こちらのシリーズは主に短編で練習がてら書いていきます。

毎年展開されているであろう、トレーナーとウマ娘の関係を少しでも表現できれば幸いです。

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『冬の終わり』 side:モブウマ娘とそのトレーナー

3年目の冬が終わって、貴方(トレーナー)との契約も残すところあと少し。

 

最後まで言い出せ無かった言葉が、冬の夕焼け空に残ってる。

 

夏合宿の夜、浜辺に呼び出したのに伝えれなかった言葉を伝えたいから。

 

 

「あのね、トレーナーさん…」

 

目線を向けると

 

 

「………ちょっとまってね。ごめん、言いたいことがあるのに(つか)えちゃった」

 

 

 

そう言って俯く(うつむ)私に貴方は「待つよ」と言ってくれた。

 

 

伝えたい言葉なんてずっと決まってる。

 

でもその言葉がどうしても出てこない。

 

どうしても喉から出せない。

 

 

ねぇ。

 

どうしたらいいのかな。

 

 

 

貴方(トレーナー)にとっては、幾多のウマ娘かもしれない。

 

貴方(トレーナー)にとっては、私は貴方がこれから契約していく多くのウマ娘にすぎないかもしれない。

 

でも、私にとっては貴方は最初で最後。

 

唯一で他に代わりなんて世界のどこにも居ない人。

 

 

 

最初は貴方と契約できた事が嬉しかった。

これでスタートに立てたんだって、貴方(トレーナー)の事なんか見てなかった。

 

酷い話だよね。

 

 

 

周りの同級生(ウマ娘)達がトレーナー契約していくのを見て、すっごく焦ってたんだ。

 

何度も走った選抜レースでやっと2位になれたのに、誰も声をかけてくれなくて。

 

そんなときに声をかけてくれた貴方の誘いに縋(すが)って、しがみ付いちゃった。

 

 

 

 

 

貴方(トレーナー)の厳しさに何度も挫けそうになった。

 

貴方(トレーナー)の優しさに何度も支えられた。

 

貴方(トレーナー)の真剣な眼差しに目があった時、心臓が跳ね上がった。

 

貴方(トレーナー)がゴール前で叫んだ『私の名前』に背中を押された。

 

貴方(トレーナー)がウイナーズサークル前で泣いているのを見て何かが満たされた。

 

貴方(トレーナー)が届いた勝負服を見て泣いてる私を優しく励ましてくれた。

 

 

 

 

 

貴方(トレーナー)を、こんなに大事に想うなんて思わなかった。

 

貴方(トレーナー)を、こんなに愛しいと想うなんて想像できなかった。

 

 

 

だから誰にも渡したくない。

 

胸から込み上げてくるナニカが溢れて止まらない。

 

もう溢れちゃったんだから、仕方ない。

 

もう言っちゃおう。

 

 

「…き…で…」

 

もう一回。

 

「好きですっ!」

 

もう一回っ!

 

「ずぎでずっ!」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

もう何が何だかわかんない。

 

色んなものが溢れ出して、涙が止まらない。

 

でも伝えることができた。

 

それだけでも満足できた。

 

 

 

「…先に言われたちゃったか」

 

 

(え?)

 

風に乗って聞こえた言葉に耳が跳ねる。

 

(え?え?)

 

「本当は卒業式でって思ってたんだけど…」

 

 

待って。

 

私いまひっどい顔してる。

 

貴方(トレーナー)が差し出す小箱が滲んで見えない。

 

何度も何度も袖で顔をぬぐっても溢れる涙が止まらない。

 

 

 

「俺と結婚してくれますか?」

 

 

 

 

夕焼け空に響いた声(音)は確かに聞こえて。

 

私は、何度も頷いていた。

 

 


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