言ったのかしら?」
あゆを問い詰め始める望をよそに、陰謀論マスクは俯きため息をついた。
「これでも一応、見た目には気を遣っていると自負していましたが……そんなに私は◯棒に見えるのでしょうか……」
落ち込む陰謀論マスクに、今度は陽子が言葉をかけた。
「そんなことありませんよ。私には陰謀論マスクさんが美味しそうなつくねに見えます」
「それも結局肉の棒じゃありませんか」
「まあそんなことより」
「スルーされた……」
「新しい良い名前を考えましょう」
「白瀬アナ……! やはり頼れる人は貴女だけだと思っていました……!」
陰謀論マスクは身体をしっかりと陽子の方に向け、前のめり気味に陽子と共に名前を考え始めた。
「いやー出来れば、マスクの部分は残していただきたいものです。このマスクは仮面ライダーから取ったものでして……」
「なるほど。では、◯ビンマスクとかどうです?」
「だいぶ聞き覚えがある名前なんですが……。そんな超人的な名前を私なんぞが名乗っていいのやら……」
「まあ〜なりきり垢とかそういうのでよくいるじゃないですか〜。検索する時ウザいですけど」
望の言葉には、私怨がこめられていた。
そして、あゆもまた新たな名に賛同した。
「陰謀論マスクよりはだいぶいいんじゃね?」
「そうですよ! みなさんこれならきっと受け入れてくれます!」
「あっ、あはは。皆さんがそういうのでしたら、私これより陰謀論マスク改め、◯ビンマスクと名乗らせていただきます」
「あなたが調査した情報と望さん達の情報があれば、きっとあのディガルムを追い詰めることが出来ると思います。だから、これから一緒に頑張っていきましょうね、ゆ◯たまごさん」
「せめてマスクはつけて!」
士郎、儚、章太郎の三人は歩いたり、儚に担がれて飛ぶなどしてなんだかんだ上野の周辺まで戻ってきていた。
しかし、夜も遅く三人の体力……主に眠気がマックス。
未成年が出歩いていたら確実に補導の対象となる時間のためおいそれと歩き回ることも出来ない。
また古びたビルの屋上に潜む三人は身体を休めていた。
士郎は少し眠ると言って、儚は休みつつ周囲の警戒を行っている。
「ひぃん……やわらかいお布団に包まれて寝たい……」
「我慢しろっつの。軟弱な奴だな」
「そんなこと言って士郎兄ちゃん、さっきからめちゃくちゃ寝返り打って眠れてないじゃん」
「仕方ないだろ、眠れねぇんだから」
雑談をしながら、再び姿勢を変える士郎。
やはり眠れない。
そんな中、周囲を見ていた儚があるものを見つけた。
「あ……ホテル……。それもたくさんある……」
「うわぁ、いいなぁ。ホテル、泊まりたいなぁ」
「ホテルなら、ぐっすり眠れる……。ふかふかのベッド……」
「いいなぁ」
そんな二人の会話を聞いて、眠れない士郎は思わず口を挟んでしまった。
「……あのなお前ら。あのホテルはお前らが思ってるのとは違えんだよ」
士郎の言葉を聞き、儚と章太郎は顔を見合わせてから士郎に尋ねた。
「あのホテルは違うって、どう違うの士郎兄ちゃん」
「違い……気になる……。もしかして、ただのホテルじゃない……?」
「そりゃだって、あれは……」
そこまで言って、士郎は自分の愚かさに気付いた。
疲労と眠気のせいか、自分が余計なことを言ってしまったことを後悔する。
相手はまだ小学生と同年代とはいえ女子である。
おいそれと、それが何なのかを話すのは憚られるというもの。
「あれは?」
「なんなの士郎兄ちゃん?」
更に儚と士郎が問いかけてくる。
チラと目を開けてみると、とても純粋な目で士郎のことを見ていた。
余計に話しにくいというもの。
「教えてよ士郎兄ちゃん!」
「そこまで言って黙るとか、なんだかいやらしいです……」
「いやらしいってお前! ……いや、そういうんじゃなくてな。あれだよ、なんつうか、特別、つうか……」
「特別なホテル……!」
「すごいや! 士郎兄ちゃんは泊まったことあるの?」
「ねえよ!」
食い気味に否定してしまったことをまた後悔する士郎。
その横で、儚と章太郎が想像力を解き放っていた。
「特別なホテル……どんなのだろう!」
「お、おっきいベッドがある……!」
「お風呂もきっと大きいんだよ! みんなで入れたりするぐらい!」
「特別……そういえばいいホテルにはプールがあるって、チカさん言ってたから……特別だから、ウォータースライダーまで、ある……!」
「おもちゃもいっぱいあったら嬉しいな〜!」
「なんでそう絶妙に当ててくんだよ!」
我慢ならずツッコんでしまった士郎に儚と章太郎が詰め寄った。
「当たってるの! いいなー! ベルトとかある!?」
「ウォ、ウォータースライダーが、あんな細い建物の中に……!?」
「近付くな! 寝させろ!」
「泊まったことないのに士郎兄ちゃんよく知ってるね!」
「にへへ……実はいつか泊まるの楽しみ過ぎて調べてたんだ……!」
「違えよ! とにかくもう気にするな。俺達はどのみちホテルなんざで寝られる状況じゃないんだからな」
「にしてもこんなにホテルがたくさん並んでるなんてすごいね。ホテルの街みたいだ!」
「それにしても、さっきからホテルに入っていくの……男の人と女の人が一緒に入ってく……それに、謎のマークが……!」
「なになに謎のマークって!」
「18に斜線が……!」
「いい加減にしろぉぉぉぉ!!!!!!」
士郎の叫びが夜の街に響き渡る。
ここは大人の街、鶯谷。
大人になったら、またおいで。
「うるせぇよ!」
「シロウ……誰に向かって言ったの……!?」
「士郎兄ちゃんがおかしくなった!」
「誰のせいだ! 誰の!」
真っ黒な海に浮かぶ無人島。だが、その島には隠されたとある施設があった。
暗闇、狭小、多湿、高温。
快適の対極といった環境下を這い、潜入する者がいた。
全身黒のボディスーツで覆い、目元を隠す黒いマスクを身につけている。立派なスパイのような格好をし僅かな光を頼りに天井裏を突き進む女の名はハカリ。
「忍び込んだはいいものの、私が欲しいものはありますかね……。ヴァンダル・リーグの情報とか、あわよくばこの基地潰すとか……ん?」
「————」
「————」
排気口から通路で言葉を交わしながら進む白衣にガスマスクのような顔をした二人組を観察し、二人組が過ぎ去ったのを確認してハカリは通路へと音もなく降り立った。
身体のラインが出る、艶めかしいボディスーツ姿に目撃者がいれば見惚れていただろう。
「ふぅ……最悪な環境。それに、さっきの奴等の言語。どこの世界のものとも該当しない……。ヴァンダル・リーグ、一体どういう組織かしら……」
ハカリは各部屋を調べて回った。
この施設はその規模とは裏腹に駐在している者は少ないらしい。
部屋にも通路にも、あの二人組以外の人影が見えない。
セキュリティ面もとてもじゃないが厳重とは言えない。
「ハズレを掴まされた……? いいえ」
何個目かの扉を開ける。
室内には巨大なコンピュータらしき機械が稼働しており、カプセルの中にはいくつかの怪人達の魂が並んでいた。ハカリは慎重に室内を歩き、稼働中と思われるコンソールに目をつけた。
「前にどこかの次元航行船で似たようなものを見たことがあるわね……。これなら」
キーボードを叩き、操作していくハカリ。
表示される異界の言語を自身が保有する知識で一瞬のうちに脳内翻訳し、欲しい情報を探していく。
だが、どうにもハカリが欲しい情報にはアクセス出来ない。
ヴァンダル・リーグという組織そのものに関する情報が見当たらないが、ひとつ気になるファイルを発見。
開いて見ると、言語ではなく図面が表示される。
「これは……設計図?」
何かの建造物のようだ。
キーボードを叩くと、これがどういった仕組みのものかを理解しハカリは目を細める。
「ろくでもない組織だとは思っていたけれど、案の定ろくでもないことを考えるわね……。おそらく、儚もこれに関わってくるはず……」
前髪をかき上げ、ハカリは特製のメモリをモニターへと突き立てる。
ガイアメモリに似たそれはモニターの中へと吸収されていき、一人でにデータの記録を始める。
「さて、これ以外の情報は……」
「侵入者とは、珍しいものがいますね」
「ッ!?」
ハカリでも気付かぬ気配。
声の主はヴァンダル・リーグ幹部、カンナ。
白百合のような和装の女はハカリのことを何とも思っていないような、そもそも見えていないのではないかというような目で見つめていた。
「何者ですか」
「お姉さんは今お一人ですか? 私一人で心細くって〜。よければ一緒に回りませんか〜?」
媚びるような高い声を出す裏で、ハカリの警戒心は最大級。
接近されたことに気付かなかったのだから。
「回りません」
「ですよね〜……ッ!」
ハカリは咄嗟にリュックをカンナへと向けて投げ捨てる。
投げ捨てたリュックはカンナの周囲から放たれた氷の礫により細切れにされるが、時間を稼ぐのには役立った。
「ベルト……」
ハカリの腰に巻かれたベルトを見て、カンナは初めてハカリのことを視認し、睨み付けた。
「そのベルトは……墓守ですか」
「正解で〜す」
ハカリは紫の装丁のキセキレジスターを見せつけ、開帳。
すると、カプセルに閉じ込められていた魂達がキセキレジスターへと吸収されていく。
そして、データを抜き取り終えたメモリがモニターから排出されてハカリの手元に戻った。
「やってくれましたね……」
「ええ、やりましたっと!」
ハカリは床を殴りつけ、穴を開けるとそこから脱走。
もうすっかりなりふり構っていられない状態である。
警報が鳴り響く中、カンナは穴を見つめてぽつりと呟いた
「墓守の馬鹿力……」
ハカリは迷宮のような基地の中を疾走。
人気のない内部と思ったが、どこからともなく黒い人型の戦闘員が現れハカリを囲んだ。
戦闘員達はハカリに襲いかかるが、ハカリの体術で順番に蹴散らされていく。
そんな中、銃のような武装を構えた戦闘員を見つけたハカリは手近にいた戦闘員を盾にして銃弾をやり過ごす。
「面倒ですね〜。仕方ありません」
ハカリは盾にしていた戦闘員を蹴り飛ばし、銃撃してきた戦闘員達へとぶつけるとキセキレジスターを開き、筆で書き記す。
《ボディ ハチオーグ》
キセキレジスターが告げると、ハカリは黄色と黒に彩られた蜂の巣のようなハニカム広がるボディスーツ姿となる。
黄色のラインが怪しく煌めき、ハカリもまた妖艶な笑みを浮かべ筆を走らせる。
《アーマー 仮面ライダーネクストカイザ》
「変身」
《ハチオーグ×仮面ライダーネクストカイザ》
《幸福の支配者 新世代の力 新造女王》
《仮面ライダーグレモリー ゴルデントクイーン》
血管のような黄色のラインがハカリの身体を駆け巡るように広がり、アーマーを形成。
黒とグレーの大きなショルダーアーマーに胸を覆う巨大な円形のアーマーにはΧの文字が刻まれる。
胸と同じΧを象った仮面には紫の複眼の上にスズメバチのような凶悪なマスクが重なり紫光がソリッドから洩れ出て、仮面を守るようにクリアーなバイザーが覆う。
墓守ノベルトからは黄色の布が垂れて足を隠し、左手には黒い鞘に納められた刀が握られる。
右手で首元に触れ、首を回すとグレモリーは刀の柄を掴んだ。
「あらら、変身しちゃいましたよ。では、……参る」
鞘から抜かれる白刃。
腰を落とし、刃に手を添え鋒を戦闘員達へと向けると刃が黄色に発光。それと同時に駆け出し、戦闘員達を切り裂いていく。
「スパンといっちゃいますよ〜!」
飛び散る黒い液体。
戦闘員のアーマーを容易く斬り、貫く。
戦闘員の一人を貫いたまま押し込み、更にもう一人の戦闘員まで貫くと壁に画鋲を刺すかのようにして磔にする。
刀から手を離して振り向くと、黄色い刃を持つトンファーエッジ型の武装ハチクロスラッシャーを出現させ、銃口を向けて引鉄を引く。
光弾を乱射し、戦闘員達をまとめて倒すと戦闘員達の背後にカンナが立っていた。
グレモリーは壁に戦闘員ごと突き刺した刀を抜くとカンナの方を向き、鋭い瞳で睨みつける。
「さて、あなたとも戦いたいところですが……ま、それが目的ではないですし、退かせてもらいます」
「……させるとでも」
カンナの瞳が見開かれようとした瞬間、グレモリーは咄嗟に刀で目を隠した。
「仮面ライダー……それも、刀を使う奴は余計に嫌いです……」
「あらら、そうですか……。私は仲良くしたいんですけどねッ!」
《ACCEL COMPLETE》
《START UP》
音声が響く。
グレモリーの胸部アーマーが回転し、瞳が発光。
背にはスズメバチの羽のようなエフェクトが発生し、グレモリーの身体を走る黄色のラインの残像が迸り、グレモリーは超高速でヴァンダル・リーグの秘密基地を後にした。
「……仲良くしたいなら、逃げなければいいのに……」
一人残されたカンナはぽつりと呟くと、戦闘員達で築かれた屍の山に興味を示すことなく立ち去るのだった。
黒い水面から浮上し、岸壁をよじ登ったハカリは濡れた前髪をかき上げマスクを投げ捨て、先程まで侵入していた表向きは無人島に視線を送った。
「あの女、幹部ね……。こいつを借りてきて正解だった」
巻いたままの墓守ノベルトをポンポンと叩き、一人呟いた。
「あちらも私を墓守の一人と思ってくれたようですし、成果もまあ良しとしましょう」
メモリと回収した魂。
ひとまずこれがあればいいとハカリは潜入が無駄にはならなかったとこの成果に満足することとした。
「なかなかいい魂をグレイダーから購入されたようで。怪人だけじゃなく、ライダーの魂まで。それに、このデータ……」
ニヤリと口角が上がる。
ハカリはメモリをボディスーツの中に仕舞い、夜の闇の中へ消えていくのだった。