魔法少女観察記   作:ジン

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「気付いたの? まぁ露骨過ぎたものね」

 

 魔薬製造施設を脱出し、家に帰った有紗は、使い魔からの報告に目を通して呟く。今彼女が見ていたものは魔法少女の動向についての報告だ。どうやら彼女達を補助する小動物(キララ)が影兵の出現地域に偏りがあることに気付いたようで、魔法少女二人に捜索の提案をしたようだ。しかし魔法少女側はあまり乗り気ではない様子。この地域で暮してきた彼女達にとって、西区に近付いてはならないことは常識として定着している。確たる証拠があればともかく、そうでないのに乗り込むのには心理的なハードルが高いのだろう。

 

「どうしたものかしら……」

 

 椅子に深く腰掛けて思索にふける。魔法少女に怪人を倒させたい有紗としては、西区に怪人が居ることを魔法少女に自力で気付かせる──或いはそう思い込ませる──必要がある。また警察を利用した魔薬製造施設の制圧も、迂闊に踏み込ませれば罠として仕掛けられた魔法の餌食になって終わる事は容易に想像できた。怪人によって洗脳された人員が警察内部に大量発生するのは最悪の展開だ。怪人が討伐された後、洗脳術式がどのように作用するか分からないのだから。

 

(回収した薬の分析依頼を出すついでに、協会本部へ行こうかしら。最近は顔を出してなかったもの)

 

 有紗は懐から取り出した錠剤を眺めながら今後の動きを考える。先程魔法少女についての情報に目を通していた時、同時に魔薬に付与された魔法を解析していたのだ。上位の魔女である彼女は当然ながら多様な魔術に精通しており、薬に付与されていた魔法そのものは理解できた。しかし、魔法と薬効成分の相互作用ともなると調べるには専門的な生化学の知識が必要になるため、まだ高校生の彼女には完全な分析は不可能だった。そのため、退魔士協会へと持ち込んで薬の分析を外注しようと考えていたが、ついでに上手く物事を進めるための相談を誰かに出来ないかと考えたのだ。

 

「そうと決まれば早速行きましょうか」

 

 そう言って席を立った有紗は自室の扉の前へ行き、特定のパターンに沿って指で扉をなぞる。いつもであれば自室の外には廊下があるが、今扉を開けた有紗の前には幾つもの物品が並べられた部屋があった。ここは退魔士協会が存在する隠れ里の中で、有紗が所有している建物だ。基本的には術具や魔術触媒の保管、()では行使しにくい儀式魔術の場として利用している。玄関で靴を履いて外に出ると、京都のような古風の街並みが広がっていた。街の中心にある一際大きい建物が退魔士協会である。

 

「唯じゃない。貴女も協会に用事があったの?」

 

 協会へ向かう道を歩いていた有紗は、その途中で知り合いの姿を見つけたため声をかけた。有紗の呼びかけに反応して唯が振り返る。

 

「ああ、有紗か。丁度欲しい触媒があってね、買い終えて帰るところだったんだ。そういうキミはどういう用事で来たんだい?」

 

 唯の疑問に対して、有紗は現状の説明を行なう。それに対して少しの間考えた後、唯が口を開いた。

 

「それなら私に考えがある。ついでに依頼を出すのもやろうか?」

 

「悪いわね。お願いしてもいいかしら」

 

「別に気にしなくてもいいよ」

 

 手元に一枚の紙を召喚し、魔術で依頼内容を記入する唯。有紗から受け取った魔薬を書き上がった依頼書に挟み、空中に展開した魔法陣にくぐらせた。すると依頼書は一羽の鳥に変化し、協会の方へと飛んでいった。

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