「君さー、そろそろ起きなよ。」
反応などあるはずもなかった。当然、声をかけた
「まぁ、君はもう起きていて尚、目を覚ましていないんだろうけど。」
その証拠に、彼女の気力は植物と同等かそれよりささやかなものとなっていた。
衰弱した状態で
彼女は
少なくとも
帽子を床に置いて、
「君があの時、
「ただ確かに、君の心は神に届いた。」
そして、未だ目覚めぬ少女の目は神の指によって開かれる。
神の目が少女の
「不釣り合いな信仰には
顔を近付けた
底に沈んだ顔がおもてに来るにはまだ少しかかるだろう。
考えるのは
「本当によくできた
今回はその
彼女が自らの手で異変を解決したといえるのは今回が初めてだろう。
「方針の変え時かなー。」
来たばかりの頃から信仰集めに夢中になっていたが、そろそろ潮時だ。
幻想郷の巫女としてではなく、
「そうと決まればあの子にも働いてもらおうかな~。
”彼女はもう、
「......はぁ。」
自分の代わりに攻撃を受けた女の子はずっと眠っている。まるでそれが自然体だといわんばかりに、起きる気配はなかった。
振り返ってみれば未熟も未熟。異変で活性化する妖精と全く変わらない己の立ち振る舞いに、どうしようもない恥ずかしさと、その行動によって生まれてしまった被害に対する自責の念が、ぐるぐると行き場を探して心の中に雲をつくっていた。
力不足ならば修行を積めばいい。だが経験不足による失敗はどうすれば備えることができるのか、
ライバルであり幻想郷の先輩巫女である
『まずはその辛気臭い顔をなんとかしてから来なさい。うちには気に
と
「辛気臭くなかったら相談なんてしませんよぉ......」
もはや習慣となっている自問自答が終わると、
何かをしていた方が頭の中はすっきりするものなのだ。
早朝の仕事を終え、朝食を作った早苗は、
人の前に立つ
その性質があるからなのか、彼女が気まぐれだからなのかは
見つからなくても朝食を食べに自分から来ることもあれば、食卓に座らないことも度々あった。
「
「用、ですか。」
だから今日はいない日なのだろうと
これはつまるところ、『放っておけ』ということなのだろうか。
何かの
二人で食卓についていると、
「そういえば
「えっ。」
「どうしましょうねぇ。」
「
「うぅ......だってどうしたら起きるかの方が急務じゃないですかぁ!」
「
「面目ないです......」
「まあいいさ。それで、
「うーん......」
目が覚めたら療養してもらって、元気になったらお別れというのが普通の対応ではあるのだが、素直にそうすることもできない理由があった。
「あの子に話を聞いてみないと分からないかもしれません。」
「それはどうして?」
「あの子が眠っている間、化け物をはらった場所に調査に行ったんです。今回の異変の原因が分かると思って。でもそこには何もありませんでした。」
「聞いたよ。霊が集団になっている現象も見られなかったんだってね?」
「はい。分からないのは原因だけじゃないんです。あの化け物の目的も分かりません。特定の目的に向かっているようで、実際には互いに場所を取ろうとして争い合っていました。それでいて、あの女の子のことを追い出すどころか手放さないようにしていました。化け物から彼女を剥がすと崩壊し始めたところを見るに、彼女が今回の異変の中心であることは疑いようがありません。」
「ただ中心となっている彼女は
「そうなんです。この場合に考えられることは2つ、彼女を利用して何かを成し遂げたいという共通の理念があったか、または彼女が何かをやろうとして失敗し、暴走の果てに本来の目的の達成が困難になったのか。もしくはその両方か。」
「それだと3つだよ、
「あはは......失礼しました。とにかく、彼女から事情を聞かない限りは難しい話だと思っています。」
「なるほど。
「化け物になる前の
「人里、ね。」
「はい。しきりに『かえらなきゃ』と言っていたので人里に帰ろうとしたんだと思っていました。」
「含みのある言い方をするね。」
「その、幻想郷に来て長いとは言えないんですけど、私は自分なりに人里の歴史を調べたんです。その中で、人間が一度に複数人亡くなった事件についても調べました。ですが、今回相手にした霊の数を考えると比較にならない程被害者が少なかったんです。それで、人里産の霊はあまり多くないのでは、と。」
「霊はその日その瞬間消えるものでもない。総数で見てもその見解は変わらないのか?」
「幻想郷は歴史のある場所なので、さすがに総数で見たら死者の方が多いと思いますけど......でも霊の処理が追い付かず、多くの霊が長く停滞するのは異変です。霊の数は確かに多かったですが、そのような異変が起きているとするには限定的すぎる量でした。第一、そんなに現世に留まり続けて念の強くなった霊ならば、わざわざあの女の子を核にする必要はありません。」
「たしかに。でもそうなると霊の数と死者の数が合わないという問題が出てくる。ほかの霊と混合していたのならばいざ知らず、化け物を構成していた霊は元人間のもので間違いないのだろう?」
「はい......顔も浮き出ていましたし、うわごとを呟いていましたし......あれ?」
本当にそんな理由だろうか?私はあの化け物、いや、
「噂話です!!」
「う、噂話?」
「はい!私は信徒の妖怪から『心霊激熱スポット』の話を聞いて動いたのです。」
「それが先ほどの話とどう繋がるのか不明だが、その妖怪が怪しいと?」
「違います!そうかもしれませんが、そうじゃなくて、えっと......!」
「
「あっ、はい、すみません......んぐ、ごふっ、ごほっ!」
「
「落ち着きました。ありがとうございます。」
「いい。
「はい。まず、私が聞いた話では『心霊激熱スポット』というのは霊体の願いを叶える場所ということでした。ただ、自分の願いを叶えてもらえるという欲求は高度な欲求です。畜生霊が抱く本能的な欲求とは相反するものです。」
「それはどうだろう。畜生霊も存在が強くなれば自我を持つこともあるだろう。それだけで人間の霊とは言い切れない。」
「確かにそうですね。対象はその欲求を抱ける程度の者、ということだったのかもしれません。ただ、私は噂話を広められるような霊は元人間のものだと思ったのです。」
「だから噂話か。」
「はい。利益を
「なるほど。だが
「ご心配なく。私が取り乱したのは、霊の大部分が元人間であり、その数が異常に多かったという事柄に動揺したからではありません。」
噂話は誰が作った?それが偶然少女の近くにいた霊だとしよう。霊はうわ言を呟きながら少女を襲うだろう。その場に偶然他の霊が来て、うわ言を真に受けて少女を襲いだしたとする。その後、噂はどうやって広まる?偶然その場に多くの霊が通りかかった?ありえない。それで集まる霊の規模ではなかった。それに、噂の範囲がそれ程狭いとなれば、霊以外の者がその噂を聞いたとしても、霊のうわ言よりも自分の目で見た事実を広めるだろう。信徒の妖怪が教えてくれた内容と実態を比べた時、その
「霊に噂を吹き込んでまわった『誰か』がいます。」
それに気付いたから自分は動揺したのだと
少女が起きるまで進まないと思っていた事態に進展が見えた。
「くー!なんだかやる気で溢れてきました!」
「はは、単純のいいところが出ている。」
「
「いやいい。視野が狭くなっているのをどうにかしたいとは思っていたんだが、まさかあの女の子以外の話には全く興味を持ってもらえないとは。」
「す、すみません。巫女なのに神様の言葉に耳を傾けないとは......未熟!自分が情けないです......!」
「その気持ちを忘れず、今回の件に臨むといい。」
「はい!進展記念に、あの子の様子を見てきます!」
「はいはい。騒がしくしないようにね。」
「はーい!」
よく分からない理由だが、決意新たにということなのだろう。
ひと段落ではあるかと思った
しかしそれはすぐに中断されることになった。
飛んで行った
さすがに浮かれすぎだと注意を入れてやろうと
「
「
神である
「あの女の子が......女の子が、いません!!!」
事態は進展をみせたがしかし、その内容は事件が解決していないということを明らかにするものだった。当然、解決されていないのであれば新たな問題が発生するのは道理と言えよう。
目を覚ます気配が無かった少女は消えた。
それは