クレイジー&ジャーニーズ   作:ホワイト・ラム

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ブラックは飲めない作者です。
皆さんは紅茶かコーヒーどっち派ですか?


ジャーニー&ブレイクタイム

5月と6月それは、ウマ娘とそのトレーナーにとっての繁忙期。

春の天皇賞、NHKマイルC、ヴィクトリアマイル、オークス、日本ダービー、安田記念、宝塚記念などなどビッグタイトルが目白押し。

何時かはそのレースにと、熱意を燃やすウマ娘たち。

夢の舞台に立つことも叶わず、自らの先を走っていって戦友を見送るウマ娘たち。

遂に掴んだ夢の大舞台での栄光を求め、自らをひたすら鍛え上げるウマ娘たち。

誰も彼もが、この期間は目にギラギラとした光を宿している。

 

レースを走るウマ娘にとっては当然だが、彼女たちを担当するトレーナーも同じである。

それはドリームジャーニーとそのトレーナーにも変わりはない……

5月病などどこ吹く風、この時期やる事は文字通り山の様にある。

 

 

 

「はい、遅い遅い遅い!!昨日の自己ベストすら追い抜けて無いぞ!!

手ぇ抜いてるんじゃねーよな!?レース諦めた訳じゃねーよな!?

体調不良なら、早めに言って!結局それが一番早く回復出来るから!」

練習場でトレーナーがストップウォッチ片手に怒声を張り上げる。

ジャーニーの負荷を考え、休憩を挟みつつ何度も何度も細かくチェックを入れる。

 

 

 

「さっきの第2コーナー、もっと大外から攻めるべきと俺は思うが、どうだ?」

 

「バ群が横に逸れる傾向があります、ココを内側から抜ければ」

 

「ジャーニーの体格じゃ、押し合いは不利じゃ無いか?」

 

「押し合いに持ち込む体制を作らせる事で、相手のペースを出させない、というのはどうでしょう?」

 

「オルちゃんと、ゴルシに頼んで並走してみるか?

近しいデータが取れるかもしれない」

以前のそのレース場でのビデオを見ながら、2人で作戦を立てる。

 

 

 

「ハイ、笑顔ー!!ここ一番の笑顔出すよー!!ファンのみんなに中途半端なジャーニーの姿なんぞ見せられる訳ないよな!?

観客の中には、ジャーニー目当ての人だって沢山いるんだ、それ以外の人間すら虜にするくらいの笑顔見せて!!

良いよ!!すごくイイよ!!かわいい!!キレイ!!美人!!最高!!

ちょっと、にやけるな!!ピシっと!!笑顔!!笑顔!!」

新しく来た曲の振り付けの練習。

 

 

 

「うぉおおお!!かわえー!!ジャーニーかわえぇ!!好き!!愛してる!!超かわぇええええ!!!最推し!!神!!結婚してぇえええ!!!」

パドックでの応援。

横の一般人からは、迷惑がられたが知らん顔。

 

 

 

「いけぇえええ!!ジャーニー!!行けごらぁ!!!抜け!!抜けぇ!!抜いてぇ!!抜いてください!!

――いよっしゃああああ!!!最高ぉ!!おおおお!!!おおお!!!」

レース中での応援。

 

※この後過呼吸を起こし、倒れた為、ライブは欠席した。

 

 

 

補足するとトレーナーには叫ぶ必要など無いが、本人の気質か声が大きくなっていき、何時も最後には喉がガラガラになる。

 

そんなハードなスケジュールの中にもちょっとした癒しはある。

 

「え”ぇーぅ……のど、痛ってぇ……」

自室と成ったトレーナー室で、ゼリーを冷蔵庫から取り出し一口食べる。

 

「うんめぇ……」

ツルンとした喉ごしと、冷えたゼリーが疲れを癒していく気がする。

これで後もう少しだけ頑張れる気がする。

 

「ほどほどにしてくださいよ」

部屋の一角にあるコーヒーメーカーからジャーニーがコーヒーを取り出し口をつける。

 

「最近、量が増えたんじゃないか?」

 

「遠征支援委員会もこの時期は忙しいので」

このコーヒーも忙しい日々を送るジャーニーの貴重な癒しだった。

 

「ご安心ください、ウマ娘なのでカフェイン中毒には成りにくいので」

ぐっとブラックで飲み干すとジャーニーが部屋を出て行く。

今夜も、まだまだやる事は多そうだ。

 

「おー、頑張れな!手伝えること有れば手伝うから!」

ジャーニーの背中に声を投げかけると、ジャーニーて背中を向けたまま軽く手を振って部屋を後にした。

 

3日後……

 

 

 

「ふっ……ふっ……」

ジャーニーが小さく、連続した息を継続的にする。

凛とした瞳も何時もよりも僅かだが曇っている気がする。

疲れを誤魔化す為に、ジャーニーはその日6杯目のコーヒーを煽った。

 

「ジャーニー、レースもひと段落したし、明日は休みにするぞ。

委員会の仕事もあるだろうが、それを含めて『休め』。

良いな?」

ジャーニーの疲れを読み取ったトレーナーが言葉を投げかける。

 

「はい……そう、します……」

ふらふらとジャーニーが歩き出し、部屋の一角のコーヒーメイカーを起動させるが――

 

ピピー

 

「どうした?」

聞きなれない警告音に、トレーナーが意識を向ける。

 

「……コーヒー豆が切れてる様、ですね」

ジャーニーが自身の頭上の戸棚を見上げる。

コーヒー豆はそこに仕舞っているのだが――

 

ジャーニーの身体が浮遊感に包まれる。

目の前に来た件の扉を開けて、銀色の筒を取り出す。

 

「ほい、取れたか?」

ジャーニーの背後。

無遠慮に腰を掴んで、抱き上げるトレーナーが訊ねて来る。

 

「手伝ってくれるのは嬉しいのですが、やる前に一言、言って欲しいです」

若干の責める意図を加え言葉を吐き出すジャーニー。

 

「初めて会った図書館の時みたいに、四つん這いで背中に乗って貰った方がよかったか?

アレ、蹄鉄入ってるの結構痛いんだよね。

初めてやった時は、後悔したよ」

この学園で初めてジャーニーに合った時の話をする。

 

「思えば、ずいぶん遠くまで旅をしたような気がします」

 

「ううっ……中等部の子が困ってると思ったが、まさか高等部だったとは……

いや、中等部の子の顔と名前は全員、頭の中に入ってるから、おかしいとは思ったんだよなぁ」

ジャーニーを床におろしながらボヤく。

 

「え、きも――流石、トレーナーさん。

自身の担当の娘以外の顔と名前もしっかり憶えているんですね」

 

「……今、一瞬『キモイ』って言いかけた?」

 

「………………思っても居ません」

ジャーニーがワザとらしくコーヒーミルで豆を挽き始めた。

 

「その間はなんだ!?その間は!!

あー、やっぱり俺の心の癒しはジャーニー(ネコ)だけだ!

ジャーニー!!ジャーニー!!おいで、おいで!!」

眼に涙を溜め、何時も寛いでるベットに声をかけるが件のネコは出てこない。

 

「今日は、来てないか……ちょっと、ストレス発散でお腹とか頭と肉球で深呼吸しすぎたか……」

最近すっかり中毒気味になったトレーナーが、がっくりと肩を落とす。

 

「あまり、他所の家のネコにする物ではないのでは?頻繁に家を空けては心配でしょうし」

 

「大丈夫!飼い主の未翼(ミウ)ちゃんとそのご両親にはちゃんと伝えてあるから」

 

「……よく、捕まりませんね」

さらっと、女児の個人情報を入手しているトレーナーをジトっとした目で見る。

 

「フッ、そこは必殺中央のトレーナーバッチと教員免許提示よ。国家資格万歳さ」

ジャケットについてる金色のバッチを指さし、にやりとする。

ジャーニーは静かにため息を吐いた。

何を言っても仕方ない、と再度コーヒーに意識を向ける。

 

「少なくなって来ましたね」

コーヒー豆の缶の蓋を閉めようとして、ジャーニーが呟く。

カラカラと心もとない音がする。

 

「また、買いに行けばいいだろ。

丁度、一番の山場はお互い超えたんだし」

戸棚からビスケットを取り出し、口に投げ込む。

 

「これ、ドコで買いました?」

 

「はぁ?コーヒーはジャーニーが買って……あ!」

合点が行ったと手を叩くトレーナー。

 

「俺が零して、買って来たヤツか!」

以前ジャーニーのコーヒー豆を零して、それを誤魔化すため買って来た別の豆を混ぜた事があった。

 

「……より、正確に言うのなら、もともと入っていた豆にトレーナーさんが混ぜた物ですね。

聞こえの良い、言い方をするのならオリジナルブレンドですね」

コーヒー豆の缶から取り出した、僅かに色合いの違う2種類の豆を見て呟くジャーニー。

 

「なんの豆を入れました?」

 

「覚えてねーよ。てか、違い自体分からんし……」

バツが悪そうに、トレーナーが横を向く。

 

「では、買ったお店は?」

 

「昨日、前通ったら潰れてて武器屋に成ってた。

なんか、鎖鎌と鉄の爪と鉄の拳と眠りのブーメランが売ってた」

眼をキラキラさせながら語るトレーナー。

 

「なんで、マイナーな武器ばかりを……?

いえ、それよりも分からないなら仕方ありませんね……」

その言葉をジャーニーは自分に言い聞かせた。

 

 

 

その夜――

 

寮の部屋で、オルフェーヴルがジャーニーに尋ねる。

 

「どうした、姉上?」

 

「ん?『どうした』とはどういう意味だい?オル」

何でもないと言わんばかりに、ジャーニーが振り返る。

オルフェーヴルの話を聞くために、耳に付けていたイヤホンを取り外す。

 

「具体的には言えぬが、何処か集中を欠いた様に見える。

姉上らしく無い。あの凡夫と何か有ったか?」

 

「いや、今日は特には……」

考え込む様にジャーニーが自身の顎に手をやり、試案する。

その時、不意にオルフェーヴルが違和感の正体に気が付く。

何時のこの時間に部屋に充満しているコーヒーの香りがしないのだ。

 

「そう言えば、今日はコーヒーは飲んで居ないのだな」

その言葉を聞いてジャーニーが固まった。

 

「あの、コーヒーは残りが少なくてね。

忙しいタイミングも過ぎたし、そこまで飲む必要も無いんだよ。

もともと、根を詰める時に飲んでいた物だしね」

誤魔化すように笑い、再度イヤホンを頭に付ける。

 

「音楽か?それも珍しい――」

ジャーニーが無言でイヤホンを再度外し、接続されているスマフォの音量を大きくする。

 

『ジャーニー、は、可愛いな、お前、の事、が、大好き、だぞ。

へっへっへ、捕まえた、ぞ、二度と、放し、てやらない、からな。

さぁ、ベッド、に、こい、今日、も、一緒に、寝る、ぞ』

聞こえて来たのはジャーニーのトレーナーの音声。

しかし、その声は聴きとれるものの、継ぎ接ぎの声で明らかに合成と思える物だった。

 

「…………」

 

「トレーナーさんの癒しボイスさ。これを聞いているととてもリラックス出来るんだ。

集めた音声を繋いで作った物だよ。

オルの分も欲しいかい?聞いてみれば直ぐにハマると思うよ」

絶句するオルフェーヴルを前にジャーニーが笑みを零す。

 

「…………要らぬ」

純粋な善意で勧めて来るジャーニーの勧めを、オルフェーヴルは何とか絞り出した言葉で否定した。

 

「そうかい?欲しくなったら、すぐに言っておくれよ。

休めとトレーナーさんに言われているんだ、今夜は先に失礼するよ」

ジャーニーはイヤホンをしたまま、ベットにもぐりこんだ。

 

「姉上……」

何とも言えない顔をして、横たわる姉を眺めた。

 

 

 

深夜

「…………飲みたい」

ジャーニーが無意識にぼそりと呟く。

耳に流れるトレーナーの合成ボイスが意味を成さなくなっていく。

その代わり、コーヒーを飲みたいという感情がドンドン湧き上がって行く。

 

残り少ないのは分かっている。だが、そう思うと逆に飲みたくなるのが人の性と謂う物……

 

(飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい……)

ジャーニーの脳裏がコーヒーで埋め尽くされていく……

 

 

 

翌朝 5:30

我慢出来なくなったジャーニーが、転がり込む様にトレーナーの部屋へと入ってくる。

 

「おはようございます。トレーナーさん。

昨日の話ですが、どうしても思い出せませんか?」

朝一で部屋にやって来たジャーニーが、ベッドで眠るトレーナーを揺らす。

 

「あー……おはよ、ジャーニー……

しょーじき、名前とか憶えて無いし……」

むにゃむにゃと目を擦るトレーナーが何とか、言葉を紡ぐ。

 

「そうですか、なら……仕方ないですね」

ジャーニーが懐から、糸の付いた5円を取り出す。

 

「……なに、それ……?」

 

「後退催眠で、記憶を掘り出します」

眉唾な論理だが、本人は至って真面目な態度で話す。

 

「いや……そんなん、かかる、わけ……」

朝早く眠いトレーナーの前で、ジャーニーが5円を揺らし始める。

 

「ほぉーら、じっとコレを見てください。

ゆっくりと記憶を辿ってください……」

 

「ぐ、ぐぅ……」

ジャーニーのトレーナーが眠り始める。

 

「トレーナーさん?え、え、本当効いた?」

タダ再度眠っただけなのだが、切羽詰まったジャーニーは気づきはしない。

だが一度始まった思い込みは終わらない。

コーヒーを飲む事よりも、ずっと大きなチャンスにジャーニーは一もなく飛び込んだ。

 

「と、トレーナーさん、私の事、好きですか……?」

祈る様な気分でトレーナーに問いかける。

 

「ぐぐぅ……」

こくりと船を漕ぐトレーナーが頷く様に見えた。

 

「は、わわわわわわ……」

途端にジャーニーが破顔する。

 

「だ、だっこしてください、いえ、だっこしなさい」

 

「ん、んん……」

トレーナーに身を寄せると、トレーナーが抱きしめ撫でる。

 

「ジャーニー……かわいい……な」

睡魔に意識の溶けるトレーナーの中では、ジャーニー(ネコ)を撫でている感覚だがジャーニー本人は気が付かない。

 

「は、はは……なんでも、し、し放題、トレーナーはもう、私の言いなり、私の物……ふふふ……」

自身のトレーナーがする様なドロリとした濁った笑みを浮かべ、ジャーニーが口角を上げる。

 

「……うるさいぞ、あさから……まだ、ねてろ……」

ジャーニーを抱きしめたまま、トレーナーが自身のベットにジャーニーを引きずり込んだ。

 

「!?!!!??!!!?」

 

「はーい……ジャーニー、ねんね、ねんねー」

そして子供をあやす様に、混乱するジャーニーのお腹を優しくポンポン叩き始める。

 

「そんな態度で、私が誤魔化される訳――あ、なんです、これ、すごい眠気が、意識が持ってかれるみたいな、なんか、怖い――ぐぅ……」

ジャーニーが寝息を立て始めたのを見たトレーナーも、同じく寝息を立て始めた。

 

 

 

 

 

「あ!思いだした!」

トレーナーがベッドから飛び起きる。

時計を確認すると既に10時近い時間を差している。

 

「やっべ、休みだからって眠過ぎた……」

部屋の中を見ると、最早日常と成ったジャーニーの居る光景。

ベッドの横の椅子に座り、糸の付いた5円を揺らしている。

 

「私に、き、キスしなさい!」

 

「え、どしたん?」

突然の言葉にトレーナーが困惑する。

 

「おかしい、なぜ、かからない?」

糸の付いた5円を見つめ、難しい顔をしている。

 

(疲れてるんだな、かわいそうに……)

ジャーニーの隣をすり抜け、服を持ってシャワー室で朝の準備を整える。

 

「けど、丁度良かった。行くぞ、ジャーニー」

 

「何処へ、ですか?」

ジャーニーの問いにトレーナーはニヤリと笑うだけ。

 

 

 

トレーナーがジャーニーを伴って、校舎の中を進んでいく。

そして、とある部屋の前で足を止める。

 

「さて、居るかな?確率は半々……」

トレーナーが理科準備室の扉を開ける。

 

「ん~?おやおや、君は確か私のトレーナーの同期の……

まぁ、名前などどうでも良いか!

ふふふ、私のトレーナー君の飲んでるエナジードリンクの噂を聞きつけたのだろう?

データさえ取らせてくれるならば、好きに飲んでいってくれて構わないよ?」

 

「あーいや、間に合ってるんで大丈夫です……」

狂気的な眼をした白衣の栗毛のウマ娘が、ぼこぼこと沸騰する液体をビーカーに入れて、こちらに差し出してくるのを断わって部屋の中に入ってくる。

 

「用が有るのは、キ~ミ!」

トレーナーは理科準備室のもう一人の住人に、指を突き付けた。

黒く長い髪の間から、瞳がジロリとトレーナーを睨んだ。

 

「マンハッタンカフェさんですよね」

ジャーニーがその相手の名を呼ぶ。

 

 

 

「以前、そのトレーナーさんから『知り合いにコーヒー豆を送りたいから、近場で買える店を教えてくれ』と頼まれた事があります」

マンハッタンカフェがコーヒーを啜りながら2人を見る。

 

「…………」

ジャーニーは責める様な視線をトレーナーにぶつける。

 

「あの店潰れちゃってさ。

んで、どの豆買ったかわかんなく成っちゃって……

覚えて無いかな~って。

あ、夏からヌンチャク始めるってさ!」

トレーナーがジャーニーの視線に耐えながら、作り笑いを浮かべる。

 

「ヌンチャクはさておき、私が勧めた豆は確か、3種類ほどだったハズです。

名前をメモしておきますね」

マンハッタンカフェがサラサラと紙に豆の名前を書いて渡してくる。

 

「あー、これこれ!このリストの2番目の奴!

助かったよ、ありがとうー!」

見覚えをある名前を見て、トレーナーの記憶が完全に蘇った。

 

 

 

「ほいよ、ジャーニー。

後は、配合の比率だけだな」

 

「……そうですね」

上手くいったのに、ジャーニーが釈然としない顔をする。

ジャーニーが再度糸の付いた5円を取り出し揺らす。

 

「ほーら、トレーナーさん、眠く成りませんか?」

 

「成らない。起きたばっかり」

 

「だんだん、眠くなーる……眠くなーる……そして、私にやさしくなーる、やさしくなーる」

こんなジャーニーの姿を見るとトレーナーはいたたまれない気分になる。

 

(こんなに、追い詰められていたなんて……俺はどうして気が付いてやれなかったんだ……)

 

「トレーナーさんは、だんだん……」

トレーナーがジャーニー手を握る。

 

「よし!今日はお出かけしような!

豆をコーヒー屋に買いに行くぞ!」

 

「あ、その前に、トレーナー室に帰りたいです。

残ったコーヒー豆から、凡その配合比率を計算したいので」

たった2種だが、いちいち配合を変えて同じ味にするのは少々面倒だった。

 

「ああ、その豆ならもう無いぞ。

昨日食いたくて、コーヒーゼリーにした」

 

「は?」

ジャーニーの眼が鋭くなる。

 

「あんまり、美味しそうに飲むから……

けど、俺、苦いのダメだし?

ゼラチンと砂糖入れて甘いゼリーにしたんだよね。

ジャーニーも食べるだろ?」

何気なくトレーナーが語る。

 

「――いただきます」

その言葉が聞こえた瞬間、口を広げてこちらに飛び掛かってくるジャーニーの姿がトレーナーの眼に焼き付いてきた。

 

 

 

「おやおや、休日で生徒が少ないとは言え校舎内でとは……

付き合いが長い担当とトレーナーは色々凄いんだねぇ……」

理科準備室からひょっこり顔を覗かせたウマ娘が、興味深そうに眺めていた。




トレーナーのひみつ、その14位

中等部の子の名前と顔と公式スリーサイズは全部覚えている。
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