魔法少女観察記 作:ジン
「遊ばれているね」
「剣術だけ見ても相当の技量があるわね。それに幻術との組み合わせも相当に練り上げられてる」
魔法少女と魔人の戦闘を評する唯と有紗。二人の見ている先では二対一でなお劣勢に立たされている魔法少女の姿があった。単純な身体能力では互角だが、戦闘経験においては魔人が大きく勝っていたためだ。
今まで魔法少女が戦っていた影の兵士は魔法で作られた人形のようなもので、知能も低く単純に暴れるだけだった。そのため、魔人の様に搦手を用いる相手と戦った経験が無いのだ。
「あれ、キミならどうする?」
「まず対抗魔術で幻覚を防ぐわね。真っ向から剣技で戦うのは少しリスクがあるから、距離を取ってから引き撃ちかしら。そういう唯はどうするの?」
「私も似たようなものかな。有紗と違って近接は苦手だから不意打ちで飽和攻撃するのがいいかもしれないが」
「それがありなら私だってそうするわよ。というか貴女、近接苦手っていってもどうにでもなるじゃない」
魔人と魔法少女の戦闘を見ながら話す有紗と唯。しばらくそうしている内に、魔法少女が追い詰められていた。疲労が見え始めている彼女達を見て唯が口を開く。
「そろそろ頃合いじゃないかな。じゃあ事前の打ち合わせ通りにこっちは私がやるよ」
「そうね、早めに呼んでおきましょうか」
そう言って有紗と唯はそれぞれ魔術を発動させる。魔人が作り上げた罠の魔法に干渉し、制御の乗っ取りを始める唯。それに対して、有紗は遠隔で暗示の魔術を再起動させる。
「この程度ですか。魔力量はあっても扱いが下手。戦闘技術も粗すぎますねぇ」
陽葵と晶に向けて魔人が嘲るように言う。まだ余裕を見せる態度の魔人に対して、肩で息をする魔法少女。敢えて斬らずに遊んだのか、細かい傷はあっても深い傷は一つも無かった。自らの勝利を確信し、トドメを刺そうと魔人が剣を構えた瞬間。
パン、と何かが弾けるような音が鳴った。
「ぐぅっ!?」
背中に強い痛みを感じて硬直する魔人。その隙に数度の破裂音が鳴り、更なる痛みに襲われた。どうにか痛みを堪えて振り向くと、その先には一人の青年が無骨な拳銃を構えて立っていた。
「援護は上手く行ったようだね」
「まさか偶々かけた暗示が役に立つなんてね」
魔人に不意打ちで銃撃を当てた青年を見て話す魔女二人。今魔法少女の戦いに割り込んだ青年は、先日有紗が西区の調査をしていた時に暗示をかけた相手だ。結局のところ何かを命令する必要も無かったので半ば忘れていた有紗であったが、唯と作戦会議をしたときに思いだしたことで「折角なら保険として組み込もう」という話になった。
「じゃあ今度は私の番だね」
戦況を見て魔術を発動させる唯。弾を撃ち尽くしたのか、慌てて弾倉を替えようとする青年。当然それを黙って見ている筈も無く、一息に距離を詰めて斬り捨てようとする魔人であったが、タイミングを見計らった唯の妨害を差し込まれる。自分が仕掛けた罠の警報機能を逆手に取られ、大量の情報を脳内に流し込まれる魔人。それを処理しきれずに動きが止まった隙を突いて、後ろから魔法少女二人の攻撃を無防備に受けてしまう。敵に前後を挟まれ、禄に行動も取れない状況ではどうすることも出来ず、魔人が倒れるのにさして時間はかからなかった。