魔法少女観察記   作:ジン

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 放課後、クラスメイトと別れて家へと向かう一人の少女。彼女の名前は如月有紗(きさらぎありさ)。黙々と帰り道を歩く有紗であったが、途中でふと違和感を感じ取って立ち止まる。

 

(この感じ……人払いの術に近い)

 

 自身もよく使う魔術に似た気配を感じ取って警戒する有紗。彼女には一つの秘密があった。表向きの姿はただの女子高生であるが、退魔士の一人として怪異の討伐を生業とする魔女でもあるのだ。いつでも魔術を行使できるよう周囲を警戒しながら、慎重に術を辿って中心へ向かっていく有紗。発動地点に辿り着いた有紗が目撃したのは想像だにしない光景だった。真っ黒な装束に身を包んだ人型の何かと、ドレスのような服を着込んだ少女二人組が戦っていたのだ。

 

(え、なにあれ)

 

 困惑する有紗。というのも有栖とこの地区に居る退魔士は面識があり、その中に少女達が居なかったからである。また、黒装束の人型からも怪異に類するモノの気配を感じ取れなかったためでもある。しかしそれでも彼女は歴戦の退魔士であった。すぐに平静を取り戻すと隠蔽の魔術を自分に施し、同時に魔術を用いて目の前の戦闘を記録する。

 

 しばらく時間が経って、少女二人が勝利すると、倒れ伏したヒトガタは塵となって消滅する。そして戦闘終了後の二人と一匹──途中で妙な生き物も混ざってきた──の会話を盗み聞きした有紗は以下の情報を得た。

 

 ・二人は魔法少女という存在であること

 ・あの妙な生き物から渡される変身アイテムから力を借りて戦うこと

 ・地球侵略を目論む異世界の帝国があり、ヒトガタはその尖兵であること

 ・あの妙な生き物は帝国と敵対する王国から来た使者であること

 

 これらの会話を記録した有紗は隠蔽術を展開したままその場を離れ、家に戻って退魔士協会の上層部へと記録した内容を転送した。

 

「まさかあんなものを見るだなんてね……」

 

 アニメの中の存在でしかないと思っていた魔法少女が実在したことに多少なりとも動揺したのか、自室の椅子に深く腰掛けて溜息をついた有紗。しばらく目を閉じたままジッとしていたが、心の整理が着いたのか高校で出された課題に取りかかる。

 

 

 

 

 

 翌日、放課後になり帰路についた有紗。玄関に立つ小柄な人影を見て一瞬眉をひそめたが声を掛けた。

 

「それで、今日は何の用?」

 

「なに、ただ協会の言伝を預かってきただけだよ」

 

 玄関に立つ少女はそう返答する。彼女は本宮唯(もとみやゆい)。有紗と同じく退魔士であり、《書架の魔女》の二つ名を持つ魔女だ。

 

 外で立ち話をするのもなんだろうと家に入る二人。有紗の自室に上がり椅子に座ったところで唯が口を開く。

 

「先程も言ったが、私は協会からの指令を伝えに来た。方針としては基本的に傍観とのことだが、私達退魔士の存在が露見しない範囲で介入し、魔法少女達が勝利するように導けとのことだ」

 

「私達の存在を秘匿するのはいつもの事だけれど、魔法少女側に対してはどうなの?」

 

「あまり好ましくは無いが、最悪それでも問題は無いそうだ。古くから世界の裏側に居た退魔士と、つい最近現れたばかりの魔法少女では世間に対してのインパクトが違うと上は考えているようだね」

 

「分かったわ。それにしても貴女レベルの術士を伝言役に使うなんて贅沢な話ね」

 

「私は丁度この辺りに用事があったからだよ。それと久しぶりに友人と話したかったのもある。そもそも魔法少女とやらのお守りをさせられるキミに言えたことじゃないだろうに……《瞳の魔女》」

 

 如月有沙(瞳の魔女)本宮唯(書架の魔女)。この二人は日本でも上位に入る退魔士であり、その優秀さゆえに二つ名を与えられていた。

 

 一拍置いて唯が再び話し始める。

 

「実際のところ、魔法少女なんかに頼らなくたってすぐに解決する方法はあるんだ」

 

「この国の()()ね。でも流石にあれを暴れさせる訳にはいかないでしょ?」

 

「その通り、あの人が出れば片手間で国ごと燃やして解決だろうね。でもその領域の個人が居るだなんて公になってしまうと非常に面倒なことになるのは火を見るより明らかだ」

 

「だからそれは最後の手段。そうならないように誘導するのが私の仕事って訳ね。じゃあ早速準備をするとしましょうか」

 

「私の用事もまだ時間に余裕があることだし、せっかくなら見せてもらおうかな」

 

 昨日魔法少女が戦った場所に移動した有紗と唯。この場に残る戦闘の痕跡を解析し、それを触媒として魔法少女の居場所を特定することが目的だ。目を閉じて魔術を起動する有沙。彼女の二つ名(瞳の魔女)が示すとおり目に関する魔術を専門とする魔女であり、その知識と技術を用いて場に残る力の痕跡を読み取っていく。それと同時に起動した千里眼の魔術によって同じ力の反応を捜索し、魔法少女の居場所を特定した。

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