ゾイドIf √ZERO   作:フィーネ可愛い

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第3話

 

 

 荒野の中、台地が乱立する地帯に数体のゾイドがいた。

 

 

 黒いボディに長い腕と反対に短い脚。地に拳を立てるような独特の立ち姿。

 ガイロス帝国製ゴリラ型ゾイド、アイアンコング。

 右肩に対ゾイド6連装ミサイルランチャーを。背中のバックパックに地対地二連装戦術ミサイルを装備し、更に両肩に十連装自己誘導ロケット弾ランチャーを内臓した通常仕様が一体。

 右肩のミサイルランチャーを外して、代わりにバックパックを拡張し二連装戦術ミサイルを両肩に担ぐように装備することで機動性と対応力を犠牲に六発の戦術ミサイルを持たせた特殊仕様―――アイアンコングMC(ミサイルカスタム)とでも呼ぶべき機体が一体。

 そしてミサイルランチャーに代わりビームランチャーを。内臓式のロケット弾ランチャーを廃し、左手に二連装パルスレーザーガンと四連装グレネードランチャーを。

 更に背部のバックパックに対空ミサイル二発とハイマニューバブースターパックを追加して対ゾイド戦に寄せた、嘗てのギュンター・プロイツェン元帥の親衛隊が使っていたアイアンコングPK(プロイツェンナイツ)仕様が一体。

 このアイアンコング三体がアクアシティを襲う爆撃の下手人であり、コクピットで操縦桿を握るゾイド乗りたちは全員がガイロス帝国軍の軍服に身を包んでいる。

 ルーデウス・エルキシー中佐とその部下たちである。

 

 アインセルが焦っていたのと同様にルーデウス中佐も焦っていた。

 調査に来たGF(ガーディアンフォース)の小隊に研究を気付かれたのがそもそもの失敗。殆どを捕えたものの、定期連絡が途絶えれば確認のため更なる部隊がやってくる。

 更に問題なのは定期連絡の周期が分からないことだ。当然、拘束したGF隊員たちに尋問を行ったものの誰一人として口を割らない。

 いつ敵ぐ来るのか全く読めない。

 一週間後か三日後か、いや既にこちらに向かっている可能性も―――?

 そうした不安の中、トップであるルーデウス中佐はある決断を下す。

 

 

 

『一発目、二発目共に着弾確認。詰所は吹っ飛んだな』

『三、四発目、目標は東のゾイドの整備施設。発射っ、と』

 

 

 

 目標再設定、仰角修正、射出角調整、と必要な数値を入力しアイアンコングMCから更に戦術ミサイルが発射されるのをルーデウス中佐はアイアンコングPKのコクピットで静かに眺める。

 

 

 下した決断は【アクアシティの防衛能力に重篤なダメージを与えること】。

 アクアシティはこの地域一帯の流通の要衝であり、特に他の都市との交流がほとんど無い密林の中の集落、荒野や砂漠の村々にとってはなくてはならない存在である。

 様々な人、モノが集まる以上賊の類いに狙われ易く、それらを退ける防衛能力は高い。

 

 しかし仮に、防衛能力がガタガタに崩れれば。

 普段はアクアシティに手出しする力のない連中もハイエナの如く群がってくる。

 そうなればGFはこちらよりも街や周囲の防衛を優先せざるを得ない。彼等の使命は辺境の治安維持なのだから。

 そうしてGFから時間を稼ぎ逃げて態勢を整える、というのがルーデウス中佐の考えだった。

 

 そもそもルーデウス中佐が危険な研究や実験に手を出したのは、共和国との講和条約による警戒心の低下や軍縮が精強だったはずのガイロス帝国の軍事力をガタガタに落ち込ませている現状を憂いてのことだった。

 状況に変化をもたらせたはずのG量産計画も若く愚かな皇帝によって中止に追い込まれる始末。

 

 たとえ今は逆賊と謗られ理解を得られなくとも、いつの日か必ずや帝国を救うための唯一の行動であったと誰もが評価してくれるーーーと、ルーデウス中佐は信じていたし、その思想に賛同する同胞も多かった。

 故に、民間人ばかりの街に攻撃を行うことにも躊躇いはない。

 それはアイアンコングを駆る他の二人も例外ではない。今もアイアンコングMCに乗るパイロットが五発目の戦術ミサイルをアクアシティ南側の防壁に撃ち込むために数値を入力し直して―――止めた。

 

『……ん?』

『三発目と四発目が空中で爆発した?……故障か、誤作動か?』

 

「いや、これは……」

 

 ミサイルの故障でもなければ、誤作動でもない。

 ()()()()()()()

 

『迎撃システムなんて軍事施設かもっとでかい都市ぐらいにしか無いだろ?』

『余程運のいいやつがいたのか?』

 

 基本的に戦術ミサイルは弾幕を張るなり迎撃用のミサイルを用意するなりして撃ち落とすしかない―――が、それらを統合したミサイル迎撃システム何てものは普通の賊相手には無用の長物以外の何物でもないためアクアシティであっても配備していない。

 よって、『偶々外に出ていたゾイドか何かが撃った弾が運良く(こちらにとっては悪く)ミサイルに当たった』と考えるしかなく。

 

『目標をゾイド整備施設に変更、数値入力…………発射っ、と』

 

 淡々と設定し直して再び二発の戦術ミサイルが発射された。

 高速で飛ぶ飛翔体は緩い山なりな軌道で目標へ向かいーーー再度、途中で爆発を起こす。

 

 

『またぁ!?』

 

「偶然じゃないな、とんでもないのが居る」

 

 困惑する部下たちを他所に呟くのと同時、通常型よりも強化されたセンサーとカメラが近付いてくる機影を探知した。

 未だ遠く姿は鮮明ではないが、かなり速い。平地の駆けっこではアイアンコングに勝ち目はなさそうだ。

 これから来るのはミサイルを撃ち落とす凄腕であり、万が一にもアイアンコングを傷つけられるのは避けたいーーーが、興味もある。

 これも教練になると部下二人に任せきりで、落としていたこちらからの通信を入れ直し指示を出す。

 

 

「『お前たちは撤退しろ。私が殿を務める』」

『中佐!?』

『そんな!?撃ちきったMCはともかく、俺はまだやれます!』

「『何度も言わせるな撤退だ。安心しろ、時間を稼いだら私も引く』」

『しかし!―――』

 

 

 なおもアイアンコングのパイロットは抗議していたようだが一方的に通信を切る。しばらくして、部下二人のアイアンコングは指示に従い基地へと撤退していった。

 それを確認してからルーデウスも行動を開始した。

 アイアンコングPKがザザァー!と勢い良く音を立てながら台地を滑り降りる。

 

「“システム”を追加し、強化されたこのアイアンコングのテスト相手に相応しい相手であってくれよ……?」

 

 揺れるコクピットの中、ルーデウス中佐が獰猛に口を歪めた。

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

 

 

 

 ミサイルを撃ち落とせたのは偶然だったとカナタは思う。

 ジェノザウラーの動作確認のため、防壁の外に出ていたのがまずひとつ。街から離れていたことですぐにミサイルによる攻撃であることに気付けた。

 位置がよかった、というのもある。自分がいた位置が街とミサイルの発射地点との直線上に程近い場所だったのも大きい。

 なによりジェノザウラーの射撃能力の高さが功を奏した。弾幕と呼ぶには薄いがビームガンとロングレンジパルスレーザーガン二挺の乱射を予測した軌道上にばら蒔くことでミサイルを撃墜出来た。

 

 そして今。カナタはミサイルの軌道から割り出した発射地点へとジェノザウラーを走らせていた。

 敵の戦力がわからない内に無闇矢鱈に突っ込むのは愚行と言えるが、そもそもミサイル攻撃は“疎ら”だった。純粋に少ない。防衛の要所だけを狙った攻撃。

 恐らく敵は少数。十分に勝機はある。

 戦う力無き人々を守らん、と義侠心に従っての行動ではあったが、それだけではない。

 

「……街を救えば礼もたんまり貰えるだろうしな」

 

 カナタ・キャヴァリエ、ひとり旅。金はいくらあっても困るものではない。

 泊まってる宿に被害が出たら困る、というのもある。

 

 思案しつつも周囲への警戒を怠らないカナタとジェノザウラーは台地が乱立する入り組んだ地域へと差し掛かり、

 

 

 ()()()、脚部スラスターを吹かしてほぼ直角で左にスライド。

 一拍遅れて三つの光条が地面に突き刺さり爆ぜた。

 攻撃に動揺することも停滞することもなくカナタはゾイドを操作。

 ジグザグに移動するジェノザウラーの僅か後方を台地の上からビームとパルスレーザーが追うように降り注ぐ。

 ギリギリで、しかし一度も当たること無く躱したジェノザウラーは旋回反転、下手人を正面に捉えようとして。

 

「!? ちっ!」

 

 上から迫る影に気付いたカナタがジェノザウラーを左へスライドさせる。

 一瞬の後、ジェノザウラーの右、つまりは先ほどまでいた位置に巨躯が落ちてくる―――同時に振り下ろされた右腕が大地に叩き付けられた。ジェノザウラーであっても当たっていれば無事ではすまなかったであろう威力を感じさせる轟音が響く。

 怯むこと無くジェノザウラーが地を蹴り同時にバーニアを吹かして威力を上げた体当たりをお見舞いした。

 ガゴォッッ!という凄まじい衝撃。襲撃者―――アイアンコングPKとの間に距離が空く。

 双方、共に素早く態勢を整えて睨み合うように相対する。

 

 

『ー――素晴らしい、流石はジェノザウラー。そして良い腕だな、ゾイド乗り。

 所属は何処だ? 階級は? 名はなんだ? 教えてくれ』

「………?」

 

 

 ゾイドの外部スピーカーを通じて届けられた言葉にカナタは少しだけ困惑した。戦闘中に質問する意味がわからない。わからないが、罠のようにも感じない。

 ある種の時間稼ぎだろうと思うがカナタも相手の素性を知らなかった。街を襲ったのでとっちめてやる、と、それだけ。情報を引き出せるなら引き出して置くべきか。

 そう判断してカナタも外部スピーカーを起動し、応答する。

 

 

「『所属も階級もない、ただの旅人だからな。アンタこそ名乗ったらどうだ』」

『………旅人、軍人ですらないだと?それに子供?―――いやいい。今はいい。置いておこう。

 私はガイロス帝国軍ルーデウス・エルキシー中佐だ。それで?

 君の名は?』

(帝国軍!?何で自分んとこの街に攻撃なんぞ……とりあえず、)

「『……バン・フライハイト』」

 

 

 選りにも選っての偽名。あからさまだが、反応はどうか。

 

 

『……ふん、名を明かす気は無し、と。まぁそれでもいい。どうだ? 私の部下にならないか? それ程の腕前、今ここで潰すには惜しい。私と共に来れば更なる力を得ることも出来るぞ』

「『……はぁ?』」

 

 

 帰ってきた反応はカナタが全く予想していなかったものだった。というかいきなり勧誘されるとか誰が予想出来るというのか。しかし返答は決まっている。

 

 

「『お断りだ。勧告も無しにいきなり街にミサイル撃ち込むような輩に尻尾を振る気はない。ていうか』」

 

 そうだ、そもそも―――

 

「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』」

 

 

 お前は弱い、とカナタは告げる。そこに挑発だとか見下すとか動揺を誘うためであるとかそういった要素は全く無い。純然たる事実として認識している。

 それがルーデウス中佐のプライドを傷付けた。

 

『―――……面白い冗談だな小僧』

「『???……冗談なんて言ったか?』」

『っ!?―――いいだろう……力の差を、身の程というものを教えてやるっ!!』

 

 怒りに震えるルーデウス中佐が叫び、コンソールを操作。乗機の()()()()に掛けられた制限を解放する。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!』

 

 アイアンコングPKの内、活性化したゾイドコアから光が溢れ輝く。コアから供給されるエネルギーが過剰とも言える強化をもたらす。

 昂る感情を表すが如く自らの胸を叩く(ドラミング)。更に本来大人しいはずのアイアンコングが咆哮した。

 

『オーガノイドの力を再現し、コアを強制的に活性化させゾイドを強化するシステムのリミッターを解放した!ジェノザウラーといえど勝ち目はないぞ!』

 

 勝ち誇るように告げるルーデウス中佐だが、カナタの反応は冷ややか。

 

「『……いくらゾイドが良かろうが乗ってるのアンタだろ?』」

『~~~!!?? 死ィねぇ!!!』

 

 完全に頭に血を昇らせたルーデウス中佐と冷淡ですらあるカナタ。対照的な二者の戦闘は激しさを増していく。

 

 

 

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