魔法少女観察記 作:ジン
協会からの指令によって魔法少女の監視を始めた日からしばらくの時間が過ぎた。最初は常駐させた千里眼で魔法少女の監視を行なっていた有紗だが、監視手段を使い魔に切り替え、引き続き動向を追っていた。また、魔法少女と敵対する勢力の動向も探る必要があると考え、偵察用の使い魔を周辺の街にまで派遣することで情報網を構築していた。
「ここ最近、影の出現頻度が増えてるわね……」
使い魔からの定期連絡に目を通す有紗。机には周辺の街を含めた地図が広げられており、魔法少女と影の兵士が戦闘を行なった場所と日時が記録されている。その記録を見ると、五日前から影の兵士の出現頻度が僅かに増加しているのだ。
「ん? ちょっとおかしいわね」
地図を見ていた有紗は違和感を抱く。影の兵士の出現頻度が増え始めた五日前、その時から一体も出現した記録の無い地区があることに気が付いたのだ。
「西区か……」
そこは治安が悪く、反社会的組織が複数集まっているとして地域からは敬遠されている地区だった。何か作為的なものを感じた有紗は使い魔を追加で派遣し、西区でより密な情報収集を行なわせた。
「当たりね」
翌日、西区に派遣した使い魔からの報告に目を通す有紗。そこにはこれまでの影の兵士とは明らかに違う、怪人とでも言うべきものの姿が写っていた。人型でこそあるものの、明らかに人間ではない異形の姿をしている。であるにもかかわらず普通の人間と同じように会話をしているあたり、精神干渉系の魔法を使っているのか。そこまで分析した有紗は使い魔に追加の指示を出し、怪人の動向と目的についてより詳細に調べるように命じた。
それから数日間掛けて情報を集めた有紗は怪人の目的についておおよその事を把握した。複数の反社会的組織に接触し、そのトップ達に繰り返し術をかけている。また、製造過程に魔法を用いて精製した特殊な薬物の生産も始めさせている。これらの情報を基に、複数の反社会的組織を合併した巨大組織の形成、及び魔法薬物の流通による治安の悪化を目的だと推測した有紗。次に魔法少女組の動向も見返すが、影の兵士を討伐してはいるものの、裏で進行する事態には気が付いていないようだ。しかしそれも仕方の無いことだ。少し前まで一般人でしかなかった少女には、こういった搦手の対処は不可能だろう。
「仕方無いわね……」
あまり介入し過ぎると退魔士の存在が露見するリスクがあるが、こうなってしまっては梃子入れせざるを得ない。そう思った有紗は怪人に対抗するための計画を練り始めた。