守矢の亡霊巫女   作:飛煙

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第四話「再会」

 白と黒の大蛇が激しく争い合っていた。一方が噛みつこうとすると一方がひゅるりとかわす。互いに致命をさけるためにジャブを打ち合っている状況だった。

 野生の蛇ならば均衡は体力で崩れるがしかし、この2匹は野生の蛇ではない。一方は信仰を(たずさ)えた神の(ちから)を、一方は未練を携えた欲の(ちから)を持っているのだ。

 

 池の中から拘束、または刺し殺すために放たれた鋭い黒い紐は信仰の白い紐によって相殺(そうさい)される。

 互角と思われた戦いは、蛇の頭の上で形勢を変えつつあった。

 

「君もしぶといなぁ」

 

 諏訪子(すわこ)は黒い大蛇の頭の上に立っているナニカに向けてそう言った。

 最初は襲われていた少女と全く同じシルエットだったが、今では両手が蛇の頭になっていた。不気味な微笑(ほほえ)みを作っていた口は真っ黒で塞がれ、両手の蛇がナニカの意思を代弁するかのように威嚇していた。

 

『シィーッ!』

(たた)(ごと)のひとつでも言ったら?神様らしくさ。」

 

 諏訪子(すわこ)が手に持つ鉄の輪が、神の力によって(だいだい)に光っていた。諏訪子(すわこ)はそれでナニカを切り裂くように腕を横に振った。

 

『シャッ!』

 

 ナニカは両手の蛇でそれを噛んだ。が、そんなことで神の力を止められるわけもない。ナニカの両手は頭を二つに切り分けられ、四本の触手のようになった腕がだらんと垂れた。

 ただあまりにも切れ味が良かったのか、頭の破片が諏訪子(すわこ)の衣服にかかった。細切れにされた悪意が神の(ちから)に触れれば、すぐに浄化されてしまうだろう。

 しかし、浄化された意思は正しい形となって諏訪子(すわこ)に流れ込む。

 

『お前があの方の代わりになるのだ。すまないがもはや手段を選ぶ段階ではないのだ。』

『騙しましたね!?(わたくし)が代わりになると言ったのはこういった意味ではありませんっ!』

 

 何やら格が高そうな男が苦渋の決断をしたかのような顔で白と紫の巫女服の少女を見下げていた。毒でも盛られたのか、彼女は立つことができないようだった。

 

「......」

 

 諏訪子(すわこ)はその記憶を流し見て動揺することはなかった。ただ無言で静かになったナニカを神の輪で切り裂く。返り血の代わりに黒い飛沫が諏訪子(すわこ)に触れて浄化される。

 

『なぁ、先代は神になれたのだろうか。』

『先代は偉大なお方よ。ただ、(うつわ)が余りにも強大だった。』

『......』

『我々人間は弱い。だから世代の(ちから)で、時をかけて大いなるものを手にするのよ。あなたにもできるわ、大丈夫。』

『いや、無理だ。邪悪に打ち勝てる程あたしに才はない。次の世代にすまないと伝えておいてくれ。あいつの中で、私は足掻くことにするよ。』

 

 切られたナニカの頭が弾け飛ぶ。弾け飛んだ飛沫は意思を持つかのように諏訪子(すわこ)に向かっていった。

 

『さぁ、行け!行ってお前たちが神となれ。先代が余計なことをしたせいで災難ばかりだ。』

『先代は私たちのことを思って尽くしたというのに、その物言いは侮辱に(あたい)しますよ!?』

『神になれだなんて都合よく言ってさ、実質ただの生贄じゃん。』

『ふんっ、お前たちのように信ずる心が無いものにとっては光栄なことだ。文句を言うことが不敬と知れ。』

『何を勝手に......!今までの一対一の対等性を失なわせてまでの強行、神事の格を落としたあなたの方が不敬に(あたい)します!』

『現状も立場も分かってないようだな。その愚かさが双子の妹を歩けなくしたというのに。』

『......』

『なにを、言って......』

『おや?言ってなかったのか。』

『黙って。』

『強力な御力(みちから)など何もせずに制御できる訳がない。国から出ていかれては困るのでな。幸い、継承者は二人いた。片方が(くず)になっても問題はないだろう?』

『なにを......』

『おや、理解できぬか。』

『黙って!』

『お前の妹の足は、我々が壊した。妹は我々に協力してお前に伝えなかったらしいな。さしずめ、共犯と言ったところか。』

『黙ってよ!!』

『ぇ......わたし、ずっと......』

『さて、着いたぞ。せいぜい女らしく気に入られるよう媚びを売るんだな。』

『シャーッ!』

『あの方も待ち遠しいようだ。』

『......クズどもが。』

『そんな、そんな......!わたし、わたし、ずっと、ずっとぉ......!』

『(......祟ってやる。この国が滅んだその先まで、ずっと、ずっと......!)』

 

 頭を失ったナニカの体はぐったりとしていた。ただ黒い大蛇は未だ激しい攻防を繰り返していた。

 

「そうかい。余すことなく浄化してあげよう。」

 

 諏訪子(すわこ)は鉄の輪をナニカに向かって投げた。鉄の輪が広がると、ナニカの体をすっぽりと穴に通した。

 

「幻想郷に持ち込んだ厄介くらいは自分でやらなきゃね。」

 

 鉄の輪から強烈な光の柱が伸びた。ナニカは跡形もなくその光に飲み込まれた。きっと浄化されたのだろう。諏訪子(すわこ)に流れ込む記憶がそう語っていた。

 

『本当にいいのかい?こんな村なんて捨てて、街にいきゃ他の神の加護を受けられるだろうに。』

『爺様、よいのです。アレを作ったのは私たちの歴史です。それに終止符を打つのも、我が血筋の定め。』

『そうか......申し訳が立たないなぁ。いつだって若い女子(おなご)が犠牲になる。』

『犠牲だなんて言わないでください。生贄として捧げられに行くのではありません。この命を(もっ)て、鎮めるのです。』

『すまない......ここが国だったころは誰もが技術に必死だった。あの方が去ってからも技術で繁栄が続いたんだ。だからかなぁ。信仰の気持ちなんて薄れていた。いや、敬う心すら消えかかっていたのかもしれない。』

『きっと、何を言っても後の祭りでしょう。』

『そうだな。祭り、か......』

『久しくしていませんね。儀式ばかり増えてしまいました。』

『おう。祭り、祭りかぁ。またしてぇなぁ。また、一緒に......』

 

 きっとこの記憶は、黒い大蛇に飲み込まれた者達のものだろうと諏訪子(すわこ)は認識していた。

 

「久しぶりだなぁ。こうやって人の願いを消化するのは。」

 

 もはや自分を信仰する者など誰もいなかった外の世界に未練などなかった。

 幻想郷に来てからも、悩みなど神奈子(かなこ)早苗(さなえ)が対処することで、諏訪子(すわこ)(ちから)だけを振るっていればよかった。自分を知らない人間がご利益(りやく)に感謝しているのを他人として見ているのが一番良かったのだ。

 

「きっと、これだけじゃない。おまえの腹の中にまだたくさんいるんでしょ?」

 

 ナニカに放った浄化の光の一部を受けたせいか、大蛇は項垂(うなだ)れるように姿勢を低くしていた。意識が曖昧なようで、心ここにあらずといった様子だ。

 

「このまま消し去ってもいいかな、なんて思ってたけど。そのやり方じゃカミサマらしくないよね。」

 

 諏訪子(すわこ)が光に包まれ、体が白いシルエットへと変化した。

 

「カミサマモドキじゃ消化できなかったそのミタマ、私が酸いも甘いもすべてを飲み込んで見せよう。」

 

 白いシルエットが白い大蛇の頭に溶け込んだ。すると、大蛇の縦長の瞳孔が丸くなり、次第に横長の瞳孔へと変化した。

 横長の瞳孔の大蛇は黒い大蛇の頭を飲み込んだ。そこからゆっくりと、じっくりと全身を飲み込んでいく。黒い大蛇は毒を流し込まれていたかのように大人しかった。

 

 

 

「わぁ......」

 

 諏訪子(すわこ)にもっと離れていろと言われた少女は、大蛇が大蛇を飲み込むという強烈な光景に目を釘付けにされていた。

 しずかでゆっくりとしたその様は、不気味ながらも神聖味を帯びていたのだ。

 

 そんな中、大蛇の口へ自ら入っていく人魂(ひとだま)が複数いた。きっと少女を守ってくれた人魂(ひとだま)たちだろう。

 

「あっ、お礼、言えてない......」

 

 少女は近付くべきかと悩んだが、無知とは言えど今は邪魔してはいけないということがわかる程度の常識はあった。

 やりたいことができずにやきもきしながら、水面に映る自分の顔に気付く。

 

「ひっ......!」

 

 水面は怯えた少女の顔をそのまま映していた。なんてことはない、ただの反射である。逆に少女の目には水面の顔以外のものが映っていた。

 

『お前を消すためだよ。』

 

 ニコニコと微笑(ほほえ)みかける自分の顔。その背後から来る飢えた亡霊たち。それは彼女の恐怖の記憶だった。

 

 少女は顔を背けて後ずさる。

 

「わっ......!」

 

 突然背中に何かが触れて驚く少女だったが、ただの木であることに気付くとそれを背に座り込んだ。

 嫌な記憶から耐えるように膝を抱えた少女は、見た目以上に幼く見えた。不安をどうすることもできずにただ震えるその姿は、まるで迷子になった子供のようだった。

 

 

 

 少女は金髪の女の子について考えていた。人魂(ひとだま)たちが教えてくれた彼女はいったい何者なのか。他人の記憶を振り返っていたのだ。だからだろうか、少女はその名をぽつりと呟いた。

 

諏訪子(すわこ)さま......」

 

 その名を呼んだ直後、頭に何かが触れた。それにびくついた少女は顔も上げずに体を縮こませた。

 

「君はいっつも怯えてるね。」

「ぁ......」

 

 諏訪子(すわこ)様と呼ばれた少女の声がした。少女にとっては自分を助けてくれた人、つまりは味方。声を聞いた瞬間に安心しきった少女は、制御できない感情が(あふ)れ出してしまった。

 

「うぅ、諏訪子(すわこ)さまぁ、諏訪子(すわこ)さまぁ......!」

「はいはい。諏訪子(すわこ)さまだよー。うわっ、そんな抱き着かなくてもどっか行ったりしないって。」

「うわあああん!」

 

 号泣。少女はもうひとりになりたくなかった。もはや相手の迷惑を承知で(すが)りついたのだ。

 

「まったく......ほーら、よしよし。」

「ぐすっ」

「落ち着いたら話を聞きたいんだけど......大丈夫?」

「うん......だい、じょうぶ。でも、もうちょっと......」

「はいはい、好きなだけどーぞ。」

 

 

 

「好きなだけとは言ったけどさぁ、満足して寝ちゃうのはどうなのさー。」

 

 言葉とは裏腹に、少女の(ほほ)を撫でる諏訪子(すわこ)の手は優しかった。

 

「君は本当に手がかかるなぁ。自分で起きることもできないし、何かあったらすぐ泣くし、泣き止んだと思ったら寝ちゃうし、こっちのことを理不尽に振り回してさ......これじゃあ、赤ん坊と変わらないよ。」

「すぅ......すぅ......」

「気持ちよさそうに寝ちゃってさ。」

 

 諏訪子(すわこ)は起こさないように少し身を離すことにした。

 

「......す、わ......さま」

「あー。そばにいるよー、だいじょうぶだよー。」

 

 しかし、少女の顔が歪んだのを見た諏訪子(すわこ)はアプローチを変える必要があることを理解した。

 諏訪子(すわこ)はあの手この手を考えたが、結局彼女をおぶうことにした。幸いなことに、彼女と諏訪子(すわこ)の体格差はほとんどなかった。特にてこずることもなく諏訪子(すわこ)は彼女を背負った。

 

「何が眠っているかと思えばこんな甘えん坊だったなんて。早苗(さなえ)じゃ絶対甘やかしちゃうよー。」

 

 どっちも手がかかるなぁと、優しい表情で諏訪子(すわこ)はぼやく。

 

「よいしょっと......君は、こうなる前も甘えん坊だったのかな?」

 

 諏訪子(すわこ)は視線をすやすやと寝ている少女に向ける。彷徨(さまよ)う霊の()り所にされた少女。彼女の自我は、膨大な他人の自我によって押し潰されてしまっていた。目が覚めたということは自分の処置が効いてきたということだろうと諏訪子(すわこ)は認識していた。

 しかし、それだけでは説明がつかないことがある。何故(なぜ)彼女が諏訪子(すわこ)の名前を知っているのか。諏訪子(すわこ)が彼女と会った時、彼女は(すで)に意識不明の状態だった。(ゆえ)に、彼女が諏訪子(すわこ)のことを知っているはずがないのだ。幻想郷において諏訪子(すわこ)が高位な存在であることを知る者は少ない。諏訪子(すわこ)の姿と実情の両方を知る子供など諏訪子(すわこ)が知らないはずもない。諏訪子(すわこ)の姿を見て『諏訪子(すわこ)さま』と認識できた彼女はいったい何者なのだろうか。

 

 諏訪子(すわこ)の思考が進むにつれて冷えていった暖かい空気が元に戻る。これは諏訪子(すわこ)によるものではなかった。

 

「ん、君たちが伝えたの?」

 

 この場には諏訪子(すわこ)と少女以外の姿はない。ただ訴えるような、何かを心配するような気配がその場に二人以外の者がいることを伝えていた。

 

「伝えたつもりはなかったって?ふぅん......」

 

 諏訪子(すわこ)は尚更分かんないじゃんと言いつつも、先ほどよりも柔らかい表情を浮かべていた。どうやら悩むのは一旦やめたようだ。

 

「君たちさぁ、私と会いたいからってこの子を使うのはどうなのさ。」

 

 誰に向かって言っているのか、ジト目をしながら悪い顔をして諏訪子(すわこ)はそう言った。

 

「え?ひとりだと危ないから連れ戻そうとしたけど伝わらなかった?もー、本当によくわかんないなー。」

 

「池の中に入った時に伝わったの?へー。まぁ、なんでもいいけどさ。」

 

「ん?心配だからついていってもいいかって?えー、君たち私と遊びたくて成仏できないくせにもう他人(ひと)の元にいくのー?」

 

「あはは!からかっただけだよ。いいよ。どうやらこの子はつかれやすいみたいだし、君たちが見守ってあげて。先輩らしくね。」

 

「あれ、君らもいきたいの?化け物の信者だけだと心配だって?いいね、必要な視点だ。ちょうどいいし、君たちの記憶を寄せて歴史を繋げておいてよ。」

 

 話が済んだのか、気配たちが少女の中へと溶けていった。

 

「とりあえず戸はついたからこれで幻想郷をふらついても大丈夫だろうけど......ここまでしたならウチで面倒みないとだよねぇ。」

 

 少女の中は諏訪子(すわこ)(ちから)で満たされていた。そこに少女の小さな自我が浮いている状態だったが、先ほど諏訪子(すわこ)の関係者であろう者たちがそこに送り込まれた。言ってしまえば、少女の中に洩矢(もりや)の居を構えたと言える。そんな状態で人里や冥界に送っては、守矢(もりや)憑依(ひょうい)による自演で信仰を広めていると言われかねない。別に本人が乗り気ならいいじゃんと思う諏訪子(すわこ)ではあったが、現状本人の許可もなければ異変決起の常習犯である守矢(もりや)の評判に逆風が吹くことは明らかだった。

 

「みんなにどう説明しようかなー。」

 

 まるで拾った捨て犬を飼う言い訳を考えるかのような状況に諏訪子(すわこ)はくすりと笑った。

 

「そうだ、先に名前を付けておけば早苗(さなえ)は大丈夫でしょ。」

 

 諏訪子(すわこ)早苗(さなえ)をどうにかすれば神奈子(かなこ)が傾きやすいのを知っていた。

 

「あ、でも元々名前があったらダメかも。んー。ないでしょ、記憶なんて。あんなに空っぽだったし。」

 

 諏訪子(すわこ)にとって少女はもう身内という感覚なのか、酷い言われようである。

 

「なー、お前はどんな名前がいい?」

「......」

「なんでも喜びそうだよねー。私にゾッコンだし。」

「んへへ......」

 

 諏訪子(すわこ)は自分の(ほほ)で少女の顔をぐりぐりしていじると、満更でもないといった様子が少女から返ってきた。

 

「刷り込み済みって顔してる。早苗(さなえ)に嫉妬されちゃうかも?......ないかー。」

 

 どうでもいいことを言いながら諏訪子(すわこ)は名前を考える。

 

「名は体をあらわすとも言うし、分かりやすいのでいっか。呼び名はタマで......これでいいかも。」

諏訪子(すわこ)様ー!!」

「お、早苗(さなえ)ー。しー。」

 

 諏訪子(すわこ)の中で名前が決まったところで早苗(さなえ)が駆け付けた。諏訪子(すわこ)は緊迫している早苗(さなえ)の表情を見て、背中の子のことだろうなと察した。起こさないように指を口の前で立てながら早苗(さなえ)に落ち着くよう伝えた。早苗(さなえ)はそのサインを把握し、二人は小声で話し始めた。

 

「す、諏訪子(すわこ)様が連れ出していたんですかっ!?」

「タマのこと?失礼な。さすがに意識不明の客人を連れ出すならちゃんと伝えるよ。」

「し、失礼しました!......タマ?その子ですか?」

「そう。さっき名付けた。」

「ペットじゃないんですよ......!」

「えー、ダメかなー?タマの面倒はウチで見ようよー。」

「タマちゃんは捨て猫じゃないんですよ!」

「乗りかかった船じゃんかー。」

「うー......」

 

 少女に恩返しがしたい早苗(さなえ)にとっては、彼女が目覚めた後にどこかへ行ってしまうのは都合が悪かった。かと言ってそんな自己都合で彼女を縛り付ける訳にもいかない。それでも守矢(もりや)一柱(ひとはしら)である諏訪子(すわこ)からその提案をされたとなればそれとなく合わせて乗りたいというのが早苗(さなえ)の心の内である。本当ならば本人の話を聞いてから決めなければいけないことだが果たして、早苗(さなえ)の口からは何が出るのか。

 

「タマちゃんがいいって言ったらですからね!」

早苗(さなえ)ありがとー!」

 

 反対してるふりの快諾が出たのであった。

 

「あ!忘れるところでした。諏訪子(すわこ)様、こちらで光の柱を見ませんでしたか?」

「あー、もう終わったよー。」

「タマちゃん関係だったんですか!?」

「うーん、関係あるというか、巻き込まれてたというか、化け物に襲われてたんだよね。」

「そうなんですね!じゃあ諏訪子(すわこ)様が助けてくださったんですか?」

「そうだね。あ、聞いてよ早苗ー。この子助けたらびゃーびゃー泣いてさー。」

「待ってください。タマちゃんは目を覚ましていたんですか!?」

「えっとねー。」

 

 ()守矢(もりや)神社へと進めながら、諏訪子(すわこ)早苗(さなえ)に大まかな事の顛末(てんまつ)を説明した。黒い大蛇のことは化け物と形容し、人魂(ひとだま)のことは伝えなかった。

 

「着く頃には起きますかね?」

「さぁ?また眠ったままかも。」

諏訪子(すわこ)様ぁー!」

「叩いて起こしてみる?」

「しませんよぉ!どうしてそんな酷いこと言うんですか!タマちゃんが心配じゃないんですか?」

「私はもう起きてるところを見てるからね。本当はこのまま寝かせてあげたいけど、早苗(さなえ)も大事だからなー。どうしてもって言うなら仕方がない。」

「いじわるしないで下さいよぉ。」

「あはは。」

 

 諏訪子(すわこ)早苗(さなえ)が元気を取り戻していることに気付くと、これ幸いといじり倒した。早苗(さなえ)の受難は守矢(もりや)神社に着くまで続くのであった。

 

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