クレイジー&ジャーニーズ   作:ホワイト・ラム

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なんだか、長くなっちゃいましたね……
うーん、短くシンプルにしたい。


ジャーニー&ニューデイズ

4月――それは出会いと別れの季節。

 

桜並木がその花びらを散らす様は、まるで何かを祝っているかの様だった。

 

才能と努力、時には運に助けられ――そして今日この日。

遂にトレセン学園の制服に袖を通す事が許された生徒たちが、胸に希望と不安を抱き校門をくぐる。

 

 

 

「私、今日から本当にこの学校の生徒なんだ。

今でも歴史に名前を残す先輩ウマ娘さん達にも負けない位、私も速くなってやる!!

それで、素敵なトレーナーさんに担当してもらって……」

一人の新入生の生徒がイヤイヤと頬に手を当て首を振る。

 

「君、ハンカチ落としたよ?」

 

「え?」

背後から掛かる声に、時がスローモーションになる。

自分が初めて声をかけられた事、聞こえて来た声が女生徒ではなく男性の物(しかも自分の好みの声)。

 

(ひよっとしたら、トレーナーさん?もしそうだったら、少女漫画みたいな運命的展開……!)

下世話な期待を込めて背後を振り返ると――

 

「登校初日から、落とし物なんて縁起が悪いからね」

すらっとした長身の胸に輝くのは黄金のトレーナーバッチ、優しい声色に落とし物を拾ってくれるという親切な性格。

そして、明らかに邪な事を考えているであろう、ゲスなケダモノ染みた好色な笑みを浮かべていた。

 

「はい、ハンカチ」

にちゃぁと効果音が付きそうな笑みを浮かべ、ハンカチを持ち主に手に返す。

 

「あ、ありがとう、ございます……」

明らかにこちらを品定めしてるであろう視線に、まるで裸体を透視させられているかのような不快感さえ感じる。

 

(出来るだけ、縁を作らない様にしなきゃ……!

大丈夫、まだすれ違っただけ、眼をつけられては無いから)

本能が訴える危機感に、全身の筋肉を強張らせる。

強張る体に必死に命じてこの場から去ろうとするが――

 

「キミ、中等部1年のレイズステッパーちゃんだよね?

好物はニンジンのグラッセ、ゴシップ記事を読むのが趣味、地元のレースじゃスポーツ用品店の社長さんと懇意で最新スニーカーを宣伝と実験テストの名目で良く、使っていた。

使ってるトリートメントはヴァルキリー社の物……」

 

「ひ、ひぐぅ!?」

恐怖のあまり、尻尾の毛が逆立つ。

()()()()()()自身の情報を。

この男は、始めから自分が誰か分かって声をかけて来ていたという事実に、背筋に悪寒が走る。

狙っていたのだろう。物影に隠れ潜む蛇の様に、獲物が巣に掛かるのを待つ蜘蛛の様に()()()()()()()()

 

「キミの小学生の頃の活躍とか、()()()()調()()()よ。

この学園でのびのびと才能を伸ばしてね。

もし俺に興味が湧いたなら、トレーナー室を訪ねてみてね」

ニヤニヤ、ニタニタした嫌な笑みを此方に垂れ流して去って行く。

手には何時の間に渡したのか、名刺が握られていた。

去り際に「えっと、声をかけて置きたい娘はあと4人……」という不吉な言葉を残して。

 

(私以外にも、もう目をつけてる娘が居るんだ……コレが中央なのね……)

レイズステッパーは乱暴すぎる中央の洗礼に戦慄した。

 

「おー、ジャーニーおはよう」

先ほどのトレーナーは、髪の長い小柄なウマ娘にフランクに挨拶をする。

話しかけられたウマ娘が鋭い視線を此方に投げかけてくる。

「じゃ、行こうか」

トレーナーが小さな体躯の彼女に手をかけ促す。

見た目から恐らく、同じ中等部の1年か2年だろう。

トレーナーの親しい態度は彼女が肩までどっぷりとあのゲスなトレーナーの毒牙にかかってしまったのがヒシヒシと伝わる。

彼女の投げかける視線は、助けを求めるモノなのか、こちらに危険を知らせるモノなのか……

 

「わ、わたし、負けない……!」

拳を強く握って、始業式が始まる体育館に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

キィキィと古びた階段を二人の人物が歩いていく。

その手には大量の荷物の入った段ボールを抱え、両の手にはビニール袋が下げられている。

 

「早速、声をかけているんですか?」

ジロリとジャーニーが責める様な視線を寄越す。

階段の先を征くトレーナーは、意図的にかこちらを見ずに進んでいく。

 

「勿論。今はジャーニー一人だが、行く行くはチームを組んでトレーナーとしてステップアップをするのさ」

 

「そうですね。トレーナーとして順当な事。

けれど――」

小走りに成ったジャーニーがトレーナーを追い抜き、踊り場で振り返る。

 

「私の事も忘れないでくださいね」

 

「はぁ?忘れる訳ないだろ?変な事、言うなよ」

踊り場のジャーニーを再度、追い抜きトレーナーが歩いてゆく。

またしても、トレーナーはジャーニーを見ない。

 

「……うそつき」

小さくジャーニーが呟き、トレーナーを追う。

 

 

 

 

 

「よっしゃ、よっしゃ、よっしゃ!準備完了だ!」

1時間後、オンボロトレーナー室は綺麗に飾り付けられ、中央のテーブルには沢山の菓子類とジュースが所せましと並んでいる。

窓際には横断幕に『入学おめでとう』と文字が並んでいる。

 

「ふっ、我ながら見事な手腕だ。

自分で自分の才能が恐ろしいぜ!」

部屋の飾りも、横断幕も共にトレーナーが自ら作った物だった。

 

「よぉーし、ジャーニーも愛想良くしろよ?

今日から先輩になるんだぞ」

 

「…………もともと、こういう顔です」

トレーナーの言葉にジャーニーがむすっとする。

 

「いーや、嘘だね!いつものジャーニーはもっと美人顔だ!」

ビシッと指を突き付け、トレーナーがのたまう。

 

「やる事が、ありました」

クルっとジャーニーが背後を向いて、そう言い放ち部屋を出て行った。

テーブルの上のマシュマロを一袋、掴んで持っていく。

 

「じゃ、ジャーニー!!おかわり欲しく成ったら、戻ってくるんだぞ!」

 

バタン

 

扉を閉めたジャーニーが勝手に上がる口角を無理やり「へ」の字に戻す。

戻すがどうやってもまた上がって来てしまう。

 

「こ、こんな顔、流石にトレーナーさんに見せれないな。

ま、まぁ、始業式当日に声をかけられた位でトレーナーさんの所へ来る娘はいないでしょう……」

クールダウンする為に、寮の自室に戻る事にした。

 

 

 

 

 

夕方――

 

「そろそろ、様子を見にいくか」

やるべき事を粗方終わらせたジャーニーが、自室で時計を見て立ち上がる。

鏡に視線を投げて、何時もの表情である事を確認する。

服を着替えて小走りにトレーナー室へ向かっていく。

 

 

 

トレーナー室では、その部屋の主が黄昏ていた。

 

「夕日が眩しいぜ……今日という一日が終っていく。

陽が沈み、月が昇り再度、陽が昇ればまた新しい『明日』という日がやってくる」

トレーナー室の窓から、沈みゆく夕日が部屋を紅く染めている。

テーブルのお菓子はジャーニーがマシュマロを持っていった以降、減っても居なかった。

 

「来なかったんですね。誰も」

 

「……うん」

項垂れていたトレーナーが頭を上げる。

 

「今日はヤケ食いだ!!ジャーニーも喰え!!」

ドかッとソファーに座り、大量の菓子を食べ始める。

 

「私は甘いモノはあまり……」

 

「んじゃ、オルちゃんに何個か持って行ってあげて!んぐ、んぐ」

ポテチを一袋まるまる口に放り込んだかと思えば、それをコーラで押し流す。

 

「ぶはぁー!生きてるって気がするぅ!」

板チョコの銀紙を3枚分剝がしたとか思えば、今度はソレを巨大クッキーを4枚互い違いになる様に重ねて一気にかぶりつく。

 

がり、ぼり、ぽり、べリ……

 

大量のお菓子が、トレーナーの胃袋に流し込まれていく。

「まだ入学初日。まだまだ学園の事なんて右も左も分からない娘ばかりよ!

将来有望な娘には声をかけた、一週間もすれば皆が押しかけてくるに違いないさ!」

菓子類を片手にトレーナー宣言する。

その眼には確信染みた、自信が感じられる。

 

「そうですか、来ると良いですね」

コーヒーを片手にジャーニーがお菓子を爆喰いするトレーナーを眺める。

 

 

 

それから10日後……

 

 

 

トレーナーの精神は酷く衰弱していた。

 

「あれから、模擬のレースで声をかけるも誰も尋ねて来ない……

去年も沢山声をかけたが、ジャーニーしか来なかった……

去年一人で今年は0人……」

一人部屋の中で、ゼロ、ゼロ、ゼロと力なく呟く。

その眼には精気が無く、肌もガサつき、濃い隈が滲んでいる。

最近、よく眠れていない様だ。

 

「また、来年がんばりましょうね」

興味ないとばかりにジャーニーがコーヒーを口に運ぶ。

次の瞬間、トレーナーがぶわっと目から涙を流す。

 

「俺はダメなトレーナーだぁ!!

うわぁぁぁぁぁぁぁ!!

あああああああああ!!」

頭を押さえて錯乱する。

そして、部屋の隅の掃除道具入れから箒を取り出し床を掃き、雑巾をかけて乾拭きまでして一息つく。

 

「よし!んじゃ、改めて――

うわぁ!!!うわぁあああああ!!」

たった今、キレイにした床に寝転がりのたうち回る。

 

「案外、冷静ですね」

その様を見ながら、ジャーニー再度がお気に入りのコーヒーを飲む。

 

「うう、まともにスカウトも出来ないなんて、ダメトレーナー以外の何者でもない……

いや、本当言うと分かってたんだ……

同期のバケモノ達と比べると、俺は弱い!」

トレーナーの脳裏には、担当の致命的なミスを即座にカバーするオカンの化身的心強さのトレーナーや、担当バのクスリを眉一つ動かさずに飲める男や、海外の大学を卒業し史上最年少でトレーナー免許を取得した天才、ハルウララを初勝利にまで導いた鬼人と呼ばれる男たちがよぎっていた。

 

「うわぁあああああ、うわぁあああああ」

ジタバタ、ジタバタと自らが掃除した床の上で尚も、のたうつ。

 

「そう落ち込まないでください。

私が居るじゃないで――――すこし、励ますか」

ヤレヤレといった目をして、コーヒーをテーブルに上に置く。

 

「トレーナーさーん……」

 

「え、なに!?」

優しく声をかけながら、床に寝そべるトレーナーの腰を掴む。

そして――

 

「よっ」

 

「よぉおおおお!?」

トレーナーをさっきまで自身の座っていたソファに向かって投げる。

突如襲い来る浮遊感に、トレーナーがさっきとは違う理由で手足をバタつかせる。

ソファに叩きつけられるより早く、ジャーニーがソファに戻る。

 

「な、ナイス、キャッチ、ジャーニー……」

 

「当然です」

ソファに座るジャーニーの膝の上にトレーナーの頭部が置かれる。

 

「トレーナーさんは何時も頑張っているのを私は知っていますよ?

学園の全てのウマ娘がトレーナーさんにそっぽを向いても、()()()()味方ですからね?」

一部言葉を強調しながら、ジャーニーが膝の上のトレーナーの髪を手で梳く。

 

「あの、ジャーニーさん?コレ、膝枕では?」

 

「この前、膝にのせてくれましたからそのお礼に。

今度は私にトレーナーさんを乗せたかったんですが、この体では全身は無理ですから」

照れも躊躇いもないままジャーニーが語る。

 

「おー、マジの膝枕だ……

ゲームだったら、右上にトロフィーゲットの通知が流れてるわ。

好きな子の膝枕ゲット実績とか最低でもゴールドトロフィーでは?」

 

「ゲームに詳しくないので、良く分かりませんが、喜んでいただけた様なら何よりです。

私の肉の薄い身体で良いなら、疲れた時は何度でもしてあげますよ?」

 

「言われてみれば、ちょっと固い?けど、嫌じゃない……?」

頭の下の腿の感触にトレーナーが意識を向ける。

こんな事をされたのは始めてだが、何となく思っていたより硬質だなと、思ってしまう。

 

「あ、鍛えたからか!」

ナニカに合点がいって、トレーナーが両の手を合わせて鳴らす。

 

「ふふ、トレーナーさん好みの身体にされてしまいましたね」

 

「誤解されるような事を――痛ッ」

トレーナーが小さく声を漏らす。

その途端、ジャーニーが豹変する。

 

「何処かに、痛みが?」

 

「い、いや、そんな事無いぞ?

十分休憩したから、次のレースの計画を立てるか!」

トレーナーが立ち上がろうとした時、ジャーニーが肩を掴んで制止する。

 

「誤魔化さないでください。

最近の寝不足は、スカウトの件だけじゃないんですね?」

 

「…………」

無言で外す視線は、ジャーニーには肯定の意味が含まれているのが理解出来た。

 

「トレーナーさん、話してください。

確かに私はまだ学生の身分です。

成人男性の貴方からしたら、頼りないかもしれませんが」

 

「別に何もないさ。ジャーニーが心配しすぎなんだよ!」

トレーナーが立とうとする度ジャーニー手によって、その膝に戻される。

 

「身体に不調が有ればすぐに言えと言うのは、誰でしたか?

それに、痛みの理由が分からなければ、私は不安で走れません。

私のトレーナーは一人しか、居ないんですから」

真剣な眼差しでジャーニーがトレーナーの目を覗き込む。

その眼には、絶対に逃がさないという意思が感じられる。

 

「実は、歯が痛い。

菓子の食べすぎと、歯磨きサボったせい、みたいな?」

 

「歯?」

予想外の言葉に、ジャーニーの身体から力が抜ける。

 

「じゃ、歯医者に行きますか」

 

「はぁー?俺は絶対行かないんですけどー!!」

トレーナーが必死になって否定する。

 

「子供じゃないんですから、いい加減にしてください。

私も付いていってあげますから」

やれやれと呆れた空気をジャーニーが出す。

アレだけ心配させて、その結果がコレとは……

 

「安心しましたが、もう少し大事でも良かった気がします」

 

「なんか、酷くない!?」

 

 

 

翌日――

 

町内の某、歯医者にて――

 

 

 

「はーい、じゃ、痛かったら右手を上げてねー」

老人の医者がお決まりの文句を言って施術を始める。

 

キィイイイイイン!!!

 

「む、むぐ……ぐぅ……」

近づくドリルにトレーナーが冷や汗をかく。

歯医者の独特の薬品の匂い、ドリルの音、ゴム手袋が口内に入ってくる感覚。

それらの全てがトレーナーが苦手とするモノだった。

 

「あ、その前に、そっちの娘は?」

ドリルを止めつつ歯医者が隣のジャーニーに関係を聞いてくる。

 

「付き添いです。この人、困った人で……

子どもみたいに歯医者がどうしても苦手みたいでして。

施術中手を握らせてもらえますか?」

 

「あんた、いい年してしょうがないなぁ?」

歯医者が何とも言えない表情で、トレーナーを見る。

ジャーニーの言葉通り、小学生なら分かるが明らかに成人してる男で流石にそれは無い。

 

「お邪魔はしませんので」

ジャーニーがトレーナーの手を握る。

どうやら付き添いを諦める積りは無い様だ。

 

「分かった、んじゃ、さっさと終わらせるか……」

何だかなぁという表情で施術を再開する。

 

「優しい妹さんで良かったね」

 

キィイイイイン、キィイイイイン

ドリルが歯を削っていく。

 

「妹じゃ、無いですよ?」

 

「ありゃ、失礼。

じゃあ――――娘、ではないよね?」

出かけた言葉を自ら否定する歯医者。

 

「うふふ、なんに見えます?」

僅かな笑みを浮かべ、ジャーニーが問う。

 

「ああ、そうだな……」

 

「ほぉひへぇほぉ、ふぇふ(教え子です)」

トレーナーが声を出すが当然、意味を成す言葉に成りはしない。

 

「え、なんだって?」

歯医者が耳を澄ますが分かりはしない。

 

「大切な、人って言いたいんですよね?」

優しく微笑みジャーニーが応える。

 

「ああ、アンタらそういう……」

先ほどとは違う意味で、歯医者が声を漏らす。

 

「一緒になってから、まだ1年と短いですけど、過ごした時間は濃密なモノですか。

この人が何を言いたいかは簡単に分かってしまうんですよ」

 

「ふぃふぁふ、ほぉふぁふぃふぁ(違う、誤解だ)」

訂正しようと右手を上げようとするが、ジャーニーががっしり掴んでいて上げる事が出来ない。

 

「へぇー、相思相愛だね」

興味無さそうに歯医者が施術を続ける。

 

「ふぅへ(痛い)!?」

 

「あー、痛かったね……こりゃ、ダメだね。

虫歯進行してるから、抜きましょう。

親知らずだし、大丈夫大丈夫。

麻酔持ってきてー!」

歯医者が奥に声をかけると、女性が茶色い瓶を持って来た。

 

「へへぇ……」

有無を言わせぬ態度だが、抜く事も覚悟していたのでトレーナーは受け入れる事にした。

 

「心配しなくても、ずっと手を握っててあげますからね?」

優しい笑みでジャーニーが微笑んだ。

 

「はい、抜くよー」

 

「ヴぉえ!?」

 

「うわ、痛そうですね。

記念に抜いた歯って貰えます?」

口から血を流し、情けない顔をするトレーナーをジャーニーが眺める。

 

 

 

3日後――

 

「うう、まだ痛い気がする……」

 

「なれるしかありませんね」

トレーナー室で頬を押え、未だに血の味のする口内を気にしながら次のレースの準備を進める。

ジャーニーも同じく、次のレース展開を勉強している。

その時、トレーナーが幾つかの書類を確認し、一通に目が留まる。

 

「おい、ジャーニー!ウマインフルが流行ってるみたいだぞ。

予防注射は打ったか?」

 

「打ってませんね」

ジャーニーの言葉に内心トレーナーはほくそ笑んだ。

 

「おいおい、どうしたジャーニーさん?

注射が怖いのか?付いていってやろうか?」

それは前日の歯医者の意趣返しの積りだった。

だが――

 

「そうですね。今日の予定でしたが、付いてきてくれますか?」

 

「え、マジで付いてくの?」

予想外の言葉に困惑する。

 

「私、注射怖いです……トレーナーさんが居れば勇気が湧く気がします……」

ワザとらしく弱弱しい声でリアクションする。

 

「うっそつけ!去年普通に打ったろ!!」

 

「トレーナーさんは、自分で言ったことを反故にする様な大人なんですか?」

 

「は、はぁ!?ちげーし!ジャーニーが怖いなら、付き添い位余裕だしー!?」

 

「じゃ、行きましょうか」

ジャーニーが優しく微笑み、トレーナー室を後にする。

 

 

 

 

更に3日後――

 

「やーと、手に入った手に入った。案外売ってないのよねー」

レイズステッパーの手には3流ゴシップ雑誌が握られている。

別に内容なんて半分ほどしか気にしていない。

(本当かな?本当かも?)なんて、根も葉もない噂を楽しむ物だと割り切っている。

 

「ほほう、今週もアバンギャルドな記事が一杯――あれ?」

とある写真の乗るページで指が止まる。

 

「この、人……は……」

その白黒の画像の荒い写真はとある病室で、トレーナーとウマ娘が並んで座っている所だ。

見だしには『某G1ウマ娘の秘密!!トレーナーと産婦人科でのお忍び検診』と文字が躍る。

まぁ、言ってしまえば色恋沙汰は珍しくない。むしろ、ゴシップ雑誌ではかなりのメジャーな部類ですらある。

 

問題なのが、顔こそ隠されているが、このトレーナーにも小柄な髪の長いウマ娘にも見覚えがある点だ。

 

「こ、この前のトレーナーさんと一緒に居たウマ娘じゃない!?

に、妊娠までさせられてるの!?!

も、もしあの時、私も付いて行ったなら……」

レイズステッパーは改めて、中央の恐ろしさに戦慄した。

 

「だ、大丈夫……まだ、まだ声をかけられただけだから……」

何時もの冗談半分に記事を読む事すら忘れて、ただひたすらに一人震えていた。




レイズステッパーちゃんは中等部の新入生です。
小柄なかわいい子です。

見た目は偶然トレーナーの好み。
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