仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ディガルム×ハカイブ DARKNESS REBELLION   作:大ちゃんネオ

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ライダー危うし!

 夜が直に明けようというのにマリアは与えられた部屋で眠らずにいた。快適な寝心地を約束する最高級のベッドに腰掛けるだけである。

 士郎のコートをずっと握り締め見つめるマリアのもとに、また浦賀英雄が扉を開けて現れた。

 

「眠れないのかい?」

 

 英雄はあくまで笑顔を浮かべていた。

 が、士郎のコートに視線が向くと小さく舌打ちする。

 マリアはベッドから立ち上がり、英雄から距離を取った。

 

「まだそんなものを持っていたのか……」

「士郎さんの物、ですから」

 

 はっきりとした敵意の視線を英雄へと向けるマリアだが、英雄は知らないフリをした。

 

「ちゃんと眠ってくれないと困るな。夜更かしは美容の大敵だ。それに、昼には私達の結婚式なんだから。花嫁が寝不足じゃ困るよ」

「ふざけないでください! 誰が貴方なんかと!」

「仮面ライダーディガルムと共にあるヒロインだろう、君は。そして、私こそが仮面ライダーディガルム」

「違います! ディガルムは士郎さんです!」

「あんな奴に仮面ライダーが務まるか? 悪を名乗るような奴より、私の方が立派な正義の味方をしている。人々が求める英雄は、果たしてどちらだろう」

 

 マリアは俯き、これまでの士郎の戦いを思い返す。

 短い時間ではあるが、この目に焼き付けた戦いの記憶にある黒道士郎という男は……マリアにとって、ヒーローであった。

 マリアは英雄と真正面から向き合い、その男の瞳を見つめて言葉を紡ぐ。

 

「たしかに士郎さんは自分のことを悪だと言います。ですがそれは歪んだ正義と戦うからこそ、そう言うのでしょう。あなたもまた歪んでしまった正義だと私には思えます。そんな貴方の正義の前には必ず、士郎さんが。仮面ライダーディガルムが立ち上がるでしょう」

 

 まっすぐ、芯の通った力強い言葉であった。

 士郎を信じているからこそ、放てた言葉であった。

 マリアに見つめられた英雄の瞳はどこか震えた様子で、マリアから視線を外し虚を見つめた英雄は何かに縋るような足取りで歩き、近くのソファーへと腰を下ろした。

 

「……俺が中学生の時、家族が殺された」

「え……」

「父も、母も、妹も、みんな殺された。部活の合宿で家にいなかった俺だけが助かった。犯人はすぐに捕まったがね、裁判にかけられ奴は……無罪になった。証拠不十分だと。男は法廷を出る時、笑っていたよ。俺のことを見て。無罪となればその罪を問うことはもう出来ない。だから俺は誓ったんだ。犯罪者はみんな、この手で捕まえてやると。全ての罪人が裁かれるようにしてやると」

 

 静かに、だが確かにその言葉には熱がこめられているのをマリアは感じ取っていた。

 恐るべき、思わず後ずさってしまうような恐ろしい熱。

 しかし、英雄の話はまだ終わってはいなかった。

 

「警察官を志し、入庁したまでは良かったが警察もまた腐っていた。汚職は蔓延り、罪人を捕えられない。証拠、外国との関係、精神状態。いろんな理由をつけては罪を見過ごす。そんなことが許されていいはずがない! 法律すら狂い、裁判は形骸と化し、警察の正義は失墜した! だから俺が正義を執行する!」

「そんなことが許されるわけ……!」

「最早警察も政治家も俺の手中。裁きの塔も完成する。そうなれば、この世から罪人は消えてなくなる」

「裁きの塔……?」

 

 聞き慣れない単語をマリアは反芻した。

 唯一確かだと感じたのは、それが災いをもたらすものであるだろうということ。

 

「裁きの塔はこの世全ての罪人を殺す。刑務所に入っている奴等だけじゃない罪から逃れのうのうと生きてる奴等も全て! そうすればこの世には善人しかいない、平和な世界となる……!」

「罪人を全て……!?」

「罪人が全て消えた後、罪を犯せば裁きが下るとなれば罪を犯す者もいなくなるだろう。それを分かってもなお罪を犯す愚か者はこの世には必要ない。完璧な世界の誕生だ」

「そんなの間違っています! 罪を裁くのは法です。法が定める通りに罰が執行され、罪には等しい罰が与えられます。あなたの言うそれは罪以上の罰を与えるものでしょう。それはやがて世界の全てを殺します」

 

 マリアの反論に、英雄は乾いた笑いで応えた。

 そうして、ぽつりと。

 

「もしも、そうなるのだとしたら。そんな世界はなくなるのが道理だろう」

 

 闇に飲まれた瞳を向けられ、マリアは呼吸を忘れたかのような錯覚に陥る。

 そんな中、英雄のスマートフォンに着信。

 英雄は端末を耳に当て、誰かと通話を始める。

 

「私だ」

「浦賀英雄……裁きの塔のデータが盗まれた」

 

 電話ごしの声の主はカンナであった。

 

「なに?」

「墓守が介入してきた。仲間に情報が行くでしょうね」

「淡々と話してくれるな。データを盗まれたのは君の罪だろう」

「盗む方が悪い……」

「まあいい。裁きの塔はもう完成する。そうすれば邪魔者は全員いなくなるのだからな」

「そう……。仮面ライダーには、用心することね……」

「ふざけたことを。私が仮面ライダーだ」

 

 カンナからの返答はなく、通話が途切れる。

 英雄はスマートフォンを仕舞うと部屋から立ち去ろうとし、ドアノブを握ったところで振り返り、マリアへと向けて言い放った。

 

「もう誰にも止められない。俺の正義は」

 

 英雄は部屋を出ると、マリアは士郎のコートを抱きしめ、士郎のことを想い、彼の名を口にした。

 

「士郎さん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明るくなる瞼の向こう側に、目をゆっくりと開ける。

 遠く、太陽が昇りつつあるよう。

 そんな陽光を受けて、美しい銀の髪が煌めいて……咄嗟に、その名を呼んで起き上がった。

 

「マリアッ!」

 

 その背に手を伸ばす。

 だが、銀髪の少女は……。

 

「起きがけに女の人の名前を呼ぶ上に人違いとか……。マリアという人がいたら、怒られてますよ」

 

 銀の瞳がいかにも呆れたといった風に見つめている。

 それもそうだろうと士郎は右手で顔半分を覆った。

 

「なにやってんだ、俺は……」

「まったく……女性の前でやってはいけないことランキングで上位に入ることを……」

 

 そう言いながら、儚は士郎の方を向いてやれやれと首を振っていた。

 お前にだけは言われたくないと思いながら、士郎は話を逸らすべく気になったことを儚に問いかける。

 

「ずっと起きてたのか」

「見張りは必要ですから……」

「ローブはどうした……って、なるほどな」

 

 尋ねると同時に士郎の前に答えが転がっていた。

 寝息を立てる章太郎に掛け布団代わりに儚の黒いローブがかけられていたのだ。

 そのため、すっかり露となった儚の姿。

 腰まである長い銀の髪。

 透き通った、大きな銀の瞳。

 処女雪のような白い肌。

 ローブの下に纏っていたのは黒い軍服のような詰襟に、丈が膝より上の黒のプリーツスカート。

 足までタイツで黒い。

 ローブを脱いでも服装は黒一色である。

 

「お前、案外優しいんだな」

「案外は余計です……」

「はっ。お前の顔、初めて見た気がするぜ」

 

 蜘蛛男のボディスーツ姿の時にも見たが、夜だったので暗くはっきりとは見えなかった。

 白日の下で晒された儚の素顔に、士郎は話だけでなく目も逸らす。

 

「お前は寝なくて平気か。ずっと見張りしてたんだろ」

「こちらの人類と違って頑丈ですので」

「そういやそうだった。馬鹿みてぇな身体してんだった」

「誰が馬鹿ですか」

「お前だよ」

「なんっ……よしましょう。ショウタロが寝てますから……」

「……そうだな」

 

 喧嘩勃発かと思われたが、章太郎を起こしてしまうかもしれないと二人は矛を収める。

 

「子供には優しいんだな、お前」

「……お前が寝たあと、少しショウタロと話した……。ショウタロ、お父さんとお母さんが死んじゃって、おじさんに引き取られたって……。儚も、血の繋がった家族はいない……。お父さんとも、血の繋がりはない……」

「お前……。俺も、親父とお袋、それに兄貴を失った」

「シロウも……」

「一年前にな。今は、マリアとおっさんのとこに居候中だ」

「儚も、今は結城荘でチカさん、ノゾミさん、リオさん、ユウリさん、アユさんと一緒に暮らしてる……。コミュ力向上の修行のため……」

「全然修行になってねぇんじゃねぇか? いや、悪い。悪かったからそのコンクリートの塊は下せ、な?」

 

 落ち着くよう儚に促す士郎。

 自業自得ではあるのだが、流石にこれは洒落にならない。

 以前、マリアから風呂桶を投げつけられたことはあったが、これはその何倍も危険である。

 ただでさえコンクリートであるのに、それを投げるのが儚ともなれば座っている体勢で片手からでも砲弾並の威力が生まれるだろう。

 渋々とコンクリート片を下ろした儚を見て、ホッと胸を撫で下ろした士郎は安心したせいかこんな言葉を洩らした。

 

「なんつうか、似た物同士なんだな、俺達」

「え、嫌なんですけど……」

 

 本当に嫌そうな顔を、儚はしていた。

 

「俺だって嫌だよ! ああくそ、なんでこんなこと言っちまったんだ」

「……ま、言わんとしたいことは分かります……。血の繋がった家族はなく、先人達の力をお借りして戦う仮面ライダー……」

 

 ディガルムはダークライダーの力を。

 ハカイブは死したライダーと怪人の力を。

 偉大な先人達の戦いがあったからこそ、二人は今、ここにいる。

 

「ああ……。俺達は借りなきゃなんねぇんだ。たくさん、力を……。儚、お前の力も借りるぞ」

「はっ……儚も、借りてあげますよ。シロウの力とかいうやつ」

 

 互いに、憎らしげな笑みを浮かべる二人。

 空高く登ろうとする二人の顔を、太陽が照らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 喫茶Hamelnは今日もまた一日臨時休業として、士郎と儚を支える前線基地として働いていた。

 莉緒が握ったおにぎりで腹ごしらえし、千佳は儚への情報伝達を行い、残った望達は奥のテーブル席で何やら忙しなく準備中。

 そんな中、Hamelnの扉が開いて鈴が鳴る。

 白瀬陽子と陰謀論マスクの二人が合流した。

 

「おはようございます。すいませんすっかり準備を任せてしまって」

「大丈夫ですよ〜。本番は白瀬さんが矢面に立つんですからこれぐらいは〜。◯棒さんもよろしくお願いしますね〜」

「朝から飛ばしますね、ノゾミンゴさん。それより普通に本名の米田寛也と呼んでいただけると、とても助かるのですが。まわりの目もあることですし」

 

 女性だらけの空間で、そんな単語を発していいものか。

 そもそもそんな風に呼ばれるのはだいぶ……だいぶである。

 そうしていると、優李がはじめましてと朝から元気よく米田に挨拶した。

 

「あ、この人が肉巻きおにぎりさん!? わたし、瀬尾優李って言います! 若手女性声優です!」

「あ、これはこれは声優さんですか、たしかにお声が素晴らしいですな。それと私、肉巻きおにぎりではなく、米田……」

「おー、来たか。肉じゃが」

「あゆさん、米田です」

 

 奥の席からひょっこりと顔を出したあゆが声をかけた。

 そして、ひとしきり儚と通話を終えた千佳が申し訳なさそうに米田へと近付き、話しかけた。

 

「ごめんなさいうちの奴等が〜。あ、私、新田千佳といいます〜」

「これはこれはご丁寧にどうも。ようやく真っ当な人に会えて、私感動のあまり涙が……」

「ふざけた連中ですけど、やる時はやりますから。どうか力を貸してください。回鍋肉さん!」

「一瞬で涙が引っ込みました」

 

 目元を拭っていたハンカチを仕舞い、米田は毅然とした態度で言い放つ。

 そこへ、来客が来たからと莉緒がお茶を持ってやって来た。

 

「どうぞ」

「これはこれはどうもありがとうございます。あの、私、米田寛也というもので……」

 

 米田が名乗る中、莉緒はまっすぐと米田と向き合い、視線を交わす。

 莉緒の方が背が高いので自然と見下ろされる形となり米田は緊張を表わにした。

 そして、莉緒は自分の名を告げる。

 

「長谷部莉緒。肉料理でも、負けませんから」

 

 踵を返し、キッチンへと帰っていく莉緒。

 そんな莉緒の背に向かい、米田は叫んだ。

 

「私、肉料理の専門家じゃありませんから!」

 

 そうこうしている間、陽子は奥の席に設けられた簡易的な撮影スタジオの様子をチェックしていた。

 

「いいんですか? 局アナがこんなことして。干されるどころかクビとかなるんじゃ」

 

 あゆが心配そうに尋ねるが、陽子はまったく気にしていなさそうに笑顔を見せた。

 

「いいんです。マスコミとして、伝えるのは真実。それだけです。真実を発信してクビにされるなら、こっちから辞表を叩きつけてやります」

 

 それは正しく、信念というものであった。

 決して揺るがない、まっすぐ力強いもの。

 そんな彼女を前にして、あゆは……。

 

「普段マスゴミとか言っててすいません……」

「ええっ!? いや、そんないいんです。いろいろ思い当たる節はあるから……」

 

 ぺこりと頭を下げるあゆを前に、色々と嫌な記憶を思い出す陽子。

 業界の闇というものである。

 

「それじゃあ段取りの確認をするわね〜? 白瀬さんがMCで米田さんの話を聞くって体で進めて、アナザーディガルムの闇を暴いていくって感じで〜。あらゆる配信サイト使っていくわよ〜」

 

 望が複数のモニターと向かい合い、あゆが簡易的な照明係、優李がAD的なポジション。とにかくなんでもこなす雑用係。

 そして千佳が黒いカーディガンを羽織り、両袖を胸の前で結んでいた。

 

「よーし数字稼ぐわよ」

「千佳は何もしてないでしょ〜」

「うっさい。儚との連絡役してるでしょうが」

「でも連絡つかないんでしょ?」

「多分スマホの充電がね……」

 

 その頃、儚達は。

 

「ひぃん……充電切れた……」

「連絡取れなくなっちゃったの?」

「なっちまったもんはしょうがねぇ。お前の仲間があれこれやっている間に俺達は俺達で動くぞ」

「それじゃあ……行きますか」

 

 士郎と儚は互いの愛車に跨り、ヘルメットのフェイスシールドを下ろす。章太郎は士郎の後ろに乗り、予備のヘルメットを被るがサイズが合っておらずブカブカなものを

 

「悪いけど、それで我慢しろよ」

「大丈夫!」

「よし、じゃあ行くぞ!」

「作戦、もういっそのことハチャメチャの暴れ野郎になろう〜……始動!」

 

 アクセルを吹かし、儚はショーリョーマッを発進させる。

 それに一拍遅れ、士郎がツッコミながら追随。

 

「そんな作戦名つけた覚えはねぇ!」

「どけどけ〜! シロー・クロミチ様のお通りだ〜!」

「恥ずかしいからやめろ!」

「本物の仮面ライダーディガルムのお通りだぞ〜!」

「章太郎もやめろ!」

 

 三人だけの暴走族。今風に言えば珍走団となって駆ける2台のマシンが朝の街を騒がせる。

 

「おい! これじゃ余計に俺達が悪者みたいだろ!」

「散々、悪だ悪だ言ってきたくせに今更何を……」

「う、うるせぇ! それとこれとは話が別だ!」

 

 反論する士郎だが、内心では危うく認めかけてしまったところもある。自身が称する悪とはそういった悪ではないと弁を尽くしたくもあるが、今はそれどころではないし、儚というキャラはそういった言葉に耳を貸すような質ではないと共に過ごした短くも濃い時間の中で理解した。

 なので、これ以上の反論はしない。

 そして、反論する時間も与えてくれそうにない。

 

「士郎兄ちゃん! あれ!」

「ああ。分かってる」

 

 警察の検問がライダーの進路を阻む。

 士郎と儚は目を細めて障壁を睨みつけ、二人は顔を一瞬見合わせて意思を確認。

 

「止まれー! 止まれーっ!!!」

 

 警官の呼び掛けには応じない。

 風を切るマシンの速度は上がり、2台のマシンが宙を駆けた。

 警官達の頭上を飛び越え、検問を突破。警官達は走り去り小さくなっていく背中を見つめるばかり……かと思いきや。

 

「なにしてる! 指名手配犯を捕まえろー!」

 

 この場を指揮していた警官の一人が周りの警官に発破をかける。

 

「必ず捕まえるんだ!」

「し、しかし相手も変身するんですよ! 我々が捕まえられるとはとても!」

「まったくこれだから最近の若いのは……。もういい!

俺一人で捕まえてやる!」

 

 警官はパトカーに一人乗り込み、荒い運転で士郎達を追いかける。

 一人でぶつぶつと必ず捕まえてやると意気込みながら。

 その執念が、怪人の魂を引き寄せる。

 

「っ! 怪人の魂の気配……!」

 

 背後から迫る気配に儚はショーリョーマッを停める。

 それに気付いた士郎もまたバイクを停めてヘルメットのシールドを上げた。

 

「どうした!」

「魂融合怪人が来る……!」

「なに……!」

 

 士郎が背後を振り返ると、1台のパトカーがけたたましくサイレンを鳴らしながら近付いていた。が、そのパトカーを運転している者の姿を見て士郎は舌を打った。

 

「警官が怪人にでもなったか」

「ここは儚に任せて……。二人は先に……」

「いいや、ここは……二人であいつをチャチャっと倒す!」

「はっ……まあ、シローがいなくてもチャチャっと倒せますが……」

「うるせぇよ! 章太郎、その辺に隠れてろ」

「うん!」

 

 マシンから降りた士郎と儚は道路の真ん中に立ち、加速するパトカーと相対しながら変身する。

 

暗黒龍を従えし裏切りの剣士!ダークドラゴン!

 

《仮面ライダーハカイブ アサルトゴシック》

 

 二人が変身すると同時に、今にも轢き殺してきそうな勢いで突撃してきたパトカーを受け止めると、フロントガラスを割って魂融合怪人が飛び出してくる。

 8つの目を持つ蜘蛛のような頭。その上に警察帽を被り、黄色く豹柄の身体の上にはボロボロの制服を着た魂融合怪人。

 怪人は蜘蛛と豹の運動性を見せつけるかのように軽々と着地すると二人の仮面ライダーに対して威嚇するようにファイティングポーズを構えた。

 

「シャァァァ……!」

「ズ・グムン・バとヒョウアマゾンですか……」

「なんだこいつ。コスプレ趣味か?」

「指名手配犯を捕まえて……出世するんだぁッ!」

 

 怪人は手の甲から2本の鉤爪を伸ばして飛び掛かる。

 冷静に回避するディガルムとハカイブは反撃のコンビネーション。ディガルムが怪人を殴り飛ばし、ハカイブが蹴り飛ばす。このコンビネーションに怪人は窮地に立たされる。接近戦は分が悪いと口から糸を放つもディガルムのドラゴブレードに斬り捨てられ、ハカイブが手から出した糸に怪人は足を逆に巻き取られ、転倒し二人のもとへと引き寄せられてしまう。

 そんな怪人を、紫炎滾る黒龍剣ドラゴブレードを構えたディガルムが待ち受ける。

 

「ええと……あなたの戒名は……クモヒョウオマワリです」

「龍炎十文字斬り!」

 

 地を這う怪人クモヒョウオマワリをまず縦に一閃。そして、振り向き様に斬撃を浴びせ爆発。

 ズ・グムン・バの魂とヒョウアマゾンの魂はハカイブのキセキレジスターに回収され、警官が意識を失って倒れるのみ。

 

「やっぱお前、ネーミングセンスないわ」

「そういうシローはセンスが古い……」

「んだと!」

 

 口喧嘩に発展しそうなところであったが、パトカーのサイレンが聞こえてきたのでそれぞれへの文句をぐっとこらえて先を急ごうとした士郎と儚であったが、二人の前に新たな敵が立ち塞がった。

 赤いバイクが停まる。

 二人には見覚えしかないバイクである。

 ヘルメットを脱いだ男は、二人の予想通りの人物。

 

「浦賀英雄!」

「通報を受けて駆け付けた。さあ、正義を執行させてもらおうか」

 

『DEGARM』

 

「変〜身ッ!」

 

 アナザーディガルムライドウォッチを自身の下腹部に当て、体内へと入れる浦賀。その身は真紅の戦士へと変貌を遂げ、勇ましく名乗りを上げる。

 

「仮面ライダーディガルム!」

 

 燃え滾る炎の戦士アナザーディガルムはディガルムへと殴りかかり、交戦開始。

 拳の応酬の末に、二人のディガルムは組み合い仮面で睨み合った。

 

「こっちから行ってやるつもりだったけど、わざわざ出てきてもらって悪いな」

「警察官なのでね。通報を受けたら駆け付けるのは当然だろう?」

「キザなヤツ!」

 

 二人は同時に距離を取る。

 だが、アナザーディガルムが一人なのに対してディガルムには仲間がいる。

 後方へと退くアナザーディガルムへと飛び蹴りを放つハカイブ。アナザーディガルムは腕を交差させて防御するが、勢いを殺し切れずに吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐおっ!?」

「シロー……! さっさとトドメ……!」

「おう!」

「いいのかな……そんなことをして……」

 

 必殺技を放とうとするディガルム。だが、アナザーディガルムの言葉に中断し、その真意を問いかけた。

 

「どういう意味だ」

「ハカイブとか言ったか……。君の仲間は警察が確保した」

「えっ……そんな! チカさん達が……!」

 

 この少し前、喫茶Hamelnで行われた生放送は平日の朝にも関わらず再生数が伸びていた。

 

「それでは仮面ライダーディガルムの事件は全て、自作自演だと?」

「私はそう考えています」

 

 顔を隠し、声を変えた米田にインタビューする白瀬陽子というよく見る形式。

 結城荘入居者の面々が撮影を進行し、望は視聴者数にウハウハしていた。

 

「ふふ〜これで収益化したら……結構いい額じゃな〜い」

「いや、これ出来るの収益化」

 

 若干引き気味に千佳が訊ねた。

 

「まあ、実際出来るかはともかく〜」

「てか、コメント欄すごい荒れてるんだけど」

「覚悟の上でしょ〜? いま正義とされてるものに唾かけるようなことしてるんだし〜」

「まあ、そういうもんか……」

 

 ともかく、この調子でアナザーディガルムについて少しでも周知させることが出来ればと放送を続ける一同であったが、千佳はサイレンの音が近付いてくるのにいち早く気付いた。

 サイレンの音が近付いて、全員の耳に届くようになると店の前にパトカーが何台も停まり、警官隊が店内に突入してくるではないか。

 

「一刻も早く放送を中止しろ!」

「お、おい! 今日は店休みだぞ!」

「マスター含め、全員連行しろ!」

「ちょっ! どこ触ってんのよ!」

「黙れ! 触られるような胸もないくせに!」

「なんだとこの腐れ警察!」

「公務執行妨害も罪状に追加だ!」

 

 こうして、結城荘の入居者と喫茶Hamelnのマスター権兵衛、白瀬と米田もまとめて一斉検挙されてしまったのだ。

 

「おとなしく捕まれば、悪いようにはしない」

「お前、卑怯だぞ! それでも警察か!」

「警察だからこそ、悪人を逮捕した。それだけのことだよ。悪人である君達に味方し、世間を煽動しようとした。なかなかの重罪だよ」

 

 罪状を国家反逆罪にでもしようか?

 そう煽るアナザーディガルムに怒りが沸くハカイブだが、下手に行動すれば仲間が危ないと身動きが取れない。

 雁字搦めとなったライダー二人に対してアナザーディガルムは鼻で笑い、炎の剣を生成。

 

「龍炎十文字斬り!」

 

 赤い炎の十字架が放たれ、ディガルムとハカイブに直撃。二人の変身は解かれ、倒れ伏す。

 

「ぐっ……!」

「くそ……!」

 

 地面で踠く二人を嘲笑うアナザーディガルム。

 二人の周りを警官達が取り囲み、二人は確保されてしまう。

 

「士郎兄ちゃん! 儚姉ちゃん!」

「章太郎……お前だけでも逃げろ!」

「ショウタロ……あれは任せた……!」

 

 士郎と儚の言葉を受けて、章太郎は一人走り出した。

 警官がそんな章太郎を追いかけようとするが、変身を解いた浦賀に引き止められる。

 

「いい。どうせただの子供だ」

「はっ」

 

 そう余裕ぶったのも束の間。

 さっき、章太郎に向かって放たれた言葉が浦賀には引っ掛かった。

 

「あれは任せた……?」

 

 一体、何を任せたというのか。

 あんな子供に。

 いや、きっとハッタリだと思考を振り払おうとする。

 

「そうだ。ガキに何が出来る……。おい、そいつらからベルトを外しておけ。無力化するんだ」

「ベルト、ですか? 男の方は、普通のベルトをしていますが、ベルトというのは……?」

「なに?」

 

 どけ!

 そう声を荒げるのには充分であった。

 先程まで、確かに二人はベルトを巻いていた。それが見当たらないはずがない。

 

「あれは任せた……!? まさか、さっきのガキに! おい、今すぐあのガキを追いかけろ!」

「あの子供はいいんじゃ……」

「いいから行け!」

 

 嫌な予感が胸中で渦巻く。

 一体いつの間に。

 いや、あり得ない。

 二つの可能性がせめぎ合い、疑心に囚われる浦賀。

 あれ、とは。ベルトのことだろう。

 この二人はベルトをあの少年に託したということか。しかし、そんな素振りはなかった。

 だが、ライダーの力は特殊なものもある。いつの間にか、あの少年の手に渡っていてもおかしくはない。

 

「ふ……だが、ベルトをガキ一人に託したところでどうなるというんだ」

 

 浦賀は勝利を確信した。

 どうせあんな小学生すぐに捕まるだろうと。

 手錠をかけられ、パトカーに乗せられた士郎と儚を見つめる。そして、警官達が去り一人となった浦賀はその場でいよいよ笑いを堪え切れなくなるのだった。

 

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