という事でぼ虹前提の伊地知姉妹のお話です。
ぼざろssを一年近く書いてきて分かりましたがどうやら自分はぼ虹を除けば、いやそもそも恋愛CPという観点を無しで考えればぼ虹にも負けないくらい好きだという事が分かりました。伊地知姉妹の関係性本当に尊い。
後何気に今回ぼっちの出番は無しです。初めてだこんな事。
でもならどうして作中にぼ虹要素を入れたのかと言うと、やっぱり作品の根幹だから、として言えないんだよなぁ……。
星歌Side
それはある日の事。私こと伊地知星歌がSTARRYの営業も終わって家のソファでビールを呑んで寛いでいる時の事だった。
「どーん!!」
「ブーーーーーーーッ!!」
虹夏が突然思いっ切り勢いよく後ろから私に抱きついてきた事から始まった。
「グエッホ! ゲホゲホゲホッ! ゼェッゼェッ……!! な、何しやがる!!」
丁度ビールを飲んだ瞬間に抱きついてきやがって! 鼻からビール吹き出したぞ!!
「お姉ちゃん明日休みだから暇でしょ?」
「あぁ? それが何だってんだ」
「構って!」
「はぁ!? 何ガキみたいな事言ってんだ!?」
「構って構って構って!!」
な、何なんだ一体!? 大体私は今日は疲れたからしこたま呑んで明日は一日ダラダラするという崇高な使命がーー、と言おうとしたら
「……本当に駄目?」
とギュッと抱きついたままちょっと泣きそうな声の虹夏。あー…………。
「……ったく。しゃーねぇな」
「良いの!?」
「まぁお互い仕事やらバンドやらで忙しかったし、家でも野良猫共が押し掛けてくるから二人であんまりのんびり出来なかったしな。偶には良いんじゃねぇの?」
「やったぁ! ありがとうお姉ちゃん!」
じゃあ明日はお出掛けするから今日はあんまり飲み過ぎないで早く寝てね! そう言って部屋に戻っていく虹夏。……やれやれ。
噴き出したビールを綺麗にしてから残りの分を飲み干してから就寝して、その翌日。
「どーん!!」
「ぐえーっ!!」
デジャブ!! 寝ていた私に虹夏が飛び乗って起こしてきた。死ぬぅ。
「ほらほら早く起きて朝ごはん食べて! 今日はお出掛けするんだから!」
「お、お前……、殺す気か……」
飛び乗ってきた虹夏を退かして時計を見る。まだ8時にもなってないじゃん。
「……早くねぇ?」
「早い方が色々出来るでしょ! ほら起きて起きて!」
「へいへい……、ふぁ……」
このまま二度寝はさせてもらえそうにないし起きるとするか。
寝ぼけたまま虹夏に手を引かれてリビングに行って美味い朝飯を食べてから虹夏と今日のスケジュールを立ててから化粧やら服装やら身支度を整えて、リビングに戻ると同じく身支度を整えた虹夏が、って、あれ?
「なんだお前。リボンで髪まとめて」
「いいじゃん別に。気分転換だよ気分転換」
「ふーん?」
いつもは自分の髪で纏めてサイドポニーにしてるのに、随分懐かしい髪型だな。
「……どう? 今日のリボン似合ってる?」
「どれも変わんねーよ」
「えー? またそうやって意地悪言うー」
虹夏が唇を尖らせてぶすっとする。……ふふっ、なんか懐かしいな。昔もこうやって揶揄ってたっけな。でも虹夏、私は昔から一度だって
「似合ってないなんて言ってないだろ。ほら行くぞ」
「……! うん!」
眩しいくらいに笑顔を浮かべる虹夏。可愛い奴。
「こうして二人でお出掛けなんて久しぶりだね」
「そうだな。つっても下北沢なんて見飽きてるけど」
「そうは言ってもお姉ちゃん基本的に仕事以外は引き籠ってるから外歩き回るのも久々じゃん」
「しゃーないだろ。基本的に仕事が終わるの日付け跨ぐんだからよ」
お陰ですっかり夜行性になっちまったからな。こないだなんてPAと昼に飯食いにいったらランチ難民になった挙句フードコートでガキに絡まれるし散々だった。
「でも、ま。そうだな。たまにはこうして外歩き回るのも新鮮でいいかもな。ちと暑いけど」
「そうでしょ。たまにはお日様浴びないと体が腐っちゃうよ。お姉ちゃんもいい歳だし」
「言っとくけど31なんて世間的にはまだ若いんだからな!?」
確かに10代の頃みたいな元気は無いが年寄り扱いされるほど老け込んでねぇ!
「大体お前だってそんなに外出しないし人の事言えないだろ。受験だって終わったんだしもうちょっと出かけたらどうだ?」
「んー、そうなんだけど。一人で外出してもなぁ」
「あん? リョウとかよく遊びに来るじゃん」
「リョウは外でやりたいことは自分一人で済ませてるし、遊びに来たら家でダラダラするだけだし。外に行ったら行ったで集られるし」
「喜多は?」
「喜多ちゃんとはたまに出かけるけど基本的にバンドやバイトの時以外は学校の友達とでスケジュール埋まってるから中々都合合わないんだよね。受験勉強もあるし」
「なるほどな。……ん? でもぼっちちゃんはいつでも遊べるんじゃないのか?」
ちょっと失礼だけどぼっちちゃん休みの日はいつもスケジュール空いてる(本人曰く空けてる)らしいし、遊ぼうって声掛ければ遊べるだろうに。
「ぼっちちゃんはほら、家が遠いからさ。ちょっとしたお出掛けに付き合わせるために2時間かけてこっち来させるのも悪いじゃん」
「それは確かにそうだが、んー……」
「? なに?」
「いや、そこは気にしなくていいんじゃないかと思ってさ」
「え、なんで?」
「だってその理屈だとさ、ぼっちちゃんとはよっぽどの理由が無いと遊ばないってことになるぞ。そんな風に遠慮されてたらぼっちちゃん寂しいんじゃねぇの?」
「あ……」
「そんなんしてたらまた蝉のお墓作るくらい落ち込むぞ。ダチなんだから迷惑だとか気にせずに遊びに誘え。そっちの方が喜ぶだろうよ」
「……うん、そうだね。ちょっと遠慮しすぎてたのかも」
「それにもうすぐ夏休みだろ。また泊まってもらうのもいいんじゃないか?」
野良猫共はお断りだがぼっちちゃんなら大歓迎だ。何せ可愛いし可愛いし可愛いし。
「……それお姉ちゃんが泊まりに来てほしいんじゃないの?」
猫みたい目で私の考えを見透かす虹夏。こわ……。
「でも、うん。私もぼっちちゃんと遊びたいし今度の休みにでも声掛けるよ。ありがと。たまには良いこと言うね」
「たまには余計だっつの。……歩きながらとはいえゆっくり喋りすぎたな。そろそろ急がないと映画の上映時間に間に合わなくなるぞ」
「え、もうそんな時間!? 急ごう!」
「へーい」
「あー面白かった!」
「中々良い映画だったな」
「中々とか言って、お姉ちゃんぼろ泣きしてたじゃん」
「う、うるせえな」
あれからギリギリ映画の上映時間に間に合って、今はカフェで映画の感想を話し合っていた。
しかし本当に泣いてしまうくらい良い映画だった。引っ込み思案な主人公のギタリストがヒロインのドラマーと運命的な出会いをして様々な紆余曲折の果てにバンド仲間との絆を深めながらヒロインの夢を叶えて、最終的には主人公とヒロインが結ばれてハッピーエンド。ベタベタな設定だったけどああいうのも偶にはいいもんだな。
「でもあの主人公、ちょっとぼっちちゃんみたいだったな」
「あはは、確かに。普段頼りないのにヒロインや仲間のピンチの時には頑張れるところとか似てるかも」
なるほど、普段ぼっちちゃんを見てる虹夏的にはそういう所が似てたのか。私としてはおどおどビクビクしてて可愛い所が似てるって思ってたんだが。まぁぼっちちゃんの方が100倍可愛いけどな!
「でも本当に良い映画だったなぁ。いつか私達もあんな風になれたらいいな」
「……ふーん?」
「なに? ニヤニヤしてどうしたの?」
「いやだってさ、あんな風にって事は最後にぼっちちゃんみたいな主人公とくっつきたいってことだろ?」
「……は!?」
「確かにあのドラマーも面倒見が良すぎなとことか? ちょっと勢い任せなところとか? お前に似てたしなぁ」
「ち、ちが、そっちじゃなくて! バンドを大成させて夢を叶えるってところの話! ぼっちちゃんとはまだそういうんじゃないし!」
「そうかそうか」
まだ、ねぇ? それに私はぼっちちゃん「みたいな」って言っただけでぼっちちゃん本人だなんて言ってないんだがなぁ。
「もう! ニヤニヤしすぎ!」
「ははは、すまんすまん。この後服とか見に行くんだろ? 気に入ったのがあったら買ってやるから許してくれ」
「……むー」
ジュゴゴゴ、っと音を立てながら不貞腐れた虹夏がストローでジュースを飲み干す。揶揄い甲斐があるのは昔から変わらないな。……でもいつかあの映画の様になったら冗談じゃなくなるんだろうな。それはそれで寂しいが楽しみだ。
それからというもの。
「お姉ちゃんこの服どう? 似合う?」
「お姉ちゃんあのパスタ屋さん行こう!」
「お姉ちゃんドラム屋さん付き合って!」
「お姉ちゃん次あっち!」
こんな調子で虹夏にあちこち付き合わされていた。何だか小さい頃の虹夏みたいだな。
「んー! 遊んだ遊んだ!」
「満足したか? じゃあそろそろ帰るか」
やれやれ、今日は可愛いお姫様にずいぶん貢いじまったな。晩飯は私が好きなもんでも作ってもらおうかな。じゃあ帰ろう、と思って歩き出したが虹夏に手を掴まれて止められてしまった。おいおい……。
「まだ行きたいところがあるのかよ」
「う、うん。……。家からはすごく近いんだけど、その……」
歯切れを悪くしてモジモジする虹夏。どうしたんだ一体。さっきまで強引にあっちこっち振り回してた癖に。
「あ、あのね、後一ヵ所だけなんだけど……、駄目かな……?」
「別に構わねぇよ。どこに行くんだ?」
「えっとね、STARRYなんだけど……」
ス、STARRY? なんで? 何か忘れ物を取りに行く……とかじゃないよな?
「STARRYなんか行ってどうするんだよ」
「ラ、ライブが見たいの」
「ライブぅ? 何言ってんだ。今日は休みだからライブの予定なんか……」
「お姉ちゃんのライブが見たいの!」
「は?」
は?
「んー、まぁこんなもんか」
あれから虹夏の要望に応えるために私達はSTARRYに来て、私はステージの上でギターのセッティングをしていた。
虹夏の要望は、インストで私がギターで演奏をするところが観たい、とのことだった。
なんで今更私が演奏するところを見たいのかは知らないが……、私の一番のファンがステージ下で目を輝かせながら楽しみにしてるんだから、応えない訳にもいかないよな。
しかしまともにギターやるの久しぶりなんだよな。気晴らしに軽く触る程度に弾いたりはしてたけど。クリスマスに元バンドメンバーが演奏してくれた時にブランクがあって酷いなんて言ったが、正直私も現役の頃みたいには弾けないだろうな。
さて、セッティング完了っと。
「じゃあ始めんぞ。久々だしあんま期待すんなよ」
「うん、大丈夫。お願い」
「あいよ」
そしてドラムがいないから足で適当にカウントを、トン、トン、トン、とリズムを取って当時の所属バンドの曲をかき鳴らした。
チッ、やっぱブランクがあるな。ちょっと指がもたつくし、昔はもっとキレのある音が出せてた筈だ。けど良い訳なんかしてらんないよな。だってよ、私は今最高にカッコ良くないと駄目なんだ。虹夏が、世界一の妹が観てるんだから!
もっとギターに集中しろ。神経を研ぎ澄ませるんだ。もっとビブラートを利かせるんだ。もっとキレを。音が少し外れても気にするな。そんな事聴いてる側が気にも留めないほど、カッコよくゴリゴリに鳴り響かせるんだ!
そして全力で突っ走って演奏を終える。ブランクがあり過ぎて最後まで全盛期の様な音は出せなかったが今の私の全力、いや全力以上の音を出せたはずだ。
さて肝心の虹夏の反応は、っと顔を上げたところで虹夏がステージに駆け上がって抱き着いてきた。おっとっと。
「ったく危ねぇな。で、どうだったよ」
「うーん。正直昔の方が上手だったかな?」
そりゃ悪ぅござんしたね。
「えへへ。でもカッコいいのは変わってなかったよ。やっぱり私、お姉ちゃんのギターが好き!」
「……そうか」
なら今回の所は良しとするか。虹夏の笑顔も見れたことだし。
「またお姉ちゃんのギター聴かせてね!」
「気が向いたらな。さて、と。じゃあ今度こそ帰るか。腹減ったわ」
「うん。お姉ちゃん何が食べたい? 今日は好きなもの作ってあげる!」
「そうだなぁ。……何でもいいよ」
「えー? それ一番困るやつなんだけど」
「だってお前の作る料理全部好きだし。あ、でも今日は久々にギター全力で弾いて特に腹減ったからいっぱい作ってくれ」
「……仕方ないなぁ。じゃあ今日はカレーとから揚げね」
「それ母さんとぼっちちゃんが好きなやつじゃね?」
「良いでしょ別に。ほらほら、すぐ取り掛かりたいから早く帰るよ」
「あいよ」
虹夏にもやっとご満足いただけたみたいだな。さて後は……。
「ぷはー食った食った、もう食えねぇ。ご馳走様ー」
「お粗末様でした。はい、お茶どうぞ」
「サンキュー」
あー美味かった。今日の料理は気合入れてくれたのか普段よりも一際美味かった気がするな。お陰でちょっと無理して胃に詰め込んじまった。
「お姉ちゃん今日はありがとね。私の我儘に付き合ってくれて」
「別に礼言われる事じゃないだろ。家族と家族の時間過ごしただけなんからさ。昨日も言ったけど最近はお互い忙しかったからそういう時間、全然取れてなかったからな」
「うん」
「で、なんかあったのか?」
「あ……。分かっちゃう?」
「当たり前だろ」
何年お前の姉貴やってると思ってるんだか。
虹夏は確かにしっかり者だけど根は甘えん坊だし、強引なところもあるけど流石に今回のはあまりにも唐突過ぎたからな。
「……別に特別何かがあったって訳じゃないの。ただ……」
「ただ?」
「私こないだ19歳になったでしょ?」
「え? ああそうだな」
「それでね、当たり前の事なんだけどふと思ったの。私来年で成人なんだって」
「そう、だな?」
なんだ? 本当に当たり前のこと過ぎて何が言いたいのかが分かんねえ。
「リョウも高校卒業して強制だけど一人暮らし始めたじゃん?」
「そうだな」
お陰であいつがウチに飯集りに来る回数が目に見えて増えたんだよな。虹夏だってあいつの家にちょいちょい行って色々フォローしてるってのに。食費に影響が出始めてるしリョウからはそろそろ本当に食費を徴収しないとな。もう学生じゃないし。……って、あ。そういうことか?
「そうやってもう自立を始めていく歳になって、もう私子供じゃなくなるんだってそう思ったら何だか少し不安になったの……」
「そうか……」
それで大人になったらもう子供みたいに甘えられないんだって考えて寂しくなって、色々と今日は甘えてきたって事か。
「お姉ちゃんから貰ったこのリボンもこんな風に髪の毛に結ぶなんてことも、身に付けるのも可笑しいのかもしれないし」
「別にそれくらい良いんじゃねえの?」
「そうかもしれないけど、先に進むのが不安になるの。バンドの事は皆の顔を見たり、ぼっちちゃんのギターを聴いてると不思議と不安が吹き飛んじゃうから大丈夫なんだけど。でもいつかお姉ちゃんから自立しないといけないのかなって思うと、怖くて……!」
「……」
そんなに不安に感じてたなんて気づかなかった。虹夏は「こう」と決めたら突っ走るような性格だから、未来に向かって邁進していってるもんだとばかり思っていた。でもそうだよな。どれだけしっかりしていても、『まだ』子供なんだもんな。
「ご、ごめんねお姉ちゃん。流石に甘え過ぎだよね。私ちゃんと頑張るから」
「虹夏、ちょっとこっち来い」
「え?」
手招きしてテーブルの向かい側にいた虹夏を呼び寄せる。
「え、っと? って、わぷ。お、お姉ちゃん? 何で抱きしめて……」
「馬鹿」
「え?」
「馬鹿っつったんだよ。変に一人で抱え込みやがって」
「だ、だって」
「別に甘えりゃいいじゃねーか」
「え? で、でも」
「……そういう風に考えた事、私もあるよ」
「お姉ちゃんも?」
「ああ。私もデカくなって、高校卒業するくらいだったかな? 私も母さんに甘えたいって思ったことがある。母さんに素直に甘えられる小さなお前を見て羨ましく思ってたこともあったよ」
でも素直じゃないせいで中々上手く甘えられなくて、そうして意地を張っている間に永遠に甘える機会を無くしてしまった。今でもすごく後悔してる。
「なぁ虹夏。今でも思い出すと辛いけどさ、母さんがそうだったように人がいなくなるなんて一瞬だ。私だって不慮の事故で母さんの様にお前を残して、なんて事もあるかもしれない」
「や、やだ! やめてよそういう事言うの!」
「でもお前だってそうだよ」
「え?」
「お前が私を残して、なんて事もあるかもしれないだろ? だから甘えたい時は甘えたらいいし、私も甘えてほしいって思うんだよ」
今なら母さんもそう思っていたのかもしれないって、何となく分かる気がする。
「大人になっても甘えたらいい。お前が成人になっても、今の私と同じ歳になっても、婆さんになっても」
「私達は、世界一仲の良い姉妹なんだから」
「お姉ちゃん……」
「だから安心して大人になれ。あ、でもちゃんと厳しくしないといけない時は厳しくするからな」
「……うん」
虹夏がギュッと私に抱き着く。これで少しは安心出来たかな?
「お姉ちゃん、最後にもう一つだけ甘えていい?」
「何だ? 今日はもうとことん甘やかしてやるよ」
「うん、ありがとう。あのね……」
「ふあぁ……」
布団に潜って欠伸を一つ。やっと一日が終わったか。今日は色々あったな。
でも今日の一件で改めて考えちまったな。虹夏ももうすぐ大人になるんだって。そうなれば虹夏も言ってたけどいつか自立する日も来るんだろう。それだってそう遠い話じゃない筈だ。
その時虹夏を支えるのがまだ見ぬ男なのか。……あの可愛らしくて、いざという時にしか頼りにならない虹夏のヒーローなのかは分からないが、私の手から離れていくんだな。そう考えると私も少し寂しく感じる。虹夏は今日、私のギターが好きだと言っていたが『一番』だとは言わなかった。もしかすると一番好きなギターはもう、別にいるのかもしれない。
でも今はまだ虹夏を護るのは私なんだ。いつかその日が来るまで、絶対に守り抜こう。
さて、私ももう寝るか。普段は寝る時は愛用の抱きまくらを抱きしめて寝るんだが、今日は枕元に置いてあって今回は出番はない。だって。
「すぅ……、お姉ちゃん……」
私の腕の中に世界一愛しい、最高の抱き枕があるから。