魔法少女観察記 作:ジン
下っ端の男に暗示をかけた有紗は、次の目的地として魔薬を製造する施設へ向かう。怪人の侵略計画において重要な要因となりえる魔薬製造施設は、今回の作戦に置いて真っ先に陥落させるべき場所でもある。そのためには警備の状況や内部構造について情報を得ておく必要があった。また、もう一つの目的がある。それはこの施設で生産されている魔薬を入手することだ。怪人の魔法を加えることで効能を変化させていることは分かっているが、付与されている魔法の仕組みまでは判明しておらず、解析のために現物が必要になるのだ。
(重要拠点なだけあって、警備はかなり厳重ね……)
製造施設を目の当たりにした有紗は僅かに眉を顰める。人間による警備は当然、施設自体からも魔力の気配が感じられる。恐らく内部には魔法による監視網やトラップが張り巡らされているのだろう。本来魔力など持たないはずの警備員からすらも魔力の気配を感知できるため、何かしらの魔法がかけられていてもおかしくはなかった。
(まずは中に入らないとね)
建物の玄関口には見張りが立っており、姿を隠していてもそこから入ればバレてしまうだろう。催眠魔術をかければ誤魔化せるかもしれないが、怪人の術と競合した場合にどうなるか分からない。そう考えた有沙は適当な窓のある場所へと飛び、人気がないことを確認する。
「【アンロック】」
有沙が窓に手を翳して短く呪文を唱えると、鍵がひとりでに回る。そのまま窓を開けて建物の中に侵入し、軽く左右を見渡すと、至る所に侵入者避けの魔法が仕込まれているのを見つけた。
(術式の効果は精神干渉と警報……侵入者への精神支配に成功できれば良し、もしできなければ“術に抵抗できる何か”が侵入した事が分かる。警報の術式はその相手について知るためのものね。下手に術式に手を加えると警報術式が起動しかねない。それならそもそも感知されなければ良い)……【フェイク・ヴィジュアライゼーション】」
術式を解読しながらその設計思想について考察する有沙。続いて罠へと対処するための魔術を組み上げていく。施設内に怪人が設置した魔法は、魔薬生成に携わる人員に反応しないよう例外処理の仕組みが組み込まれている。先程の解析作業によってそのことを把握した有紗は、偽装の魔術を応用することで罠の感知機能をすり抜けたのだ。そのまま施設内の探索を続け、魔薬を保管する倉庫に辿り着いた有紗。幾つもある錠剤の中から一つを取り、懐にしまって施設から脱出した。